がけ条例で土地が売れない?古い擁壁の家の売り方と確認点

急斜面の上に建つ古い戸建て

擁壁の上に建つ実家を相続したら、仲介の会社に「がけ条例があるので難しい」と言われた。そう聞いて、何が難しいのか分からないまま止まっている方は少なくありません。

売れにくい理由は、建て替えるときに擁壁の安全対策を求められる可能性があり、その見通しが買主に見えないことです。売れないと決まったのではありません。まず役所の建築指導課に、がけ条例の対象か、擁壁の許可・検査の記録があるかを聞くところから始まります。

目次

がけ条例は、全国共通の法律ではない

「がけ条例」は通称で、法律の名前ではありません。根拠になっているのは建築基準法40条です。

第四十条 地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模に因り、この章の規定又はこれに基く命令の規定のみによつては建築物の安全、防火又は衛生の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。

——建築基準法第40条(e-Gov法令検索)

つまり、がけの制限は都道府県などが条例で上乗せするもので、自治体ごとに内容が違います。

国の法律側には、19条4項に「建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない」という一般的な定めがあります。

具体例を2つ見ます。

自治体条例がけの扱い(条文の内容)
東京都建築安全条例6条高さ2mを超えるがけの下端から、がけ高の2倍以内に建築物を建てる、または敷地を造成する場合は、高さ2mを超える擁壁を設ける。例外あり
神奈川県建築基準条例令和8年4月1日から、条例の対象となるがけの高さを3m超から2m超へ変更。がけ下の条例適用範囲の起点を、がけの上端からがけ下端へ変更。県の所管区域の市町村だけが対象(下記)

神奈川県の改正が関係するのは、県の案内資料で県の所管区域とされている市町村で、逗子市・伊勢原市・南足柄市などが入ります(令和8年1月13日現在)。

横浜市・川崎市・相模原市などは入っていないので、表の数字は当てはめず、その市の建築指導課にどの基準が当たるかを確かめてください。自分の市町村が県の所管区域かは、県の資料で確認できます。

自分の土地の条例を探すときは、多くの場合は都道府県(または建築行政を担う市)の例規集で、「建築安全条例」「建築基準条例」といった名前の条例を開き、「がけ」の条文を見ます。

名前も条文番号も自治体で違うため、表の数字を自分の土地に当てはめず、建築指導課に地番を伝えて「この土地は、がけの規定の対象になりますか」と聞くのがいちばん早い方法です。対象外の場合も、その回答をメモに残しておくと、買主への説明に使えます。

東京都の条文は東京都例規集で、神奈川県の改正内容は県の案内資料で確認できます。

基準は自治体ごとに違い、改正で変わることもあります。隣の県の記事や古い解説の数字を、そのまま自分の土地に当てはめないでください。神奈川県の例では、2026年4月から、県の所管区域の市町村で対象のがけが広がりました。

以前は問題なかった土地が、売却時点では制限を受ける側に入っていることもあり得ます。

がけ条例が関係する範囲のイメージ
がけの高さと、下端からの距離で条例の対象かどうかが決まる

売れない理由は、買主に見えないものが3つあること

買主が不安になるのは、がけ条例そのものより、次の3点です。擁壁を造り直すことになるのか、なるならどの程度なのかが読めないこと。既存の擁壁にひび割れや水抜き穴の不足がないか、記録があるかが分からないこと。

金融機関が擁壁の適法性や検査の記録を求めて、融資が付くか見通せないこと。

売主が調べられるのは、2つ目の既存の擁壁の記録です。

建築基準法19条4項は、建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合に、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならないと定めています(建築基準法第19条(e-Gov法令検索))。

条例がなくても、がけの近くでは擁壁などの安全対策が建築の前提になる、ということです。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

古い擁壁は「記録があるか」で扱いが分かれる

擁壁の記録は、主に2つの法律から生まれます。

1つ目は盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)です。 規制区域内で一定規模以上の切土・盛土を行う場合、それに伴う擁壁の工事には都道府県知事の許可と完了検査が必要です。12条で許可、17条で完了検査を定めています。

