隣地の所有者が不明で境界確定できない土地|立会いなしで売る方法

竹林に覆われた斜面と荒れたガードレール沿いの敷地

隣地の所有者が不明で境界確定ができない土地でも、売却はできます。境界確定測量は隣の所有者の立会いが前提のため、相手がいなければそこで止まりますが、立会いなしで進む手続きと、境界を確定させずに手放す道があります。

隣が空き家で誰も来ない、登記の名義人が何十年も前に亡くなっている、相続人が何人いるのか分からない。こうした場面で境界確定を求められ、動けなくなっている方は少なくありません。

この記事では、隣地の所有者を追う手順、法務局の筆界特定制度、裁判所の所有者不明土地管理制度、そして境界を確定させないまま現況で手放す方法を整理します。測量の種類や費用の一般論は境界未確定の土地の売却にまとめてあるので、ここでは「相手がいない」場面に絞ります。

目次

隣が空き家・相続未了だと、なぜ境界確定が止まるのか

境界確定測量は、土地家屋調査士が現地で測ったうえで、隣り合う土地の所有者どうしが境界の位置を確認し、書面に署名する手続きです。この書面を筆界確認書(筆界確認情報)と呼びます。

つまり境界確定は、測る作業ではなく相手に確認してもらう作業が本体です。隣の所有者が現地に来られない、あるいは誰なのか分からないと、測量そのものは終わっていても、確定には至りません。

筆界=土地が登記されたときに区切りとされた、公の境界(不動産登記法123条1号)。所有権界=実際に誰のものかという私法上の境。ふつうは一致しますが、ずれていることもあります。

相手がいない場面は、大きく3つに分かれます。

隣の状態何が起きているか難しさ
空き家で連絡が付かない所有者は生きているが、登記の住所に住んでいない転居先を追えば見つかることが多い
名義人が亡くなっている相続登記がされておらず、相続人が誰か分からない戸籍で相続人を確定する作業が要る
相続人が多数・遠方・海外名義人の死亡から何十年も経ち、相続人が枝分かれしている全員の署名を集めること自体が現実的でない

どの型でも、費用をかけて測量を終えたあとに「署名が取れない」と分かる順番になりがちです。測量を発注する前に、隣が誰でどこにいるかを先に確かめるほうが、結果として出費が少なくて済みます。

登記簿から隣地の所有者を追う手順

隣地の所有者を調べる作業は、費用も少なく、ご自身でも進められます。順番はこうです。

隣地の所有者を追う4つの段階を示した図解
登記から始めて、住所、相続人、制度の順に進む
  1. 隣の地番の登記事項証明書を取る。 所有者の氏名と住所が載っています
  2. 住所を追う。 登記簿の住所に住民票が無ければ、住民票の除票や戸籍の附票で転居先をたどります
  3. 亡くなっていれば相続人を探す。 名義人の出生から死亡までの戸籍をそろえ、相続人を特定します
  4. それでも分からなければ、制度を使う。 筆界特定制度や所有者不明土地管理制度に進みます
書類窓口・郵送オンライン請求(郵送で受取)
登記事項証明書600円520円
公図(地図等証明書)500円470円

いずれも1通あたりで、令和7年4月1日改定後の額です(法務省「登記手数料について」)。

住民票の除票と戸籍の附票の除票は、令和元年(2019年)6月20日の改正で保存期間が5年から150年に延びました。ただし、それ以前に保存期間を過ぎて廃棄されたものは、今から請求しても出てきません。登記の住所が古いほど、この壁に当たります。

除票や附票を第三者が請求するには正当な理由が要るため、司法書士や土地家屋調査士を通すことが多くなります。登記の名義人が亡くなっている場合の相続人の特定も、司法書士へご相談ください。相続人が多数になると、数か月かかることもあります。

なお、隣地ではなくご自身の登記が古い住所のままだと、売却の手続きでも止まります。この点は住所変更登記の義務化で扱っています。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

