縄伸び・縄縮みのある土地は売れる?測量なしで手放す方法

道路脇に続くコンクリート側溝と岩の擁壁

縄伸び・縄縮みとは、登記簿に書かれた土地の面積と、実際に測った面積がずれている状態のことです。ずれていても土地を売ることはできます。測量して登記簿を実測に合わせてから売る道と、測らずに現況のまま手放す道の両方があり、測量費を先に負担できるかどうかで選び方が変わります。

この記事では、なぜ100年以上もずれたままなのか、そのずれが相続税・売買・固定資産税のどこで表に出るのか、そして先に費用をかけずに手放す方法があるのかを順に整理します。

目次

縄伸び・縄縮みとは、登記簿と実測がずれている状態

縄伸びと縄縮みの違いを示した図解
登記簿の地積と実測面積のずれ方は2方向ある

言葉の意味は単純です。

  • 縄伸び — 実際に測った面積が、登記簿の地積より広い
  • 縄縮み — 実際に測った面積が、登記簿の地積より狭い

地積(ちせき)とは、登記簿に記録されている土地の面積のことです。売買の広告や固定資産税の通知書に出てくる面積も、多くはこの登記簿の数字です。

「縄」という言葉が付くのは、かつて土地を縄で測っていたことに由来します。縄はぴんと張れば長くなり、たるめば短くなるため、測る人によって面積が変わりました。

どちらが多いかは土地によります。ただ、山林や農地、古い集落の宅地では縄伸びのほうが目立つ傾向があるといわれます。税を軽くするために小さめに申告した土地が多かった、という説明がよくされます。

なぜ100年以上、ずれたままになっているのか

登記簿の地積は、誰かが直す手続きをしない限り、いつまでも当時の数字のまま残ります。ここが理解の中心です。

現在の登記簿の地積の多くは、明治時代の地租改正のときに測られた数字が引き継がれたものです。当時は測量の担い手が足りず、地域の住民が自分たちで測った土地も多くありました。器械の精度も測り方も、いまとは比べものになりません。

図面のほうも同じ事情を抱えています。法務局で取れる公図の多くは「地図に準ずる図面」(不動産登記法14条4項)と呼ばれるもので、法務局自身が「現地を復元するほどの精度と正確性は有していない」と説明しています。

公図で形が合っているように見えても、それは現地の位置を保証するものではありません。公図だけを根拠に「うちの土地はここまで」と隣地に主張すると、話がこじれることがあります。

つまり、ずれは誰かの落ち度で生じたものではなく、制度がそう出来上がっているということです。放置してきたから悪いという話ではありません。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

ずれが表に出るのは、主に3つの場面

普段は誰も気づきません。次のどれかに当たったときに、初めて問題として現れます。

場面何が起きるか
相続税の申告評価は課税時期の実際の面積によるとされている(財産評価基本通達8)。登記簿だけで試算した額と食い違うことがある
売買の交渉買主側の調査や測量でずれが判明し、価格や引き渡し条件のやり直しになる。決済の直前に出ると影響が大きい
固定資産税課税に使われる地積は原則として登記簿の数字。登記を直すと、その後の税額が変わる可能性がある

相続税だけは、登記簿ではなく実際の面積で見るという点が見落とされがちです。縄伸びが大きい土地では、登記簿を見て安心していた額より申告額が増えることがあります。実際の扱いは税理士へご確認ください。

固定資産税は逆で、原則として登記簿の地積が課税の基礎になります。縄伸びしている土地は、実際より狭い面積で課税されている状態が続いていることになります。反映の時期や運用は自治体ごとに異なるため、課税明細書の地積と登記簿の地積を並べて見比べてみてください。

直してから売るか、直さずに売るか

ずれが分かったあとに選べる2つの道を示した図解
測量は「必ず先にやること」ではなく、選択肢のひとつ

ずれに気づいたとき、多くの方が「まず測量しなければ」と考えます。ただ、それが唯一の道というわけではありません。

道A:境界確定測量と地積更正登記

登記簿の地積を実測に合わせる登記を地積更正登記といいます。土地家屋調査士に依頼し、隣接地の所有者全員の立会いと署名をもらったうえで申請します。

内容
依頼先土地家屋調査士
必要なもの隣接地の所有者全員の立会いと署名。道路・水路に接していれば市町村との境界確認も
費用の目安数十万円。隣地の数・土地の形・官民境界の有無で幅が大きい
費用を出す人原則として売主(先払い)
期間隣地との調整次第。数か月かかることもある

金額に幅を持たせているのは、土地の条件で本当に変わるからです。隣接地が2〜3筆の整形な宅地と、隣接地が十数筆ある山林とでは、作業量がまるで違います。

  • 隣接地の所有者が行方不明、または相続登記が済んでいない
  • 隣地の方が高齢・遠方で、立会いに応じてもらえない
  • 隣地の所有者が代替わりして、昔の経緯を知る人がいない

上のような状態だと、費用を払っても測量が完了しないことがあります。ここで止まっているというご相談は少なくありません。

道B:測らずに、登記簿の面積のまま取引する

登記簿の地積をそのまま面積として売買することを、実務では公簿売買と呼びます。あとから実測してずれが出ても、代金を精算しない取り決めにするのが一般的です。

公簿売買なら、測量費を先に出さずに手放せる可能性があります。そのかわり、面積のリスクを引き受けられる買主が相手でなければ成立しません。

住宅ローンを使う一般の買主が相手の場合、金融機関が実測図を求めることがあり、結局は測量が前提になりがちです。測量なしで進められるかどうかは、誰に売るかで決まります。

