相続人が後から出てきた|連絡を取って売却まで進めた話

ガードレール沿いの道と水の枯れた沢

相続した実家を売ろうとして戸籍を集めていたら、知らない相続人が一人いた——。この段階で手続きが止まってしまう方は少なくありません。話し合いに加わってもらわなければ遺産分割協議が成立せず、相続登記もできず、売ることもできないからです。この記事では、千葉県で実際にあった案件をもとに、その方にどう連絡を取り、何を伝えて、相続登記から売買まで進めたのかを順を追って書きます。

目次

一人でも欠けていると、話し合いは成立しない

これは制度上そうなっています。

第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

——民法第898条(e-Gov法令検索)

相続財産は相続人全員の共有です。そして遺産分割の協議は「共同相続人は……その協議で」(民法907条1項)と定められています。つまり、一人でも欠けた協議は効力を持ちません。

すでに協議書を作り、実印を押し、印鑑証明も添えていた場合でも同じです。
後から相続人が判明すれば、その協議は最初からやり直しになります。
書類も全員ぶん取り直しです。ここが精神的にいちばんこたえるところです。

相続人が一人増えると、手続きはどこまで戻るか
判明した時期によって、戻る地点が変わる

なお、ひとつだけ扱いが違う場合があります。相続が始まった後の認知で相続人になった方は、他の相続人が既に分割を済ませていれば、やり直しではなく価額の支払いを請求できるにとどまります(民法910条)。

なぜ、後から出てくるのか

理由はだいたい決まっています。

よくある形気づきにくい理由
被相続人の前の結婚で生まれたお子さん家族の間で話題に出ていないことがある
認知されたお子さん戸籍をたどらないと分からない
先に亡くなった兄弟姉妹のお子さん(代襲相続)交流が途絶えていて存在を知らない
何十年も音信不通の兄弟姉妹住所が分からず、いないものとして進めてしまう

共通しているのは、出生から死亡までの戸籍を全部そろえないと分からないということです。戸籍集めを省略して先に協議を進めると、後で必ず戻ることになります。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

千葉県の案件で、実際にあったこと

千葉県の不動産のご相談でした。ご依頼者が手続きを進めていたところ、戸籍をたどる過程で相続人がもう一人いることが分かりました。 交流はなく、ご依頼者にとっては初めて知る存在です。

この時点で手続きは完全に止まりました。その方の協力がなければ、遺産分割協議も相続登記も、そして売買もできません。

当社はまずその方に連絡を取りました。突然の連絡になるので、何を伝えるかがすべてです。

連絡するときに、何を伝えたか

ここがこの案件のいちばん大事なところなので、少し丁寧に書きます。

「協力してほしい」だけでは、動いていただけません。 その方にとっては、何の前触れもなく知らない不動産の話が来たわけで、警戒されるのが当然です。かといって、都合のいいことだけを並べれば、後で不信につながります。

当社が伝えたのは、その不動産を相続した場合、これから何が発生し続けるのかでした。

  • 固定資産税が、使っていなくても毎年かかること
  • 草刈りや管理の手間が、遠方にいても続くこと
  • 建物が傷めば、いずれ解体の費用がかかりうること
  • 現状では、その負担に見合う値段で売れる見込みが立ちにくいこと

この不動産を持つことは、資産を受け取ることではなく、負担を引き受けることになる——それを、事実として、正確にお伝えしました。

「価値がないから放棄してください」と言ったのではありません。
判断に必要な情報を、良い面も悪い面も含めてそろえてお渡しした、ということです。
相手が自分で判断できる状態にすることが、結果としていちばん早い。

事情を理解していただけたことで、その方は手続きに協力してくださいました。遺産分割協議が成立し、相続登記が完了し、売買まで進めることができました。

すべての案件がこう進むわけではありません。連絡が取れない、協力が得られない、
話し合いがまとまらない——どれも実際に起こります。次の節がその場合の道です。

連絡が取れない・協力が得られないとき

  • 住所が分からないだけ……戸籍の附票をたどれば現住所が分かることが多い
  • 所在が本当に分からない……民法25条により、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる
  • 連絡は取れるが話がまとまらない……民法907条2項により、家庭裁判所に分割を請求する

いずれも時間はかかりますが、止まったままにしておくよりは動きます。 放置している間に次の相続が起きると、関わる方の人数がさらに増えます。

相続登記には期限があります

2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

——不動産登記法第76条の2第1項

正当な理由なく怠ると、同法164条1項により10万円以下の過料の対象です。

話し合いがまとまらず期限に間に合いそうにないときの逃げ道もあります。 同法76条の3相続人申告登記です。「自分はこの登記名義人の相続人です」と登記官に申し出ておけば、いったん義務を果たしたものとみなされます(同条2項)。分割がまとまった後に、あらためて3年以内に登記すればよいという仕組みです。

進め方の順番

  1. 出生から死亡までの戸籍をすべてそろえる(ここを省略しない。後で必ず戻る)
  2. 相続人が確定したら、全員の連絡先を押さえる(分からなければ戸籍の附票)
  3. 期限が近ければ、先に相続人申告登記をして義務だけ外す
  4. 連絡し、判断に必要な情報を良い面も悪い面もそろえて渡す
  5. 協議 → 相続登記 → 売却、の順に進める

当社は訳あり不動産を現況のまま買い取っています。相続の手続きが途中でも、ご相談は承ります。 むしろ止まっている段階でお声がけいただいたほうが、順番を組み立てられるぶん早く終わることが多いです。

ただし、すべての不動産を引き受けられるわけではありません。まず所在地と、いまどこで止まっているのかをお知らせいただければ、調べたうえでお答えします。

相続した不動産そのものの進め方は相続した空き家の売却に、実家全体の整理は実家じまいの進め方にまとめています。話し合いがまとまらず持分だけが問題になっている場合は共有持分の売却もご覧ください。

よくある質問

相続人が一人でも欠けた遺産分割協議は、どうなりますか。

効力を持ちません。民法898条により相続財産は相続人全員の共有で、907条1項の協議も共同相続人によるものとされているためです。後から相続人が判明した場合、それまでの協議はやり直しになります。印鑑証明や遺産分割協議書も取り直しです。

どうして相続人が後から出てくるのですか。

被相続人の前の結婚で生まれたお子さん、認知されたお子さん、先に亡くなった兄弟姉妹のお子さん(代襲相続)などです。ご家族が把握していないことは珍しくありません。出生から死亡までの戸籍をすべてたどって初めて分かるため、戸籍集めを省略すると後で発覚します。

連絡が取れない相続人がいる場合はどうすればいいですか。

住所が分からないだけなら、戸籍の附票をたどれば現住所が分かることが多いです。所在が本当に分からない場合は、民法25条により家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。連絡は取れるが話し合いがまとまらない場合は、民法907条2項により家庭裁判所に分割を請求できます。

相続登記をしないまま放置するとどうなりますか。

不動産登記法76条の2により、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内の登記申請が義務です。正当な理由なく怠ると、同法164条1項により10万円以下の過料の対象になります。話し合いがまとまらず期限に間に合わないときは、76条の3の相続人申告登記をしておけば、いったん義務を果たしたものとみなされます。

相続手続きの途中でも相談できますか。

できます。むしろ途中の段階でご相談いただいたほうが、順番を組み立てられるぶん早く終わることが多いです。相続人の確定、連絡、登記のどこで止まっているのかを伺えば、次に何をすればよいかをお伝えします。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷再建築不可市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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