空き家の解体補助金が「受付終了」や「抽選」になるのは、年度ごとの予算枠に申込みが達したためで、多くは翌年度に募集が戻ります。ただし、待っている間に解体業者と契約すると対象外になり、翌年度分の現地調査は前年の秋から始まる市もあります。この記事では、受付終了の4つの型を自治体の一次情報で整理し、次の年度までにできること、してはいけないこと、待てない場合の選択肢を説明します。
補助金の対象になるかどうか(建物の状態・所得・権利関係)は空き家の解体補助金の条件にまとめています。ここでは「要件は満たしているのに、受付が閉じていた」という場面に絞ります。
「受付終了」は、今年度の予算枠が尽きたという意味
市町村の補助金は、年度ごとに予算を組み、その範囲で交付します。根拠は地方自治法です。
第二百八条 普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。
2 各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。
予算は年度開始前に議会の議決を経て決まり(同法211条)、年度の途中で増やすには補正予算が要ります(同法218条)。つまり、4月に決まった枠を使い切れば、その年度は原則として終わりです。
解体補助の財源には、国の交付金が組み合わされていることが多くあります。国土交通省の空き家対策総合支援事業では、所有者が除却を行う場合の負担割合が国2/5・地方公共団体2/5・所有者1/5と示されています(国土交通省「空き家対策支援メニュー等」)。市の予算だけでなく国の枠にも上限があるため、市が独自に枠を広げるのは簡単ではありません。
「予算が余っているのに断られた」ということは通常ありません。逆に、年度末に枠が余れば、翌年度に繰り越されず消えるのが原則です。年度の早い時期に申請が集中するのは、この仕組みのためです。
受付終了には4つの型がある——自治体の一次情報から
同じ「終了」でも、書き方で意味が違います。令和8年度に確認できた例を並べます。
| 型 | 自治体の記載(原文) | 補助額 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 先着で予算到達 | 「申請額が予算額に達したため、受付を終了しました」(6月11日更新) | 除却工事費の2分の1・上限50万円 | 松本市 |
| 先着で予算到達 | 「予算上限に達したため、令和8年度補助金交付申請手続きを終了しました」(7月15日更新) | — | 長野市 |
| 一時終了・空き枠待ち | 「予算枠の上限に達したため一時的に受付を終了しました。空き枠が生じ次第、受付を再開いたします」 | 解体工事費の2分の1・限度額50万円 | 上田市 |
| 抽選 | 「申込期間中に市の予算額を超える申込みがあり、公開で抽選を行います」。申込期間は7月1日〜10日。当選10名・次点3名 | 工事費用の5分の1・最大40万円 | 東近江市 |
| 期限付き・予算次第 | 受付は4月13日〜12月28日。「予算がなくなり次第、受付終了します」 | 上限40万円 | 熊本市(老朽空き家除却促進事業) |
松本市は年度が始まって3か月足らずで枠が消えています。長野市は7月中旬です。「年度の早い時期に動かないと使えない」は、複数の市の一次情報でそのまま言えます。

「抽選」型は、要件を満たしていても落ちる
東近江市の型は、これまでの先着順とは違います。申込みの窓口が10日間しか開かず、その中でも予算を超えれば公開抽選で決まります。要件を満たしていても、時期を逃せば申し込めず、申し込めても外れることがあります。
補助率も自治体で大きく違います。東近江市は工事費用の5分の1・最大40万円ですが、丹波市は危険度の判定で100点以上なら5分の4・上限160万円(丹波市)です。上限額で4倍の開きがあります。
補助金は「ある」と「自分が使える」が別で、さらに「今年度に使える」も別です。補助金ありきで解体を計画すると、抽選に外れた時点で計画そのものが止まります。自費で払える範囲を先に決め、補助は上乗せと考えてください。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
待つ間にしてはいけないこと——契約と着手
受付が閉じている間、「来年度の申請に備えて、先に業者と契約だけ済ませておこう」と考える方がいます。これは避けてください。
補助金交付決定前に、契約及び老朽危険空家等の解体に着手した場合は、補助金の交付が受けられません。
東近江市も「既に工事契約、着工している場合は、補助の対象外です」と明記しています。同じ趣旨の注意書きは、札幌市・北九州市・熊本市・丹波市・松本市の令和8年度の案内でも確認できます。「着手」に契約が含まれる点が見落とされやすく、業者に見積もりを頼んだ流れで契約書に印を押した時点で、翌年度の補助が消えます。
- 翌年度の交付決定を待たずに、解体業者と契約する
- 「補助金が出る前提」で先に工事を始め、あとから申請する
- 補助が出ないと分かって、抽選の結果を待たずに壊してしまう(減免条例の対象からも外れることがある)
見積もりを取ること自体は問題ありません。むしろ翌年度の申請額を決めるために必要です。線を引くのは、契約書に署名・押印するかどうかです。
次の年度までにできること
受付が閉じてから翌年度の受付までの半年〜1年は、待つだけの期間ではありません。順番にできることがあります。
| すること | なぜ効くか | 実例 |
|---|---|---|
| 担当課に「空き枠待ち」ができるか聞く | 交付決定を受けた人が辞退・取下げをすると枠が戻る自治体がある | 上田市「空き枠が生じ次第、受付を再開」 |
| 翌年度分の事前調査に申し込む | 翌年度の対象判定を前年の秋〜冬に行う市があり、年度が明けてからでは間に合わない | 姫路市「令和9年度の(中略)現地調査は原則令和8年10月から令和9年3月の間に実施」(姫路市) |
