親が認知症になった実家は売れる?子が調べる3つと、許可が要る場面

書類と湯のみが残る話し合いのあとの食卓

親が認知症と診断されたあとも、実家が売れるかどうかを決めるのは診断名ではありません。決めるのは、売買契約を結ぶ日に、本人が判断できる状態かどうかです。

子が先に確かめるのは3つです。本人の今の判断力、すでに結んである契約の有無、そして名義です。

目次

診断名ではなく、契約する日の判断力で決まる

民法3条の2は、意思表示をしたときに意思能力がなければ、その法律行為は無効だと定めています。

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

——民法第3条の2(e-Gov法令検索)

条文が見ているのは、診断の有無ではなく「その時」の状態です。軽い状態なら本人が売主になれる場面もあり、重ければどれだけ急いでも契約は成り立ちません。

判断力があるかどうかを、家族の感覚だけで決めるのは危うい判断です。まず主治医に今の状態を聞き、必要なら診断書を書いてもらいます。

売却の登記を頼む司法書士には、決済の前に本人と会って、売る意思を聞いてもらってください。診断書があれば有効と決まるわけではなく、問われるのは契約の日の状態です。

子の署名では、売れない

親の名義の家を、子が代わりに売ることはできません。委任状を子が書いても、本人に意思能力がなければ、委任そのものが無効になります。

「家族なのだから」「施設代が要るのだから」という事情は、法律の上では代わりになりません。

進めるためには、親に代わって動ける立場の人が、法的に決まっている必要があります。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

子が先に調べる3つ

後見の申立てに動く前に、次の3つを見ておきます。任意後見の登記と名義は、法務局で証明書を取れば分かります。

  • 親が任意後見契約を結んでいないか
  • 親の書類の中に、財産管理や信託の契約書がないか
  • 実家の名義が親の単独か、共有か

1つめの任意後見契約は、登記されます。後見登記等に関する法律10条は、自分の配偶者や四親等内の親族を本人とする登記記録について、登記事項証明書の交付を請求できるとしています(e-Gov法令検索)。

子は、親の記録があるかどうかを、この証明書で確かめられます。

2つめは、親が元気だったころに結んだ契約です。財産の管理や処分を誰かに任せる書面が、引き出しの中にあることもあります。

見つかったら、その書面を司法書士か弁護士に見せて、実家を売る権限まで任されているかを読んでもらいます。信託契約なら、受託者には財産を処分する権限がありますが、契約で制限されていることもあります(信託法26条)。

3つめの名義は、不動産の登記事項証明書で分かります。何人も請求できる書類です(不動産登記法119条)。共有なら、他の共有者の判断力も関わります。

本人の状態別の入口
本人の判断力と契約の有無で、動く人と入口が分かれる

契約があるか、ないかで入口が変わる

その結果で、動ける人が決まります。

親の状態売主側で動く人子がすること
判断力が残っている本人本人の意思を確認して進める。早いうちに動く
判断力が不十分だが、欠けているとまではいえない本人と保佐人・補助人(同意や代理権の範囲で)家庭裁判所に保佐開始・補助開始の審判を申し立てる
任意後見契約が登記されている任意後見人(監督人の選任後)家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求する
財産管理や信託の契約書が見つかった契約で任された人(権限の範囲による)書面を司法書士・弁護士に見せる
契約がなく、判断力が戻らない成年後見人家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる

任意後見契約は、本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときから効力を持ちます(任意後見契約に関する法律2条・4条)。不動産を売れる範囲は、契約で任された事務の内容で決まります。

契約がなければ、後見開始の審判です。民法7条は、本人、配偶者、四親等内の親族などの請求で、家庭裁判所が審判できると定めています。

判断能力が著しく不十分なら保佐、不十分なら補助という入口もあります。保佐人や補助人が代わりに売るには、その代理権を家庭裁判所に与えてもらいます。

この代理権を本人以外が求めるときは、本人の同意も要ります。どれで申し立てるかは、主治医の診断書を持って司法書士・弁護士に聞いてください。

後見人が居住用の家を売るには、家庭裁判所の許可が要ります(民法859条の3)。保佐人・補助人が代理権を得て売る場合も同じです(民法876条の5・876条の10)。

いまは施設や病院にいて住んでいない家でも、入所前に住んでいたなら居住用に含まれます(裁判所 居住用不動産の処分についての許可)。

「もう住んでいないから許可は要らない」とはなりません。

後見を使う前に知っておきたい3点

後見は、実家を売るためだけに使う制度ではありません。申し立てる前に、次の3点を家族で話してください。

1点めは、後見人は家庭裁判所が選ぶということです。申し立てた子が希望した人が選ばれるとは限りません。

2点めは、途中でやめられないことです。

厚生労働省は、成年後見制度はいちど利用すると途中でやめることはできない、としています。例外は、回復が認められて家庭裁判所が取り消した場合です(厚生労働省 成年後見はやめられるの?)。

