増築できない家を売るとき、まず確かめたいのは増築できない理由です。建ぺい率・容積率・接道・既存不適格のどれが理由かで、買主の見方も、売り方も変わります。この記事では、理由ごとの違いと調べ方、現況のまま手放す道を整理します。
「増築できない」と聞くと不利に感じますが、買主が本当に気にしているのは、増築そのものではなく、建て替えができるかと違反がないかです。
増築できない理由は、おもに4つ
増築は、敷地の中にどれだけの建物を建てられるかという決まりの範囲で行います。その範囲を超えている、または増築そのものを許さない事情があるとき、増築できません。
| 理由 | 決まりの中身 | 増築への影響 |
|---|---|---|
| 建ぺい率の超過 | 敷地面積に対する建築面積の割合の上限(建築基準法53条) | 敷地に建てられる面積の余地がない |
| 容積率の超過 | 敷地面積に対する延べ面積の割合の上限(同法52条) | 床面積を増やせない |
| 接道義務を満たさない | 道路との接し方の決まり(同法43条) | 増築も建て替えも制限されることがある |
| 既存不適格 | 建築後の法改正で現行の規定に合わなくなった状態(同法3条2項) | 工事の内容によって、現行規定への適合を求められる |
建ぺい率は用途地域ごとに上限が決まっており、数値は都市計画で定められています。ご自宅の数値は、市区町村の窓口で確かめられます。
窓口に行く前に、割合の当たりを付ける
手元の登記事項証明書(土地の地積と、建物の各階の床面積)があれば、おおよその割合を自分で出せます。
- 建ぺい率 ≒ 1階の床面積 ÷ 敷地の地積 × 100
- 容積率 ≒ 各階の床面積の合計 ÷ 敷地の地積 × 100
たとえば、地積100㎡、1階65㎡、2階50㎡の家なら、建ぺい率はおよそ65%、容積率はおよそ115%です。その地域の指定が建ぺい率60%・容積率100%であれば、どちらも超えている見込みになります。
容積率は、前面道路の幅員が12m未満のとき、幅員のメートル数に一定の数値を掛けた値も上限になります。低層住居専用地域や第一種住居地域などの住居系の地域では、原則として10分の4です(建築基準法52条2項)。幅4mの道路に面していれば4×4/10で160%となり、指定の数値と両方を守る必要があります。
これはあくまで目安です。建築基準法でいう建築面積や床面積は、2階が張り出している、ひさしやバルコニーが大きいなどの理由で、登記の床面積と一致しないことがあります。登記の地積が実測と違うことや、角地などの緩和(同法53条3項)が使える場合もあります。正式な判断は窓口で確かめてください。

「違反」か「既存不適格」かで、売りやすさが変わる
建ぺい率や容積率を超えている家には、2つの場合があります。
既存不適格は、建てたときは適法で、後の法改正や都市計画の変更で、今の規定に合わなくなった状態です。建築基準法3条2項により、すぐに違法にはなりません。
違反建築は、建てたとき、または増築したときから規定に合っていない状態です。無断で増築して建ぺい率を超えた場合などが当たります。違反建築が疑われて役所から違反建築物の是正指導を受けたときの動き方は、別の記事で扱っています。
既存不適格の家でも、増築や改築などの工事に着手すると、原則として現行の規定への適合を求められます(建築基準法3条3項3号)。ただし、工事の内容や規定によっては、同法86条の7と政令で定める範囲で緩和が認められる場合もあります。「今のまま使うのは問題ないが、手を入れるときは確認が必要になる」のが既存不適格です。
| 状態 | 今のまま使うこと | 増築・建て替え | 買主の見方 |
|---|---|---|---|
| 既存不適格 | 問題ない | 現行の規定に合わせる必要がある | 建て替え後の大きさが気になる |
| 違反建築 | 是正を求められる可能性がある | 是正が先に必要になることがある | 融資が付きにくく、買主が限られる |
| 適法(余地がないだけ) | 問題ない | 増築の余地がないだけ | 価格は増築の余地がない分を見込む |
既存不適格か違反かを見分ける手順
見分けるには、建てたときの記録と、都市計画の数値が変わった時期を照らします。まず市区町村の建築指導課で、建築計画概要書の閲覧や台帳記載事項証明書の交付を申し込み、確認済証・検査済証の交付年月日と、当時の床面積を確かめます。台帳記載事項証明書は、確認済証や検査済証を再発行するものではありません。保存されている年代や、検査済の記載があるかどうかは、自治体や物件によって異なります(福岡市の案内)。次に都市計画課で、その土地の用途地域や建ぺい率・容積率が、いつから今の数値になっているかを尋ねます。確認を受けた後に数値が厳しくなっていて、記録の床面積から増えていなければ、既存不適格の可能性があります。反対に、現況が記録の床面積より広い、確認の後に増築した部分がある、という場合は、その部分が違反になっていないかを確かめる必要があります。
増築部分が未登記の場合は、また別の問題が絡みます。登記と建築の両方の不一致は、増築部分が未登記の家は売れる?融資が止まる理由で整理しています。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
調べる順番
理由が分からないまま売りに出すと、買主から指摘を受けたときに話が止まります。次の順で確かめてください。
- 市区町村の窓口で、用途地域・建ぺい率・容積率・前面道路の種別を確認する
- 手元の建築確認済証・検査済証・図面を探す(なければ、窓口で建築計画概要書の閲覧ができるか尋ねる)
- 図面と現況を照らし、増築した部分がないかを確かめる
- 増築部分があれば、いつ誰がしたか、確認申請をしたかを調べる
検査済証が見つからない場合の考え方は、検査済証がない家は売却できる?融資が付かない理由と現況で手放す方法に書きました。
なお、増築の工事のときの確認申請は、防火地域・準防火地域外で、増築部分の床面積の合計が10平方メートル以内であれば不要です(建築基準法6条2項)。小さな増築で申請がなかったからといって、直ちに違反とは限りません。ただし、建ぺい率や容積率は、確認申請の有無とは関係なく守る必要があります。