隣地に入って測ること自体は、できる

「隣が空き家で承諾が取れないから、境界標を探しに入れない」と思われがちですが、ここは法律が変わっています。

2023年(令和5年)4月施行の改正民法209条1項は、土地の所有者が「境界標の調査又は境界に関する測量」のために、必要な範囲で隣地を使用できると定めています。改正前は障壁や建物の築造・修繕のためだけに認められていたものが、測量に広がりました。

使うときは、あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地の所有者と現に使っている人に通知する必要があります(同条3項)。あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後に遅滞なく通知すれば足りるとされているため、所有者が分からない隣地でも、測量のための立入りが法律上できない状態ではなくなりました。

住家については、居住者の承諾がなければ立ち入れません(同条1項ただし書)。また、この条文で認められるのは「測る」ことまでで、相手に境界を確認してもらうことは別の問題です。立入りができても、筆界確認書の署名が取れない状況は変わりません。

つまり現況測量までは進められる一方で、確定測量は相手の署名がないと閉じません。ここから先は、筆界特定か、境界を確定させない道の選択になります。

筆界特定制度でできること・できないこと

筆界特定制度は、法務局の筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見をふまえて、筆界の現地における位置を特定する手続きです(不動産登記法123条以下)。申請できるのは土地の所有権登記名義人とその相続人などで、隣の同意は要りません(同法131条1項)。

  • 隣の所有者の立会いや同意が無くても、手続きは進む
  • 関係人の所在が分からないときは、公告と法務局の掲示で通知したものとみなされる(同法133条2項。措置の開始から2週間で到達したとみなす)
  • 特定の結果は登記記録に記録され、あとの分筆や地積更正の登記で筆界の資料として使える
  • 裁判ではないので、相手を訴える形にならない
  • 所有権界を決めるものではない。特定した筆界に納得できない当事者は、あとから裁判で争える
  • 新しく境界を決める制度ではなく、登記されたときの筆界を「探して示す」もの
  • 手数料とは別に測量費用がかかり、期間も長い

費用と期間の目安は、法務局が公表している範囲でこうなります。

項目内容出典
申請手数料対象となる2筆の土地の価格から算定。2筆で合計4,000万円の場合に8,000円千葉地方法務局
測量費用現地の測量を要する場合は申請人の負担。おおむね50万円から80万円くらいの間のものが多い東京法務局 よくある質問
標準処理期間9か月同上

相手が立ち会わなくても筆界特定はできますが、立会いを省くための制度ではありません。東京法務局は「仮に相手方が立ち会わなかったとしても、測量又は実地調査を行うことができなくなるものではありません」としています。相手がいないから止まっている、という状況を法務局側の判断で前に進める仕組み、と理解してください。

一方で、確定測量を頼んだ土地家屋調査士に払う費用とは別に、上の測量費用がかかります。土地の価値に対して費用が見合うかは、申請前に見積もっておく必要があります。

なお、分筆や地積更正の登記に必要な筆界確認情報については、法務省が令和4年4月14日付の通達(民二第535号)で取扱いを見直し、令和4年10月3日から全国の法務局で運用が始まっています。現地を復元できる図面が法務局にある場合などに筆界確認書を求めない扱いで、詳しくは地積更正登記の費用と売却で整理しています。

所有者不明土地管理制度を使う場面

筆界特定は「筆界の位置」を示す手続きで、隣の所有者の代わりに誰かが判断してくれるわけではありません。次のような、相手の署名や合意そのものが要る場面では、別の制度になります。

  • 隣地から越境している屋根や塀について、覚書を交わしたい
  • 隣地の一部を買い足して、間口や形を整えたい
  • 買主が「隣地所有者の筆界確認書」を条件にしている

この場合に使えるのが、2023年(令和5年)4月から始まった所有者不明土地管理制度です。民法264条の2は、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地について、利害関係人の請求により、裁判所が所有者不明土地管理人による管理を命じられると定めています。

