相続登記をしていない家は、名義が亡くなった方のままでは売れません。買主への名義変更は登記簿上の名義人からしかできず、亡くなった方は申請できないためです。ただし、売ることをあきらめる話ではなく、順番の話です。この記事では、売る前に要る戸籍・遺産分割協議・相続登記の順番と費用、止まりやすい3つの型、片付けや解体をせずに現況のまま手放す道を整理します。
相続登記の期限の数え方そのものは相続登記の義務化と期限に、相続人申告登記で売れない理由は相続人申告登記と売却の関係に書いています。ここでは「売るために何が要るか」に絞ります。
名義が親のままだと、なぜ売れないのか
不動産の権利に関する登記は、原則として登記権利者と登記義務者が共同で申請します。
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
売買では、買主が登記権利者、売主が登記義務者です。ここでいう売主は、登記簿に名義人として記録されている人でなければなりません。亡くなった親が名義人のままでは、申請書に署名する人がいないことになります。
だから、相続人への相続登記を先に済ませ、その相続人が売主として買主に名義を移すという2段階になります。
相続登記=亡くなった方から相続人へ、所有権の移転の登記をすること。
遺産分割協議=相続人全員で、誰がどの財産を取得するかを決める話し合い。不動産を1人の名義にするには、この協議の書面が要ります。
2段階といっても、時間を空ける必要はありません。実務では、相続登記と買主への所有権移転登記を同じ日に続けて申請する形(連件申請)が取られます。売却の話を先に進めておき、決済の日に合わせて相続登記を入れることができます。
売る前に要るものと順番
相続登記までの流れを、揃えるものと一緒に表にします。
| 順番 | すること | 揃えるもの | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 相続人を確定する | 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍 | 本籍地が多いと数週間 |
| 2 | 誰が取得するか決める | 遺産分割協議書(相続人全員の実印)、印鑑証明書 | 話し合いの期間しだい |
| 3 | 相続登記を申請する | 1と2の書類、固定資産評価証明書、登記申請書 | 処理期間は法務局により異なる |
| 4 | 売買契約と決済 | 売買契約書、本人確認書類、登記識別情報(権利証) | 買主が決まってから |
1の戸籍は、法務局の法定相続情報証明制度を使うと、一覧図の写しが無料で交付され、登記・預金・年金の手続きに使い回せます(法務局「法定相続情報証明制度について」)。戸籍の束を何度も出し直さずに済みます。
1の段階では、亡くなった方の所有不動産記録証明もあわせて取っておくと安心です。課税明細に載らない私道や山林が出てくることがあり、知らない土地が見つかったまま遺産分割を終えると、あとでもう一度協議をやり直すことになります。
権利証が見つからない場合でも売却はできます。手順は不動産売却に必要な書類をご覧ください。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
費用は登録免許税0.4%と、書類・報酬
相続登記にかかる費用は3つに分かれます。
| 費目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4%(1,000分の4) | 評価額500万円なら2万円 |
| 戸籍・評価証明書などの取得費 | 数千円〜1万円台 | 本籍地の数と相続人の数で変わる |
| 司法書士の報酬 | 地域と相続人の数で変わる | 自分で申請すれば不要 |
登録免許税には、令和9年(2027年)3月31日までの免税措置が2つあります。
個人が相続(略)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。
同条2項は、土地の評価額が100万円以下の場合の相続登記についても登録免許税を課さないと定めています。どちらも土地が対象で、建物は対象外です。申請書に条文を記載しないと免税になりません(法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」)。
相続登記の費用は高いと思われがちですが、登録免許税そのものは評価額の0.4%です。評価額の低い地方の家なら数千円から数万円です。土地の評価額が100万円以下なら土地分は0円になりますが、建物分は評価額の0.4%がかかります。高く感じられるのは、戸籍集めと協議の手間、そして専門家の報酬のほうです。
止まりやすい3つの型
相続登記が何年も済んでいない家には、それぞれ止まっている理由があります。多いのは次の3つです。

| 型 | 何が起きているか | 解き方 |
|---|---|---|
| 協議がまとまらない | 相続人の1人が売却や取得に反対している、費用の負担で揉めている | 話し合いの軸を「金額」から「費用の負担」に変える。共同相続した不動産の売却 |
| 相続人と連絡が取れない | 行方不明、海外在住、疎遠で住所が分からない | 不在者財産管理人、署名証明。不在者財産管理人による不動産の売却、相続人が海外にいる不動産の売却 |
| 名義が祖父母より前で止まっている | 相続が2回、3回と重なり、相続人が十数人になっている | 数次相続の整理。数次相続で未分割になった不動産の売却 |
- 相続人の中に未成年がいる → 特別代理人の選任が要る(特別代理人と未成年の相続)
- 相続人の中に判断能力が不十分な方がいる → 成年後見の手続きが要る
- 登記の住所が古いまま → 相続登記の前に住所のつながりを証する書類が要る
どの型でも、相続登記の申請そのものより、その前の「誰が相続人で、誰が取得するか」を固める段階に時間がかかります。逆に言えば、そこさえ固まれば、あとは書類を揃えて申請する段階です。
連件申請の決済日に、何が確かめられるか
相続登記と売買の登記を同じ日に続けて申請する場合、決済の日には、相続登記の書類と売買の登記の書類が両方揃っていることが前提になります。売主の側で事前に確かめておきたいのは次の点です。
- 遺産分割協議書に相続人全員の実印が押され、印鑑証明書が揃っているか……1人でも欠けると相続登記が出せず、続く売買の登記も出せない
