廃業した作業場に機械が残ったまま、固定資産税の通知だけが毎年届く。工場跡地を売却して手放したいのに、土壌も建物も機械も片付かず、どこから手を付けるかで止まっている。
当社に来る相談で多いのは、「解体費が出せないから動けない」という止まり方です。小さな工場や作業場は、そこに機械と土壌の話が重なります。
工場跡地が、普通に売りにくい理由
住宅と違い、工場跡地は買主が見るところが増えます。何を使っていたか分からなければ、土壌への不安が残ります。古い鉄骨や屋根材、用途に合わせた造りの建物は、そのまま使えるとは限りません。残った機械は、撤去の費用と手間が買主にかかります。
小規模な作業場や町工場の場合、使っていた物質や設備の記録が残っていないことも少なくありません。記録がないと、買主は安全側で見積もるため、条件が厳しくなりやすくなります。
また、住宅用の買主は少なく、同じ業種の事業者が買主になる場面が増えます。買主の層が狭まる点は、店舗付き住宅が売れない理由とも似ています。
土壌の調査が要る場合と、要らない場合
土壌汚染対策法は、どの工場跡地にも調査を義務づけるものではありません。
3条1項が調査と都道府県知事への報告を求めるのは、使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場や事業場の敷地だった土地です。求められる相手は、その施設を設置していた所有者等か、知事から通知を受けた所有者等です(土壌汚染対策法(e-Gov法令検索))。
予定されている土地の利用の方法からみて、健康被害のおそれがない旨の知事の確認を受けたときは、この限りでないとされています(同項ただし書)。
| 場面 | 手続き | 根拠 |
|---|---|---|
| 有害物質使用特定施設の使用を廃止したとき | 調査・報告(ただし書に当たる場合を除く) | 3条1項 |
| 一定規模以上の土地の形質の変更をするとき | 着手の30日前までに届出 | 4条1項 |
| 健康被害のおそれの基準に当たると知事が認めた土地 | 調査・報告の命令 | 5条1項 |
| 自分から調べたいとき | 自主的な調査 | 法の義務ではない(環境白書に自主的な調査の記述がある) |
4条1項の「一定規模以上」は、土壌汚染対策法施行規則22条で原則3,000平方メートルです。
ただし、今も有害物質使用特定施設がある敷地や、使用が廃止された施設の敷地では900平方メートルになります(3条1項の報告をした土地と、ただし書の確認を受けた土地を除く。土壌汚染対策法施行規則第22条(e-Gov法令検索))。
小さな工場跡地でも、900平方メートル以上の範囲で土地の形質を変更するなら、届出の対象になる場合があります。
届出をしただけで調査になるわけではありません。環境省は、施設の使用の廃止時や形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認めるときに調査が行われると説明しています(環境省「令和6年版 環境白書 土壌環境の保全」)。
4条3項も、知事が基準に当たると認めたときに所有者等へ調査を命じる形です。
自分の工場が「有害物質使用特定施設」に当たるかの確かめ方
有害物質使用特定施設は、水質汚濁防止法2条2項の「特定施設」のうち、カドミウムなどの有害物質(特定有害物質に限る)を製造・使用・処理する施設を指します(土壌汚染対策法3条1項)。昔に廃業した工場なら、最初に見るのは時期です。
- いつ使用をやめたかを見る:土壌汚染対策法の施行前に使用を廃止した施設の敷地には、3条を適用しないとされています(同法附則3条)。施行日は平成15年2月15日です(環境省の報道発表資料)。外れるのは3条だけで、4条の届出は別の話です。
- 届出の控えを探す:水質汚濁防止法5条は、特定施設や有害物質使用特定施設を設置しようとする者に、都道府県知事への届出を求めています。使用を廃止したときも、その日から30日以内の届出が要ります(同法10条)。事務所の書類の中に、設置や廃止の届出の控えがないかを探します。
- 環境部局に聞く:控えが見つからない場合は、都道府県(政令市などでは市)の環境部局に、その所在地で届出が出ていたかを問い合わせます。
当たらない場合でも、使っていた物質によっては、買主が調査を条件にすることはあります。当てはめに迷ったら、環境部局か土壌調査の専門家に聞いてください。
調査が済んでいない土地を売るとき
売ったあとに誰が何を求められるかは、施設の経緯や通知の有無で変わります。売る前に環境部局で、調査・報告が済んでいるか、ただし書の確認を受けているかを聞いておきます。
この確認を受けている土地は、調査が一時的に免除されている状態です。土地の権利を譲渡すると、譲り受けた人が所有者等の地位を承継し、遅滞なくその旨を知事に届け出なければなりません(土壌汚染対策法施行規則第16条第4項・第5項)。
その土地で形質を変更するときは事前の届出が要り、届出を受けた知事は調査と報告を命じます(法3条7項・8項)。利用の方法を変えるときも事前の届出が要り、確認が取り消されることがあります(同条5項・6項)。
売主が次にすることは、その事実と書類を買主に渡し、こうした手続きを買主が引き継ぐと契約の前に伝えることです。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
建物と機械の扱い
跡地に残った建物や機械は、手を付ける順番で出ていくお金が変わります。壊せば解体費が、運び出せば撤去と処分の費用が、買主が決まる前に出ていきます。
