筆界特定制度の費用は、法務局に納める手数料が数千円から数万円、測量が必要なら別に数十万円が目安で、期間はおおむね半年から1年です。この記事では、境界でもめている土地や隣地が立会いに応じない土地について、筆界特定制度で解決すること・しないこと、費用と期間の内訳、売却前に使う価値があるかの判断、そして筆界特定をせずに現況のまま手放す道まで整理します。
相続した土地を売ろうとして測量を頼んだら、隣地の方が立会いを拒んだ。あるいは、隣から「うちの土地に塀が食い込んでいる」と言われ、話がこじれた。境界が確定していない土地を売るときに、こうした行き止まりに当たる方は少なくありません。筆界特定制度は、そこで名前が出てくる制度です。
筆界特定制度とは、誰が何を決めるのか
筆界特定制度は、土地の所有者などの申請に基づいて、法務局の筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における筆界の位置を特定する制度です。不動産登記法第6章(第123条以下)に定められています。
ここで大事なのは「筆界」と「所有権界」の違いです。
| 用語 | 意味 | 誰が決めるか |
|---|---|---|
| 筆界(ひっかい) | 登記上の土地の区画の線。公法上の境界で、当事者の合意では動かせない | 法務局(筆界特定)または裁判所(筆界確定訴訟) |
| 所有権界 | 誰がどこまで所有しているかの線。時効取得や売買で動く | 当事者の合意、または裁判所 |
| 境界立会い・確認 | 隣接所有者どうしが筆界の位置を確認し、書面を交わす | 当事者(土地家屋調査士が立ち会う) |
筆界=登記のときに定められた土地と土地の区画線。隣どうしで「ここにしよう」と合意しても変わりません。
所有権界=実際に所有している範囲の線。長年占有していれば時効で動くことがあります。
ふつうは両方が一致していますが、ずれている土地でもめごとが起きます。
筆界特定制度が扱うのは、このうち筆界だけです。東京法務局の案内は、次のように説明しています。
筆界特定は、新たに筆界を決めるものではなく、また、法的に不可争力をもって筆界を確定するものではありません
つまり、法務局が「登記上の筆界はここにある」と示す手続きであって、境界紛争そのものを終わらせる裁判ではありません。
解決すること、しないこと
売却の場面で筆界特定制度が役に立つかどうかは、何が解決して何が残るかで決まります。

- 隣が立ち会わなくても進む。相手方が立会いを拒んでも、測量と実地調査は行える
- 共有者の一人でも申請できる。他の共有者は関係人として意見や資料を出せる
- 結果が登記所に残る。筆界特定書の写しを誰でも取れるので、買主に示せる
- 裁判より費用と期間が軽い。弁護士を立てる筆界確定訴訟に比べれば、負担は小さい
- 所有権の範囲は決まらない。隣が「時効で取得した」と主張する部分は別の争いになる
- 越境物は片付かない。筆界が特定されても、はみ出した塀や屋根を誰が撤去するかは残る
- 相手は裁判で争える。特定の結果に不服なら、筆界確定訴訟を起こすことができる
- 地積更正や分筆は別の手続き。特定の結果を登記に反映するには、あらためて申請が要る
たとえば隣の建物の一部がこちらに食い込んでいる場合、筆界特定でその事実は明らかになりますが、撤去や越境の覚書は別に交渉することになります。買主が気にするのは筆界の位置そのものより「越境がどう処理されるか」なので、筆界特定だけでは売却の障害が消えないことがあります。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
筆界特定の費用と期間は、どのくらいですか?
