相続した土地を何年も見に行っていないところへ、市役所から「雑草が繁茂しているので除去してください」という文書が、現地の写真付きで届く。
空き地の草刈りの通知が届いたとき、最初の通知そのものに強制力はありませんが、放っておくと勧告・命令と段階を追って重くなり、条例によっては過料や行政代執行まで定めている自治体もあります。
近所からの苦情がきっかけで送られる例もあり、遠方に住む相続人にとっては、その土地の存在を思い出す最初の出来事になります。
市役所から草刈りの通知が届いた相続地は、遠方のままでも、現況のまま手放す方法を相談できます。通知の期限が近いときは、日付も教えてください。
通知の根拠は、自治体の条例か要綱
空き地の草刈りを求める通知は、国の法律ではなく、市町村ごとの条例や要綱を根拠にしています。「空き地の適正管理に関する条例」「空き地に繁茂する雑草等の除去に関する条例」など名称は自治体ごとに違い、条例を持たず要綱で指導だけを行う自治体もあります。
国土交通省の「空き地の適正管理及び利活用に関するガイドライン」(令和7年4月公表)も、空き地の管理一般について規制を伴う措置を定めた法律は現在制定されていない、としています。そのうえで、自治体が独自の条例で規制を設けることはできるという整理です。
一般財団法人地方自治研究機構の整理によると、空き地条例の骨格は、所有者や管理者に適正な管理を義務づけたうえで、自治体の長が指導・助言、勧告、命令と段階的に対応し、実効性を確保する手段として代執行・公表・罰則を置く、というものです。
| 段階 | 内容 | 所有者にできること |
|---|---|---|
| 指導・助言 | 文書と写真で除去を求める。強制力は無い | 担当課に連絡し、対応の予定を伝える |
| 勧告 | 期限を切って改善を求める | 業者を手配し、作業日を伝える |
| 命令 | 条例に基づく正式な命令。従わないと次の段階へ | 弁明の機会が設けられることがある |
| 公表・過料 | 氏名や住所の公表、5万円以下の過料など(条例による) | ここまで来る前に対応する |
| 行政代執行 | 市が代わりに刈り、費用を所有者に請求する | 実際にかかった費用の納付を文書で命じられ、税の滞納処分の例で徴収される(行政代執行法5条・6条) |
空き地条例の骨格は、空き地の適正な管理を、その所有者や管理者に義務づけるものである
どこまでの段階を定めているかは自治体ごとに違います。
指導までしかできない自治体もあれば、過料や代執行を条例に置いている自治体もあります。
通知の文面に根拠の条例名や条番号が書かれていれば、その名前で自治体のサイトを引いてください。
国土交通省が令和6年2月に行った調査では、規制の規定がある351条例のうち、措置命令を置くものが252、代執行が150、公表が95、罰則が65でした(地方自治研究機構の整理による)。
実際の運用について、ガイドラインは措置命令や公表、罰則、代執行の実施は「かなり限られた件数」と書いています。表の5万円は、泉佐野市の条例のように命令違反に定める例で、地方自治法14条3項が条例で定められる過料の上限でもあります。
罰金を定める条例もあります。
たとえば藤沢市は「藤沢市空き地に繁茂する雑草等の除去指導要綱」に基づいて指導を行っていますが、市が強制的に草を刈らせることはできないと明記しています。
指導文書と現地の写真を添付するなど郵送での指導を行います。

空き地の草刈りに関わる国の法律
草刈りを直接命じる法律は無くても、放置した土地に関わる条文はあります。
- 廃棄物処理法5条1項:土地の占有者(いなければ管理者)は、土地の清潔を保つよう努める。努力義務で、雑草を名指しした条文ではない
- 民法233条3項:越境した枝は、催告しても相当の期間内に切らないときや、竹木の所有者が分からないときなどに、隣地の所有者が切り取れる(2023年4月施行)
- 民法264条の9・264条の13:管理が不適当で他人の権利が侵害されるおそれがあれば、利害関係人の請求で、裁判所が管理人を選べる。費用と報酬は所有者の負担(2023年4月施行)
- 所有者不明土地法38〜40条:所有者の全部か一部が分からない土地で、土砂の流出や環境の著しい悪化を防ぐために、市町村長が勧告・命令・代執行をできる
放っておくとどうなるか
