市街化調整区域の土地は相続放棄できる?土地だけ放棄できない理由

刈り取り前の田とビニールで覆われた小屋、遠くの山並み

親が残した調整区域の土地は、固定資産税の通知が毎年届くだけで、誰も買ってくれない。いっそ相続放棄してしまおうか。そう考え始めた人が、最初にぶつかる壁があります。

市街化調整区域の土地は、相続放棄そのものはできます。ただ、その土地だけを選んで放棄することはできず、一度した放棄は撤回できません(民法919条1項)。

放棄・国庫帰属・寄付・売却の4つを並べた比較は市街化調整区域の土地を相続したときにあります。ここでは、3か月を過ぎかけている人、過ぎてしまった人が、放棄を決める前に見ておくことに絞ります。

目次

調整区域の土地だけを選んで放棄はできない

放棄をすると、その相続について「初めから相続人とならなかったもの」とみなされます(民法939条)。調整区域の土地も、預貯金も、借金も、まとめて受け継がないということです。

相続放棄で選べること・選べないこと
放棄は相続全体の判断。土地だけを外す道は別にある

借金が無く、重荷が土地だけなら、相続してから売却や国庫帰属で手放すほうが、預貯金を失わずに済みます。所有権だけを手放す方法を探しているなら土地の所有権の放棄も読んでおいてください。

3か月は、いつから数えるのか

期限は、自分が相続人になったと知った時から3か月です(民法915条1項)。何もせず過ぎれば単純承認したものとみなされ(民法921条2号)、期限内でも遺産を売ったり名義を変えたりすれば同じ扱いになります(同条1号)。

数え方の基本は冒頭で挙げた記事に譲り、ここでは決めきれない人と、過ぎてしまった人の話をします。

3か月の数え方と伸長の申立て
迷っているなら、3か月のうちに伸長を申し立てておく

決めきれないなら、3か月のうちに家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます(民法915条1項ただし書)。

申述も伸長の申立ても被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に出し、費用はどちらも相続人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手です(相続の放棄の申述|裁判所、相続の承認又は放棄の期間の伸長|裁判所)。

すでに3か月を過ぎていても、すぐ諦めなくて構いません。最高裁昭和59年4月27日判決(民集38巻6号698頁)は、3か月以内に放棄などをしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためで、そう信じたことに相当な理由がある場合について、こう判断しています。

民法九一五条一項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。

——最高裁判所第二小法廷 昭和59年4月27日判決(昭和57(オ)82)|裁判所

判決の全文を読むと、どんな事情でこの結論になったかが分かります。亡くなった父親は定職に就かず、子どもたちは家を出て、親子の交渉は約10年途絶えていました。父親は生活保護を受けて一人で暮らし、病院で亡くなります。

相続すべきプラスの財産は全く無く、葬儀も行われませんでした。子どもたちは父親が1000万円の借金の連帯保証人になっていたことを知らず、約1年後に裁判所から判決の書類が届いて初めて知り、その2週間ほど後に放棄を申述しています。

最高裁は、こうした事情で「相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情」があり、財産が無いと信じたことに相当な理由がある、と判断しました。

調整区域の土地に当てはめるときは、三つの点に気をつけてください。

一つ目は、前提が「財産が全く存在しないと信じた」ことです。親に預金や自宅があると知っていて、調整区域の土地だけ知らなかった場合は、判決の事案と事情が違います。

二つ目は、判決が「被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況」を見て、調査を期待するのが著しく困難だったかを問うていることです。親と行き来があり、毎年の固定資産税の通知が実家に届いていたなら、調べれば分かったと見られやすくなります。

三つ目は、数え始めが実際に「認識した時」だけでなく「通常これを認識しうべかりし時」も含むことです。あとから気づいたというだけで、気づいた日から数えてもらえるとは限りません。この判決には、こうした例外を認めること自体に反対する裁判官の意見も付いています。

当てはまるかは個別の判断になるので、過ぎてしまった人は、いつ何を知ったかを日付と一緒に書き出してから、弁護士に相談してください。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

放棄しても残るもの

放棄すれば土地から手が離れる、とは限りません。2023年4月に改正された民法940条は、こう定めています。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

——民法第940条第1項(e-Gov法令検索)

