空き家の解体補助金は自治体で条件が違う|対象外になる5つの型

木々に飲み込まれたトタン屋根の建物と散乱した廃材

空き家の解体補助金は多くの市町村にありますが、補助率も上限額も「出る条件」も自治体ごとにまったく違います。制度はあるのに、調べてみると自分は対象外だった、というケースのほうがむしろ多いのが実情です。

この記事では、9つの市が公表している令和8年度の要綱・案内(一次情報)を読み比べて、何が「通るかどうか」を決めているのかを5つの型に整理します。読み終えたときに、ご自身の市町村で何を確認すればよいかが分かる状態を目指します。

目次

「補助金がある」と「自分が使える」は別の話

まず前提として、解体補助金は国の一律の制度ではありません。市町村ごとの要綱で動いていて、名称からして「老朽危険空家等除却費補助金」「老朽空き家除却促進事業」「老朽空家対策補助金」と揃っていません。

中身の幅も想像以上です。令和8年度の各市の要綱を並べると、補助率は3分の1から10分の9まで、上限額は30万円から160万円まで開きがありました。計算式も「除却費×10分の8×3分の2」のような形の市があり、率の見た目だけでは比較できません。

そして金額より大事なのが、出る条件の違いです。9市の要綱から読み取れた「通るかどうかを決めている条件」は、次の5つの型に整理できます。

解体補助金の出る条件を決めている5つの型
同じ「空き家の解体補助金」でも、市町村ごとに見ている点が違います

補助金の案内で最初に見るべきは金額ではなく、自分と建物がそもそも対象に入っているかです。以下、型ごとに実際の要綱を見ていきます。

建物の状態で決まる:傷みが足りないと1円も出ない

多くの市は、建物の危険度を点数で判定します。丹波市の令和8年度の制度は、この点数で補助率が4段階に分かれる分かりやすい例です。

区分(丹波市・令和8年度)補助率上限額
判定100点以上で国・県の補助対象となるもの5分の4160万円
判定50点以上100点未満4分の150万円
同一敷地内の附属建物(判定50点以上)5分の120万円
自治会等が自ら解体・伐採等を行う場合10分の1050万円

50点未満なら1円も出ません。50点台でも4分の1・上限50万円で、100点以上との差は3倍以上あります。つまりこの制度は、危険な建物ほど手厚く出る設計です。

同じ構図は他の市にもあります。松山市は「不良度判定が100点以上」、札幌市は市の事前確認で「危険性があると判定された空き家」だけが対象です。姫路市も、構造の腐朽や破損の程度が著しい「不良住宅」であることを求めています。

出典: 丹波市 老朽危険空き家解体撤去支援事業/松山市 老朽危険空家除却事業/札幌市 危険空家等除却補助制度/姫路市 老朽空家対策補助金。いずれも2026年9月時点の掲載内容です。

点数を付けるのは市の職員による現地調査で、自分では決められません。「まだ十分住めそうな家」は、所有者にとっては価値が残っていて良い話のようですが、解体補助金の世界では対象外になりやすいということです。「補助が出ると聞いたのに、調査の結果対象外だった」という行き違いは、ここで起きます。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

人の条件と権利関係で決まる:所得・共有・抵当権

建物が十分傷んでいても、人と権利の側で落ちる市があります。ここが今回の読み比べでいちばん差が大きかった部分です。

長野市には所得の条件が出てきますが、かかる場所に注意が要ります。基本の補助(限度額100万円)に所得の条件はありません。所得が関わるのは、そこに最大20万円が足される上乗せ補助のほうです。

上乗せの対象は「申請日の前年の所得金額が200万円以下の方」で、共有物や相続人が申請する場合は「所有権を有する全ての方のそれぞれに係る前年の所得金額が、200万円以下である必要があります」とされています。相続した空き家は兄弟姉妹の共有になっていることが多いので、全員がそれぞれこの基準を満たすのは簡単ではありません。

ただし満たせなくても基本の補助まで消えるわけではない点は押さえておいてください。あわせて、滞納市税がないことの納税証明書も必要です。

福井市は、申請できる人を「所有権の全部を有するもの、所有権の全部を相続したもの、所有権者全員の委任を受けた者など、処分の権限を有すると認められる者」に限っています。共有者が1人でも連絡が取れなければ、委任が揃わず入口で止まります。

権利の側では抵当権が壁になります。熊本市の平時の補助(老朽空き家除却促進事業)は「抵当権等が設定されていない空き家」が原則の要件です(すべての権利者が除却に同意している場合は例外との但し書きがあります)。福井市も「差押えや抵当権など、所有権以外の権利の設定がされていないこと」、松本市も所有権以外の権利(土地に係る権利を除く)が設定されていないことを要件にしています。