強制力が無いからといって放置すると、条例の段階が進むこと以外にも実害があります。
近隣との関係が悪くなる。通知が近隣からの苦情をきっかけに送られた場合、放置が続くと、将来その土地を隣地の方に譲る、あるいは境界の立会いをお願いするといった場面で、協力が得られにくくなります。
草以外の問題が積み重なる。枝が隣地や道路に張り出せば越境の問題になり、不法投棄の場所にされれば、その処分費も所有者の負担です。害虫や小動物の発生源として、苦情の内容が重くなっていきます。
建物があれば、空家法の対象になる。敷地に空き家が建っている場合は、空き地条例ではなく空家等対策特別措置法の対象です。管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れます(地方税法349条の3の2)。
土地の存在が把握できていないことが分かる。通知に書かれた地番に心当たりが無い方は少なくありません。固定資産税が免税点未満で通知が来ていない土地や、名義が祖父母のままの土地が、通知で初めて表に出ます。
この場合は相続登記の義務化の問題もあわせて考えることになります。
通知が来た時点でまずすることは、草を刈ることではなく、担当課に電話して「対応する予定である」と伝えることです。
藤沢市のように指導文書に強制力が無いと明記している自治体もあり、最初の通知は話し合いの入口です。勧告や命令は、指導に応じない所有者に対して進む組み立てになっています。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
市役所に草刈りを頼めるのか
私有地の草刈りは、所有者か管理者がするものです。函館市は「保健所(市役所)では草刈りを行いません」と書いており、習志野市も、離れて住んでいて自分で除草できないなら専門業者に依頼し、費用は依頼者の負担、と案内しています。
有料で除草の委託を受ける自治体もあります。
久喜市の雑草除去委託制度は、令和7年度の委託料が1回1平方メートルあたり224円×面積です。約100坪(330平方メートル)なら、1回7万3,920円になります。
北九州市は、遠方に住んでいる、除草業者が見つからないといった理由で自分で除草できない管理者等からの委託を受けており、料金は環境センターへの問い合わせ、事前納付制です。
使えない土地もあります。富山市の制度は、自ら除草することが困難な特別な理由が要り、申請後に審査があります。休耕田や畑だった土地、建築物がある土地、車両が通行できる道路に面していない土地などは断る場合があるとし、受付順なので日時の指定もできません。
こうした委託は所有者の申込みで動くもので、命令に従わなかったときの代執行とは別のものです。電話では「委託の制度はありますか」「無ければ業者を紹介してもらえますか」の2つを聞けば、行き先が決まります。
遠方から頼める先と頼み方
草刈りに自分で行けない場合、現地で作業してくれる先を探します。
| 頼む先 | 向いている土地 | 特徴 |
|---|---|---|
| シルバー人材センター | 平らで広すぎない土地 | 急ぎ・傾斜地・高い草は受けない所もある。受ける作業は地域のセンターに聞く |
| 造園・草刈り業者 | 広い土地、草丈が高い、傾斜がある | 機械で一度に済む。処分費・出張費が込みか別かを見積もりで見る |
| 空き地の管理代行 | 年に数回、定期的に見てほしい | 見回りと写真報告を含むか、年間契約かを聞く |
| 自治体の紹介・委託 | どこに頼めばよいか分からない | 担当課が業者を紹介する自治体、有料で委託を受ける自治体がある |
函館市のように、土地所有者自身による草刈りが困難な場合に有料の草刈り業者を紹介している自治体もあります(函館市「空き地の雑草等の除去について」)。通知を送ってきた担当課に「遠方で行けないので業者を紹介してほしい」と伝えるのが、最短の頼み方です。
函館市の空き家に関わる制度と窓口は、函館市の空き家・訳あり物件のページにまとめています。
依頼するときに伝える情報をそろえておくと、見積もりが早く出ます。
地番と住所(通知に書かれている)。おおよその面積(登記事項証明書か課税明細で分かる)。草の高さ(通知に添付された写真を送る)。刈った草を持ち帰ってほしいか、その場に置いてよいか。車を止められるか、水道は使えるか。作業後の写真を送ってほしいこと。