放棄の時に土地や建物を現に占有していたなら、引き渡すまで保存する義務が残ります。反対に、放棄の時に現に占有していなければ、940条の保存義務は生じません。

遠方に住んで土地に関わっていなかった人は多くがこちらですが、鍵を預かって管理していたなど、占有に当たるかは事情によります。相続人が全員放棄すると、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てないと、引き渡す相手がいません。

自分が放棄すると相続は次の順位の親族に回るので、放棄するなら伝えておくのが現実的です(順位の回り方は市街化調整区域の土地を相続したときにあります)。

管理義務の範囲や、全員放棄のあとの清算人の手続きは相続放棄と不動産の管理義務、空き家が建っているなら相続放棄と空き家の管理義務にあります。

放棄する前に、本当に売れない土地かを見る

調整区域の土地が、みな同じように売れないわけではありません。原則として建てられない地域の中にも、建てられる土地、買い手がつく土地が混じっています。放棄は撤回できないので、決める前に調べる価値があります。

見るのは五つです。都市計画法34条の許可が使えるか(34条11号の区域指定)。線引き前から宅地だった「既存宅地」として扱われてきたか(調整区域で断られたときに見ておくこと)。

建物が分家住宅など人に紐づく許可か、属人性があると第三者が住めるかが変わります(市街化調整区域の売却)。地目が農地のままか、農地なら農地法の許可も関わります(市街化調整区域の農地を相続したとき)。

最後に建物の状態と築年数(市街化調整区域の空き家)。

3か月のうちに役所で聞くこと

34条の区域指定と既存宅地の扱いは、土地のある市町村の窓口で聞けば手がかりが得られます。窓口は自治体によって、都市計画課・開発指導課・建築指導課などです。代表電話で「市街化調整区域の土地の開発許可について聞きたい」と言えば、つないでもらえます。

持っていくのは、地番が分かるもの(固定資産税の納税通知書や課税明細書。住居表示ではなく地番で区域を調べるためで、親宛ての郵便物か市町村の税務課で手に入ります)、土地の登記事項証明書(地目と、地目が宅地になった登記の日付を見る。

法務局か登記情報提供サービス)、位置が分かる地図です。

窓口では、次を聞いてください。

  1. この地番は市街化調整区域か。線引きの日(調整区域に区分された日)はいつか
  2. この地番は、都市計画法34条11号・12号に基づく条例の区域や条件に当たるか
  3. 線引き前から宅地だった土地として扱う基準があるか。あるなら、どの書類で示すか
  4. 今の建物は、どの許可で建てられたか。第三者が住む場合に用途変更の許可が要るか
  5. 地目が田・畑の部分があるなら、農業委員会にも聞く必要があるか

1の線引きの日は、3の「線引き前から宅地だったか」を判断する基準日になります。登記事項証明書で地目が宅地に変わった日付と見比べられるよう、日付をそのまま書き留めてください。

2で区域に当たると言われたら、どの条例の、いつ時点の区域図で確かめたかも控えておきます。区域は見直されることがあるためです。4は、建物が特定の人や用途に限った許可で建っていると、相続人や買い手が住むのに別の許可が要ることがあるので聞きます。

窓口で「調べないと分からない」と言われたら、回答の目安の日を聞いてください。3か月の期限日から逆算して、伸長を申し立てるかを決める材料になります。

34条11号は、市街化区域に隣接・近接し、おおむね50以上の建築物が連なる地域のうち、都道府県等の条例で指定した区域で、条例で定める支障のある用途に当たらない建物が認められる仕組みです。

12号は、市街化を促進するおそれがなく市街化区域で行うのが困難・不適当な開発を、条例で区域・目的・用途を限って認める仕組みです(都市計画法34条(e-Gov法令検索))。どちらも条例の中身は自治体ごとなので、地番で聞くのがいちばん早い。

既存宅地の確認は、旧都市計画法43条にあった制度です。平成12年の都市計画法改正(平成12年法律第73号)で廃止され、平成13年5月18日からは新たに確認を受けられません(福岡市 既存宅地制度について)。

ただ、線引き前から宅地だった土地を独自の基準で扱う自治体があり、呼び名も手続きも違います。書類の見方は線引き前宅地の証明の取り方に書きました。

開発許可を受けて造成された土地なら、許可の内容は開発登録簿に載っています。登録簿は都道府県知事が公衆の閲覧に供し、請求があれば写しを交付するものとされています(都市計画法47条1項・5項)。

