相続放棄予定の家を片付けてしまった|してよいこと・いけないこと

家具や布団が残ったままの和室

相続放棄をするつもりの実家に行って、冷蔵庫の中身を捨て、ついでに押入れの布団と古い家電を業者に出してしまった。そのあとで「これ、まずかったのでは」と気づいた人に向けて書きます。

家財をまとめて処分すると、民法921条の「処分」に当たり、相続を承認したとみなされて放棄できなくなるおそれがあります。放棄の手続きが終わるまでは、傷む・危ないものを守る以上のことはしない。それが原則です。

片付けがどうしても必要なほど家が重荷なら、放棄ではなく「相続して現況のまま手放す」ほうが筋が通ることもあります。まだ何も手を付けておらず、「放棄するか、相続して売るか」から考えたいなら、ごみ屋敷を相続したときの判断を先に読んでください。

ここでは、すでに片付けや処分をしてしまったあとに絞ります。

目次

片付けが「相続した」とみなされる仕組み

相続放棄は、家庭裁判所に申述して受理されると、はじめから相続人でなかったことになる手続きです。ところが、その前に相続財産を処分したり、後で隠したり使い込んだりすると、法律上「相続を受け入れた」と扱われます(法定単純承認)。

第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

(中略)

三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し(後略)

——民法第921条(e-Gov法令検索)

1号は放棄の前の「処分」、3号は放棄の後の「隠したり、勝手に使ったりすること」です。申述が受理されたから何をしてもよい、とはなりません。

時期根拠気をつけること
亡くなったことを知ってから3か月以内(熟慮期間)民法915条・918条・921条1号財産を管理する立場。処分すると放棄できなくなるおそれ
申述した後〜受理まで民法921条1号受理前は、まだ処分の問題が残る
受理された後民法921条3号・940条隠す・使い込むと承認扱いになり得る。占有していれば保存義務

熟慮期間は民法915条で「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」とされ、家庭裁判所に申し立てれば延ばせます。

相続放棄の前後で変わる、家の中のものへの注意
受理されたら終わり、ではない。時期ごとに問われることが変わる

保存行為と、処分に見られやすいこと

921条1号のただし書きにある保存行為は、財産の価値を減らさないように守る行為です。性質や価値を変えてしまう行為は、「処分」と見られやすくなります。どちらかは最終的に個別の事情で決まるので、次は目安です。

  • 腐る食品・生ゴミを捨てる(悪臭や害虫で建物が傷むのを防ぐ)
  • 割れた窓や雨漏りを応急的にふさぐ
  • 鍵を掛ける、郵便物を回収して保管する
  • 倒れそうなブロック塀や枝に、危険を防ぐ最低限の手当てをする
  • 家の中の状態を写真で記録する

処分と見られやすいのは、家具・家電・衣類を業者にまとめて出す、貴金属・骨董・車を売る・譲る・持ち帰る、解体やリフォームをする、預金を引き出して片付け費用に充てる、家を売る・貸す契約をする(短期の賃貸を除く)、といった行為です。

迷う物の多くは、価値があるか分からない家財です。古い家具や大量の衣類は、本人にはゴミに見えても、第三者には換金できる物が混じっていることがあります。ごみ屋敷だから中身は全部ゴミ、とは限りません。

価値の判断を自分でせず、捨てる前に写真を撮り、迷う物はそのまま残しておきます。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

すでにやってしまったことを、書き出して見直す

冷蔵庫の中身、押入れの布団、古い家電。捨てた物を思い出せる順に書き出し、日付と、なぜ捨てたかを横に添えてください。申述をあきらめるかどうかは、それを並べてからで遅くありません。

冷蔵庫の生ゴミや腐った食品は、放っておけば悪臭や害虫で建物を傷めます。それを防ぐための処分なら、保存行為に当たり得ます。「夏場で臭いが出ていた」など、そのときの理由を一行添えておきます。

布団や古い家電は、判断が分かれやすいところです。本人には価値のない物でも、まとめて業者に出したなら、処分と見られるおそれがあります。業者の見積書と明細は捨てずに保管し、捨てる前の写真がスマートフォンに残っていないかも見ておきます。

価値の低い思い出の品を少し持ち帰ったなら、財産としての価値と量しだいです。持ち帰った物を一覧にしておきます。

換金できる物を売った・使ったなら、処分と見られやすく、放棄のあとなら3号の消費にも関わります。手元に残っている物は、それ以上動かさないでください。

どの行為が「処分」に当たるかは、条文に列挙されていません。物の価値や量、処分した理由で結論が変わるので、ここまでの書き出しを持って、申述の前に弁護士・司法書士に相談するのが早道です。

申述書には放棄の理由や財産の状況を書く欄があり、処分した事実を隠すと、あとでかえって不利になり得ます。事実は記録して、書き方は専門家と決めるのが安全です。

単純承認に当たるかは、受理の段階ですべて決まるわけではありません。あとで債権者などと争いになったとき、裁判所が判断します。だから、「なぜその行為が必要だったか」を説明できる記録が効きます。

申述は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に、申述人1人につき収入印紙800円と郵便切手を添えて行います(裁判所の案内(相続の放棄の申述))。

近所から苦情が来たとき、どこまで手を付けるか

放棄を考えている家ほど、草木の越境や瓦の落下、悪臭で、近所や自治体から連絡が来やすいものです。苦情に応えようとして片付けを始め、結果として「処分」に踏み込む。この順番がいちばんよくありません。行政から指導が来た場合の流れは、ごみ屋敷への行政指導にあります。

