借地権を相続放棄したいとき、地代の未払いと建物はどうなる?

塀で区切られた古い木造住宅の並び

借地の上の家に一人で住んでいた親が亡くなったあと、地主さんから地代の請求書が届いた。封筒を開けると、ここ数か月分が払われていなかった。家は古く、誰も住む予定がない。

結論から言うと、借地権だけを選んで放棄することはできません。地代の未払いも建物も、全部まとめての判断になります。

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借地権だけを放棄することはできない

相続人は、亡くなった方の権利も義務も、まとめて引き継ぎます。民法896条は「一切の権利義務を承継する」と定めています。

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

——民法第896条(e-Gov法令検索)

借地権は土地を借りる権利で、建物を持つための土台です。この権利と、地代を払う義務はセットで相続人に移ります。

放棄をすると、民法939条により、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとみなされます。借地権も、建物も、地代の未払いも、預貯金も、まとめて外れます。

放棄の手続きは、家庭裁判所への申述です(裁判所「相続の放棄の申述」)。相続を知ってから3か月以内で、申述先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所、収入印紙は申述人1人につき800円と案内されています。

地代の未払いは、誰の負担になる?

親が地代を何か月か滞納したまま亡くなった場合、その未払いも相続の対象です。放棄しなければ、相続人が払う立場になります。

さらに、払わないままにすると、地主さんから契約を解除されることもあります。民法541条は、相当の期間を定めて催告し、それでも履行がないときに解除できると定めています(不履行が軽微なときは除かれます)。

選び方地代の未払い借地上の建物地主さんとの関係
放棄する負わない(939条)相続人ではなくなるので持たない次の順位の人に回る
放棄せず持ち続ける相続人が負う相続人の名義になる相続人が地主さんの相手になる
放棄せず手放す地主さんとの話し合いで精算を求められることが多い売るか返す承諾や合意が要る

放棄すると、相続人の立場が次の順位の人に移ります。子が全員放棄すれば、親(直系尊属)、それもいなければ兄弟姉妹の順です(民法889条)。

親族の誰かが突然、地主さんから連絡を受けることになりかねません。次の順位の人にも、先に知らせておくと混乱が減ります。

子も親も兄弟姉妹も全員が放棄して相続人がいなくなると、相続財産は法人となり(民法951条)、家庭裁判所が利害関係人か検察官の請求で相続財産の清算人を選びます(民法952条1項)。

地代を受け取れない地主さんは、この利害関係人として申し立てる立場になりえます。借地上の建物や借地権の整理は、選ばれた清算人が進めることになります。

借地権を相続放棄する前の順番
手を付ける前に、期限と契約書を押さえる

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

放棄の前に、手を付けないほうがいいこと

民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています。単純承認とは、財産も借金も全部引き継ぐ選び方です。

つまり、放棄を考えている間に、財産に手を付けると、放棄できなくなる場合があります。何が処分にあたるかは、事情で判断が分かれます。

借地権を放棄するつもりなら、次のことは、専門家に聞く前に進めないでください。
– 亡くなった方の口座から、地代の滞納分を払う
– 借地上の建物の家財を、すべて処分してしまう
– 地主さんと、借地契約をやめる書面を交わす
放棄と売却は両立しません。どちらか一方です。どちらにするか決まっていないうちは、触らないのが安全です。

地代の滞納分を、相続人が自分のお金で払うのか、亡くなった方の口座など相続財産から払うのかで、扱いが分かれることがあります。地主さんに急かされても、払う前に、どちらのお金で払うつもりかを司法書士か弁護士に伝えて確認してください。

放棄をするかどうかを決める前に、調べることは認められています。民法915条2項は、承認や放棄の前に相続財産の調査をすることができると定めています。

3か月で足りないときは、同条1項ただし書きで、家庭裁判所に期間の伸長を請求できます。契約書と地代の残高を調べたうえで、どちらにするか決める流れです。

放棄したあとも、建物を管理する義務は残る?