役所に聞く、登記事項証明書を取る、登録簿を閲覧する。こうした調べものは、相続財産を動かす行為ではありません。反対に、売買契約を結ぶ、名義を変える、建物を取り壊すは、処分として単純承認とみなされるおそれがあります(民法921条1号)。

解体や売買の話が出たら、その時点で司法書士か弁護士に聞いてください。

仲介の会社に「調整区域なので扱えない」と言われただけで、まだ誰にも土地を見てもらっていない。親の代に家を建てた経緯(許可の種類)が分からない。借金は無く、困っているのは土地の管理と税金だけ。

ひとつでも当てはまるなら、放棄を決める前に出口を調べる余地があります。相場の考え方は市街化調整区域の相場、断られた経験があるなら市街化調整区域で買取を断られたときが参考になります。

放棄しない場合の出口

借金が無く、問題が調整区域の土地だけなら、相続して手放す道が残ります。相続人ご自身が調整区域の家に住んでいて住み替えたいなら市街化調整区域の家からの住み替え、農用地区域内の農地なら農振除外ができない農地の手放し方です。

出口向いている土地気をつける点
売却・買取建物付き、農地、境界が不明な土地も相談できる物件ごとに個別に見る。相続人全員の合意が前提
相続土地国庫帰属制度建物が無く、管理の手間がかからない更地建物があると申請できない。法務大臣の承認が要る
自治体への寄付道路予定地など行政が使う土地使う予定の無い土地は受け取られないことが多い
隣地の所有者へ譲る隣地とつながると使い道が出る土地相手との交渉は自分で行う

相続したら、取得を知った日から3年以内の相続登記の義務があります(相続登記の義務化と期限)。登記を先延ばしにするうちに次の相続が起きると、数次相続で関わる人が増えます。間に合わないときは相続人申告登記で義務を果たす方法もあります。

動く順番は、相続人になったと知った日を書き出して3か月の期限日を割り出す、預貯金・借金・不動産を一覧にする、納税通知書の地番を控えて窓口で区域を聞く、決めきれなければ期限内に伸長を申し立てる、です。

調整区域のまま、相続した土地を渡せるか

当社は、市街化調整区域であることだけを理由に、取り扱いの対象外とはしていません。34条の許可や既存宅地かどうか、分家住宅の属人性などの調査は当社で行います。 売主の方に調べていただく必要はなく、片付け・解体・測量をせず、現況のままで相談できます。

調整区域で、未登記のプレハブや残置物が残り、境界も示されていない広い土地を、片付けも測量も求めずに現況のまま引き受けた例があります(茨城県常陸太田市。取り扱い事例の一覧に載せています)。

「家が建たない」で話が終わりがちな土地でも、使われてきた実態が判断の材料になります。

他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。引き受けられるかどうかは、物件を見て、契約の前にお伝えします。相続人の合意がまとまっていないときは、話を進められません。

最初の返事は翌営業日までを目安にしています。遠方で現地に行けなくても、契約から決済まで進められます。

税務・法務の個別の判断は、税理士・司法書士・弁護士にご確認ください。

よくある質問

3か月を過ぎてしまいました。もう放棄できませんか。

原則として、3か月以内に放棄や限定承認をしなければ単純承認したものとみなされます(民法921条2号)。

ただ、最高裁昭和59年4月27日判決は、相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合には、3か月を「相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時」から数えるのが相当としています。

当てはまるかは、親との行き来や財産を知り得たかといった個々の事情で判断されます。

遠方で、調整区域の土地には関わっていません。放棄したあとも保存の義務は残りますか。

民法940条の保存義務は、放棄の時に相続財産を「現に占有」していた人にかかります。放棄の時に現に占有していなければ、この義務は生じません。鍵を預かって管理していたなど、占有に当たるかは事情によります。

放棄するか迷っている間に、土地の査定を頼んでもいいですか。

売れるかどうかを調べるだけなら、財産を動かすことにはなりません。売買契約を結ぶ、名義を変えるといった行為は、単純承認とみなされるおそれがあるので、放棄を決める前にはしないでください(民法921条1号)。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

このような物件のご相談は、市街化調整区域の買取相談のページへ。

建て替えできるか分からないまま、決めないでください

どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。

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資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。

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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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