立会いは不要と最初に伝えてください。遠方からの依頼で困るのは、当日の立会いを前提にされることです。
境界がはっきりしない土地では、どこまで刈るかを写真や公図で業者に示しておくと、隣地とのトラブルを避けられます。
相続した空き地の草刈り費用は、誰が払うのか
草刈りを求められるのは、土地の所有者か管理者です。相続した土地は、相続登記が済んでいなくても、相続人が所有者として扱われます。
相続人が何人かいれば、全員が共有している状態なので、通知は代表者に届いても、費用は相続人の間で分けて考えます。民法253条1項は、各共有者が持分に応じて管理の費用を支払うと定めています。
自治体の通知が来た人が、ひとりで払い続けるものとは限りません。話し合いの場を作らないまま一人が立て替えると、あとで精算がもめます。
相続放棄をする場合は、期限が3か月で、土地だけを選べません。放棄した時に現にその土地を占有していた人には、次の人に引き渡すまで保存する義務が残ります(民法940条)。
何年も行っていない空き地なら、占有していないと読めますが、鍵や柵の管理をしていたかなど、事情によって見方が分かれるため、司法書士か弁護士に聞いてください。
しかも、この費用は一度では終わりません。
草刈り代は1回数万円、それが毎年
費用は面積・草丈・処分の有無・地域で幅があります。公表されている単価の例が先ほどの久喜市で、約100坪なら1回7万円台です。業者に頼む場合は、刈った草の処分費と出張費が込みか別かを見積もりで見てください。
回数は、久喜市が所有者に「春から夏と秋から冬にかけての年2回以上」の刈取りを求めています。固定資産税とは別の出費なので、金額は現地の見積もりを2社ほど取って比べてください。
問題は、これが毎年続くことです。久喜市の単価で約100坪を年2回なら、年14万7,840円。その出費が、土地から何の収入も無いまま続きます。しかも次の相続が起きれば、この負担が子の代に移ります。
一度刈って安心し、翌年また通知が届く。業者に頼む手間を惜しんで放置し、代執行で、かかった費用を請求される。相続登記をせず、通知が亡くなった親宛てに届き続ける。「いつか売れる」と考えて何年も管理費だけを払い続ける。
当社に届く相談でも、多いのは「高く売りたい」ではなく「0円でもいいので手放したい」という声で、地方の土地ほどその傾向が強く出ます。売れない土地の処分で書いたとおり、持ち続けるコストは、売れなくても発生し続けます。
草刈りの通知は、そのコストが目に見える形で届いたものです。
毎年続く費用を止めるには
草刈りの負担を根本から止めるには、土地を手放すしかありません。出口は4つあります。

隣地の方に譲る。空き地の草で困っているのは隣地の方です。無償か低額で譲り受けてもらえれば、双方にとって解決になります。登記費用や贈与税の扱いは、事前に税理士・司法書士に聞いておきます。隣地に売る進め方は再建築不可の記事で書いたものと同じです。
自治体に寄付する。自治体への寄付は、公共で使う予定が無い土地では断られることがほとんどです。草刈りの通知を出している自治体が、その土地を受け入れるケースは多くありません。
相続土地国庫帰属制度を使う。国庫帰属は、相続した土地の所有を国が受け入れる制度です。建物が無いこと、境界が明らかであること、管理の妨げになる崖や工作物・樹木が無いことなどの要件があります。
審査手数料は1筆1万4,000円、承認後に納める負担金は20万円が基本で、市街化区域等の宅地・農地と森林は面積に応じて20万円以上です(法務省のQ&A)。国に移るのは負担金を納めた時点なので(同法11条)、それまでの草刈りは申請者が続けます。
同じQ&Aは、現地調査のために事前の草刈りや投棄物の撤去を頼むことがある、とも書いています。
現況のまま取り扱える買主に売る。市場で買い手が付かない土地でも、訳あり不動産を現況のまま取り扱う会社であれば、引き受けられる場合があります。この道であれば、売却前に草を刈る必要はありません。
当社は、他で断られた土地も引き受けられる場合があります。草が伸びたまま、通知が届いたままの状態で相談してかまいません。所在地、面積、接道や境界の状況、権利関係は物件ごとに違うので、引き受けられるかどうかも1件ずつ見ます。条件によっては成立しないこともあります。
