実家の売却を親族に反対されたら|単独名義なら決められます

襖が外れ天井材が落ちた和室

実家の売却を親族に反対されている場合でも、登記の名義がご自分の単独であれば、法律上は他の親族の同意なく売ることができます。民法206条が、所有者は法令の制限内において自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有すると定めているためです。ただし、その前に確かめておくことがいくつかあります。

「親戚に管理して守っていけと言われている」というご相談は実際にあります。多くの場合、法律の問題というより、誰も費用を計算していないまま話だけが進んでいる状態です。

目次

単独名義なら、法律上は同意はいらない

不動産を売れるかどうかは、登記上の所有者が誰かで決まります。

  • 単独名義 … 名義人の判断だけで売却できます。他の親族に止める権利はありません。
  • 共有名義 … 売却には共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば進みません。

反対している親族が共有者でないのであれば、その反対は法的な効力を持ちません。ここを取り違えたまま何年も動けずにいる方が、実際に多くいらっしゃいます。

「反対されている」と「売れない」は別のことです。まず、自分にその決定権があるのかどうかをはっきりさせてください。ここが決まらないと、話し合いも空回りします。

それでも先に確かめておきたい3つ

単独名義でも先に確かめる3つ
登記を見るところから始める

1. 相続登記が本当に完了しているか

固定資産税の納税通知が自分に届いているから名義は自分だ、と考えている方が少なくありません。納税通知は相続人の代表者宛てに届くことがあり、名義の確認にはなりません。法務局で登記事項証明書を取り、所有者の欄を見てください。

2. 遺産分割協議が済んでいるか

遺産分割協議書がないまま相続登記だけ入っている、という状態もあります。協議が終わっていなければ、実態は相続人全員の共有です。この場合、反対している親族に本当に権利があることになります。

3. その家に親族が住んでいないか

名義が自分でも、無償で住まわせている状態は使用貸借にあたり、すぐに出て行ってもらえるとは限りません。配偶者居住権が設定されている場合も同じです。売却を進める前に、居住の経緯を整理しておいてください。

1と2は、登記事項証明書を1通取れば大部分が分かります。オンラインでも請求できます。反対する親族と話し合う前に、まずこれを手元に置いてください。根拠のないまま話すと、感情の問題に流れます。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

「守っていけ」と言われたときの、決め手になる質問

反対の中身は、だいたい次の4つに分かれます。それぞれ返し方が違います。

「守れ」と言われたときの、中身の分け方
反対の理由によって、返し方が変わる

どれに当たるかは、聞き方で分かります。「売った場合、いちばん困ることは何ですか」と尋ねてみてください。お墓の話が出るのか、世間体の話が出るのか、自分が使いたいという話が出るのかで見当が付きます。

ここを取り違えると、いくら費用を説明しても響きません。相手が気にしているのが世間体なら、金額の話は的外れになります。

そのうえで、決め手になる質問が一つあります。

「では、そちらで引き取って管理していただくことはできますか」

これを聞くと、多くの場合は断られます。そして、断られたという事実そのものが、ご自分で決めて進める根拠になります。守れと言う側は、たいてい費用も手間も計算していません。

持ち続けると、毎年いくら出ていくのか

感情の話を数字の話に戻すと、議論が前に進みます。次の項目を書き出して、親族に見せてください。

費目どこで金額が分かるか
固定資産税・都市計画税毎年届く課税明細書に、そのまま記載されています
火災保険料保険証券。空き家は引き受けの条件が変わることがあります
草刈り・剪定・見回り地元の業者に一度見積もりを取ると年額が出ます
水道・電気の基本料金検針票。止めていれば不要です
行き来の交通費遠方なら、年に何回行くかで計算します
将来の解体費用複数社の見積もり。今壊しても20年後でも、いずれ発生します

このうち固定資産税は、課税明細を見ればご自分で正確に出せます。推測ではなく実額を示すのが要点です。「毎年これだけ出ていて、この先も続きます」と紙で示されると、反対していた側の反応が変わることがあります。