3点めは、制度の見直しが決まっていることです。

2026年6月24日に民法等の改正法が公布され、後見と保佐の制度を廃止して補助に一元化する内容が示されています。施行日は公布から2年6月以内で、まだ決まっていません(参議院 法律案の審議経過)。

いま申し立てるなら、現行の制度で進みます。

買い手が付きにくい家で、許可の申立てに何を出すか

許可の申立てでは、処分の必要性を書類で示します。裁判所が挙げる資料は、契約書の写し、不動産の評価証明書、不動産業者の査定書、登記事項証明書などです。

契約書の写しが並んでいるので、売り先と条件の話がある程度固まっていないと、書類がそろいません。再建築できない、道に接していないといった家は、この売り先探しに時間がかかることがあります。

裁判所のページには、買い手が付きにくい家で何を書けば足りるかの基準までは載っていません。

備えとして勧めたいのは、どこに相談し、どう断られたかを日付入りで残しておくことです。なぜこの売り先なのかを説明する材料になります。書き方は、後見人や申立てを手伝う司法書士・弁護士に相談してください。

解体してから売る案にも注意が要ります。裁判所は建物の取り壊しも処分の例に挙げているので、後見人が解体を決めるなら、そこで許可が必要です。

手続きの間、実家は空き家のまま

後見の申立てから許可が下りるまで、実家は誰も住まないまま時間が過ぎます。その間も、固定資産税の納付と、庭の草や郵便物の手間は続きます。

手続きの間に待つもの、続くもの
契約と名義の変更が待つ間も、空き家の負担は続く

親御さんが遠方の施設にいて、子も遠くに住んでいれば、見回りだけで負担が重くなります。

遠方の家の管理は、遠方の実家を管理できないで分かれ目を整理しています。

家の中の荷物は、売る前に片付けを済ませなくてはならないと思われがちですが、荷物が残ったままでも相談はできます。片付けを自分たちで進める場合の費用は残置物・家財の処分費用で見られます。

実家じまい全体の順番は実家じまいは何から始めるに書いています。売り方の違いは買取と仲介の違いに、名義が親でなくなったあとの扱いは相続した空き家の売却ガイドにまとめています。

名義の整理を家族だけで進める前に

後見の申立ても、任意後見監督人の請求も、申し立ててから動けるようになるまで時間がかかります。実家をどう手放すかの相談と並行して、早めに司法書士・弁護士に当たっておいてください。

当社に届く相談も、売ることより、この負担を止めたい、という声が中心です。

他で断られた空き家も、お引き受けできる場合があります。片付け・解体・測量をせずに、現況のままご相談いただけます。

ただし、成年後見人が親の住んでいた家を売る場合は、家庭裁判所の許可が欠かせません。許可なしの処分は無効になります(裁判所の案内)。お引き受けできるかは、物件ごとの個別の判断になります。

相談では、次の点を確認します。

  • 親御さんの状態(後見がすでに始まっているか、任意後見契約があるか)
  • 実家の名義と、共有者がいるかどうか
  • 建物の状態、残置物の量、土地が道に接しているか

後見の申立てや書類づくりは、司法書士・弁護士へご相談ください。当社には、所在地と名義、親御さんの状況が分かる範囲でお知らせください。ご相談への返事は翌営業日までにお送りします。

よくある質問

母が認知症で施設に入りました。実家を売って施設の費用に充てたいのですが、私が進めてよいですか。

名義が母なら、売主は母です。代わりに契約できるのは、任意後見人や成年後見人など、法律上の権限を持つ人です。そうした人も契約もなければ、まず家庭裁判所への申立てを考えることになります。

父名義のままで、委任状を私が書いて売ることはできますか。

できません。委任状も本人が意思表示をして作る法律行為で、本人にその時の意思能力がなければ無効になります(民法3条の2)。署名を代わりに書く形で進めると、後で売買ごと争われるおそれがあります。

後見人をつけずに実家を手放す方法はありますか。

親御さんに契約の時点で判断する力が残っているなら、本人が売主になる道があります。元気なうちに結んだ信託契約があれば、受託者がその契約の範囲で動ける場合もあります。どちらでもなく判断力が戻らないなら、家庭裁判所の手続きを通すことになります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

このような物件のご相談は、相続した空き家の買取相談のページへ。

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資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。

相続登記が終わっていなくても、名義が複数でもご相談いただけます。順番は当社でご案内します。

お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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