アスベストがある家は売れる?解体前の調査義務と、壊さず売る道

錆びて苔むした屋外の給湯器

アスベスト(石綿)を含む建材が使われている可能性のある家は、解体する前に有資格者による事前調査が義務になっていて、除去の費用が解体費に上乗せされます。ただし、住んでいる間や売るときに調査が義務づけられているわけではありません。この記事では、どの時期の家に可能性があるか、住んでいる間の危険度、解体時の規制と費用が増える理由、そして調査費を先に出さずに壊さず手放す道を整理します。

解体費そのものが出せない場合の考え方は空き家の解体費用に書いています。ここでは、アスベストで解体費がさらに増えるという事情に絞ります。

目次

2006年8月以前に着工した家は、使われている可能性がある

出発点は、製造・使用が禁止された時期です。

石綿は平成18年(2006年)9月から輸入、製造、使用などが禁止(罰則あり)されていますが、それより以前に着工した建築物・工作物・船舶は石綿が使用されている可能性が高く、解体工事・改修工事で飛散した石綿の粉じんを吸い込むと、肺がんや中皮腫を発症するおそれがあります。

——厚生労働省「建築物・工作物・船舶の解体・改修工事に対する石綿対策の規制」(PDF)

禁止の対象は、労働安全衛生法施行令16条1項9号で「石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有する物」と定められています(e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」)。

逆に、着工日が2006年9月1日以降であることを確認できれば、目視等によらずに石綿は使われていないと判断できるとされています(厚生労働省・前掲PDF)。ただし、調査が要らなくなるわけではありません。解体するときは、着工日を確認したことを事前調査の結果として記録する必要があります。

アスベスト(石綿)=天然の繊維状の鉱物。耐火性・断熱性が高く、建材に広く使われていました。
成形板=石綿をセメントなどで板状に固めた建材。屋根のスレート、外壁のサイディング、内装のボード類など。戸建て住宅で多いのはこの型です。
仕上塗材=外壁などに吹き付けたり塗ったりする塗材。板ではないので成形板とは扱いが分かれます。

建材の区分主なもの飛散のおそれ壊すときの扱い
レベル1吹付け石綿高い作業場所を隔離して負圧を保つ。14日前までに届出
レベル2保温材・断熱材・耐火被覆材高い同上
レベル1・2と3の間けい酸カルシウム板第1種(切断・破砕するとき)、仕上塗材(電動工具で除去するとき)中間作業場所の隔離が義務(負圧は不要)
レベル3成形板(屋根材・外壁材・内装材など)低い切断・破砕によらず、湿らせて手作業で外すのが原則

出典: 厚生労働省(前掲PDF)

戸建て住宅で多いのはレベル3の成形板で、レベル1・2は鉄骨造の建物や配管の保温材などに見られる型です。外壁に古い仕上塗材が使われている家は、除去の方法によって隔離が要る扱いになります。

国土交通省の案内では、成形板は「切断・削孔などの作業を伴わない通常の使用環境下では特別な管理を必要としない建材」とされています(国土交通省「アスベスト対策Q&A」)。危険が生じるのは、壊す・削る・穴を開けるときです。住み続けること自体が問題になる型は、戸建てでは多くありません。

解体には事前調査が義務。費用が増える仕組み

解体や改修の工事を行うときは、石綿の使用の有無を事前に調べることが義務です。規制は段階的に強まっています。

施行日内容
2021年4月1日工事対象の全ての部材について、設計図書などの文書と目視で事前調査。記録を3年保存
2022年4月1日解体部分の床面積80平方メートル以上の解体工事などは、事前調査の結果を電子システムで報告
2023年10月1日建築物の事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が行う

出典: 厚生労働省(前掲PDF)

調査を行う義務を負うのは、解体工事を請け負う業者です。所有者が自分で調査者を探す必要はありませんが、文書と目視で分からなければ分析調査が要り、分析をしないなら「石綿が使用されているものとみなして」対策を取ることになるので、いずれにしても費用は増える方向に働きます。

ただし、解体を発注する所有者にも、大気汚染防止法で決められた役割があります(e-Gov法令検索「大気汚染防止法」)。

– 調査への協力と費用の負担……元請業者は調査の結果を発注者に書面で説明し、発注者は「調査に要する費用を適正に負担すること」などで調査に協力しなければならないとされています(18条の15)
– 吹付け石綿・石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材がある場合の届出……除去などの作業を始める14日前までに、発注者が都道府県知事へ届け出ます(18条の17、大気汚染防止法施行令10条の2)