借地上の建物に、いま住んでいる、鍵を持っている、荷物を置いている。この状態で放棄したときは、民法940条が関わります。

放棄した人が、放棄の時点でその財産を現に占有しているときは、次の相続人などに引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければならないと定めています。

遠方に住んでいて、建物に一度も入っていない人は、現に占有している状態にはあたらないのが通常です。ただし、鍵を預かっている、家財を持ち出したといった事情があるときは、判断が変わります。個別のことは弁護士に聞いてください。

放棄しないなら、借地権を手放す3つの道

放棄をしない、あるいはできない場合は、借地権のまま手放す道があります。

道地主さんの承諾話が詰まりやすい点
地主さんに返す・買ってもらう地主さんとの合意が前提建物の解体を求められることがある
第三者に譲る賃借権なら必要(民法612条)承諾料の話し合いが入る
底地とまとめて売る地主さんと条件を合わせる測量などが要ることがある

賃借権の譲渡について、民法612条は「賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と定めています。

地主さんが承諾しないときは、借地借家法19条で、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てる道があります。時間はかかります。それぞれの進め方は借地権を買い取ってもらうにはと借地権の譲渡承諾料に書いています。

借地権を放棄するか、手放すかの違い
放棄は全部を外す。手放す道は、地主さんとの話が入る

契約の途中で「もう要らない」と思っても、地主さんに建物を買い取らせる決まりはありません。借地借家法13条の建物買取請求権は、存続期間が満了して更新がないときの話です。

契約書で先に見る5点

親が借りていた借地について、相続人は契約書の中身をよく知らないことが多いです。放棄するにしても、手放すにしても、先に見るのは同じ書類です。

  • 賃借権か地上権か。地上権なら、地主さんの承諾なしで譲れます
  • 期間と更新の定め。いつ満了するか
  • 譲渡承諾の条項と、承諾料の取り決め
  • 地代の滞納額と、最後に払った月
  • 建物の登記名義。亡くなった方のままか

契約書が見つからないときは、地主さんや管理会社に写しを頼む前に、まず相続人の間で探します。建物の登記は、法務局で登記事項証明書を取れば分かります。

地主さんに話す前に、契約書の状態のまま聞いてください

東京都江戸川区の借地権付きの建物では、地主さんの承諾と承諾料の調整が必要でした。売主様おひとりでは切り出しにくく、当社が地主さんと直接お話しして調整しています(江戸川区の事例)。

借地権付きの建物は、当社の借地権・底地の買取相談で扱っています。地代が滞っていても、建物が古くても、片付けや解体の前の状態でお聞きします。

当社が確認するのは、次のような点です。

  • 借地の契約内容(賃借権か地上権か、期間、譲渡の条項)
  • 地代の滞納の有無と、地主さんとのこれまでのやり取り
  • 建物の状態と、登記の名義

借地は、地主さんの判断が大きく左右します。承諾が得られない場合は、話を進められません。引き受けられるかどうかは、契約書を見て、契約の前にお伝えします。

ご相談への返事は翌営業日までにお返しします。

放棄の期限は3か月と短いので、手を付ける前に、契約書と地代の請求書の写しを手元に置いたまま、ご連絡ください。放棄の可否と手続きは司法書士・弁護士へ、税務は税理士へ確認してください。

詳しい進め方は、借地権を相続したら、相続放棄しても管理義務は残る?、現況渡しとはも参考になります。

よくある質問

借地権だけを放棄して、ほかの財産は相続できますか。

できません。相続放棄は、亡くなった方の財産と借金の全部を受け継がないという選び方です。借地権だけ、地代の未払いだけを外すことはできないので、預貯金や自宅などほかの財産がある場合は、それも含めて考える必要があります。

親が地代を滞納していました。相続放棄をすれば払わなくてよいですか。

放棄が認められれば、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。ただし、放棄の前に相続財産から地代を払うと、放棄できなくなる場合があります。払う前に司法書士か弁護士へ。

放棄したら、地主さんに連絡しなくてもよいのですか。

放棄をすると地代を払う人や建物の持ち主が変わるため、地主さんに伝える場面は出てきます。伝える時期と言い方は、家庭裁判所から受理の通知が届いたあとに、司法書士か弁護士と相談して決めてください。

借地の上の古い家を、そのままの状態で相談できますか。

建物を片付けたり壊したりする前の状態で、ご相談いただけます。地主さんとのやり取りも含めて、借地の条件を確認したうえで個別に判断します。お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

借地・底地を、地主と揉めずに手放せるか

どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。

相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。

片付け・解体・測量の費用を、先にご負担いただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。

資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。

地主との交渉は当社が間に入ります。先に話を付けていただく必要はありません。

お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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