警察から連絡があり、身元の確認と葬儀を済ませたら、親の家の鍵を渡された。孤独死があった家を相続放棄するか決めかねたまま、管理会社や近所から「早く清掃を」と言われている、という場面です。
清掃を頼む前に、まず3か月の起算日と、民法921条の「処分」の線を押さえてください。
3か月は、いつから数えるのか
民法915条1項は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認か放棄をするよう定めています。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
孤独死では、亡くなった日と、警察から連絡を受けた日が離れていることがあります。そのうえ遺体の確認や葬儀で最初の数週間は慌ただしく過ぎ、そのあいだにも期限は進みます。何日から数えるかで迷わないよう、連絡を受けた日、家に入った日を、メモに残しておいてください。
放棄は、家庭裁判所への申述で行います(民法第938条(e-Gov法令検索))。申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で、収入印紙は申述人1人につき800円分です。
3か月で足りないときの期間の伸長も、同じ最後の住所地の家庭裁判所に申し立て、収入印紙は相続人1人につき800円分です(相続の放棄の申述・相続の承認又は放棄の期間の伸長、いずれも裁判所)。
特殊清掃の見積は、作業ごとに行を分けてもらう
特殊清掃の見積では、汚れや臭いを取り除く作業と、家財や遺品を運び出して処分する作業が、一つの金額にまとまっていることがよくあります。頼む前に、作業ごとに行を分けて書いてもらうと、どこまでを頼んだのかを後から説明しやすくなります。
分けておく理由は、民法921条1号にあります。相続財産を処分すると単純承認とみなし、保存行為は除くと定めています(民法第921条(e-Gov法令検索))。
条文の読み方と、片付けてしまった後の考え方は相続放棄の前の片付けにまとめたので、ここでは孤独死の家で迷いやすい場面に絞ります。

| 手を付けたいこと | 分かれ目になる点 | 動く前に |
|---|---|---|
| 特殊清掃を業者に頼む | 建物を守るための措置か、価値あるものの処分も含むか | 見積書と作業範囲を書面でもらい、費用は故人の預金からではなく自分の財布から払って、領収書と一緒に残す |
| 家財・衣類を捨てる | 形見や価値のある物が混ざる | 捨てる前に写真と一覧を残す |
| 通帳・貴重品を持ち帰る | 財産の把握か、使うつもりか | 持ち出した物の一覧を作る |
| 水道・電気を止める | 契約の整理であり、財産の処分とは別の話になりうる | 止める理由を記録しておく |
| 大家に言われて部屋の荷物を出し、鍵を返す | 家財をどう動かしたか、明け渡しまで進めたか | 求められた内容を書面でもらい、返事は放棄を決めてからにする |
表は考え方の整理で、どれが保存行為かを断定するものではありません。迷う作業があれば、頼む前に見積書を弁護士か司法書士に見せて確かめておくと、後で慌てずに済みます。
特殊清掃の費用を誰が払うかは、特殊清掃の料金と費用は誰が払うで書いています。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
借家だったなら、管理会社への返事は急がない
親が賃貸住宅で亡くなった場合、管理会社や大家から、原状回復や特殊清掃の費用を求められることがあります。
民法第896条(e-Gov法令検索)は、相続人が相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。一般に、借りていた部屋の賃借人の地位も相続の対象になると解されています。自分の場合にどうなるか迷うときは、専門家に確かめてください。
一方で939条は、放棄の効力をこう定めています。
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
請求に応じるかどうかは、放棄するかどうかとつながっています。自分が連帯保証人になっていた場合は、相続とは別に、自分が結んだ保証契約の話になります。
求められた日と金額、書面の有無を書き残し、払う・払わないの返事は、放棄するかを決めてからにします。
部屋の中の通帳や現金は、持ち帰るなら一覧を作り、手を付けずに保管します。故人の預金から清掃費や家賃を払うと、前の節の「処分」の問題に踏み込みます。
臭いで近所から苦情が来ているとき
放棄を考えていても、臭いや虫で近所から苦情が来ると、何もしないままではいられません。苦情を受けた日と相手、その後に自分がしたことを、日付つきで残してください。

苦情にどこまで応じてよいかと、放棄の後に残る民法940条の保存義務は、さきほど挙げた記事に詳しく書きました。放棄後の管理の範囲は相続放棄しても残る管理義務にあります。
放棄しないなら、清掃してから売るしかないのか
孤独死があった家を自分で売る道は、仲介です。買主に事情を伝えたうえで、清掃や内装の費用を見込んで探すことになります。
告知が要るかどうかの線引きは、孤独死があった家は事故物件かで書いています。
仲介には、時間と費用の限界があります。清掃や修繕の費用を出せないと、そもそも売りに出せません。買取と仲介の違いは買取と仲介の違いにあります。
当社に届く相談でも、家財の処分や解体の費用が出せずに止まっている、という相談が多くあります。
ここで、放棄とは別の道が見えます。清掃せず、現況のまま相談する道です。
当社の扱い|清掃も片付けもせず、状態のまま
建物で孤独死があったことを理由に、一律に相談の対象外とはしません。清掃や片付け、リフォームを済ませていただく必要もなく、家の中に物が残ったままで構いません。
物件を見たうえで、どの形で進められるかを契約の前にご説明します。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。
当社で見る点は、次のとおりです。
- 建物の状態と、築年数の目安
- 名義が誰か、相続登記が済んでいるか
- 家の中の物が、どのくらい残っているか
- 近隣から苦情が出ているか
事故物件の扱いをより広く知りたい方は、事故物件の買取も参考になります。
鍵を預かったままでも、電話していい
放棄するかどうかと、家をどうするかは、別々に考えて構いません。決める前に、家の状態だけ伝えておけます。
ご相談への返事は、翌営業日までにお返しします。所在地と、分かる範囲の状況だけで足ります。
放棄や税務の判断は、司法書士・税理士に確かめてください。清掃業者に電話する前に、鍵を手元に置いたまま、訳あり不動産の買取相談から送れます。
よくある質問
特殊清掃を頼んじゃったら、もう放棄できないんですか。
頼んだだけで一律に放棄できなくなる、とは言い切れません。民法921条1号は、相続財産の処分を単純承認とみなし、保存行為は除くと定めています。どちらにあたるかは作業の中身で変わるので、見積書と作業内容の控えを持って、弁護士か司法書士に聞いてください。
警察から連絡が来た日から3か月ですか。
民法915条1項は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月と定めています。何を知った日とするかは事情で変わるため、連絡を受けた日と家に入った日を、両方書き留めておくと話が早くなります。
臭いが残ったままの家でも、見てもらえますか。
清掃や片付けを済ませてからでなくても、ご相談いただけます。買取になるか、お引き受けになるか、どちらも成立しないかは、物件を見たうえで契約の前にご説明します。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
告知事項のある物件を、どう手放すか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量の費用を、先にご負担いただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。
資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
経緯は差し支えない範囲で結構です。告知の扱いは当社が整理します。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