届出の義務を負うのは発注者です。書類の準備を業者に頼む場合も、説明の書面と届出の控えは受け取っておいてください。

費用が増える理由は、建材の区分で作業の中身が変わるからです。

  • レベル1・2がある場合……作業場所を隔離して負圧を保ち、工事の14日前までに労働基準監督署へ届出。除去後に資格者の取り残し確認
  • けい酸カルシウム板第1種を切断・破砕する場合、仕上塗材を電動工具で除去する場合……ビニルシートなどで作業場所を隔離し、湿らせながら作業する
  • レベル3がある場合……切断・破砕によらない方法で撤去するのが原則。湿らせながら手作業で外す
  • どのレベルでも……作業主任者の選任、作業者の特別教育、作業記録の保存、廃棄物としての分別処理
アスベスト建材のレベルごとに、住んでいる間と壊すときの扱いがどう違うかを示した図解
住んでいる間に問題になる型は少ない。壊すときに費用が分かれる

この手間の分が、通常の解体費に上乗せされます。金額は建材の種類と量、地域で変わるため、見積もりを取らないと分からず、見積もりを取るには事前調査が要る、という順番になります。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

売るときの説明義務は「記録があれば、その内容」

売るときに、アスベストのことをどこまで伝えるべきかは、よく迷われる点です。

宅地建物取引業法35条にもとづく重要事項説明の項目には「石綿使用調査の内容」があります(国土交通省「重要事項説明(売買・交換)」(PDF))。これは、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときに、その内容を説明するという項目です。

売主や宅地建物取引業者に、調査そのものを義務づける規定ではありません。記録がなければ「調査の記録なし」と説明されます。ただし、過去にリフォームで石綿の指摘を受けた、調査報告書が手元にある、という場合に隠して売ると、契約不適合責任を問われるおそれがあります。知っていることは伝えたうえで、免責の範囲を契約で決めるのが安全です。仕組みは現況渡しと契約不適合責任に書いています。

調査費を先に出さずに、壊さず手放す

ここまでをまとめると、アスベストが絡む家を手放すときの道は3つに分かれます。

道先に出る費用進むための条件向いている状況
調査して解体し、更地で売る事前調査+除去を含む解体費の全額解体費を出せること。土地に買主が付く見込み立地がよく、更地なら売れる
調査だけして、結果を添えて売る調査費用買主が結果を見て判断する建物を残して使う買主がいる
調査も解体もせず、建物付きの現況で手放す調査費・解体費の先出しはなし(相続登記が未了なら登記費用)。物件により、成立しない場合もある現況のまま引き受ける相手がいること解体費を出したくない、遠方で動けない
アスベストの可能性がある家を、調査費を先に出さずに手放すまでの順番を示した図解
着工年と図面で当たりをつけるところまでは、費用をかけずにできる

解体しない限り、所有者に調査の義務はありません。建物付きの現況で引き渡せば、調査と解体をするかどうかの判断は引き受けた側に移ります。

手残りで比べる

どちらを選ぶかは、売れる値段ではなく、かかる手間と、いつ終わるかで比べてください。

解体して更地で売る現況のまま手放す
先に出す費用事前調査費+解体費+石綿の除去費調査費・解体費の先出しはなし
比べる点土地の売値 −(調査費+解体費+除去費+売却にかかる費用)買取なら買取額。お引き受けの場合は、物件ごとに個別に判断します
更地にした後の税住宅用地の特例が外れ、固定資産税の課税標準が上がることがある引き渡し後は所有者ではなくなる
時間調査・届出(レベル1・2は14日前まで)・工事・売却活動現地と資料の確認後に条件を提示

除去費の公的な目安として、国土交通省は吹付けアスベスト等の除去費を、処理面積300平方メートル以下で1平方メートルあたり2.0万〜8.5万円と示しています(2007年1〜12月の施工実績。国土交通省「アスベスト対策Q&A」Q40)。仮に吹付け材が20平方メートル見つかった場合、この目安で計算すると、除去費だけで40万〜170万円が通常の解体費に加わります。古い時期の実績で今の物価とは違うこと、小規模ほど幅が大きいことには注意してください。戸建てに多い成形板(レベル3)の除去費については、公的な目安を確認できませんでした。見積もりで確かめるしかありません。

土地の売値が、調査費・解体費・除去費の合計を下回るなら、解体してから売ると手残りはマイナスになります。解体の見積もりを取る前に、土地だけでいくらで売れそうかを先に確かめておくと、無駄な出費を避けられます。

