汲み取り式の家は売れないと言われますが、汲み取りであることだけを理由に売却を禁じる法律はなく、売ることはできます。水洗化に出る負担、下水道につなぐ期限、買主に伝える事実を、市の資料と法令で確かめたものだけで説明します。
この記事の答え
– 売れるか:売れます。重さを決めるのは、下水道の処理区域の内か外か
– 最初にやること:下水道課に住所を伝え、区域の内外と接続の期限を聞く
– 費用を先に出さずに済む道:水洗化をしないまま、現況で相談できる先があります
売りやすさは、処理区域の内か外かで変わります。下水道の処理区域内で、汲み取りのまま水洗化の期限が過ぎている家は、買主が改造の負担と命令のおそれを見込むため、話が重くなります。
区域の外で、浄化槽を前提とする家は、点検・清掃・検査の記録が残っているかが見られます。どちらに当たるかは、下水道課に住所を伝えれば分かります。
汲み取りの家は売れないと言われるのは本当か
「汲み取りのままだと売れない」という声は、よく耳にします。ただ、汲み取り式であること自体を売却の条件にしている法律はありません。買主が気にするのは、水洗にするのにいくらかかり、いつまでに何をしなければならないかが見えないことです。
売却の場面で、仲介業者は買主に重要事項説明を行います。宅地建物取引業法35条1項4号は、その説明事項に次のものを挙げています。
四 飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
つまり買主に伝わるのは、排水がどの方式か、整備が未了ならその見通しと特別の負担です。売主が先にここを調べておくと、問い合わせへの答えが決まります。
答えは「買主に伝える事実」と「先に出す負担の比べ方」で決まります。
売れるかどうかを占うより、何を確かめ、どの負担を誰が持つかを先に整理するほうが、話が進みます。
売主が確認する事実は、次の3つです。
- 前の道に公共下水道が来ているか(処理区域の内か外か)
- 今のトイレと排水が、汲み取り・単独処理浄化槽・合併処理浄化槽のどれか
- 浄化槽なら、点検・清掃・法定検査の記録が残っているか
浄化槽が古い家を売るとき、先に知っておく費用
浄化槽には、トイレの汚水だけを処理する単独処理浄化槽と、台所や風呂の排水もあわせて処理する合併処理浄化槽があります。北九州市の資料によると、単独処理浄化槽は現在、新設できません。古い家には、この単独処理が残っている場合があります。
費用は「最初に出る額」と「毎年出る額」に分かれます。

出典を示した数字を、表にまとめます。
| 項目 | 金額 | 出典と条件 |
|---|---|---|
| 5人槽の設置費 | 平均84万円程度 | 北九州市の補助の資料(令和7年1月) |
| 市の補助(5人槽) | 33.2万円(国の交付金と市の補助) | 同上。個人が設置する小型合併処理浄化槽が対象。設置した人の負担は約50万円と記載 |
| 浄化槽の維持管理(5人槽) | 年間約11.9万円 | 同上。保守点検、清掃、消毒、検査の合計 |
| 下水道使用料 | 年間 50,010円 | 同上。4人世帯で月30立方メートルの想定 |
数字はすべて北九州市の令和7年1月の資料によるもので、他の地域にそのまま当てはまるわけではありません。維持管理費は浄化槽の大きさ、地域、業者で変わるため、手元の請求書や契約書で実額を確かめてください。
自治体の補助は、市ごとに対象と条件が違います。個人が住む家を条件にしている例もあるため、使えるかどうかは市区町村の窓口で確認してください。
浄化槽を使わなくなる場合は、廃止の届出が要ります。浄化槽法11条の3は、浄化槽管理者が浄化槽の使用を廃止したときは、その日から30日以内に都道府県知事に届け出なければならないと定めています。
保健所を設置する市と特別区では、届出先は市長・区長になります(同法5条1項)(浄化槽法(e-Gov法令検索))。下水道への接続や家の取り壊しで使わなくなるときも、届出先の窓口は市区町村で確認してください。
使用を一時的に休止する届出は、別の規定(同法11条の2)です。
買主から見ると、汲み取りや古い浄化槽の家は、買ったあとに水洗化や浄化槽の入れ替えの費用が出るかどうかが論点になります。上の表のような数字は、買主が「その分を見込んで価格を考える」ための材料です。
売主側は、記録と見通しをそろえておくほど、数字の根拠を示せます。実際の評価は買主ごとに違うため、一律の減額幅はここでは書きません。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
下水道がない家を売るとき、何を確かめるか
「下水がない」には、2つの場合があります。下水道の整備区域の外にあって、浄化槽や汲み取りが前提の場合と、区域の中なのにまだ接続していない場合です。後者は、法律上の期限が関わります。
下水道法は、次のように定めています。
| 場合 | 法律の定め |
|---|---|
| 公共下水道の供用が開始された | 排水区域内の土地の所有者らは、遅滞なく排水設備を設置する(10条1項) |
| 処理区域内に汲み取り便所がある | 建物の所有者は、下水の処理を開始すべき日として公示された日から3年以内に水洗便所へ改造する(11条の3第1項) |
| 改造していない | 公共下水道管理者は、改造を命ずることができる。資金の調達が困難な事情など、相当の理由があれば除かれる(同条3項) |