解体費は空き家の解体費用は何で決まるかで、在庫や原材料、廃材の考え方は残置物の処分費用で整理しています。機械は種類と量、搬出の経路で費用が変わります。
建物を壊す場合は、建材の調査など別の手続きも絡みます。考え方はアスベストが含まれているかもしれない家の売却で整理しました。必要な手続きは、自治体の窓口で聞いてください。
工場だからこそ見ておく、古い電気機器と油・薬品
住宅の片付けと違うのは、捨て方に法律の決まりがあるものが混ざることです。
環境省は、PCBを含有する変圧器・コンデンサ・安定器等の期限内の処理を呼びかけています(環境省 PCB早期処理情報サイト)。
同じサイトでは、低濃度PCB廃棄物の処分期限を令和9年3月31日とし、高濃度のものが新たに見つかったら管轄の自治体へ速やかに報告するよう案内しています。
PCB特別措置法は、PCB廃棄物を保管する事業者に期間内の処分を求め(10条・14条)、環境省令で定める場合のほか、譲り渡すことも譲り受けることも禁じています(17条)。
保管事業者について相続があれば、相続人が地位を承継し、30日以内の届出が要ります(16条。e-Gov法令検索)。
だから、中身の分からない古い電気機器は、捨てる前にも人に譲る前にも、自治体の担当窓口に聞く順番になります。
タンクやドラム缶に残った油や薬品も同じです。廃棄物処理法は、事業活動に伴って生じた廃油、廃酸、廃アルカリなどを産業廃棄物とし(2条4項1号)、事業者に自ら処理するよう求めています(11条1項。e-Gov法令検索)。
自分で動く道と、その限界
自分で動くなら、道は主に3つです。どれも、条件が揃うかで決まります。
| 道 | 内容 | 限界 |
|---|---|---|
| 調査をして、結果を示して売る | 土壌の状態を明らかにして、買主の不安を減らす | 調査の費用が売る前に出て、結果次第で条件が変わる |
| 機械や建物を片付けて、更地で売る | 買主が使いやすい状態にする | 片付けと解体の費用が大きい |
| 仲介で、同業の買主を探す | 設備や建物を使う事業者に売る | 買主が限られ、時間がかかりやすい |
調査で汚染が見つかると、範囲によっては対策の費用が大きくなり、売る計画そのものを見直すことがあります。誰に何を示すための調査かを、頼む前に考えておく必要があります。
売る相手の選び方は、買取と仲介の違いも参考になります。
売るときに伝えること
工場跡地は、使っていた物質や設備を、知っている以上、伝えるのが前提です。現況のまま売る場合でも、同じです。
売買では、売主が知りながら告げなかった事実は、責任を負わない特約をしても免れません(民法572条)。考え方は、現況渡しとはで整理しています。
- どんな施設を、何のために使っていたか
- 使っていた物質(分かる範囲で)
- 設備の図面、届出の控え、廃止の記録
- 建物の増築や改修の履歴

工場だったことだけで、可否は決めません
当社が見るのは、建物の状態と築年数、使っていた設備と残っている機械の量、土地の条件と権利の状況です。
茨城県常陸太田市の取り扱い事例では、市街化調整区域の土地に、事務所・作業場だった未登記のプレハブが残っていました。床面積も建築年も分からず、残置物もありましたが、撤去や測量は求めず、現況のまま当社がお引き受けしました。
土壌の扱いまで同じとは言えません。それでも、作業場が残ったままで話を始められる点は同じです。
機械が残ったままの写真から、話を始められます
機械の処分費を出せない、記録が残っていない、廃業して手が回らない。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。
設備の撤去も、片付けも、解体も、先にしていただく必要はありません。
登記や役所での調べは当社で行います。土壌の調査まで当社で行うとお約束するものではないので、過去の調査結果や届出の控えがあれば、一緒に見せてください。
お引き受けできるかは物件ごとの判断で、条件によっては成立しないこともあります。返事は翌営業日までにお返しします。案内は訳あり物件の買取のページにまとめています。
所在地と、機械が写った写真が1枚あれば、そこから聞いていきます。
よくある質問
機械が残ったままでも相談していいですか。
そのままで構いません。古い変圧器など、中身の分からない機器があれば、そのことも一緒に聞かせてください。
工場をやめた土地は、土を調べないと売れないんですか。
売ることを理由に調査を求める定めは、土壌汚染対策法3条・4条・5条にはありません。3条の調査が求められるのは、使用が廃止された有害物質使用特定施設の敷地で、その施設を設置していた所有者等か、知事から通知を受けた所有者等です。
法の義務がなくても、買主が調査を条件にすることはあります。
親の作業場で、何を使っていたのか記録がありません。
分かる範囲で大丈夫です。届出が出ていたかは、都道府県(政令市などでは市)の環境部局に問い合わせられます。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
「売れない」と言われた不動産を、どうするか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。
資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
どこで断られたかを伺うことはしません。断られた理由の方が、判断に必要です。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

