農地を放棄したい、処分したいと思っても、農地の所有権だけを届け出で放棄する手続きはありません。使えるのは、相続放棄、相続土地国庫帰属制度、農業委員会の許可を得た売却や貸付、転用、非農地証明のいずれかです。
この記事では、何から確かめ、どの窓口に何を持って行き、どこで道が分かれ、いくらかかるかを、順番に整理します。
手放せるのか:農地は、宅地のように誰にでも売れる土地ではありません。ただし、道が全部閉じているわけでもありません。
最初にやること:相続で取得したなら、まず相続放棄の3か月の期限を数える。そのうえで、その土地が今どの扱いの農地なのかを、課税明細と農業委員会で確かめる。
費用を先に出さずに済む道:農地の扱いが変われば、買取を相談できる場合があります。農地のままでは当社も取得できません。
耕作放棄地を相続したけどいらない?は、荒れた農地を持ち続けるか手放すかを決めるための記事です。この記事は、手放すと決めて手続きに入ってからの、窓口ごとの持ち物と聞くこと、道ごとの費用と期間を扱います。
確認の順番:上から順に、1つずつ
- 相続で取得した場合は、まず、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の期限を数える(相続放棄を検討するなら、司法書士・弁護士へ早めに相談)
- 農地の課税明細と登記事項証明書で、地目・地番・面積・名義を確かめる
- 農業委員会へ地番を伝え、農地かどうか、市街化区域内か、農用地区域内かを聞く
- 相続で取得したなら、農業委員会への届出が済んでいるか確かめる(農地を相続したら農業委員会へ届出?)
- 国庫帰属を検討するなら、法務局で事前相談を受け、建物や境界の有無、負担金の算定方法を確かめる
- 農業委員会から利用意向調査が届いているなら、期限と手放したい意向を確認する
期限を確かめ、地番と区域が分かれば、使える道はかなり絞れます。税務や法務の判断は、税理士・司法書士・弁護士にご確認ください。
相続した農地なら、まず相続放棄の期限だけ見る
最初に数えるのは、相続の開始を知った時から3か月という期限です(民法915条1項)。農地だけを選んで放棄することはできず、放棄の時に農地を現に占有していると保存の義務が残ります(同法940条)。
3か月をいつから数えるか、過ぎた場合にどうなるかは事情で分かれますので、司法書士・弁護士に確認してください。管理義務の残り方は、相続放棄しても管理義務は残る?で整理しています。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
農地を手放すとき、窓口は4つに分かれる
農地の手放し方は、相談する窓口によって使える道が違います。先に全体を表で見ておきます。
| 窓口 | 聞くこと | 関係する道 |
|---|---|---|
| 市町村の農業委員会 | 農地かどうか、売却・貸付の許可、転用の届出・許可、非農地の扱い | 農地法3条・4条・5条 |
| 農地バンク(農地中間管理機構)・市町村 | 貸し出して借り手を探せるか | 貸付 |
| 法務局 | 国庫帰属の要件、申請の手続き | 相続土地国庫帰属制度 |
| 家庭裁判所 | 相続放棄の申述 | 相続放棄 |
農業委員会に最初に聞くのは、その土地が、今も農地の扱いなのかという点です。農地法は、農地を「耕作の目的に供される土地」と定めています(2条1項)。登記簿の地目が田や畑でも、長く荒れて山林のようになっていれば、扱いが変わる可能性があります。
ただし、判断は農業委員会が行います。
農林水産省も、農地を貸す・売るときは原則として農業委員会の許可が必要で、農地バンクへの貸付けも選べると案内しています(農林水産省 農地相続ポータル、同 農地中間管理機構)。
窓口ごとに、何を持って行き、何を聞くか
窓口で話を早く進めるために、持って行くものと聞くことを、窓口ごとに表にします。地番が分かれば話が始められるので、まず課税明細(固定資産税の納税通知書に付いている明細)を手元に用意してください。
| 窓口 | 持って行くもの | 聞くこと |
|---|---|---|
| 農業委員会 | 地番、登記事項証明書、課税明細、現況の写真、本人確認書類(代理人が行くときは委任状) | 今も農地の扱いか。市街化区域内か、農用地区域内か。非農地証明は出るか。農地台帳の閲覧や証明を受けられるか |
| 農地バンク・市町村 | 地番、面積、現況の写真 | 貸し出して借り手を探せるか |
| 法務局(相談は予約制) | 登記事項証明書、地積測量図、登記所備付地図の写し、課税明細、土地の全体が分かる写真、境界に関する資料 | 建物や境界、農道・水路で申請できない点がないか。負担金が面積に応じた算定になるか |
| 家庭裁判所(相続放棄) | 必要書類は申述先の家庭裁判所で確認 | 期限までに申述できるか。判断は司法書士・弁護士へ |
農業委員会は、1筆の農地ごとに所有者や面積などを記録した農地台帳を作っています(農地法52条の2)。閲覧や証明の手数料、閲覧できる人は市町村ごとに決まっています。
たとえば静岡市では、閲覧は無料で、本人または同居の家族、委任状を持った代理人が、顔写真付きの本人確認書類を持って届け出ます(静岡市 農地台帳の閲覧)。
国庫帰属の相談は、土地を管轄する法務局に予約して受けます。