所在地と通知の写しがあれば、当社で調べます。売主様が草を刈ったり、現地へ足を運んだりする必要はありません。
草刈りを頼み続けるか、持ち主でなくなるか。通知の文面と所在地を送ってもらえれば、手放す方法を答えます。
実務で困りやすい点
土地がどこにあるか分からない。通知の地番と住居表示は別物で、法務局で公図を取り、地図と重ねないと場所が分からない土地は珍しくありません。地図混乱地域のように、公図と現地が合わない土地だと、業者もどこを刈ればよいか分かりません。
名義が亡くなった親のまま。通知が亡くなった親の宛名で届き、実家から回ってきて初めて知る、という順番になりがちです。相続人が複数いれば、誰が費用を負担するかで話が止まります。共同相続した不動産の整理と同じ問題です。
山林や原野で、草刈りでは済まない。通知の対象が山林・原野なら、雑草ではなく竹や雑木の伐採になり、費用の桁が変わります。山林の固定資産税を止める記事で書いた出口から考えたほうが、話は早く進みます。
地方の土地で、売っても費用に見合わない。地方の空き家が売れない理由と同じで、問題は価格ではなく、買い手そのものがいないことです。そういう土地は、価格を下げても仲介では動かないまま年数が過ぎていきます。
通知が届いた週にやること
担当課に電話し、対応する予定であることを伝える。登記事項証明書と公図を取り、土地の場所・名義・面積を手元にそろえる。今年の分は、自治体の紹介かシルバー人材センター・業者に頼む(立会い不要、写真報告ありで)。
そのうえで、来年も同じ費用を払い続けるかを決める。 続けないなら、隣地 → 寄付・国庫帰属 → 現況のまま取り扱える買主、の順に当たります。
草刈りの通知は、困った知らせではありますが、その土地を手放すことを考え始めるきっかけとしては、いちばん現実的なものです。遠方の実家や実家じまいの記事もあわせて読んでください。
条例の段階や過料の額は自治体ごとに違うため通知に書かれた条例名で確かめ、税務や登記に関わる部分は税理士・司法書士へご確認ください。
通知の写しと地番が手元にあれば、草が伸びたままの今の状態で、当社に所在地を伝えてみてください。回答は翌営業日までにお送りします。
よくある質問
親の名義のままの空き地に、市役所から草刈りの通知が来ました。うちが払うんですか。
相続登記が済んでいなくても、相続人が所有者として扱われます。相続人が何人かいれば全員で共有している状態なので、費用も相続人の間で分けて考えます。
相続放棄を考えるなら、期限の3か月と、占有していた場合の保存義務(民法940条)について司法書士か弁護士に聞いてください。
通知を無視したら罰金になりますか。
最初の通知は指導の段階で、強制力はありません。放置すると勧告、命令と進み、条例によっては氏名の公表や5万円以下の過料、行政代執行(市が刈って費用を請求)まで定めています。まず担当課に電話して、いつまでに対応できるかを伝えてください。
遠方で草刈りに行けません。誰かに頼めますか。
現地のシルバー人材センター、造園・草刈り業者、空き地の管理代行が候補で、担当課が業者を紹介してくれる自治体もあります。立会いなしで作業し、作業後の写真を送ってくれる先を選べば、遠方からでも回せます。
市役所で草を刈ってもらえないんですか。
私有地の草刈りは所有者か管理者がするもので、市は刈らないと案内している自治体があります。一方、久喜市や北九州市のように、有料で除草の委託を受ける自治体もあります。通知の担当課に、委託の制度があるかを聞いてください。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
このような物件のご相談は、訳あり不動産の買取相談のページへ。地域ごとの事情は、久喜市の空き家の手放し方のページにまとめています。
「売れない」と言われた不動産を、どうするか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。
資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
どこで断られたかを伺うことはしません。断られた理由の方が、判断に必要です。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