隣地と話がつかないときの筆界特定制度

境界でもめて測量が止まっている場合、法務局の筆界特定制度という手続きがあります。土地の所有者などの申請にもとづき、筆界特定登記官が外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における筆界の位置を明らかにする制度です(不動産登記法123条以下)。

新しく境界を決めるのではなく、もともとあった筆界を明らかにするものだという点が特徴です。裁判をしなくても公的な判断が得られるため、隣地との話し合いが行き詰まったときの選択肢になります。

筆界特定は、所有権がどこまで及ぶかを決めるものではありません。 結果に納得できなければ、あとから裁判で争うこともできます。制度の性格を誤解したまま申請すると、期待したものと違う結果になることがあります。

申請には費用と時間がかかります。手続きの詳細と、自分の土地で使えるかどうかは、管轄の法務局または土地家屋調査士・司法書士へご確認ください。

測量をしないまま手放したい、というとき

道路脇に続くコンクリート側溝と岩の擁壁
道路や水路との境が古いままの土地は、境界確認に市町村が関わることがある

ご相談で多いのは、「測量費が数十万円かかると言われたが、その土地がいくらで売れるかも分からない状態で先に出せない」というものです。売れるかどうか分からないものに、先にお金を投じられない。これはごく自然な判断だと思います。

当社は自社で買い取る会社です。ご相談いただいた土地については、次のように考えています。

  • 測量・境界確定は、先にしていただく必要はありません。現況のままご相談いただけます
  • 調査は当社で行います。売主様に法務局や役所を回っていただくことはありません
  • 建物があれば、その状態と築年数を確認します。片付けや解体も先に必要ありません
  • 面積がずれていること自体を理由に、お取り扱いの対象外とすることはありません

一方で、すべてのご相談がまとまるわけではありません。これまで条件が折り合わなかった例としては、売主様のご希望額と当社がご提示できる金額に開きがある場合費用のご負担が必要となりご同意いただけない場合相続人の方々の間で合意ができていない場合があります。条件が合わないときは、その旨をお伝えします。

なお、面積のずれは境界が不明な山林や、登記が現況に追いついていない土地と重なって出てくることが多くあります。相続した土地に未登記建物が残っていた、というように、複数の事情が同時にあるケースも珍しくありません。ひとつずつ切り分けて考えると、詰まっている場所が見えてきます。

相談の前に、手元で見ておくとよいもの

専門家に相談する前でも、次の3つを並べるだけで状況がかなり分かります。取り寄せは難しくありません。

  1. 登記事項証明書 — 法務局で取得できます。地積が記載されています
  2. 固定資産税の課税明細書 — 毎年春に市町村から届くもの。ここにも地積が載っています
  3. 公図と、あれば地積測量図 — 法務局で取得できます。地積測量図があれば、過去に測量した記録があるということです

見るポイント

  • 登記事項証明書の地積と、課税明細書の地積が一致しているか
  • 地積測量図が存在するか。あれば、いつ作られたものか
  • 昔の測量図があっても、作成時期が古いと現在の基準に合わないことがあります

地積測量図が法務局に備え付けられていない土地は、いまも珍しくありません。無いこと自体は異常ではないので、それだけで不安になる必要はありません。

面積のずれは、時間が経つほど確認が難しくなります。隣地の所有者が代替わりすると、昔の経緯を知る方がいなくなるためです。すぐに動く必要はありませんが、確認できる方がご存命のうちが、境界を整理する機会としては有利だといえます。

よくある質問

縄伸び・縄縮みがある土地でも売却できますか。

売却自体はできます。登記簿の地積のまま取引する「公簿売買」という方法があり、あとから面積の差で代金を精算しない取り決めにするのが一般的です。ただし住宅ローンを使う一般の買主が相手だと、金融機関が実測図を求めることがあり、その場合は測量が事実上の前提になります。

登記簿の面積を実測に合わせるには、いくらかかりますか。

境界確定測量と地積更正登記が必要で、費用は数十万円が目安です。ただし隣接地の数、土地の形、道路や水路との境(官民境界)の有無で幅が大きく、山林や別荘地のように隣地が多い土地では さらに上がることがあります。金額は土地家屋調査士の見積もりでご確認ください。

縄伸びしていると相続税は増えますか。

増える可能性があります。相続税の土地の評価は課税時期における実際の面積によるとされているため(財産評価基本通達8)、登記簿の地積だけを見て試算した額とずれることがあります。実際の申告での扱いは税理士へご確認ください。

隣の人が立ち会ってくれない、連絡先も分からない場合はどうなりますか。

境界確定測量は隣接地の所有者の立会いと署名が前提になるため、そこで止まります。法務局の筆界特定制度を使うと、裁判をせずに筆界の位置を明らかにできる場合があります。それでも進まないときは、測量をしないまま買い取る相手を探すことになります。

登記の面積を直すと、固定資産税は上がりますか。

縄伸びを直して地積が増えれば、その後の固定資産税が上がる可能性があります。逆に縄縮みを直して減れば下がる場合があります。反映の時期や扱いは自治体によって異なるため、課税明細書の地積と登記簿を見比べ、市町村の資産税担当へご確認ください。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷再建築不可市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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