  • 共有者の1人に前年所得200万円超の人がいる(長野市の型では上乗せ補助が受けられない。基本の補助は残る)
  • 相続登記が済んでおらず、相続人全員の委任も揃っていない(福井市の型では申請できない)
  • 完済したはずの古い住宅ローンの抵当権が登記に残っている(熊本市・福井市・松本市の型では原則対象外)
  • 市税に滞納がある(長野市・松本市などで対象外)
  • 名義が法人になっている(札幌市は個人のみで法人は申請不可)

出典: 長野市 老朽危険空き家の解体工事補助金/福井市 老朽危険空き家等除却支援事業/熊本市 老朽空き家除却促進事業/松本市 老朽危険空家等除却費補助金。いずれも2026年9月時点の掲載内容です。

このうち抵当権は、完済していても抹消登記をしていないだけで登記簿に残り続けます。ご自身では気づいていないことも多いので、法務局で登記事項証明書を取って確かめる価値があります。

市場性で決まる:「売れる家」には出ない

見落とされがちな型がこれです。北九州市の令和8年度の制度は、対象空き家の要件が2段構えになっています。原則として昭和56年5月以前に建築され、一定の危険度が認められることに加えて、市の判定で「市場流通が困難」と判定された空き家に限られます。

手続きの順序も決まっていて、解体に着手する前に「判定依頼申出書」を出し、市が補助対象と判定した場合にのみ交付申請に進めます。補助率は3分の1以内・上限30万円です。

出典: 北九州市 老朽空き家等除却促進事業。2026年9月時点の掲載内容です。

この建て付けが意味するのは、補助金は「市場で処分できない家」のための最後の手段として設計されている、ということです。売れる見込みがあると判定されれば補助は使えず、「売ってください」という整理になります。

「補助金で壊してから売りたい」という順番を考えている方は多いのですが、この型の市では、その順番自体が要綱と噛み合いません。逆に「市場流通が困難」と判定されるような家は、一般の仲介では買い手がつきにくい家でもあります。そうした物件の出口については後半で書きます。

時期で決まる:予算は早く尽き、準備は前年から始まる

条件を全部満たしていても、時期で使えないことがあります。

解体補助金は年度ごとの予算で動いていて、申請額が予算に達すると年度の途中でも受付が終わります。令和8年度の実例では、年度が始まって3か月足らずの6月の時点で「申請額が予算額に達したため、受付を終了しました」と告知した市(松本市)や、第2次受付が募集枠への到達で終了した市(松山市)がありました。個別の締切日を覚えるより、「年度ごとに募集され、予算に達したら終わる」という仕組みとして理解しておくほうが役に立ちます。

さらに、申請の前段階が前年から始まる市もあります。姫路市は、令和9年度の解体補助の対象になるかどうかの現地調査を「原則令和8年10月から令和9年3月の間に実施」すると案内しています。つまり補助を使いたい年度の前の秋から冬に動いていないと、その年度には間に合わない建て付けです。

解体補助金を使うときの順番
相談→調査・判定→交付申請→交付決定→契約・着手。この順番を逆にできません

「来年あたり実家を壊そうか」と考え始めた時点が、役所に行くタイミングです。年度が明けてから調べ始めると、調査が間に合わない・予算が尽きているという形で、条件を満たしていても1年待ちになることがあります。

だから、見積りを取る前に役所へ行く

ここまでの5つの型は市によってばらばらでしたが、1つだけ、ほぼ共通するルールがあります。交付決定前に工事に着手すると(契約を含む)、補助の対象にならないことです。この趣旨の注意書きは、札幌市・北九州市・熊本市・丹波市・松本市の令和8年度の案内でそれぞれ確認できます。

解体業者に先に見積りを頼むと、そのまま契約まで話が進みがちです。契約した時点で補助金が消える市が多い以上、順番は必ず「役所が先、業者があと」です。

これは補助金だけの話ではありません。空き家を解体すると土地の固定資産税が上がりますが、その増加分を減免する条例を設けた市町村も出てきており、こちらも壊す前に認定や申請を済ませていないと受けられない建て付けです。詳しくは空き家を解体したあとの固定資産税にまとめています。補助金と減免、別々の制度が同じ結論を指しています。

なお、地震などの災害時に行われる公費解体(自治体が費用を負担して被災家屋を解体する制度)は、平時の解体補助金とは別の制度です。

ただし抵当権の扱いについては、熊本市の場合、平時の補助も災害時の公費解体も「すべての権利者が除却に同意していれば進められる」という同じ建て付けになっています。平時の要件には但し書きがあり、公費解体にも抵当権者の同意書の様式が用意されています。