| 期限後に所有権を取得した人 | 同様の命令の対象になる(同条4項) |
| 改造する人への支援 | 市町村は、資金の融通またはあっせんに努める(同条5項) |
出典は下水道法(e-Gov法令検索)です。山梨県の案内でも、汲み取り式は3年以内、単独浄化槽は遅滞なく接続するものとされ、市町村の条例で期間を定める場合があると書かれています(山梨県の案内)。
ここで売主にとって大事なのは、4項の存在です。期限を過ぎた建物を取得した人にも命令の対象が及ぶ定めなので、買主は期限と費用を気にします。売る前に、自分の家が処理区域内か、期限がいつかを下水道課で聞いておくと、その後の説明がまとまります。
命令を受けることがあるのは、処理区域内の話です。
区域の外にあって浄化槽を使う家に、この3年の期限は当てはまりません。
まず「区域の内か外か」だけを、住所を伝えて市区町村に聞いてください。
処理区域の内か外かを調べる方法
調べ方は、窓口で聞く方法と、自治体サイトの地図で当たりをつける方法の2つです。
窓口で下水道台帳を見る。下水道法23条は、公共下水道管理者に公共下水道台帳の調製と保管を義務づけ、閲覧を求められたときは拒むことができないと定めています(下水道法(e-Gov法令検索))。閲覧の窓口は、市区町村の下水道課や上下水道局です。
住所か地番を伝え、前の道に下水道管が入っているか、処理開始はいつかを確かめます。
自治体サイトの地図で当たりをつける。「市区町村名 下水道台帳」や「市区町村名 供用開始区域」で検索すると、地図で公開している自治体があります。
たとえば静岡市は、下水道が使える区域と使えない区域を概略で示した地図を公開していますが、2025年3月31日現在の情報で最新ではないこと、公に証明するものではないこと、接続を考える人は下水道台帳で確認することを明記しています(静岡市の案内)。
サイトの地図は目安にとどめ、売却の説明に使う事実は窓口で確かめてください。
接続の費用には、自治体の貸付の制度がある例があります。
広島市の例では、無利子の貸付で、汲み取り便所の改造工事に1戸あたり52万円、し尿浄化槽の廃止工事(50人槽以下)に1基あたり50万円が限度です(広島市の案内、処理を開始した日などから3年以内に申請したものが対象)。
これは広島市の制度で、他の市に同じ制度があるとは限りません。

汲み取りのまま住む買主が気にすること
区域の外で汲み取りのまま住む買主は、工事費とは別に、くみ取りを続けるための手続きと費用を気にします。前の持ち主の契約や届出は、買主にそのまま引き継がれるとは限りません。
大阪府堺市の例では、おおむね月2回の定期的な収集が必要な場合は「し尿収集処理届出書」が必要で、住民異動届だけでは届出をしたことにならないと案内されています。
手数料は定額制なら普通便槽で1人1月240円、従量制なら30リットルごとに180円です(堺市の案内、2026年10月時点)。
申込みの方法や料金は、市区町村ごとに違います。売主は、今の収集の頼み先と、直近の請求額が分かる書類を手元に残しておくと、買主の問い合わせに答えられます。前の道が狭い家は、収集の車がくみ取り口の近くまで入れているか、今の業者に聞いておくと説明しやすくなります。
査定で見るところ、実際に詰まる点
当社が汲み取り・浄化槽の家を確認するときは、次の順番で見ます。まず住所から、下水道の処理区域の内か外かと、処理開始の日を役所で確かめます。
次に現地で、汲み取り口と便槽、または浄化槽の位置とふたの状態を見て、前の道の幅と、収集の車が汲み取り口の近くまで入れるかを確かめます。最後に、浄化槽の点検・清掃・法定検査の記録や、くみ取りの請求書が手元にあるかを売主様に伺います。
法令と上の資料から導ける範囲で、状況ごとに詰まりやすい点を挙げます。
| 状況 | 確かめるもの | 詰まりやすい点 |
|---|---|---|
| 処理区域内で汲み取りのまま | 処理開始日と3年の期限、命令の有無 | 期限後に取得した人も命令の対象になりうるため、買主が費用と期限を見込む |
| 処理区域内で単独処理浄化槽 | 下水道への接続時期、廃止の届出 | 接続工事と浄化槽の廃止を誰が負担するかが決まらない |
| 区域外で合併処理浄化槽 | 点検・清掃・法定検査の記録 | 記録が見つからないと、状態の説明ができない |
| 区域外で汲み取り | 収集の頼み先と直近の請求額、収集車の入れる道幅 | 前の道が狭いと収集の条件が変わる場合がある |
どの行でも、売主が工事をしたかどうかより、事実が書類で説明できるかが先に見られます。水洗化の工事は、住む人がいる前提の支出です。空き家のまま工事費を先に出しても、回収できる見通しは立ちにくい点に気をつけてください。
水洗化・浄化槽・手放し方を、先に出る負担で比べる
出口は大きく3つあります。選ぶ基準は、先に出る費用と、その後も続く費用です。
| 出口 | 売主が先にやること | 先に出る費用 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 水洗化してから売る | 下水道への接続、または浄化槽の設置 | 大きい(方式と地域で変わる) | 工事費を出せて、水洗化した後の使い道がはっきりしている |
