隣家の屋根や塀がこちらにはみ出している。あるいは、こちらの木の枝や塀が隣に出ている。越境があっても、土地は売れます。撤去してから売る必要もありません。実務では将来の扱いを覚書にして引き継ぐのが一般的です。この記事では、書面に何を入れるのか、応じてもらえないときにどうするかを整理します。
よくある越境
| よくある形 | 気づくきっかけ |
|---|---|
| 隣家の屋根・軒・雨樋が出ている | 測量したとき、または売却の相談をしたとき |
| ブロック塀が境界線をまたいでいる | 昔からそこにあり、誰も気にしていない |
| 樹木の枝・根 | 落ち葉や日照で近隣から連絡が来る |
| 給排水管が隣地の下を通っている | 工事のときに初めて分かる |
| エアコンの室外機・物置 | 現地を見て分かる |
所有者に落ち度がないことがほとんどです。建てたときの職人の判断だったり、何十年も前からそうだったりします。
撤去せず、決めておく

いま壊す必要はありません。
「将来、建て替えや修繕のときに解消する」と書面で約束しておくのが実務です。
費用も工事も先に発生しません。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
覚書に入れる4つのこと
- 越境している物と、その場所(図面と写真を添える)
- 現状はそのままとすること
- 将来、建て替えや修繕の際に撤去すること
- 所有者が変わっても効力が及ぶこと(承継の条項)
最後の承継の条項が、いちばん大事です。
これが無いと、どちらかの所有者が変わったときに、一から話をし直すことになります。
相続で所有者が増えていれば、なおさら難しくなります。
隣が応じてくれないとき
覚書は相手の協力が前提です。応じてもらえないこともあります。
その場合でも、越境の事実を記録して、買主に説明したうえで売る道があります。
- 写真を撮る(越境している物、境界標、全体が分かる引きの写真)
- 図面に落とす(どこがどれだけ出ているか)
- これまでの経緯を書き出す(いつから、どういうやり取りがあったか)
- 買主に説明したうえで、契約書に明記する
争いになっている場合は、その事実も伝えてください。「以前、隣の人と揉めた」は、買主にとって重要な情報です。
黙って売ると、後から返ってきます
第五百七十二条 売主は、(中略)担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実(中略)については、その責任を免れることができない。
現況渡しにして免責しても、知っていて告げなかった事実は免れません。詳しくは現況渡しとはにまとめました。
伝えて価格に反映するほうが、結果として安全です。越境は、伝えたからといって取引が壊れるものではありません。
こちらが越境している場合
扱いは同じですが、買主から見ると「将来撤去する義務を引き継ぐ」ことになります。
- 何を、いつまでに撤去するのか
- 撤去にかかる費用の見込み
- 隣地との関係(覚書があるか、口約束か)
費用の見込みまで説明できると、話が進みやすくなります。
進め方の順番
- 現地で越境を確認し、写真を撮る
- 境界標を探す(無ければ境界未確定のまま売る場合を参照)
- 隣地の方に、覚書を交わしたい旨を伝える(責める形にしない)
- 応じてもらえれば4つの条項を入れた覚書を作る
- 難しければ、記録を残して買主に説明する
3の伝え方に気をつけてください。「あなたの家がはみ出している」と切り出すと、まとまるものもまとまりません。「売却にあたって整理したい」という入り方が現実的です。
当社は越境がある土地も現況のまま扱っています。覚書を先に取り交わしていただく必要はありません。ただし隣地と争いがある場合はお引き受けできないことがあります。まず所在地と、越境の状況をお知らせください。
境界まわりの全体像は未登記・私道・境界の買取相談にまとめています。
よくある質問
越境があると売れませんか。
売れます。越境物を撤去してから売る必要はありません。実務では、越境の事実を確認したうえで、将来建て替えるときに解消する旨を覚書にして引き継ぐ形が一般的です。買主も、書面があれば安心して判断できます。
覚書には何を書けばいいですか。
越境している物と場所、現状はそのままとすること、将来の建て替えや修繕の際に撤去すること、そして所有者が変わっても効力が及ぶこと。この4点が要点です。とくに最後の承継の条項が無いと、所有者が変わったときに一から話をし直すことになります。
隣の人が覚書に応じてくれません。
応じてもらえない場合でも、越境の事実を写真と図面で記録し、買主に説明したうえで売る道があります。ただし、隣地と争いになっている場合はその事実も伝える必要があります。黙って売ると、後から責任を問われます。
こちらが越境している場合はどうなりますか。
同じく覚書で決めておきます。買主にとっては「将来撤去する義務を引き継ぐ」ことになるため、その内容が明確でないと敬遠されます。撤去にかかる費用の見込みも含めて説明できると、話が進みやすくなります。
越境を伝えずに売ったらどうなりますか。
民法572条により、売主が知りながら告げなかった事実については、契約不適合責任を負わない特約をしていても責任を免れられません。後から発覚すれば、損害賠償や契約解除を求められる可能性があります。
この記事の監修者
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