地積更正登記の費用は、土地家屋調査士の全国調査で中央値が約37万円です。ただし、土地を売却するたびに必ず要る登記ではありません。要るかどうかは買主が何を求めるかで決まり、登記簿の面積のまま手放す道もあります。
この記事では、費用の一次情報と、その金額がどんな土地を前提にしているかを先に示します。そのうえで、売る前に要る場面と要らない場面、費用を誰が負担するのか、先に費用をかけずに手放せるのかを順に整理します。
地積更正登記とは、登記簿の面積を実測に合わせ直す登記
地積更正登記とは、登記簿に載っている土地の面積(地積)が実際と違っているときに、実測の面積に直す登記です。土地そのものが増えたり減ったりしたわけではなく、もともとの記録のずれを直す手続きです。
法務省は、この登記がされる場面を次のように説明しています。
分筆前の測量で地積が登記上から異なると判明したり、売買、相続のときに隣の土地の所有者と筆界(境界)を確認したりしたときなどに地積更正の登記がされることが多いようです。
筆界(ひっかい)とは、登記のうえで土地と土地を区切っている公の境界のことです。地積更正登記では、この筆界をすべての辺で明らかにしたうえで測量し、地積測量図という図面を法務局に出します。申請は、筆界を調べる専門家である土地家屋調査士に頼むのが一般的です。
「変更」と「更正」は別の登記です。
不動産登記法37条は、地積に変更があったときに1か月以内の申請を求めています。海沿いの土地の一部が水没した、というような場面です。
一方、もともとの記録の誤りを直す更正の登記(同法38条)には、こうした申請期限の定めがありません。面積がずれていること自体で、罰則を受けるわけではありません。
登記簿と実測がずれる理由や、ずれの大きさの目安は、縄伸び・縄縮みの記事にまとめています。明治期の測量がそのまま残っている土地では、ずれているほうが普通です。
費用は中央値で約37万円。ただし前提の土地を見てください
費用のほとんどは、土地家屋調査士に払う報酬です。登記の申請そのものに登録免許税はかかりません。
日本土地家屋調査士会連合会が、全国の調査士へのアンケート(令和4年度・回答3,487通)にもとづいて、業務報酬統計資料を公表しています。地積更正登記の回答額は次のとおりです。
| 区分 | 中央値 | 平均値 |
|---|---|---|
| 全国 | 372,584円 | 390,316円 |
| 近畿 | 500,000円 | 507,950円 |
| 四国 | 392,918円 | 393,205円 |
| 中部 | 381,000円 | 384,835円 |
| 関東 | 380,260円 | 396,832円 |
| 九州 | 348,000円 | 345,668円 |
| 中国 | 343,911円 | 338,295円 |
| 北海道 | 342,338円 | 359,827円 |
| 東北 | 334,100円 | 346,002円 |

この金額は「市街地の宅地180㎡・隣接6筆」の話
大事なのは、この金額の前提です。アンケートは、全員が同じ土地を想定して回答する形になっています。設問の条件は次のとおりです。
- 土地売買のための地積更正登記
- 地目は宅地(市街地)、更正後の地積は180.00㎡
- 申請する土地1筆と、隣接地6筆の調査
- 道路および隣接する民有地と筆界確認を行う
- 既設のコンクリート杭が2点、新しく設置する境界標が3点
つまり約37万円という数字は、住宅地の一区画を、隣との話がすんなりまとまる前提で測った場合の金額です。隣接地の数が増えれば、調べる相手も立ち会ってもらう相手も増えます。広い土地や、山林・農地のように境界の目印が残っていない土地は、この条件に当てはまりません。
「地方は土地が安いから、測量も安い」とはなりません。
表のとおり、地域による差は中央値で十数万円の幅です。一方で土地の価格は、地域によって桁が違います。
土地が安い地域ほど、測量と登記の費用が土地の値段に近づき、ときに上回ります。費用をかける前に、そもそも要る登記なのかを確かめる意味がここにあります。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
費用は誰が払うのか
法律で決まっているわけではなく、売買契約で決めます。一般の取引では、売主が引渡しまでに境界を明示する、という約束を契約に入れることが多く、その延長で測量と地積更正登記の費用も売主が負担する形がよく見られます。
売主が負担することが多いのには理由があります。地積更正登記を申請できるのは、その土地の表題部所有者か所有権の登記名義人に限られているからです(不動産登記法38条)。名義がまだ売主にある段階で行う手続きなので、売主側の作業として扱われやすいのです。
ただし、これは慣行であって決まりではありません。買主が測量を望むなら買主の負担で行う、登記簿の面積のまま取引して測量はしない、という契約も成り立ちます。「売るなら売主が測るもの」と思い込んで、先に費用を出してしまう必要はありません。