住宅用地の特例について住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が200平方メートル以下の部分で6分の1、それを超える部分で3分の1に軽減されています(地方税法349条の3の2)。更地にするとこの軽減が外れるため、解体後に税負担が上がることがあります。

当社は、建物の状態と築年数を確認したうえで、現況のまま取り扱うことを基本にしています。片付け・解体・測量を売主にお願いすることはなく、役所や登記の調査も当社で行います。アスベストの調査報告書がなくても、査定の対象になります。

取り扱い方は2つあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

また、条件によっては成立しないことがあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。現地と資料を確認したうえでの個別の判断になります。

査定で見ているのは「着工年」と「建材の型」

アスベストの可能性がある家のご相談で、当社が先に確かめるのは調査報告書の有無ではありません。

– 着工年……着工日が2006年9月1日以降と確認できれば、石綿は使われていないと判断できる扱いです。確認済証の日付や、登記事項証明書の新築年月日を手がかりに見ます
– 構造と外装……鉄骨造で吹付け材が見える、配管に保温材が巻かれている、といったレベル1・2の型か、屋根と外壁の成形板だけのレベル3の型か
– 図面と仕様書の有無……建材の製品名が分かれば、メーカーの情報で含有の有無を確認できることがあります
– 土地の条件……接道、区域指定、境界。建物を壊した後に土地が動くかどうかで判断が変わります

古い家の売却で一緒に問題になりやすいのが、検査済証がない家の売却と増築部分が未登記の家の売却です。1981年より前の建物なら旧耐震の問題も重なります。どれも、壊さずに現況で手放す道は共通しています。

この記事の要点

  • 2006年9月1日より前に着工した家には、アスベスト含有建材が使われている可能性がある
  • 戸建てで多いのは成形板(レベル3)で、通常の使用では特別な管理を必要としないとされている
  • 解体には有資格者の事前調査が義務。調査と除去の手間が解体費に上乗せされる
  • 解体を発注する所有者にも、調査費用の負担や、吹付け石綿などがある場合の都道府県知事への届出の義務がある
  • 売るときの説明義務は「調査の記録があれば、その内容」。調査そのものは義務ではない
  • 解体しないなら所有者に調査の義務はなく、建物付きの現況で手放す道がある

解体時の規制の適用と契約上の説明の範囲は、解体業者・宅地建物取引士・弁護士へご確認ください。

築年数の古い家をどうするか決めかねている場合は、所在地と、分かる範囲の着工年をお知らせください。壊さずに取り扱えるかどうかをお伝えします。

よくある質問

古い家にアスベストが使われているかどうかは、どうすれば分かりますか。

はっきり分かるのは、設計図書や仕様書の確認と、建築物石綿含有建材調査者による現地の調査です。目安として、石綿の製造・使用などは2006年9月から禁止されているので、それより前に着工した建物には使われている可能性があります。逆に、着工日が2006年9月1日以降と確認できれば、目視等によらずに石綿なしと判断できるとされています。ただし解体するときは、その確認と記録が事前調査として必要です。

アスベストが使われている家に住んでいて、危険はありますか。

戸建て住宅で多いのは、屋根材・外壁材・内装材などの成形板(レベル3)です。国土交通省の案内では、切断や穴あけを伴わない通常の使用では特別な管理を必要としないとされています。危険が生じるのは、壊す・削る・穴を開けるときです。日曜大工での加工は避けてください。

アスベストがある家を解体すると、費用はどのくらい上がりますか。

建材の種類と量で変わります。吹付け材や保温材(レベル1・2)は作業場所の隔離や届出が要り、費用が大きく増えます。国土交通省は吹付け材の除去費の目安として、処理面積300平方メートル以下で1平方メートルあたり2.0万〜8.5万円(2007年の施工実績)を示しています。成形板(レベル3)は切断や破砕をしない方法で撤去することが原則で、通常の解体より手間が増える分だけ上乗せになります。実際の金額は見積もりを取らないと分からず、地域差もあります。

売るときに、アスベストのことを買主に伝える義務はありますか。

宅地建物取引業者が仲介や売主になる取引では、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容が重要事項説明の項目になっています。調査そのものを売主に義務づけるものではありませんが、知っていることを隠して売ると契約不適合責任を問われることがあります。分かっている範囲を正直に伝えるのが結果として安全です。

調査も解体もせずに、そのまま手放せますか。

解体しないなら、売主の側で事前調査をする義務はありません。建物付きの現況のまま引き受ける買主であれば、調査と解体の判断は引き渡し後に買主側で行うことになります。当社は建物の状態と築年数を確認したうえで現況のまま取り扱うことを基本にしています。お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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