数次相続で未分割のままになっている不動産も、売却はできます。ただし順番があり、いまの相続人まで名義をつなぐ相続登記と、その相続人全員の合意という2つが先に必要です。この記事では、誰までが相続人になるのか、登記を1件にまとめられる条件、合意が取れないときに残る出口を整理します。
ご相談で多いのは「いくらで売れるか」よりも「名義がぐちゃぐちゃで、そもそも動かせるのか」という段階での行き詰まりです。費用を先に負担せずに進められるかどうかも含めて見ていきます。
数次相続とは、遺産分割が終わらないうちに次の相続が起きた状態
数次相続(すうじそうぞく)=ある方が亡くなって相続が始まったあと、遺産分割が終わらないうちに、その相続人の1人も亡くなって次の相続が重なった状態のことです。「祖父名義のままの土地」「父が相続するはずだった実家」という形で表に出てきます。
よく混同されるのが代襲相続です。どちらも世代をまたぎますが、誰が相続人になるかが変わるため、集める書類も、合意を取る相手も違ってきます。
| 数次相続 | 代襲相続 | |
|---|---|---|
| いつ亡くなったか | 最初の相続が始まったあとに相続人が亡くなった | 最初の相続が始まる前に相続人が亡くなっていた |
| 誰が相続人になるか | 亡くなった相続人の相続人全員(配偶者・子など) | 亡くなった方の子(孫)が代わりに相続する |
| 亡くなった相続人の配偶者 | 相続人に含まれる | 含まれない |
| 遺産分割協議 | 重なった相続それぞれについて必要 | 最初の相続について1回 |
数次相続では、亡くなった相続人の配偶者も相続人に加わる点が効いてきます。血縁の遠い義理の関係まで話を通す必要が出てくるため、時間が経つほど連絡そのものが難しくなります。
未分割のまま置くと、増えていくもの
「急がなくても土地は逃げない」と考えて置いたままにしている方は少なくありません。ただ、放置している間に増えるものが4つあります。

相続開始から10年で、分け方の物差しが変わる
令和5年4月1日に施行された民法904条の3により、相続開始の時から10年を過ぎた後の遺産分割では、特別受益や寄与分の規定が適用されなくなりました。「長年ひとりで親の面倒を見た」「兄だけが生前に住宅資金をもらった」といった事情を分け方に反映させることができなくなり、法定相続分が基準になります。
施行日より前に始まっていた相続にも適用されますが、経過措置があり、相続開始から10年を経過する時と令和10年3月31日のいずれか遅い日が基準になります。期間内に家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合や、相続人全員が同意した場合は例外とされています。適用の判断は弁護士へご確認ください。
相続登記には申請の期限がある
令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請することとされ、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(法務省 相続登記の申請義務化について)。
施行日より前に始まった相続も対象です。
祖父母の代から名義が動いていない不動産も義務の対象で、令和9年3月31日までに申請する必要があります(不動産を相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降であれば、その日から3年以内)。「昔の相続だから関係ない」とは言えなくなりました。
遺産分割がすぐにまとまりそうにない場合は、相続人申告登記という選択肢があります。登記簿上の所有者に相続が開始したことと、自分がその相続人であることを登記官に申し出る手続きで、申出をすれば申請義務を履行したものとみなされます。ただしこれは名義を移す登記ではないため、申告しただけでは売却はできません。
固定資産税と管理の負担は止まらない
名義が亡くなった方のままでも、固定資産税の課税は続きます。実際には相続人の誰か1人に納税通知書が届き、その人が立て替え続けている状態になりがちです。建物があれば草木や屋根の傷みも進み、相続した空き家としての管理の手間も増えていきます。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
売却までの順番は、4つに整理できる

1. いま誰が相続人かを確定する
亡くなった方それぞれについて、出生から亡くなるまでの戸籍をたどります。数次相続では対象となる被相続人が複数いるため、集める戸籍の通数が一気に増えます。転籍が多い家系では、複数の市区町村に請求することになります。