売却の前に、要る場面・要らない場面

要ることが多い場面
- 買主が実測面積での取引を求めている……1㎡あたりの単価が高い市街地の宅地では、面積のずれがそのまま金額の差になるため
- 買主が住宅ローンを使う、または建売・分譲の用地として買う……融資先や事業者が、登記と現地が合っていることを条件にするケースがある
- 土地を分けて(分筆して)一部だけ売る……下で説明するとおり、面積の差が大きいと分筆の前に更正が必要になる
分筆について補足します。不動産登記事務取扱手続準則72条は、分筆前の地積と分筆後の地積の差が、地積測量図の誤差の限度内であれば、地積の更正の登記は要らないとしています。
裏を返すと、差が誤差の限度を超えていれば、分筆の前に地積更正登記が必要になります。誤差の限度は、市街地・村落や農耕地・山林や原野という地域の区分ごとに決められています(不動産登記規則10条4項、77条5項)。
「広い土地の一部だけなら買う」と言われて分筆を考えたとき、分ける部分だけでなく元の土地全体の測量が要るのは、この仕組みのためです。
要らないことが多い場面
- 登記簿の面積のまま取引する(公簿売買)……実測との差があっても精算しない、と契約で決める方法
- 土地を一筆まるごと手放す……分筆をしないので、準則72条の問題が出てこない
- 買主が不動産会社で、現況のまま引き受ける前提になっている
- 山林・原野・農地など、面積の差が価格にほとんど響かない土地
山林・原野の処分や農地の売却では、もともと実測をせずに登記簿の面積で取引するのが通例です。価格が面積の精度に左右されにくく、測量の費用のほうが大きくなりやすいためです。
なお、境界そのものがはっきりしていない場合の考え方は、境界未確定の土地の売却の記事に、測量の3つの段階とあわせて書いています。
隣地の所有者が分からないとき——令和4年の通達
地積更正登記でいちばん止まりやすいのは、測量そのものではなく、隣の土地の所有者に筆界を確認してもらう段階です。隣地が相続登記をされないまま放置されていて、相続人が誰かも分からない、という土地は珍しくありません。
この点について、法務省は令和4年4月14日付の民事局長通達(民二第535号)で、取扱いを見直しました。要点は2つです。
1 現地復元性を有する登記所備付地図又は地積測量図等の図面が存在する場合には、原則として筆界確認情報の提供等を求めないものとする。
2 筆界確認情報の提供等を求める必要がある場合であっても、求める筆界確認情報は、登記官が筆界の調査及び認定をするために必要な最小限の範囲のものに限るものとする。
筆界確認情報とは、隣り合う土地の所有者どうしが現地で筆界を確かめ、認識が一致したことを示す書面のことです。通達は、相続人が分からないなどの理由でこの書面を用意できない例が増えていることを挙げ、隣地所有者が不明な場合でも円滑な取引ができるようにする、としています。法務省の案内によると、この運用は令和4年10月3日から全国の法務局で始まっています。
隣の所有者が分からないからといって、そこで行き止まりとは限りません。
法務局に、座標の入った精度の高い地積測量図や地図が備え付けられていれば、隣地の確認を省ける場合があります。
ただし、古い図面しかない土地ではこの扱いは使えません。まず法務局で自分の土地と隣地の地積測量図を取り、土地家屋調査士に見てもらうのが早道です。
それでも筆界が決まらないときは、法務局に筆界の位置を特定してもらう筆界特定制度(不動産登記法123条以下)があります。隣地との関係がこじれている場合や、登記と現地が広い範囲で合っていない地図混乱地域のような土地では、こちらが現実的な道になります。
地積更正登記をしたあとに起きること
面積を直すと、売買以外のところにも影響が出ます。頼む前に知っておきたい点を表にしました。
| 項目 | 起きること |
|---|---|
| 固定資産税 | 土地の固定資産税は、原則として登記簿の地積をもとに計算されます。更正で面積が増えれば、翌年度以降の税額が上がる可能性があります |
| 隣地との関係 | 立会いをお願いすることで、それまで表に出ていなかった越境や認識の違いが見つかることがあります |
| 期間 | 隣接地が多い、道路との境界(官民の境界)の確認が要る、といった場合は数か月かかることがあります |
| 売れるかどうか | 面積が正しくなっても、買い手がつかない理由が別にあるなら、状況は変わりません |
最後の行がいちばん大事です。地積更正登記は「面積のずれ」を直す手続きであって、「買い手がつかない」ことを直す手続きではありません。
再建築ができない、市街化調整区域にある、山の中で道がない。こうした理由で売れ残っている土地に数十万円をかけて面積を直しても、出口は近づきません。税額の見込みは市区町村の資産税の担当課に、登記の要否は土地家屋調査士に、先に確かめてください。
