不法投棄された土地は売れる?所有者の責任と先にすること

山を背にした荒れた敷地に積み上げられた古材

空き地や山林に他人が捨てた廃棄物は、捨てた人が行為者であり、土地の所有者がすぐ全責任を負うと決まっているわけではありません。

不法投棄された土地も、売ること自体はできます。ただし、知っている投棄は買主に伝えるのが前提で、そのうえで「撤去してから売る」「現況のまま伝えて売る」「行政の対応を待ってから売る」の3つから選びます。

不法投棄された土地の売却では、条文の読み方、行政への連絡、買主への伝え方の3つを順に押さえます。この記事では、廃棄物処理法で確かめた範囲と、売る前に先にすることを整理します。

責任:捨てることを禁じ、罰則を定めているのは廃棄物処理法です。行政の措置命令の相手は、条文上は処分を行った者や違法な委託をした者などです(一般廃棄物は19条の4、産業廃棄物は19条の5)。所有者がどこまで求められるかは、条文だけでは言い切れず、状況によります。
最初にやること:触らずに写真を撮り、自治体に通報する。所有者が通報するよう努める旨は、同法5条2項にあります。
売るとき:知っている事実を告げずに売るのは避ける(民法572条)。撤去してから売るか、現況のまま伝えて売るかは、費用と買主の範囲で決まります。

建物の中に積まれた物の話は、残置物の処分費用で整理しています。この記事は、空き地・山林・敷地の外側などに、他人が捨てた廃棄物を扱います。

目次

不法投棄は、誰が何をしてはいけないのか

まず、条文を確かめます。廃棄物処理法16条は、投棄を一言で禁じています。

何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

——廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条(e-Gov法令検索)

罰則は同法25条にあります。16条に違反して廃棄物を捨てた者は、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金に処され、またはこれが併科されます(25条1項14号)。

法人の従業者が業務に関して違反した場合は、行為者のほか、法人にも罰金刑が科されます。法人への罰金の上限は3億円です(32条1項1号)。

整理すると、次のとおりです。

条文内容誰に向けた規定か
16条みだりに廃棄物を捨ててはならない何人も(捨てる人)
25条1項14号16条違反は5年以下の拘禁刑・1000万円以下の罰金(併科あり)捨てた者
32条1項1号法人の業務に関する違反は、法人に3億円以下の罰金法人
5条2項他人が不適正に処理した廃棄物を見つけたら、速やかに知事・市町村長へ通報するよう努める土地の所有者・占有者

最後の行が、所有者に向けた規定です。義務ではなく「努めなければならない」という書き方で、見つけたら黙って抱え込まず、行政に知らせることが法の想定です。

廃棄物の区別:廃棄物には、家庭などから出る一般廃棄物と、事業活動で出る産業廃棄物があります。通報先がこの区別で変わるため、どちらか分からない場合の動き方を次の章で整理します。

見つけたら先にすること|触る前に、記録して通報する

不法投棄を見つけたとき、片付けたくなるのは自然です。ただ、先に撤去してしまうと、何がどれだけ捨てられていたかが残りません。

順番は、危険を避ける、記録する、通報する、撤去の相談です。

  • 容器や薬品らしき物、割れた物など、危険そうな物には触れない
  • 全体と近景を、日付が分かる形で複数枚撮る(撤去の前に)
  • 捨てられた場所が、自分の土地の範囲かどうかを、地積図や境界の資料で確かめる
  • 自治体の窓口に通報し、「撤去の扱いをどうすればよいか」を聞く
  • 捨てた人に心当たりがある場合も、自分で問い詰めず、自治体に伝える

通報先は、環境省の案内では次のとおりです(環境省よくある質問)。

状況通報先
一般廃棄物(家庭ごみ、粗大ごみなど)市区役所・町村役場
産業廃棄物(事業で出た廃材、汚泥など)都道府県または政令市の保健所
どちらか分からないまず市区役所・町村役場に相談する(環境省の不法投棄ホットラインは大規模・緊急の事案に限る)