建物を解体して更地にすると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がる可能性があります。「とりあえず壊して土地で持っておけばいい」という提案が親族から出ることがありますが、負担はむしろ増えます。解体費用が払えない状態から動けなくなる前に、壊さずに手放す道も含めて比べてください。

墓と仏壇は、土地とは別の話

反対の理由としてもっとも多いのがこれですが、法律上は完全に切り離されています

民法897条は、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定めています。被相続人が指定していれば、その人が承継します。これらは通常の相続財産とは別に扱われる財産です。

つまり、実家の土地建物を売却しても、お墓を守り、仏壇を引き継ぐことはできます。逆に、土地を持ち続けることが祭祀を続ける条件になっているわけでもありません。

「家を売ったらご先祖に申し訳ない」という気持ちは自然なものですが、制度の上では別々のものだと知っておくと、話し合いの材料が一つ増えます。

角を立てずに進める順番

法的に決められるからといって、黙って売ってしまうと関係が壊れます。順番を踏むだけで、ほとんどの場合は収まります。

  1. 登記事項証明書を取り、自分に決定権があるかを確定させる。
  1. 維持費を書き出し、実額を共有する。 課税明細をそのまま見せるのが早いです。
  1. 親族に、先に買い取りや引き取りを打診する。 「売るなと言うなら、あなたが引き取ってください」という筋です。応じてもらえるなら、それがいちばん円満です。
  1. 断られたら、その旨を伝えて期限を区切る。 「◯月までにご返事がなければ、進めます」と伝えます。
  1. 決めたら動く。 期限を切らないと、この話は何年でも続きます。
  • 反対されるのが怖くて相談自体をせず、10年以上そのままにしてしまった
  • 話し合いの途中で契約まで進み、親族が出てきて解除・違約金の問題になった
  • 「とりあえず解体」と言われて壊したら、税額が上がって負担だけ増えた

決めきれないまま契約に進まないこと

これは売る側だけでなく、買う側にとっても重要です。契約後に親族が出てきて白紙に戻ると、手付金や違約金の話になります。

当社にご相談いただく場合も、親族との話がついていない段階では、まず状況の整理からお手伝いします。急かすことはしません。名義が単独であることが確認でき、ご本人が決めた段階で、家財が残ったまま、建物が古いままでもお引き受けできる場合があります。

ただし、場所や状態によってはお引き受けできないこともあるため、個別の判断になります。まずは登記事項証明書と課税明細書を手元に置いて、いまの状態のままご相談ください。

登記や遺産分割の手続きについては司法書士へ、親族間で争いになっている場合は弁護士へ、税金の取り扱いについては税理士へご確認ください。

よくある質問

実家の売却に、親族の同意は必要ですか。

登記が単独名義であれば、法律上は必要ありません。民法206条は、所有者は法令の制限内において自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有すると定めています。共有名義の場合は全員の同意が要りますが、単独名義なら名義人の判断で進められます。

課税明細に自分の名前があれば、単独名義ということですか。

そうとは限りません。固定資産税の納税通知は代表者宛てに届くことがあり、名義が実際にどうなっているかは登記事項証明書でしか確認できません。相続登記が済んでいない、遺産分割協議が終わっていないという場合、実態は相続人全員の共有です。この状態だと親族に本当に権利があるため、まず登記を確かめてください。

お墓や仏壇を継いでいるので、土地も手放せないのでしょうか。

別の話です。民法897条により、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定められており、通常の相続財産とは切り離して扱われます。土地や建物を売っても、お墓や仏壇を守り続けることはできます。

親族が住んでいる場合はどうなりますか。

名義が自分でも、すぐに明け渡してもらえるとは限りません。無償で貸している状態は使用貸借にあたり、いつでも自由に出て行ってもらえるわけではないためです。配偶者居住権が設定されている場合も同様です。売却を進める前に、居住の状態と経緯を整理しておく必要があります。

話がまとまらないまま、売却を進めても大丈夫ですか。

おすすめしません。契約後に親族が出てきて解除ということになると、手付金や違約金の問題が生じます。急ぐ事情がある場合ほど、先に親族へ打診して記録を残しておくほうが、結果的に早く終わります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷再建築不可市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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