測らずに手放したいとき
ご相談で多いのは、高く売りたいという話ではなく、「これ以上お金をかけずに手放したい」という話です。
当社は訳あり不動産を自社で買い取る会社で、現況のままを前提にしています。
- 測量・地積更正登記を、売主の方にお願いしていません。片付けや解体も同じです
- 登記や現地の調査は当社で行います。売主の方に法務局や役所を回っていただくことはありません
- 再建築不可や市街化調整区域であることだけを理由に、査定の対象外とはしていません
- 宅地だけでなく、山林・原野・農地を含むご相談もお受けしています
すべての土地をお引き受けできるわけではありません。
ご希望の金額との開きが大きい場合、費用のご負担についてご了解をいただけない場合、相続人の間で合意ができていない場合などは、成立しないことがあります。個別の判断になります。
測量をしないまま手放す方法は、ほかにもあります。それぞれ境界や面積の扱いが違うので、並べておきます。
| 手放す方法 | 測量・地積更正登記の扱い |
|---|---|
| 隣地の所有者に譲る | 買主が隣人なので、境界の確認が問題になりにくい。登記簿の面積のままで話が進みやすい |
| 不動産会社が買い取る | 会社による。現況のまま・登記簿の面積のままを前提にする会社がある |
| 相続土地国庫帰属制度 | 境界が明らかでない土地は申請が却下される。審査手数料と負担金がかかる |
| 自治体への土地の寄付 | 受け取るかどうかは自治体の判断で、使い道のない土地は断られることが多い |
国の制度の要件は、相続土地国庫帰属制度の記事で、法務省の統計とあわせて確認できます。
調査士に頼む前に、手元で確かめておくこと
見積もりを取る前に、次のものを見ておくと、そもそも頼む必要があるのかが判断しやすくなります。
- 買主(または仲介会社)が、なぜ地積更正登記を求めているのか。融資の条件なのか、実測で精算したいのか、分筆するからなのか。理由によっては、登記簿の面積のままで足りることがあります
- 法務局に地積測量図があるか。自分の土地と隣地の分を取ります。作成された年と、座標が入っているかどうかを見ます
- 隣接地が何筆あるか、所有者と連絡がつくか。公図で数えられます。道路や水路に接していれば、役所との境界確認も加わります
- 固定資産税の課税明細に載っている地積と評価額。測量と登記の費用が、土地の評価額に対してどのくらいの重さになるかの目安になります
この4つを並べてみて、費用のほうが重いと感じたら、測る前に一度ご相談ください。お金をかけて面積を直すことと、土地を手放せることは、別の問題です。
税額や登記の個別の判断については、税理士・司法書士・土地家屋調査士へご確認ください。
よくある質問
地積更正登記の費用はいくらくらいですか。
日本土地家屋調査士会連合会の令和4年度の調査では、全国の中央値が372,584円、平均値が390,316円です。ただしこれは市街地の宅地180㎡・隣接地6筆という条件での回答額です。隣接地が多い土地、広い土地、山林や農地では条件が変わるため、個別に見積もりを取ってください。登記そのものに登録免許税はかかりません。
土地を売るとき、地積更正登記は必ずしなければなりませんか。
法律上、売却の条件にはなっていません。不動産登記法は地積が変わったときの変更登記に1か月以内の申請期限を置いていますが、もともとの記録の誤りを直す更正登記には、そうした期限の定めがありません。要るかどうかは、買主が実測面積での取引や登記の修正を求めるかどうかで決まります。
地積更正登記の費用は売主と買主のどちらが払いますか。
法律で決まっているわけではなく、売買契約で決めます。一般の取引では、売主が境界を明示する約束の一部として売主が負担する形が多く見られます。費用が土地の価格に見合わない場合は、登記簿の面積のまま取引する方法を先に検討する価値があります。
隣の土地の所有者が分からなくても地積更正登記はできますか。
できる場合があります。法務省は令和4年4月14日付の通達で、現地を復元できる地図や地積測量図が法務局にあるときは、隣地所有者との筆界確認の書面を原則として求めない扱いを示しました。使えるかどうかは法務局にある図面の精度によるので、土地家屋調査士か管轄の法務局に確認してください。
測量も地積更正登記もせずに、土地を手放すことはできますか。
登記簿の面積のまま取引する方法(公簿売買)なら可能です。当社は現況のままを前提にしており、測量や地積更正登記を売主の方にお願いしていません。ただし条件によってはお引き受けできない場合もあり、個別の判断になります。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
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