| 翌年度の受付開始日と方式(先着か抽選か)を聞く | 受付初日に申請できる状態にしておく | 東近江市は申込期間10日間 |
| 所有者側の要件を整える | 共有者全員の同意、市税の納税証明、所得要件は、年度が明けてから集めると受付に間に合わない | 長野市「所有権を有する全ての方のそれぞれに係る前年の所得金額が、200万円以下」/上田市「市税の未納のない方」 |
| 相続登記・名義の整理を進める | 申請者が所有者(または相続人)であることを書類で示す必要がある | 上田市は所有者またはその相続人が対象 |
| 解体後の固定資産税の減免制度を確かめる | 壊す前の認定・申請が要る市があり、補助金と同じ「壊す前に役所」の構図 | 解体後の固定資産税 |
翌年度の受付は、多くの市で4月の予算成立後に始まり、早い市では6月に枠が尽きます。「4月になったら調べよう」では遅く、前年の10月〜3月が準備の期間です。受付が閉じた今が、その準備の始まりになります。

相続した空き家が兄弟の共有になっている場合は、全員の同意書と印鑑証明を年度内に集めておくのが最も時間のかかる作業です。相続登記が済んでいなければ、相続登記の義務化と期限もあわせて確かめてください。
待てないときの選択肢
翌年度まで待てない事情——倒壊のおそれ、近隣からの苦情、勧告の見込み、相続税の申告期限——がある場合、待つ以外の道は2つです。
| 選択肢 | 先に出す費用 | 時間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 翌年度を待って補助を使う | なし(準備の費用のみ) | 半年〜1年以上 | 抽選や先着で受けられない可能性が残る。工事後の精算払いが多く、いったん全額を立て替える |
| 自費で解体する | 解体費の全額 | 数週間〜数か月 | 翌年から住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がる。減免条例の有無を先に確かめる |
| 壊さずに手放す | 原則なし | 調査と条件の合意しだい | 建物付きで引き受けられる相手に限られる。場所・状態によっては成立しない |
自費解体を選ぶなら、解体費用が払えない空き家で書いた費用の考え方と、固定資産税の変化を先に見ておいてください。なお、地震や水害のあとに市町村が費用を負担して壊す公費解体は、平時の解体補助金とは別の制度です。被災している場合は公費解体と相続の壁を参照してください。
当社は訳あり不動産を現況のまま取り扱っています。補助金の受付が閉じていて翌年度まで待てない空き家、抽選に外れた空き家についても、片付け・解体・測量を売主様にお願いすることはなく、調査は当社で行います。ただし場所や状態、権利関係によっては成立しないこともあり、費用のご負担をお願いする条件になることもあります。
受付終了の告知を見たときの順番
- 告知の文言を読む……「終了」か「一時的に終了」か「抽選」か。型で次の一手が変わる
- 担当課に電話する……空き枠待ちの可否、翌年度の受付開始日と方式、翌年度分の事前調査の時期
- 契約はしない……見積もりまで。交付決定前の契約・着手は対象外
- 年度内に書類を整える……共有者の同意、納税証明、相続登記、所得の確認
- 減免条例と、待てない場合の選択肢を並べる……自費解体なら固定資産税の変化まで、壊さずに手放すなら引き受け先を先に調べる
補助金の名称・金額・要件・受付方式は自治体ごとに異なり、年度ごとに変わります。この記事の実例は2026年9月時点の各市の公表内容によるもので、最新の情報は必ずご自身の市町村のページと担当課で確かめてください。
よくある質問
「今年度の受付は終了しました」と書かれていたら、もう申請できませんか。
その年度の予算枠に達したという意味で、翌年度に募集が再開されるのが基本です。ただし自治体によって扱いが違い、上田市のように「一時的に終了。空き枠が生じ次第、受付を再開」と書いている市もあります。まず担当課に、空き枠待ちができるか、翌年度の受付がいつ始まるかを聞いてください。
抽選で外れました。来年また応募するしかありませんか。
東近江市の例では、申込期間が7月1日から10日までの10日間で、予算を超える申込みがあったため公開抽選で当選者10名と次点者3名が決められました。外れた場合は翌年度の申込期間に再度応募する形になります。抽選型の自治体では、要件を満たしていても受けられないことがあるため、補助金を前提に解体を計画しないほうが安全です。
翌年度の受付を待つ間に、解体業者と契約だけ済ませておいてよいですか。
やめてください。多くの自治体が「交付決定前に契約や着手をした場合は補助の対象外」と明記しています。東近江市も「既に工事契約、着工している場合は、補助の対象外です」としています。契約は翌年度の交付決定が出てからです。見積もりを取るだけなら問題ありませんが、業者に急かされても契約書に印を押さないでください。
翌年度の補助金を確実に受ける方法はありますか。
確実な方法はありませんが、準備で差は出ます。姫路市のように、翌年度の対象になるかの現地調査を前年の10月から3月に行う市があり、年度が明けてから動くと間に合いません。あわせて、共有者全員の同意、市税の納税証明、所得要件の確認など、自治体が求める書類を年度内に整えておくと、受付初日に申請できます。
来年まで待てない場合はどうすればよいですか。
自費で解体する、または壊さずに手放す、の二択になります。自費で解体すると翌年から土地の固定資産税が上がる点まで含めて資金を見積もってください。当社は訳あり不動産を現況のまま取り扱っており、片付け・解体を売主様にお願いすることはありません。ただし場所や状態によっては成立しないこともあり、個別の判断になります。
この記事の監修者
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