苦情が来たときに、どこまで手を付けるか
迷ったら一段手前で止めて、記録を残す

対応は、危険を止める・広げないことに絞ります。越境した枝の先を払う、落ちそうな物を固定する、出入り口に鍵を掛ける。費用がかかるなら自分のお金から出し、領収書を残してください。

相続財産の預金を引き出して充てると、それ自体が問題になり得ます。相手には「相続放棄を検討中で、手続き中です」と伝えておくと、話がこじれにくくなります。

そして、放棄しても、家を「現に占有している」なら保存の義務が残ります(民法940条)。

次の相続人や家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人に引き渡すまで続くので、全員が放棄した場合は、清算人の選任を申し立てないかぎり、引き渡す相手が決まらないまま続くものです(相続財産清算人の選任(裁判所))。

放棄後の管理の範囲は相続放棄と不動産の管理義務に書きました。

片付けたあとで、放棄を続けるか見直す

放棄に不安が出てきたなら、そもそも放棄が要るのかを見直す機会です。放棄の理由が「家の片付けや解体が負担だから」なら、なおさら。放棄は家だけを手放す手続きではなく、預金も含めて相続財産のすべてを手放す手続きだからです。

相続放棄相続して現況のまま手放す
手放す範囲預金・借金を含むすべて家だけ(他の財産は残せる)
片付けへの制約処分に当たらないよう、手を付けにくい自分の判断で片付けてよい(しなくてもよい)
家の負担が終わる時期引き渡し先が決まるまで続くことがある手放した時点で区切りがつく
向いている場合借金が財産を上回る負債は少なく、家だけが重荷

借金が大きいなら、放棄が合理的です。負債は少なく、「家が売れそうにない」ことだけが理由なら、相続したうえで手放す道を見ておいたほうが、片付けの制約に縛られません。相続した家を手放す全体の流れは相続した空き家の売却です。

土地を国に渡す相続土地国庫帰属制度もありますが、建物が残る土地は申請できません(建物がある土地と国庫帰属制度)。解体費が出せないから放棄を考えている人には、使いにくい制度です。

動く順番は次のとおりです。

  1. 借金を含めた財産の全体を調べる(放棄が本当に合理的か)
  2. 家の中のものには、傷む・危ないものへの手当て以外は手を付けない
  3. すでにしたことは、日付・内容・理由を記録する
  4. 3か月の期限に間に合わなければ、家庭裁判所に期間の延長を申し立てる
  5. 家だけが重荷なら、放棄の前に「相続して現況のまま手放せるか」を見る

家財が残ったままの家は、今のまま相談できる

当社は訳あり不動産を現況のまま引き受けています。家財が残ったまま、ごみ屋敷の状態のままでも、片付け・解体・測量を売主様に先にしていただく必要はありません。物件の調査も当社で行います。

当社に届く相談では、「家財の処分費がかかるから」で止まっている方が目立ちます。残置物が多く、境界も示せない築古の平家を、片付けを求めずに現況のまま引き受けた例もあります(取り扱い例)。

引き受け方は二通りです。条件が合えば、当社が現況のまま買い取る場合もあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

どちらかは、調べたうえでお伝えします。返事は翌営業日までにお送りします。ごみ屋敷の状態の家は、ごみ屋敷の買取相談で案内しています。

相続して手放すと決めれば、「片付けたら放棄できなくなるかも」という悩みは小さくなります。家財の量や処分費用が気になるなら、残置物の処分費用やごみ屋敷の売却も見てください。

すべての家を引き受けられるわけではありません。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。放棄の期限が迫っているなら、期限の延長も含めて、専門家への相談が先です。 そのうえで、家だけを手放せるかを知りたければ、所在地をお知らせください。

調べてお答えします。

放棄するかどうかの最終判断と、申述書の書き方は、弁護士・司法書士へご確認ください。

よくある質問

放棄する前に、冷蔵庫の生ゴミを捨ててしまいました。もうだめですか。

民法921条1号は、財産の価値を守る「保存行為」を単純承認の対象から除いています。腐って建物を傷める生ゴミの処分は、この保存行為に当たり得ます。

ただ、「処分」か「保存行為」かは、争いになったときに裁判所が物の価値や量、理由を見て個別に判断します。迷うものは手を付けず、写真を残して、弁護士・司法書士に聞いてください。

家財をまとめて業者に処分させてしまいました。放棄はもうできませんか。

処分した事実があっても、家庭裁判所への申述ができなくなるわけではなく、受理されることもあります。ただ、あとから債権者などに「単純承認に当たる」と争われる余地は残ります。何を、いつ、なぜ処分したかを記録して、申述の前に専門家へ。

放棄したあとも、家の管理は続きますか。

2023年4月施行の改正後の民法940条では、放棄の時に相続財産を「現に占有している」人が、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務を負います。占有していなかった人は対象外です。占有に当たるかは事情によるため、専門家にご確認ください。

形見に写真と手紙だけ持ち帰りました。これも処分ですか。

持ち帰った物の価値や量で個別に判断されます。財産としての価値がほとんどない写真や手紙と、換金できる貴金属・ブランド品・骨董とでは、見られ方が変わり得ます。手続きが終わるまで、価値のありそうなものは持ち出さないほうが安全です。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

片付けずに、そのまま手放せるか

どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。

相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。

片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。

資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。

残置物の量を伺うだけで結構です。片付けの見積もりを取っていただく必要はありません。

お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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