環境省の不法投棄ホットラインは、投棄量が5,000トンを超える大規模な事案や、河川への流出・地下水への浸透など、ただちに支障の除去が必要な緊急の事案が対象です。

家庭ごみや小規模な産業廃棄物は対象外とされ、市町村など各自治体の窓口への連絡が案内されています(環境省 不法投棄ホットライン)。

通報したあと、警察への相談が必要かどうかは、廃棄物の内容や状況で変わります。自治体の窓口で、あわせて聞いておくと迷いません。

不法投棄を見つけたときの順番
触る前に記録し、一般か産業かを分けて通報する

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

撤去の費用は誰が負担するのか|条文から言えること、言えないこと

売主様が最も気にするのは、撤去費用です。ここは断定できる範囲が狭いため、条文に書いてあることだけを並べます。

行政が出す措置命令(支障の除去等の措置を講ずべき命令)は、一般廃棄物は市町村長が19条の4、産業廃棄物は都道府県知事が19条の5で定めています。命令の相手は、条文ごとに次のとおりです。

  • 19条の4(一般廃棄物):基準に適合しない収集・運搬・処分を行った者と、法に違反する委託をした者
  • 19条の5(産業廃棄物):処分などを行った者、違反する委託をした者、管理票(マニフェスト)の義務に違反した者、これらをさせたり助けたりした者など。条文はこれらをまとめて「処分者等」と呼んでいます

どちらも、捨てた側や処分に関わった側が命令の相手です。

産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、都道府県知事は、必要な限度において、次に掲げる者に対し、期限を定めて、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。(抜粋)

——廃棄物処理法第19条の5第1項(e-Gov法令検索)

命令の相手が分からない場合などには、市町村長や都道府県知事が自ら措置を講じることができる定めもあります(19条の7、19条の8)。講じた費用は、処分を行った者などに負担させることができます。

環境省は、措置命令や代執行について次のように案内しています(環境省よくある質問)。

項目環境省の案内
措置命令を出せる場面生活環境保全上の支障またはそのおそれがない限り、出せない
命令の中身「支障の除去等」を命じるもので、全量の撤去を命じるとは限らない
代執行の位置づけ都道府県等が行うのは最後の手段

ここから先、つまり所有者である自分が、撤去費用を求められることがあるのかは、本記事で確かめた条文からは断定できません。自治体ごとに事案の見方が違うためです。

「所有者だから負担する」「所有者には一切責任がない」のどちらも、条文だけでは言い切れません。
個別の事案は、自治体の窓口と、必要に応じて弁護士にご確認ください。

なお、廃棄物が原因で隣地や道路に損害が出た場合は、廃棄物処理法とは別に民法の規定が関わります。

故意または過失で他人の権利を侵害した者は賠償責任を負い(民法709条)、土地の工作物に瑕疵があって他人に損害が出たときは、まず占有者、占有者が必要な注意をしていれば所有者が賠償責任を負うと定められています(同717条)。

投棄物そのものが「工作物」に当たるかなど、個別の判断は弁護士の領域です。

捨てられたままの土地を、売るとき

ごみが残る土地は、売ること自体ができなくなるわけではありません。ただし、売り方によって、後の責任が変わります。

売買では、引き渡した目的物が契約の内容に適合しないとき、買主は修補などの追完を請求できます(民法562条)。

買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと請求できなくなる定めもありますが、売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合は別です(同566条)。

さらに、民法572条は、責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実は免れないと定めています。

売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

——民法第572条(e-Gov法令検索)

つまり、投棄されていると知っている以上、現況のまま売る場合でも、伝えることが前提です。地面の上に見えるものだけでなく、埋まっていると分かっている物も同じです。現況渡しの考え方は、現況渡しとはで整理しています。

売り方は、大きく3つに分けられます。

道先に出る費用向く場面
撤去してから売る撤去費用の全額(量と種類で大きく変わる)量が少なく、撤去費用が売値を下回る見込みがある
撤去せず、状況を伝えて売る撤去費用は先に出ない量が多い、費用を先に出せない、買主が現況で構わない
行政の対応を待ってから売る待つ間の見回りと税金自治体が措置を進めている、あるいは進める見込みがある
不法投棄された土地の3つの出口
どの道を選ぶかは、先に出る費用で分かれる

撤去費用の見通しが立たないと、買主も値付けができません。量が多い土地ほど、現況のまま取り扱える買主の数が限られます。売値が下がる、あるいは売れ残る可能性があることは、前提として置いてください。売れないときの全体の整理は、売れない不動産の処分方法にあります。