なお、令和6年3月1日から戸籍の広域交付が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも、まとめて戸籍証明書を請求できるようになりました。ただし請求できる人の範囲や、コンピュータ化されていない一部の戸籍など、対象外となるものもあります。
2. 誰が取得するかを話し合う
遺産分割協議は、いまの相続人全員の合意で成立します。1人でも欠けると無効です。数次相続では、最初の相続と、その後に起きた相続の両方について取り決めが必要になります。
数次相続の遺産分割協議書では、亡くなった相続人を「相続人兼被相続人」という肩書きで書き分けるのが一般的です。誰の相続についての合意なのかを、書面の上ではっきりさせるためです。書き方は司法書士へご確認ください。
3. 名義をいまの相続人までつなぐ
原則として、権利が動いた順に登記します。ただし条件を満たせば、中間の登記を省略して1件にまとめられる場合があります(次の節で説明します)。
4. 売却・買取に進む
名義が整えば、あとは通常の売買と同じです。相続登記と売買による所有権移転登記をまとめて申請する形も実務で行われているため、登記を全部終えてから買い手を探さなければならない、というわけではありません。段取りは司法書士と買主側で調整します。
登記を1件にまとめられる条件(中間省略)
数次相続では、登記の回数がそのまま登録免許税と司法書士報酬に跳ね返ります。そこで実務上重視されるのが、中間の相続を省略して、最初の被相続人から現在の相続人へ直接移す登記ができるかどうかです。
これは「中間の相続が単独相続だったといえるか」で決まります。次のいずれかに当てはまれば、中間を1件にまとめられる場合があります。
- 中間の相続人が、もともと1人しかいなかった
- 中間の相続人が複数いたが、遺産分割協議でそのうち1人が単独で取得した
- 中間の相続人のうち、他の人が相続放棄をした
- 他の相続人が相続分を超える特別受益を受けていて、取り分がなかった
中間が共有になる場合は省略できません。
たとえば「祖父の土地を父と叔父の2人で相続し、その後に父が亡くなった」という形では、中間の権利が2人の共有になっているため、順に登記することになります。省略できるかどうかの判断は、集めた戸籍と協議の中身を見ないと決まりません。司法書士へご確認ください。
合意が取れない、連絡が取れないときの出口
数次相続で止まっている案件の多くは、書類ではなく人で止まっています。状況ごとに取りうる手を整理します。
| 状況 | 取りうる手 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一部の相続人が反対している | 家庭裁判所の遺産分割調停・審判 | 結論まで時間がかかる |
| 住所が分からない | 戸籍の附票で現住所をたどる | 通知しても返事が来ないことがある |
| 所在も生死も分からない | 不在者財産管理人の選任を申し立てる | 家裁の手続きと予納金が必要 |
| 生死不明が7年以上続いている | 失踪宣告を申し立てる | 手続きに相当の期間がかかる |
| 相続人が海外にいる | 署名証明・在留証明を取り寄せる | 現地の在外公館での手続きが要る |
| 全員の合意が見込めない | 自分の共有持分だけを処分する | 価格は下がりやすい |
相続人が国外にいる場合の書類の集め方は、相続人が海外にいる不動産の売却で詳しく書いています。兄弟間で話がまとまらない場合の考え方は共同相続した不動産の売却が近い内容です。
どうしても全員が揃わないときに残るのが、自分の持分だけを売るという道です。共有持分の処分に他の相続人の同意は要りません。ただし、買主は不動産全体を自由に使えないため、持分単独の価格は全体の価値を持分割合で割った額より低くなるのが通常です。詳しくは共有持分だけ売れる?をご覧ください。
- 全員に連絡が取れないまま、何年も固定資産税だけ払い続ける
- 「相続放棄すれば関係なくなる」と考えて、管理の問題を確かめずに決める
- 更地にすれば売れると言われ、先に解体費を自己負担してしまう
相続放棄については、放棄をしても状況によっては管理の責任が残る場合があります。相続放棄しても家の管理義務は残る?も併せてご確認ください。また、未分割の状態では相続土地国庫帰属制度の申請も共有者全員で行う必要があり、合意の問題は同じように立ちはだかります。
査定のときに実際に見ているところ
数次相続の物件は、権利の複雑さに目が行きがちですが、値が付くかどうかを分けているのは物件そのものの中身です。当社が確認しているのは次の点です。
- 登記簿上の名義が誰のままか、抵当権など古い権利が残っていないか
- 現在の相続人が何人になっているか、連絡が取れる状態か