たとえば松江地方法務局は、予約が必要で、窓口・電話・ウェブのいずれかで1回20分以内と案内し、持って行く資料として表の法務局の行に挙げたものを示しています(松江地方法務局 相続土地国庫帰属制度の相談)。
時間が限られるので、資料をそろえてから予約してください。
農業委員会で区域や扱いを確かめたあとの分かれ道は、次のとおりです。
| 確認した結果 | 次に検討する道 |
|---|---|
| 農地の扱いで、市街化区域内 | 転用の届出を前提にした売却、買取の相談 |
| 農地の扱いで、市街化調整区域など | 3条の許可を得た売却、貸付、国庫帰属(相続・遺贈で取得した農地に限る) |
| 農地でなくなっていて非農地証明が出る | 証明を取ったうえで、買取の相談 |
国庫帰属は、相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限る)で取得した土地のための制度です。自分で購入した農地には使えません(相続土地国庫帰属法1条・2条1項)。
なお、相続で取得したばかりの場合は、この分かれ道より先に、相続放棄の期限(前の章)を確かめてください。
道ごとの費用と期間の目安
公的機関が金額や期間を示しているものだけを表にします。空欄の部分は市町村や事案ごとに違うため、窓口で確かめてください。
| 道 | 公的な費用 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 収入印紙800円(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手(裁判所 相続の放棄の申述) | 申述の期限は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内 |
| 相続土地国庫帰属 | 審査手数料 1筆14,000円。承認後に負担金(田・畑は標準20万円。市街化区域内・農用地区域内などの農地は面積に応じて算定され、20万円を上回る) | 標準処理期間は8か月。事案によっては超える場合がある(法務省 Q&A) |
| 3条許可を得た売却・貸付 | 手数料の有無・額は農業委員会で確認 | 買い手・借り手が見つかるまでの期間は場所しだい |
| 転用(届出・許可)、非農地証明 | 市町村・農業委員会ごとに確認 | 市町村・農業委員会ごとに確認 |
国庫帰属は、申請の補正にかかる時間が標準処理期間に含まれないと案内している法務局もあります(さいたま地方法務局)。書類や境界の準備を含めると、表の期間より長くなることを見込んでおいてください。
国庫帰属は、費用の出方だけ先に押さえる
相続や遺贈で取得した土地を国に引き渡す制度です。申請できない土地の一覧は、法務省 相続土地国庫帰属制度で確認してください。建物がある土地の考え方は、相続土地国庫帰属制度は建物があると使えない?にあります。
費用は次の2段階です。
- 申請時に、審査手数料が土地1筆につき14,000円(法務省 申請の手引き)。却下や不承認でも返ってきません
- 承認後に、負担金。田・畑の標準は20万円です。ただし、市街化区域内、農用地区域内、土地改良事業等の施行区域内にある主に農地として使われている土地は、面積に応じて算定されます(相続土地国庫帰属法施行令5条)。たとえば250平方メートル以下なら、地積に1,210円を掛けた額に20万8,000円を足した額です(相続土地国庫帰属法施行令(e-Gov法令検索)、法務省 Q&A)
自分の農地がどの区域かは、農業委員会や市町村で確かめたうえで、法務局の事前相談で確認してください。
売る・貸すには農業委員会の許可が要る
農地を農地のまま売る、または貸すときは、農地法3条により、当事者が農業委員会の許可を受ける必要があります。
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
つまり、買い手が、農業委員会の許可を受けられる人に限られるため、不動産会社に出しても、話が進みにくくなります。許可の要件は、売り先ごとに農業委員会が見ます。
2023年4月1日に下限面積要件は廃止されましたが、耕作や常時従事などの要件は残っています(農林水産省)。
現実の買い手は、その近くですでに耕作している人に限られやすいのが当社の見立てで、売りに出す前に隣地の耕作者へ意向を聞いてみる価値があります。
許可の要件の中身は農地の売却は誰にでもできる?にまとめています。
貸す場合は、農地バンクが出し手から借り受け、受け手に貸し付ける仕組みがあります。借り手が付くかは、場所と条件しだいです。
転用できるか、非農地の扱いになるかで道が変わる
農地を宅地などに転用して売る場合は、農地法4条・5条の許可が必要です。ただし、市街化区域内にある農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば足ります(4条1項7号、5条1項6号)。
| 場所 | 転用の手続き | 手放しやすさの目安 |
|---|---|---|
| 市街化区域内の農地 | 農業委員会への届出 | 許可より手続きが軽い |
| 市街化調整区域・農用地区域など | 都道府県知事等の許可 | 許可が出ないこともある |
また、現況がすでに農地でない土地は、農業委員会に相談すると、非農地証明が出る場合があります。出るかどうかは、現況や経過を見て農業委員会が判断します。