売り方は3つ
| 売り方 | 中身 | 向いているとき | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 理由を整理して、通常の売却に出す | 調べた内容と資料を添えて売る | 適法で、増築の余地がないだけの場合 | 融資が付くかは、買主の金融機関が判断する |
| 是正してから売る | 違反部分を直す、または撤去する | 違反の範囲が小さく、是正の費用が見込める | 費用が先にかかる。撤去すると使い勝手が変わる |
| 現況のまま売る | 理由と状態を告げて、そのまま売る | 先に費用を出したくない・出せない | 価格は余地のなさや不確かさを見込んだ水準になる |
理由ごとに、検討する買主の層と価格への響き方の傾向は次のように分かれます。
| 状態 | 主に検討する買主 | 価格への響き方の傾向 |
|---|---|---|
| 適法で、増築の余地がないだけ | 住宅ローンを使う一般の個人も検討しやすい | 増築できない分を見込むが、4つの中では影響が小さめになりやすい |
| 既存不適格 | 一般の個人も検討するが、建て替え後の大きさを気にする。融資は金融機関ごとの判断 | 建て替えで今より小さくなる分を見込んだ水準になりやすい |
| 違反建築 | 融資が使いにくく、現金で買う個人・不動産業者・投資家が中心 | 是正の費用や手間を見込むため、下がりやすい |
| 接道を満たさない | 不動産業者・投資家、隣地の所有者などに限られやすい | 建て替えできない前提で見られるため、下がり幅が大きくなりやすい |
実際の価格は、立地、建物の状態、違反の範囲で大きく変わるため、一律の割合ではお示しできません。
どの場合も、知っている違反や既存不適格の事実は、契約の前に伝えることが大切です。民法572条により、知りながら告げなかった事実は、責任を負わない特約があっても免責されません(e-Gov法令検索)。
接道が理由で増築も建て替えもできない土地は、再建築不可の問題です。出口は再建築不可物件が売れない理由|現況のまま手放す5つの出口で説明しています。
費用を先に出さずに手放す道
是正にも調査にも費用がかかります。それを先に出せないとき、現況のまま引き受けられる買主に相談する道があります。
当社は、増築できない事情のある家でも、片付け・解体・測量を先にしていただく前提では見ていません。建物の状態と築年数を確認し、増築できない理由、土地の条件から、扱えるかを物件ごとに判断します。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。物件の種類を問わない全体のご案内は、訳あり物件の買取相談のページにまとめています。
ご相談のとき、次の情報があると話が早く進みます。
- 増築できないと言われた時期と、言われた相手(役所・不動産会社・施工会社など)
- 建築確認済証・検査済証・図面の有無
- 増築や改築をした経緯(いつ・誰が・どの部分か)
- 所在地と、登記上の名義人(相続前の名義のままでも構いません)
条件によっては成立しないこともあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

増築できない家を売る順番
- 用途地域・建ぺい率・容積率・道路の種別を窓口で確かめる
- 確認済証・検査済証・図面と、現況の増築部分を照らす
- 適法か、既存不適格か、違反かを整理して、契約の前に伝える
- 費用を先に出せなければ、現況のまま相談する
増築できない家は、理由を調べるまで価値が測れない物件です。調べた内容をそろえるだけで、買主との話は進みやすくなります。
よくある質問
増築できない家は売れますか。
売却は可能ですが、条件によっては買主が見つかりにくいこともあります。増築できない理由によって、買主の見方は大きく変わります。建ぺい率や容積率が理由なら、増築の余地がないことが価格に響きます。接道が理由なら、建て替えもできない可能性があり、買主の層が限られます。まず理由を調べておくと、説明がしやすくなります。
増築できない理由は、どこで調べられますか。
市区町村の建築指導課や都市計画課の窓口で、用途地域、建ぺい率、容積率、道路の種別を確認できます。自治体によっては、ホームページの都市計画情報で調べられます。あわせて、手元の建築確認済証や検査済証、図面を確認します。
建ぺい率を超えている家は、違法建築ですか。
一概には言えません。建てた時点では適合していたものが、後の法改正や都市計画の変更で合わなくなった場合は、既存不適格として扱われ、すぐに違法になるわけではありません(建築基準法3条2項)。一方で、建てたあとに無断で増築して超えた場合は、違反の可能性があります。どちらかは、建築確認の記録と現況を照らして確かめます。
既存不適格の家は、建て替えるとどうなりますか。
建て替えるときは、そのときの規定に合わせる必要があります。建築基準法3条3項3号により、増築や改築などの工事に着手すると、原則として現行の規定への適合を求められます。ただし、工事の内容や規定によっては、同法86条の7と政令で定める範囲で既存不適格の部分に緩和が認められる場合があり、対象になるかは窓口で確かめます。今と同じ大きさの家が建てられないことがあるため、買主は建て替えの可否を気にします。
増築できない家を、そのまま引き受けてもらえますか。
現況のまま相談できます。片付け・解体・測量を先にしていただく必要はありません。増築できない理由、建物の状態、築年数、土地の条件を見て、扱えるかを物件ごとに判断します。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。希望額との開きなどで成立しないこともあります。
この記事の監修者
このような物件のご相談は、訳あり不動産の買取相談のページへ。
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どこで断られたかを伺うことはしません。断られた理由の方が、判断に必要です。
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