法務局に納める手数料が数千円から数万円、測量が必要なら別に数十万円、期間はおおむね半年から1年が目安です。費用は2つに分かれます。
| 項目 | 目安 | 誰が負担するか |
|---|---|---|
| 申請手数料(収入印紙) | 数千円〜数万円程度。対象土地の価格で決まる | 申請人 |
| 測量費(筆界調査委員の測量) | 概ね50万〜80万円の間が多い(東京法務局の案内) | 申請人 |
| 土地家屋調査士・弁護士への依頼料 | 依頼する場合は別途 | 申請人 |
| 期間 | 標準処理期間9か月(東京法務局)。事案により超える | ― |
手数料は、申請人の土地の価格と相手方の土地の価格を足して2で割り、それに0.05を掛けた額を基礎に計算されます。土地の評価額が低い地方の土地なら、手数料そのものは数千円で済むことが多いです。
委託費用は、申請人が負担することとされています。当局においては、概ね50万円から80万円くらいの間のものが多い
負担として重いのは、手数料ではなく測量費です。すでに測量図があり、追加の測量が不要と判断されれば軽くなりますが、古い土地では測量からやり直すことが多く、そこに数十万円がかかります。
法務局に納める手数料は安くても、測量費は別に申請人が負担します。
「手数料が数千円」という情報だけを見て申請すると、あとで測量費の見積もりに驚くことになります。
申請前に、その法務局の筆界特定登記官に、測量が必要になりそうかを相談してください。
期間については、東京法務局が標準処理期間を9か月としています。関係者が多い、資料が乏しい、地図混乱地域のように公図が現地と合っていない、といった事情があれば1年を超えることもあります。
隣地との立会い・筆界特定・裁判の使い分け
境界を確定させる方法は3つあります。どれを選ぶかは、隣地の協力が得られるかで決まります。
| 方法 | 向いている場面 | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 境界立会い・確認書 | 隣が協力的で、位置に大きな争いが無い | 確定測量の費用(数十万円〜) | 1〜3か月 |
| 筆界特定制度 | 隣が立ち会わない、または位置で争っている | 手数料+測量費(数十万円〜) | 半年〜1年 |
| 筆界確定訴訟 | 筆界特定の結果に相手が従わない、所有権も争っている | 弁護士費用を含め高額になりやすい | 1年〜数年 |
隣が協力的なら、ふつうの確定測量で足ります。隣が所在不明、または立会いを拒んでいるなら筆界特定が現実的な選択肢になります。所有権の範囲まで争っているなら、最終的には裁判です。
筆界特定制度は「隣が立ち会ってくれない」ときの手段としてはよくできています。
一方で、隣が「そこは自分の土地だ」と所有権を主張している場合は、筆界を特定しても争いは終わりません。
自分の土地のもめごとがどちらの型かを、先に見きわめてください。
売る前に筆界特定をする価値があるか
ここからが本題です。境界でもめている土地を、費用と時間をかけて筆界特定してから売るべきか。判断の軸は3つです。
その土地の売却見込み額と、費用の釣り合い。測量費を含めて数十万円かかるとすれば、売却見込み額がその何倍もある土地でなければ、費用が先に立ちます。地方の土地では、特定の費用が売値を上回ることも珍しくありません。
買主が誰か。一般の方が住宅ローンを組んで買う場合、金融機関も買主も境界の確定を求めるのが普通です。一方、境界未確定の土地を理解したうえで現況で取り扱う買主であれば、特定を待つ必要はありません。
特定しても残る問題があるか。越境や所有権の争いが残るなら、筆界特定に費用をかけても売却の障害は消えません。その場合、特定より先に「残る問題ごと引き受けられる買主がいるか」を考えるほうが早いです。

当社は、訳あり不動産を現況のまま買い取っています。境界が確定していない土地、隣地と争いがある土地についても、それだけを理由に査定の対象外とはしていません。ただし、争いの内容(筆界の位置だけか、所有権まで及ぶか)、越境の有無、建物の状態と築年数、接道の状況によって、引き受けられるかどうかは個別の判断になります。条件によっては成立しないこともあります。
所在地と公図があれば、当社で調べます。売主様が先に測量や筆界特定を申請する必要はありません。
実務で困りやすい点
確定測量を頼んだ後で、隣の立会い拒否が分かる。確定測量の費用を払い始めてから止まるのがいちばん痛い順番です。測量を頼む前に、隣地の方に一度声をかけておくだけで、この事態は避けられます。
