空き家を放置しても、いきなり解体されるわけではありません。段階を踏んで進みます。ただしその途中に、税額が大きく変わる分かれ目があります。この記事では、どの順に何が起きるのか、どこで止めれば負担が増えないのかを、条文にあたって整理します。
そもそも「特定空家等」とは
法律の定義はこうです。
2 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
空き家だから即「特定空家」になるわけではありません。倒壊のおそれ、衛生上の問題、景観の悪化——そうした状態になって初めて対象になります。
4つの段階で進みます

同法22条が、順番を定めています。
| 段階 | 何が起きるか | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 助言・指導 | 市区町村から連絡が来る。まだ何のペナルティもない | 22条1項 |
| ② 勧告 | 住宅用地の特例から外れる。土地の固定資産税が上がる | 22条2項 |
| ③ 命令 | 従わなければ50万円以下の過料 | 22条3項/30条1項 |
| ④ 行政代執行 | 市区町村が解体し、費用が所有者に請求される | 行政代執行法 |
分かれ目は②の勧告です。
住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が軽くなる仕組み(住宅用地の特例)があります。
勧告を受けた特定空家等の敷地は、この特例から除外されます。
つまり建物は建ったままなのに、更地並みの税負担になるということです。
①の段階で対応すれば、税額は変わりません。連絡が来た時点が、いちばん安く済むタイミングです。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
①で来る連絡を、無視しないでください
助言・指導は、たいてい書面で届きます。草木が越境している、瓦が落ちそう、といった具体的な指摘が書かれています。
- 心当たりがなくても、まず担当課に連絡する(遠方で状況が分からない旨を伝えてよい)
- 対応する意思があることを伝える。放置ではないと分かれば猶予をもらえることがあります
- 草刈りだけなら、地元の業者に依頼できることが多い
- 手放す方向で動いているなら、それも伝える
連絡を返さないことが、いちばん状況を悪くします。市区町村としては、所有者と連絡が取れなければ次の段階に進むしかありません。
④まで行くと、自分で頼むより高くつく
行政代執行では、市区町村が業者を手配して解体します。その費用は所有者に請求されます。
- 相見積もりが取れない
- 時期も内容も選べない
- 結果として、自分で頼むより高くなることが多い
しかも、費用を請求される時点で建物は無くなっています。売って返すという選択肢も消えています。
税金だけの問題ではありません
放置している間に増えていくのは税額だけではありません。
- 建物が傷み、売れる状態から遠ざかる
- 近隣との関係が悪くなる(草木、瓦、動物、放火の不安)
- 相続が起きて、関わる人が増える(相続人が後から出てきたとき)
- 管理の手間と交通費が、毎年出ていく
手前で止める道
- 連絡が来たら、その日のうちに担当課へ返す(対応の意思を伝えるだけでも変わります)
- 指摘された箇所だけ直す(全部を直す必要はありません)
- 同時に、手放す場合の金額を確かめておく
- 直す費用と、手放した場合の手取りを並べて比べる
- 勧告を受ける前に決める
3を先にやってください。修繕にかけた費用が価格に上乗せできるとは限らないので、比べる材料が無いまま直し始めると判断できません。
当社は傷んだ空き家も現況のまま買い取っています。修繕も片付けも、売主様に先にご負担いただく必要はありません。ただし建物の状態や立地によってお引き受けできないことがあります。まず所在地と、いまの状況をお知らせください。
解体費用の工面については公費解体と相続の壁に、相続した空き家全般については相続した空き家の買取相談にまとめています。
よくある質問
空き家を放置すると、すぐに何か起きますか。
すぐには起きません。まず市区町村から助言・指導という形で連絡が来ます(空家等対策の推進に関する特別措置法22条1項)。この段階で草を刈る、危険な部分を直すなどの対応をすれば、それ以上は進みません。連絡が来た時点で対応するのが最も安く済みます。
固定資産税が6倍になるというのは本当ですか。
勧告を受けた特定空家等の敷地は、住宅用地の特例(小規模住宅地で課税標準が6分の1になる仕組み)の対象から除外されます。その結果、土地の固定資産税が大きく上がります。上がるのは勧告を受けた段階からで、助言・指導の段階では変わりません。
命令に従わないとどうなりますか。
同法30条1項により、命令に違反した者は50万円以下の過料に処せられます。さらに従わないままだと行政代執行に進み、市区町村が解体などを行い、その費用が所有者に請求されます。自分で業者を選んで頼むより高くつくことが多いのが実情です。
遠方に住んでいて管理できません。どうすればいいですか。
連絡が来た段階で、市区町村の担当課に事情を伝えてください。放置しているのではなく対応する意思があると分かれば、猶予をもらえることがあります。そのうえで、草刈りだけを地元の業者に頼む、手放す方向で動く、といった現実的な選択を検討してください。
手放したいのですが、直してからでないと売れませんか。
そんなことはありません。傷んだ状態のまま買い取る会社があります。むしろ直す費用が価格に上乗せできるとは限らないため、修繕せずに売るほうが手元に残る金額が大きくなることがあります。勧告を受ける前に動くほうが、選べる手は多く残ります。
この記事の監修者
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