ごみ屋敷を相続したとき、最初に決めるのは「どう片付けるか」ではありません。相続放棄をするかどうかを、相続を知った日から3か月以内に判断する必要があるからです。片付け費用を出す前に順番を整理しておくと、負担を大きく減らせます。
迷いやすい分かれ道は三つあります。相続放棄、片付け、売却です。どれを選ぶにしても、費用を先に出さずに済むかが判断の軸になります。
片付けの前に、期限のある判断から片付ける
親の家が物であふれた状態で残されていると、まず「業者を呼ばなければ」と考えがちです。しかし費用を払ってしまうと、選べる出口が減ります。
期限が決まっているのは、次の2つだけです。

相続財産を処分したり使ったりすると、相続を承認したとみなされ、あとから相続放棄ができなくなる場合があります(法定単純承認)。家財の処分に着手する前に、放棄する可能性があるかどうかを整理しておいてください。
つまり順番としては、放棄するかどうか → 名義をどうするか → 家財と建物をどうするかになります。3番目には法律上の期限がありません。ここは費用の出し方で選べる部分です。
ごみ屋敷の相続放棄|片付けは要らなくなるのか、何が残るのか
相続放棄は、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きです。認められると、はじめから相続人でなかったものとして扱われます。ごみ屋敷の場合、片付け費用も固定資産税も引き継がずに済むため、有力な選択肢になります。
「放棄するなら、その前に少し片付けておくべきか」と聞かれることがよくありますが、ここは逆で、放棄を決めるまでは中の物に手を付けないのが基本です。
どこまでなら動かしてよいか、片付けてしまった後にどう考えるかは、相続放棄予定の家を片付けてしまったときにまとめています。
3か月では財産の調べが終わらない、という場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる方法があります(民法915条1項ただし書き)。遠方で家の中が見られない、親の財産が把握できないといった事情は、その理由になります。
放棄が認められても、建物から完全に離れられるとは限りません。2023年4月施行の改正民法940条は、放棄した時点でその財産を現に占有していた人に、次の相続人または相続財産清算人へ引き渡すまでの保存義務を課しています。
同居していた、実際に鍵を管理していたという場合は、この義務が残ります。
逆に、親の死後も家に入っておらず占有もしていなければ、この条文の義務は生じないと読めますが、鍵を預かっているだけで占有とみられる例もあるため、判断は専門家に任せてください。
義務を終わらせるには引き渡す相手が必要で、ほかに相続人がいなければ相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。清算人の報酬などにあてる予納金を求められることが一般的で、金額は事案ごとに家庭裁判所が判断します。
また、相続人全員が放棄しても、建物と土地が自動的に国のものになるわけではありません。相続土地国庫帰属制度は、建物が建っている土地を対象外としています。ごみ屋敷は建物が残っている状態なので、この制度は使えません。
放棄が向きやすいのは、ほかにめぼしい財産がなく、負担だけが残るケースです。逆に預貯金や他の不動産も一緒に相続する場合は、放棄すればそれらも受け取れません。総額で比べたうえで、弁護士・司法書士にご相談ください。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
片付けの費用は、思ったより「量」で決まらない
相続することを選んだ場合、次に費用の見当をつけます。ここでつまずく方が多いのは、金額を左右するのが物の量だけではない点です。

見積もりが上下する主な要素は次のとおりです。
| 要素 | 費用への影響 |
|---|---|
| 物の量(トラック何台分か) | 基本的な単価の土台になる |
| 搬出経路 | 階段のみ、前面道路が狭いと人手が増える |
| 品目 | 家電4品目・消火器・塗料などは別料金になりやすい |
| 建物の状態 | 床が抜けそう、汚損が激しいと作業単価が上がる |
| 立ち会いの可否 | 遠方で立ち会えないと訪問回数が増える |
相場は地域や業者によって幅があります。金額そのものより、同じ条件で複数社に見積もりを出してもらうことのほうが判断材料になります。
家庭から出た不用品を運び出すには、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。産業廃棄物の許可や古物商の許可では家庭ごみを回収できません。
無許可の業者に依頼すると、高額請求や不法投棄につながった相談が国民生活センターにも寄せられています。許可の有無は市区町村に確認できます。
なお、家財の中に現金・通帳・権利証・保険証券が紛れていることは珍しくありません。処分に入る前に、書類だけは一度確認しておくことをおすすめします。
片付けてから売るか、片付けずに売るか
ここは手残りが大きく動く分かれ道で、片付けずに売る側の詳しい話はごみ屋敷は片付けずに売れる?現況のまま売却する方法に書いています。相続した家に絞ると、考えることは二つです。