抵当権が付いているから即座に対象外、とは限りません。同意を集められるかどうかが実務上の分かれ目です。災害時の制度は公費解体と相続の壁で書いています。

役所に行くときに聞くことを、そのまま使える形にしておきます。

  • 空き家の解体補助金の制度はあるか。今年度の受付は残っているか
  • 対象になるかの判定方法(危険度の点数・現地調査)と、調査の申込み時期。翌年度分の調査が今年から始まっていないか
  • 所有者側の要件(所得・市税の滞納・共有者全員の同意や委任・法人の可否)
  • 抵当権や差押えが登記に残ったままでも申請できるか
  • 交付決定前の契約・着手は対象外か。「着手」に契約が含まれるか
  • 補助金は工事後の精算払いか。先に工事費全額の立替えが必要か
  • あわせて、解体後の固定資産税の減免制度はあるか

補助が使えないと分かったときの出口

読み比べて分かるとおり、解体補助金は「危険なほど傷んだ家を、所得の少ない所有者が、権利関係をきれいにしたうえで、年度の早い時期に申請する」ことを想定した制度です。どれか1つでも外れると使えず、しかも使えたとしても、多くは工事後の精算払いで、上限を超える分は自己負担です。

補助金が使えない・足りないと分かったときの選択肢は、大きく3つです。

  • 自費で解体する:解体後は土地の固定資産税が上がる点まで含めて資金を見積もる
  • 翌年度を待つ:現地調査や申請時期を逆算して、前年のうちに役所で段取りを確認する
  • 壊さずに手放す:建物が建ったまま引き受けてもらえる相手を探す

当社は訳あり不動産の買取を行っている会社です。再建築不可や市街化調整区域であることだけを理由に、査定や取扱いの対象外とはしていません。建物の状態と築年数を確認したうえで判断し、必要な調査は当社で行いますので、売主の方に役所を回って調べていただく必要はありません。

現況のままで結構です。片付け・解体・測量をしてからというお話にはなりませんので、「補助金が使えず、解体費も出せない」という状態のままご相談いただけます。ただし、ご希望額との開きが大きい場合や、相続人の間で合意が整っていない場合など、条件によっては成立しないことがあります。

補助金や減免の適用可否を最終的に判断するのは各市町村です。税額や譲渡所得の扱いは税理士へ、相続登記や抵当権の抹消は司法書士へご確認ください。そのうえで「壊すべきか、壊さずに手放すべきか」を迷っている段階のご相談でも構いません。

よくある質問

空き家の解体補助金は、どの市町村にもありますか。

制度が無い市町村もあります。あっても名称が「老朽危険空家等除却費補助金」「老朽空き家除却促進事業」などばらばらで、検索しても見つからないことがあります。空き家対策・建築住宅の担当課に電話で聞くのが確実です。制度があっても、要件は市町村ごとに大きく違います。

解体補助金はいくらもらえますか。

自治体差が非常に大きいです。令和8年度の要綱では、補助率3分の1・上限30万円という市から、自治会や地域と連携する型で10分の9・上限150万円という市まで幅がありました。また多くの制度は工事完了後の精算払いなので、工事費はいったん全額自分で支払う建て付けです。

抵当権が残っている空き家でも解体補助金は使えますか。

市によって扱いが違います。熊本市は「抵当権等が設定されていないこと」を要件にしていますが、すべての権利者が除却に同意していればこの限りでない、という但し書きがあります。福井市は差押えや抵当権など所有権以外の権利が設定されていないこと、松本市も同趣旨の要件を置いています。住宅ローンや古い抵当権が残っている場合は、同意を得られる見込みも含めて、まず市の窓口で確認してください。

解体業者と契約したあとから補助金を申請できますか。

対象外になる市が多いです。交付決定前の着手(契約を含む)は補助の対象にならない旨が、札幌市・北九州市・熊本市・丹波市・松本市の案内で確認できます。工事はもちろん、契約すら申請の前にしてはいけない建て付けなので、見積りを取る前に市町村の窓口へ行くのが安全です。

補助金の対象外と言われました。解体せずに手放す方法はありますか。

建物を残したまま、現況のまま買い取る会社に相談する方法があります。当社は再建築不可や市街化調整区域であることだけを理由に取扱いの対象外とはせず、建物の状態と築年数を確認したうえで判断しています。片付け・解体・測量は不要です。ただし希望額との開きや相続人間の合意が整っていない場合など、条件によっては成立しないことがあります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

訳あり不動産の売却でお困りなら

どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。

相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。

片付け・解体・測量の費用を、先にご負担いただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。

お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

目次