| 現状を説明して仲介で売る | 区域の確認、浄化槽の記録、費用の見通しの整理 | 調査・書類の手間 | 状態がよく、買主に渡せる資料がそろっている |
| 現況のまま買い取れる先に出す | 所在地と、分かる範囲の状況を伝える | ほぼなし | 費用を先に出せない、記録が見つからない、遠方で動けない |
工事をしてから売る道は、かけた費用を売却で取り戻せる見通しがあるときに向きます。見通しが立たないうちに工事を始めると、先に出した費用が残ります。補助や貸付は、工事の前に市区町村へ条件を聞いてください。
現況のまま渡すときの売主の責任は、現況渡しとはで整理しています。地方の空き家全体の事情は、地方の空き家が売れない3つの理由も参考になります。
動く前に、手元で確かめる順番
最後に、費用が出る前にできる順番をまとめます。1から3までは、費用がかかりません。
汲み取り式・浄化槽の家を、そのまま手放すという選択
当社は、訳あり不動産を現況のまま取り扱う会社です。汲み取り式であること、浄化槽が古いこと、下水道がないことだけで、取り扱いの可否は決めません。建物の状態、築年数、下水道の整備状況を確認して、物件ごとに判断します。
水洗化の工事、浄化槽の撤去、片付けを、売主様が先に済ませる必要はありません。調査は当社で行います。訳あり不動産の買取相談は、所在地と、分かる範囲の状況をお知らせいただくところから始められます。
他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。ご相談への返事は、翌営業日までにお送りします。
ただし、どの物件でも引き受けられるわけではありません。お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。遠方にお住まいで、現地に行けない場合も、そのままご相談いただけます。
崖や擁壁がある家、浸水したことがある家は、排水とは別の確認が加わります。浸水した家のり災証明は浸水したときのり災証明にまとめています。
補助や貸付は市ごとに違うため、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。法律や税、登記の判断は、弁護士・税理士・司法書士にご相談ください。
よくある質問
汲み取り式トイレのままの家は売却できますか。
売却そのものはできます。買主に伝える事実は、汲み取り式であること、前の道に下水道が来ているか、水洗化にどの程度の費用と期限があるかです。
仲介業者は宅地建物取引業法35条1項4号により、排水のための施設の整備状況を買主に説明する立場にあるため、売主は先に市区町村で整備状況を確かめておくと話が早く進みます。
汲み取りから水洗トイレにするには、いくらかかりますか。
方式と地域で大きく変わるため、一つの金額は言えません。北九州市の資料では、5人槽の浄化槽の設置費は平均84万円程度、市の補助は33.2万円とされています。
下水道につなぐ場合は、広島市が無利子の貸付で、汲み取り便所の改造に1戸あたり52万円、浄化槽の廃止に1基あたり50万円を限度としています。いずれも市の制度なので、お住まいの市区町村に確認してください。
下水道が来ているのに汲み取りのままだと、どうなりますか。
下水道法11条の3により、処理区域内で汲み取り便所のある建物の所有者は、下水の処理を開始すべき日として公示された日から3年以内に水洗便所へ改造しなければならないとされています。
命令を受けることがありますが、資金の調達が困難な場合など、相当の理由があれば除かれる定めもあります。期限後に所有権を取得した人にも命令の対象が及ぶと書かれているため、売る前に期限を確かめてください。
古い浄化槽は撤去してから売る必要がありますか。
法令上、売る前の撤去が必要だという決まりは確認できていません。浄化槽管理者は、浄化槽の使用を廃止したときは、その日から30日以内に都道府県知事へ届け出なければならないとされています(浄化槽法11条の3)。
使える浄化槽なら点検・清掃・検査の記録を、使わなくなる見込みなら廃止の扱いを、買主と相談して決める形が現実的です。
汲み取り式や浄化槽の家を、現況のまま買い取ってもらえますか。
汲み取り式や浄化槽であることだけで可否は決めません。建物の状態、築年数、下水道の整備状況を確認したうえで、現況のまま引き受けられるかを個別に判断します。水洗化の工事を先にしていただく必要はありません。ただし、すべての物件で成立するわけではありません。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
このような物件のご相談は、訳あり不動産の買取相談のページへ。地域ごとの事情は、広島市の空き家の手放し方のページにまとめています。
「売れない」と言われた不動産を、どうするか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
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資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
どこで断られたかを伺うことはしません。断られた理由の方が、判断に必要です。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