- 売主になる相続人の印鑑証明書が新しいか……売買の登記で使う売主の印鑑証明書は、作成後3か月以内のものでなければならない(不動産登記令第16条第3項(e-Gov法令検索))。協議の段階で取った証明書が古くなっていれば取り直す
- 売主になるのは誰か……売買契約の当事者は、相続登記で名義人になる相続人。協議書に署名した他の相続人は、売買契約の当事者にはならない
協議の時期と決済の時期が離れると、印鑑証明書の取り直しが起きやすくなります。協議書の作成と売却の準備を近い時期に進めておくと、手戻りが少なくて済みます。
売るための相続登記が、義務化への対応も兼ねる
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。取得を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2、164条1項)。2024年4月より前に起きた相続も対象で、その場合の期限は2027年3月31日まで(取得を知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)です(法務省「相続登記の申請義務化について」)。
売ると決めた家については、過料を避けるための登記と、売るための登記は同じものです。期限に追われて相続人申告登記だけ済ませても、名義は動かず売れません。売る見込みがあるなら、初めから相続登記を目指すほうが手続きが1回で済みます。
登記が済んだ後、片付けや解体は要らない
相続登記まで済ませた後で、多くの方が次に悩むのが「片付けてから売るか」「解体してから売るか」です。ここで先に費用を出す必要はありません。
当社は、家財が残った家、古くなった建物、境界が確定していない土地も、現況のまま取り扱うことを基本にしています。片付け・解体・測量を売主にお願いすることはなく、役所や登記の調査も当社で行います。売主に先に出ていただく費用は、相続登記に関わる分までです。
ただし、条件によっては成立しないことがあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。現地と資料を確認したうえでの個別の判断になります。
解体してから売る場合の費用と落とし穴は空き家の解体費用に、売却時の税金は相続した不動産を売ったときの税金にまとめています。
査定で見ているのは「登記の前に固まっているか」
名義が親のままの家のご相談で、当社が先に確かめるのは、建物の状態より前に次の点です。
– 相続人の範囲が確定しているか……戸籍を集め終えているか。数次相続で人数が増えていないか
– 取得する人が決まっているか……協議書はまだでも、全員が「売る」で一致しているか
– 連絡が取れない相続人がいないか……1人でもいれば、先に家庭裁判所の手続きが要る
– 建物の状態と築年数、土地の条件……接道、区域指定、境界。ここで取り扱えるかが決まる
相続人の意向が揃っていれば、登記の手続きと売却の準備を並行して進められます。揃っていなければ、先に揃える段階からのお手伝いになります。
この記事の要点
- 相続登記をしていない家は売れない。買主への名義変更は登記名義人からしかできないため
- 順番は、戸籍で相続人を確定→遺産分割協議→相続登記→売買。登記は決済の日に合わせて入れられる
- 登録免許税は評価額の0.4%。100万円以下の土地と、登記をしないまま亡くなった人の分は令和9年3月31日まで免税
- 止まる型は「協議がまとまらない」「連絡が取れない」「名義が何代も前」の3つ。それぞれ解き方が違う
- 売るための登記と、義務化の過料を避ける登記は同じもの。相続人申告登記では売れない
- 登記が済めば、片付け・解体をせず現況のまま手放す道がある
相続登記の申請と免税措置の適用、税務の扱いについては、司法書士・税理士へご確認ください。
名義が親のままの家をどうするか決めかねている場合は、家の所在地と、相続人の人数、話し合いの状況をお知らせください。登記までに何が要るかと、現況のまま取り扱えるかどうかをお伝えします。
よくある質問
親の名義のままの家を、相続登記をせずに売ることはできますか。
できません。買主への所有権移転登記は、登記簿上の名義人と買主が共同で申請するもので、亡くなった方は申請できないためです。先に相続人へ名義を移す相続登記が要ります。実務では、相続登記と買主への移転登記を同じ日に続けて申請する形が取られます。
相続登記の費用はいくらかかりますか。
登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です(評価額1,000万円なら4万円)。土地の評価額が100万円以下の場合と、相続した人が登記をしないまま亡くなっていた場合は、令和9年3月31日までの免税措置があります。これに戸籍などの取得費用と、司法書士に依頼する場合の報酬が加わります。報酬は地域と相続人の数で変わります。
相続人申告登記をすれば売れますか。
売れません。相続人申告登記は、相続登記の義務を当面果たすための制度で、名義は亡くなった方のままです。売るには遺産分割協議を経て、取得する相続人への相続登記を申請する必要があります。
相続登記をしないまま何年も経っています。過料はかかりますか。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、取得を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象です。2024年4月より前の相続も対象で、その場合は2027年3月31日まで(取得を知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)が期限です。売るには相続登記が必須なので、売るために相続登記を申請すれば、義務も同時に果たせます。
遠方の実家で、片付けも解体もできていません。相続登記だけ済ませれば売れますか。
相続登記が済んでいれば、家財が残ったままでも売却の話は進められます。当社は現況のまま取り扱うことを基本にしていて、片付け・解体・測量を売主にお願いすることはありません。ただし建物の状態や土地の条件、希望額によっては成立しないこともあり、個別の判断になります。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