この法律は、2023年5月に旧宅地造成等規制法から改正されて施行されました。

第十二条 宅地造成等工事規制区域内において行われる宅地造成等に関する工事については、工事主は、当該工事に着手する前に、主務省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、宅地造成等に伴う災害の発生のおそれがないと認められるものとして政令で定める工事については、この限りでない。

——宅地造成及び特定盛土等規制法第12条第1項(e-Gov法令検索)

ただし書のとおり、政令で定める工事は許可が要りません。規制区域内のすべての工事が対象になるわけではない点に注意してください。

2つ目は建築基準法88条です。 88条1項は、擁壁などの工作物で政令で指定するものに、建築確認(6条)や完了検査(7条)などの規定を準用しています。政令(建築基準法施行令138条1項)が指定しているのは「高さが二メートルを超える擁壁」です。

つまり、高さ2mを超える擁壁を造る場合は、工作物として確認と検査を受けるのが原則で、これが「擁壁の検査済証」の出どころの1つです(建築基準法第88条(e-Gov法令検索))。

なお88条4項により、盛土規制法12条1項などの許可を受けなければならない擁壁には、この確認・検査の規定は適用されず、許可と検査は盛土規制法側で行われます。

そのため、許可や確認を受けて造られた擁壁なら、許可・確認と検査の記録が残っている可能性があります。一方、こうした手続きが求められる前に造られた古い擁壁や、手続きを経ずに造られた擁壁には、そのような記録がないことがあります。

記録がないこと自体が違法という意味ではなく、適合しているかを示す書類が手元にない状態です。

記録があるかは、次の順で調べます。

  • 購入時の契約書・重要事項説明書・造成工事の書類に、擁壁の記載があるか
  • 市区町村の建築指導課・開発指導課に、この土地に許可や検査の記録があるかを問い合わせる
  • 建物の検査済証とは別に、擁壁の検査済証(高さ2m超の擁壁なら建築基準法88条による工作物の検査、規制区域内の許可工事なら盛土規制法17条の検査)があるか(建物の分は検査済証がない家の売却で解説)

古い擁壁は、所有者の維持管理の責任にも関係します。盛土規制法22条は、規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者に、災害が生じないよう土地を常時安全な状態に維持する努力を求めています。

都道府県知事は、必要があると認めるときに擁壁等の設置・改造を勧告できます。

さらに23条1項により、災害の防止に必要な擁壁等が「設置されておらず、若しくは極めて不完全」で、災害の発生のおそれが大きいと認められる土地については、所有者・管理者・占有者に対し、相当の猶予期限を付けて擁壁等の設置や改造などの工事を命じることができます(宅地造成及び特定盛土等規制法第23条(e-Gov法令検索))。

どちらも規制区域内の土地の話で、改善命令は災害の発生のおそれが大きいと認められる土地に限られます。自分の土地が規制区域内かどうかは、都道府県の窓口で確認できます。

実際に詰まる点|買主と金融機関が見ているところ

がけ地の取引で話が止まるのは、法律の中身よりも、書類が揃っていないことが多いです。条文から読み取れる範囲で、詰まりやすい点と、何が揃えば進むかを並べます。

詰まりやすい点理由何が揃えば話が進むか
がけの高さと位置が分からない条例は高さ2mなどの数字と、がけの下端からの距離で対象かどうかが決まる高低差の目安と、建物とがけの位置関係が分かる図面や写真
擁壁の許可・検査の記録がない適合を示す書類が手元にないと、買主は最悪の場合の工事費を見込む役所の回答(書類が残っているか)を日付つきで控えておく
擁壁のひび割れ・はらみ・水抜き穴のつまり見た目の劣化は、建て替え時に擁壁のやり直しが要る可能性を連想させる現況の写真(補修の前に撮る)
建て替えられるかが答えられない建て替え時に擁壁を求められるかは、自治体の条例と計画で変わる建築指導課への事前相談の結果