実際に詰まる点|量と種類と、境界

不法投棄された土地の相談で、話が止まりやすい点を整理します。

詰まりやすい点理由何が揃えば話が進むか
一般廃棄物か産業廃棄物か分からない通報先が変わる。分からないと窓口をたらい回しになりやすい全体と近景の写真、捨てられた物の種類のメモ
量が分からない撤去費用の見通しが立たず、買主も動けない範囲と高さが分かる写真、自治体の確認の記録
自分の土地の範囲かが曖昧境界が未確定だと、捨てられた場所の所有が定まらない地積図、境界の資料
捨てた人が分からない費用を誰に求めるかが決まらない自治体への通報の記録(日付つき)
伝える範囲があいまい知っていて告げないと、特約でも免れない見つけた時期と状況のメモ

どの点も、自治体に通報した日付と、窓口での説明の記録があると、売却の話が進めやすくなります。通報の記録は、買主に状況を伝えるときにも役に立ちます。

先にすることの順番

  • 危険そうな物には触れず、全体と近景を日付つきで撮る
  • 自分の土地の範囲かを確かめる(境界の資料、地積図)
  • 市区役所・町村役場に通報し、一般か産業かを聞く。分からなければ、そのまま相談する
  • 撤去の扱い(自分でやるか、行政の対応を待つか)を窓口で確認する
  • 売る場合は、見つけた時期と状況をメモし、買主に伝える準備をする

ここまで済んでから、撤去するか、現況で売るかを決めても遅くありません。法務や税務の判断は、弁護士・司法書士・税理士にご確認ください。

不法投棄された土地を、そのまま手放すという選択

撤去費用を先に出せない、遠方で現地の手配ができない、行政に連絡したあとも先が見えない。こうした事情で、土地を持て余している方は少なくありません。

その場合は、撤去や片付けをせず、現況のまま相談する道があります。廃棄物の量と種類の確認は当社で行いますので、売主様ご自身が業者を探して見積もりを取る必要はありません。

当社に寄せられる不動産のご相談全般でも、解体や片付けの費用が出せないから動けない、費用をかけずに処分したい、というお話が多くあります。

当社が手放すお手伝いをする形は、2つあります。

形お金の流れ当てはまる場面
買取当社が現況のまま買い取ります撤去にかかる費用を見込んでも、買取が成り立つ場合

どちらになるかは、不法投棄があることだけでは決まりません。廃棄物の量と種類、行政へ連絡している状況、土地の条件を確認したうえで、物件ごとに判断します。

お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。

遠方でも、現地にお越しいただかずに契約から決済まで進められます。ご相談への返事は翌営業日までにお返しします。

まずは捨てられた状況の写真と所在地が分かる範囲で、ごみ屋敷・残置物の買取・売却相談からお知らせください。

よくある質問

自分の土地に不法投棄されたら、所有者が撤去しなければなりませんか。

状況によります。廃棄物処理法16条は、何人もみだりに廃棄物を捨ててはならないと定めており、捨てた人が行為者です。

一方、行政が出す措置命令の相手は、条文上、処分を行った者や違法な委託をした者などとされています(一般廃棄物は19条の4、産業廃棄物は19条の5)。

所有者が何を求められるかは自治体の判断が絡むため、まず市町村や都道府県の窓口に相談してください。

不法投棄を見つけたら、どこに連絡すればよいですか。

環境省の案内では、一般廃棄物なら市区役所・町村役場、産業廃棄物なら都道府県または政令市の保健所です。どちらか分からないときは、まず市区役所・町村役場に相談するよう案内されています。

土地の所有者は、不適正に処理された廃棄物を見つけたら速やかに知事または市町村長へ通報するよう努める、と廃棄物処理法5条2項にあります。

不法投棄の罰則はどのくらいですか。

廃棄物処理法25条1項14号は、16条に違反して廃棄物を捨てた者を、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科としています。法人の従業者が業務に関して行った場合は、法人に3億円以下の罰金刑が科されることがあります(同法32条)。

ごみが捨てられたままの土地を、そのまま売ることはできますか。

売ること自体は妨げられません。ただし、知っている事実を買主に告げずに売ると、責任を負わない特約をしても免れないとされています(民法572条)。撤去してから売る道と、状況を伝えたうえで現況のまま売る道があり、費用や買主の範囲が変わります。

不法投棄された土地を、現況のまま買い取ってもらえますか。

不法投棄があることだけで可否を決めることはありません。廃棄物の量と種類、行政への連絡の状況、土地の条件を確認したうえで、個別に判断します。撤去や片付けを先にしていただく必要はありません。

価格が付かない場合は、買取ではなく、売主様にお引き受けする形になることがあります。条件によっては成立しないこともあります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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