当社では、木が生えて山林のようになっていても、農用地区域内にある土地や、周りの田畑が今も耕作されている中の1筆は、非農地証明が出にくいものとして見ています。
逆に、農用地区域の外で、長く耕作されず周囲も含めて林になっている土地は、相談の余地があると考えています。最終的な判断は農業委員会です。
取り方は非農地証明の取り方にまとめています。
転用や非農地の扱いは、市町村ごとに運用が異なります。同じような土地でも、結果が違うことがあります。
先に農業委員会へ、土地の場所(地番)と現況を伝えて確認してください。
手放すまでの管理
耕作されていない農地には、農業委員会が利用意向調査を行うことがあり(農地法32条)、届いたら手放したい意向を窓口に伝えてください。
草刈りの通知への対応は空き地の草刈りで市役所から通知が届いたらにまとめています。
売る相手も手放す方法も見つからないとき
売る相手が見つからない、遠方で何度も窓口に行けない、費用を先に出せない。こうした事情で止まっている方は少なくありません。
当社は、農地を農地のままでは取得できません。一方で、非農地証明が出る土地や、市街化区域内の農地は、対応できる場合があります。宅地と一緒に田畑がある物件も、個別に確認します。扱えるかどうかは物件ごとの判断で、成立しないこともあります。
農地かどうかの確認など、当社でお手伝いできる範囲は個別にご案内しますので、窓口を回る前にご相談いただいても構いません。遠方でも、現地にお越しいただかずに契約から決済まで進められます。
まず、どの窓口に何を聞けばよいか迷ったら、お知らせください。
出典
- 農地法(e-Gov法令検索)2条・3条・4条・5条・32条・52条の2
- 民法(e-Gov法令検索)915条・939条・940条
- 相続土地国庫帰属法(e-Gov法令検索)2条・5条・10条(負担金)
- 相続土地国庫帰属法施行令(e-Gov法令検索)5条(負担金の算定)
- 法務省 相続土地国庫帰属制度
- 法務省 相続土地国庫帰属制度 申請の手引き(審査手数料)
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金
- 法務省 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(標準処理期間)
- さいたま地方法務局 相続土地国庫帰属制度について
- 松江地方法務局 相続土地国庫帰属制度の相談(予約・持参資料)
- 静岡市 農地台帳の閲覧
- 裁判所 相続の放棄の申述(費用)
- 農林水産省 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律について(下限面積要件の廃止)
- 農林水産省 農地相続ポータル
- 農林水産省 農地中間管理機構(農地バンク)
よくある質問
農地の所有権だけを放棄することはできますか。
届出などで所有権だけを放棄する手続きは、農地法にも民法にも用意されていません。手放すには、相続で取得した場合の相続放棄、相続土地国庫帰属制度、売却や贈与、貸付といった道を使います。どれが使えるかは、農地の場所と状態、取得の経緯で決まります。
農地を相続放棄するとき、農地だけを放棄できますか。
できません。相続放棄は相続全体について行うもので、農地だけを選んで放棄することはできません。放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。
農地を放棄したあとの管理は、誰がするのですか。
相続放棄をした人は、放棄の時にその農地を現に占有している場合に限り、次の管理者に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務が残ります(民法940条)。耕作していない農地でも、農業委員会が利用意向調査を行うことがあります(農地法32条)。
農地を売るには、誰の許可が必要ですか。
農地を農地のまま売るには、農地法3条により、農業委員会の許可が必要です。宅地や駐車場などに転用して売るときは、原則として都道府県知事等の許可が必要で、市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば足ります(同法4条・5条)。
農地を、そのまま買い取ってもらえますか。
当社は、農地を農地のままでは取得できません。ただし、非農地証明が出る土地や、市街化区域内の農地は、対応できる場合があります。扱えるかどうかは物件ごとに確認します。まず農業委員会で、その土地がどの扱いになるかを確かめることをおすすめします。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
このような物件のご相談は、農地の手放し方・相談先のページへ。
使っていない山林・原野・別荘地を、手放せるか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。
資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
現地に行ったことがなくても、地番か所在地が分かれば当社で調べます。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