どれも、売主が補修や工事をしなくても集められる情報です。工事に進むかどうかは、この4つが分かってから決めても遅くありません。

擁壁の補修や造り直しに手が回らず、動けなくなっている方もいます。その場合も、上の表のうち分かる範囲を教えていただければ、当社で調べを進められます。

擁壁を直すか、現況のまま手放すか

手放す道は、大きく3つあります。擁壁を直してから売る。擁壁の状況を説明して仲介で売る。現況のまま相談する。3つは順位ではなく、並んだ選択肢です。

擁壁を直すかどうかは、高さ、延長、重機が入れる道かどうか、既存の擁壁を撤去するか補強で残すかで工事の規模が変わるので、一律の相場では言えません。直すと決める前に、建築士や施工業者に現地を見てもらってください。

仲介で売るなら、上の表の資料をそろえて、買主に説明します。現況渡しの場合の売主の責任は現況渡しとはにあります。

擁壁がある土地の、3つの出口の図解
3つは順位ではなく、並んだ選択肢

動く前に、手元でやること

土地の高低差を測って、高さ2m超のがけや擁壁があるかを見る。建築指導課に、がけ条例の対象かを確かめる。擁壁の許可・検査の書類が役所に残っているかも尋ね、答えを日付と一緒に控えておく。

ひび割れ、はらみ、水抜き穴のつまりは、補修の前に写真に撮る。ここまでは役所への問い合わせと撮影でできます。

補修を始める前に、売る方法を決めるほうが安全です。補修したあとで、買主が別の基準を求めることもあるからです。

擁壁の調査も補修もしていない土地の相談

当社は訳あり不動産を現況のまま扱う会社です。がけ地や擁壁があることだけで可否は決めず、物件ごとに判断します。擁壁の調査や補修、片付け、測量を済ませていただく必要はありません。

調査は当社で行います。土砂災害警戒区域にかかる家を、雨漏りも残置物もそのままの現況で取り扱った例もあります(江田島市の取り扱い例)。建物の状態と築年数、がけ条例の制限、擁壁の書類の有無を見ます。

遠方にお住まいで現地に行けない場合も、契約から決済まで現地にお越しいただかずに進められます。

他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。引き受けられるかどうかは、物件を見て、契約の前にお伝えします。相続人どうしの合意がまとまっていないときは、話を進められません。ご相談への返事は、翌営業日までにお送りします。

法律や条例の細かい適用は、弁護士や建築士に相談してください。自分の土地がどちらの側かは、建築指導課への電話1本で分かります。

よくある質問

がけ条例にかかる土地は、建て替えられないのですか。

建て替えられないとは限りません。東京都の建築安全条例6条は、高さ2mを超えるがけの下端から、がけ高の2倍以内に建築する場合は、高さ2mを超える擁壁を設けるよう求めています。

つまり擁壁などの安全対策を整えれば建築できる形ですが、例外や細かい基準は自治体で違うため、建築指導課で確認が必要です。

古い擁壁の上の家は、もう売れないと言われました。

売れないわけではありません。ただし、擁壁が現在の基準に合っているか、許可や検査の記録があるかが買主と金融機関に見られます。記録がない、ひび割れや水抜き穴の不足があるといった場合は、買主が限られたり、建て替え時に擁壁のやり直しが必要になったりします。

擁壁が崩れたら、持ち主の責任になるのでしょうか。

擁壁のある土地の所有者や管理者が維持管理の責任を負う立場になります。宅地造成及び特定盛土等規制法22条は、規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者に、土地を常時安全な状態に維持する努力を求めています。個別の責任の範囲は弁護士に相談してください。

擁壁の調査も補修もしていませんが、そのまま相談できますか。

がけ地や擁壁があることだけで可否は決めません。擁壁の状況、建物の状態、条例の制限を見て、現況のまま引き受けられるかを物件ごとに判断します。擁壁の調査や補修を済ませていただく必要はありません。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

このような物件のご相談は、再建築不可物件の買取相談のページへ。

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片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。

資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。

建て替えができるかどうかは、当社が役所で調べます。お手元に資料が無くても構いません。

お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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