筆界特定の結果を登記に反映していない。特定が済んでも、地積更正登記や分筆は自動では行われません。買主に示すには、筆界特定書と現在の登記の関係を土地家屋調査士に整理してもらう必要があります。
相続土地国庫帰属制度が使えない。国庫帰属は、境界が明らかでない土地や隣接所有者と争いがある土地を対象外としています。境界でもめている土地は、この制度の出口が閉じています。
共有者の意見が割れる。筆界特定は共有者の一人で申請できますが、その後の売却は共有者全員の同意が要ります。特定に費用を出した人と、売却に反対する人が分かれると、話が止まります。
隣地に売るという道が閉じている。境界でもめている相手に隣地として買ってもらうのは、関係が悪化した後では難しくなります。もめる前であれば、隣地に譲るのがいちばん安上がりな解決だったケースは多いです。
境界でもめたまま手放すか、判断の順番
- もめごとの型を見きわめる(筆界の位置だけか、所有権や越境まで及ぶか)
- 隣地の方に一度声をかけ、立会いに応じてもらえるかを確かめる(応じるなら確定測量で足りる)
- 応じないなら、法務局の筆界特定登記官に相談する(測量が要りそうか、費用の見込みを聞く)
- 売却見込み額と費用を並べる。 釣り合うなら筆界特定へ。釣り合わないなら現況のまま取り扱える買主に相談する
境界の問題は、未登記・私道・境界の相談の中でも解決に時間がかかる部類です。売却に必要な書類をそろえる段階で、公図と地積測量図を見て、隣地との関係を早めに確かめてください。
筆界特定の申請や、所有権の範囲に関わる争いは法律上の判断を伴います。土地家屋調査士・弁護士へご確認ください。
よくある質問
筆界特定制度にかかる費用はどのくらいですか。
法務局に納める申請手数料と、測量が必要な場合の測量費に分かれます。手数料は対象になる土地の価格から決まり、数千円から数万円程度になることが多いです。測量費は申請人の負担で、東京法務局の案内では概ね50万円から80万円の間のものが多いとされています。土地の広さや隣接地の数で変わるので、申請前に法務局の筆界特定登記官に相談してください。
筆界特定にはどのくらいの期間がかかりますか。
東京法務局は標準処理期間を9か月としていますが、関係者の数や事案の複雑さによってはこれを超えることがあります。全体としては半年から1年程度を見ておくのが現実的です。売却を急いでいる場合は、特定を待つあいだ買主を待たせられるかを先に考える必要があります。
隣の人が立会いを拒んでいます。筆界特定はできますか。
できます。筆界特定制度は隣接所有者の同意を要件としておらず、相手方が立ち会わなくても測量や実地調査は行えます。境界立会いに応じてもらえないために確定測量が進まない土地では、この点が最大の利点です。ただし、相手方には意見や資料を出す機会が保障され、特定の結果に不服があれば裁判で争うことはできます。
筆界特定をすれば、境界の争いは終わりますか。
筆界特定は公法上の筆界(登記上の土地の区画)の位置を法務局が特定するもので、新しく筆界を決めるものでも、争えない形で確定するものでもありません。所有権の範囲(時効取得など)や、越境した塀や建物をどうするかは別の問題として残ります。相手方が納得しなければ筆界確定訴訟に進むことがあります。
境界でもめている土地は、筆界特定をしてからでないと売れませんか。
そうとは限りません。一般の買主に仲介で売る場合は境界が確定していることを求められるのが普通ですが、境界未確定の状態を理解したうえで現況のまま取り扱う買主であれば、筆界特定を待たずに手放せることがあります。費用と期間を先に負担して特定してから売るか、特定せずに現況で手放すかは、その土地の売却見込み額との釣り合いで決まります。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
登記や境界が整っていなくても、売れるか
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片付け・解体・測量の費用を、先にご負担いただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
測量や登記を先にしていただく必要はありません。現況のまま確認します。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