- 建物の状態と築年数(そのまま使えるか、傷みがどこまで進んでいるか)
- 農地や山林が一緒に含まれていないか(農地は許可の要否が別に絡みます)
- 建物が未登記建物になっていないか
- 再建築ができる土地かどうか、都市計画上の区域はどこか
再建築不可であることや市街化調整区域にあることだけを理由に、査定や取扱いの対象外とすることはしていません。登記の状況や現地の確認は当社で行いますので、売主の方が先に測量したり、権利関係を調べたりしていただく必要はありません。
長く放置された家には家財がそのまま残っていることが多いのですが、片付け・解体・測量をしないままの状態でご相談いただけます。空き家の解体費用を先に用意できずに止まっている、という状態でも同じです。
費用を先に負担せずに手放せるか
数次相続で止まっている不動産は、時間そのものがコストになるという点が他の訳あり物件と違います。相続人は増える方向にしか動かず、10年の期間制限と登記の申請期限も進みます。
先に確認しておくと判断しやすいこと
- いまの時点で相続人が何人いるか(戸籍を取り始める前でも、家系の見当はつきます)
- その不動産に、そもそも値が付くのか
- 名義を整える費用(登録免許税・司法書士報酬)を、売却代金の中から出せるか
3つ目が実務では大きな分かれ目になります。手続きの費用を先に持ち出しできないために動けない、という状態が長引きやすいためです。売買代金から精算する形が取れるかどうかは、値が付くかどうかで決まります。順番としては、戸籍を全部集める前に、値が付くかどうかを先に確かめるほうが判断しやすくなります。
当社は現況のままでお話をうかがい、対応地域は全国です。ただし、すべての物件をお引き受けできるわけではありません。相続人の間で合意が成立していない場合、ご希望額と開きがある場合、費用のご負担にご同意いただけない場合など、条件によっては成立しないこともあります。
遠方の実家の売却のように現地に来られない状態や、実家じまいを何から始めるか決めかねている段階でもご相談いただけます。当社の取り扱いは訳あり不動産の買取にまとめています。
戸籍の収集・遺産分割協議書の作成・相続登記は司法書士、相続税や譲渡所得の判断は税理士、相続人の間で争いがある場合は弁護士の領域になります。どこに何を頼めばよいか分からない段階でも、まずは物件に値が付くかどうかからお答えできます。
よくある質問
数次相続で未分割のままの不動産は、そのまま売れますか?
登記の名義が亡くなった方のままでは、そのままでは売れません。売買による所有権移転登記の前に、現在の相続人まで名義をつなぐ相続登記が必要になるためです。ただし、相続登記と売買の登記をまとめて同じ日に申請する形は実務で行われているため、先に登記だけ済ませてから買い手を探さなければならない、というわけではありません。段取りは司法書士へご確認ください。
相続人が何十人にもなっていますが、全員の合意が必要ですか?
不動産全体を1人が取得する形で遺産分割協議をまとめるには、現在の相続人全員の合意が必要です。1人でも欠けると協議は成立しません。ただし、自分の法定相続分にあたる共有持分だけを処分するのであれば、他の相続人の同意は要りません。全員の合意が見込めない場合は、この道が残ります。
祖父の代の相続を放置していました。相続登記の義務違反になりますか?
令和6年4月1日より前に開始した相続も義務化の対象で、令和9年3月31日までに申請する必要があります(不動産を相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降の場合は、その日から3年以内)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象とされています。すぐに遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記で申請義務を履行したものとみなされる仕組みがあります。
何十年も前の相続なので、書類も権利証も残っていません。相談できますか?
ご相談いただけます。登記の状況や現地の確認は当社で行いますので、売主の方が先に調べておく必要はありません。物件の所在地が分かればお答えできます。ただし、相続人の間で合意が成立していない場合など、条件によってはお引き受けできないこともあります。
遠方に住んでいて現地に行けません。手続きは進められますか?
現地に行かないまま進められる場合が多く、対応地域は全国です。相続人が国内外に散らばっている場合は、必要な書類の集め方が変わるため、早めに司法書士へ確認しておくと予定が立てやすくなります。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