一つ目は、相続放棄を迷っている間は、どちらの売り方も選べないことです。売ろうとして家財を動かすこと自体が、先に書いた法定単純承認の問題に触れるからです。放棄しないと決めてから、片付けるか現況で売るかを選びます。
二つ目は、売るなら相続人全員の合意が要ることです。家財の処分も、全員の持ち物を捨てる行為なので、了解を取らずに片付けると形見をめぐって揉めます。
そのうえで比べるのは、「片付けて売った額から片付け費用を引いた額」と「現況で売った額」です。ここで見るのは、最終的に手元にいくら残るかの一点です。地方の物件は土地の値段が低く、片付けの費用を売値から回収しきれない例があります。
ご相談では「解体と家財の処分費用がチャラになる金額が最低ライン」という言い方をされる方がいて、その発想なら現況のままの売却を並べて見る価値があります。
解体まで考えている場合は、空き家の解体費用の考え方も読んでください。更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れ、翌年から税額が上がります。
放置したときに増える負担
結論を出せずに置いたままにすると、負担は増える方向にしか動きません。
2023年12月13日施行の改正空家法(国土交通省 改正空家法の関連情報)では、管理不全空家等として勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れます(国土交通省 空き家対策)。
状態がさらに悪くなれば特定空家等として、行政代執行まで進み得ます。
相続登記も2024年4月1日から義務になり、相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に申請しなければ、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象です(法務省 相続登記の申請義務化について)。
見落とされがちなのは、相続人が増えていくことです。相続人の一人が亡くなればその子どもへ権利が移り、話をまとめるべき相手が増えていきます。共有名義になっているなら、共有持分の売却の考え方が役に立ちます。
売却するなら知っておきたい税の特例
相続した家を売る場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)があります。
要件は細かく、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたこと、マンションなどの区分所有建物でないこと、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であること、耐震基準に適合させるか建物を取り壊して売ること、が並びます。
2024年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続した人が3人以上いる場合は、1人あたりの上限が2,000万円になります(国税庁タックスアンサーNo.3306)。
2024年1月1日以後の譲渡からは、売買契約にもとづいて買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合も対象になりました。売主が工事をしなくてよくなった点は、費用を出せない状況では大きな違いです。
適用には市区町村が発行する被相続人居住用家屋等確認書と、確定申告が要ります。一つ外れると使えないので、適用できるかは税理士か税務署に聞いてください。
当社がごみ屋敷を査定するときに見ているところ
当社は買主として自ら物件を取得する会社で、買い手を探す仲介とは違います。見ているのは、その状態のまま引き受けられるかどうかです。流れは、ごみ屋敷・残置物の買取・売却相談のページで説明しています。
建物の状態と築年数、家財の残り方と建物への影響、搬出のためにトラックや重機が敷地へ入れるか、上下水道や電気の引込み、相続人の合意と登記の状況。この五つを見て、お引き受けできるかと条件をお伝えします。
他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。
調査は当社で行うので、売主様に役所へ行ったり書類を集めたりしていただく必要はありません。片付け・解体・測量も不要です。
解体費や処分費が出せずに身動きが取れなくなっている方が目立ちます。費用を出す前の段階で、一度お聞かせください。成立しないこともあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。
遠方にある実家なら、遠方の実家の売却の手順も合わせて読んでください。
相続放棄の可否、登記、税の特例は、いずれも個別の事情で結論が変わります。判断の前に弁護士・司法書士・税理士へご確認ください。この記事は一般的な整理としてお読みください。
よくある質問
ごみ屋敷を相続放棄すれば、片付けなくて済みますか?
片付ける義務は原則としてなくなりますが、放棄した時点でその建物を現に占有していた場合は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務が残ります(民法940条)。
また、ほかに相続人がいなければ、実際に管理する人がいない状態が続くこともあります。相続放棄をするかどうかは、期限がある判断なので早めに弁護士・司法書士へご相談ください。
家財が残ったままでも売れますか?
売れます。買い手が現況のまま扱える相手であれば、家財を残した状態で引き渡す前提の契約になります。当社も、片付け・解体・測量を売主側で行っていただく必要はないという前提で査定しています。ただし建物の状態や条件によっては成立しないこともあります。
家財の処分には、いくらかかりますか?
量と搬出のしやすさで大きく変わるため、一律の金額では言えません。同じ間取りでも、階段しかない建物や前面道路が狭い場所では搬出に人手がかかり、費用が上がりやすくなります。
複数社から見積もりを取ったうえで、片付けずに売った場合の手取りと比べて判断することをおすすめします。
相続放棄するつもりですが、先に片付けても大丈夫ですか?
おすすめしません。家財を売る、捨てる、持ち帰って使うといった行為は、相続を承認したとみなされ、放棄できなくなる場合があります。
放棄するかどうかが固まるまでは、中の物に手を付けず、現状の写真を撮っておく程度にとどめて、弁護士か司法書士に相談してください。期限の3か月が足りないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる方法があります。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
片付けずに、そのまま手放せるか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。
資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
残置物の量を伺うだけで結構です。片付けの見積もりを取っていただく必要はありません。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8