選ばれた管理人は、裁判所の許可を得て売買や境界の確認に応じることができます。相手がいないまま止まっていた話が、管理人という交渉相手を得て動き始める仕組みです。

項目内容
申立先その土地の所在地を管轄する地方裁判所
申立てできる人利害関係人(隣地の所有者として境界の確認や買取りの意向がある人など)
費用収入印紙・郵便切手のほか、管理人の報酬に充てる予納金を納める

予納金の額はあらかじめ一律に示されていません。裁判官が管理事務の内容や期間をふまえて決めるため、数十万円単位になることもあります。境界を確かめる目的だけで申し立てるかどうかは、土地の価値と見合うかを先に見てから判断してください。手続きの詳細は司法書士・弁護士へご確認ください。

隣の名義人が亡くなっていて、相続人はいるが行方が分からない場合は、不在者財産管理人の制度が候補になることもあります。また隣地ではなくご自身の土地の共有者と連絡が取れない場合は、所在が分からない共有者の持分取得の仕組みが別にあります。どの制度が当てはまるかは、相手が誰で何が分からないのかによって変わります。

境界を確定させずに、現況のまま手放す

ここまでの手続きは、いずれも費用と時間がかかります。土地の価値がそれに見合わないなら、境界を確定させないまま手放すという選択があります。

隣が立ち会えないときに進める3つの道を示した図解
確定させる道は2つ、確定させずに手放す道が1つ

境界の確定は、法律上の義務ではありません。売買契約で「境界を明示するか」「明示しない(境界非明示)で引き渡すか」を定める問題です。買主がそれを承知で引き受けるなら、測量も立会いも要りません。

出口隣地所有者の協力売主が先に負担するもの向いている状況
確定測量をして仲介で売る要る測量費、場合により筆界特定の費用隣の所有者が見つかる見込みがある
相続土地国庫帰属制度境界が明らかであることが前提審査手数料と負担金境界に争いが無く、建物が無い土地
境界非明示で現況のまま買い取ってもらう要らない原則として無し隣が不明・相続未了で、費用をかけたくない

相続土地国庫帰属制度は、「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地」を申請できない土地として定めています(相続土地国庫帰属法2条3項5号)。隣の所有者が不明で境界を確かめられない土地は、この要件で止まることが多いため、国に引き取ってもらう道は最初から選びにくいのが実情です。制度の全体は相続土地国庫帰属制度にまとめています。

仲介で売る場合、境界非明示の土地は買主が限られます。住宅ローンを使う買主や、建物を建てる予定の買主は、境界の確定を条件にすることが多いためです。「値下げすれば売れる」のではなく、その条件で買える人が少ないという壁が先に来ます。

当社は、境界が確定していない土地を現況のまま取り扱うことを基本にしています。隣地の所有者が分からないことだけを理由に、査定や取扱いの対象外とすることはありません。測量や立会いを売主にお願いする形は取らず、隣地の登記や相続の状況も当社で調べます。

ただし、条件によっては成立しないことがあります。希望額との開きが大きい場合、費用のご負担についてご同意いただけない場合、相続人の間で合意ができていない場合です。どんな土地でもお引き受けできるとは申し上げられず、現地と資料を見てからの個別の判断になります。

査定で見ているのは「隣が誰か」より「図面がどこまで残っているか」

隣地の所有者が不明な土地を見るとき、当社が先に確かめるのは、隣が誰かよりも法務局にどんな図面が残っているかです。理由は、図面の精度で「確定させなくても位置がほぼ分かる土地」と「そもそも現地と図面が合わない土地」に分かれるからです。

– 法14条地図があるか、公図(地図に準ずる図面)だけか。 14条地図は測量に基づく精度の高い地図で、あれば現地の位置を復元しやすい
– 地積測量図があるか。 過去に分筆や地積更正をした土地には、法務局に測量図が残っていることがある。無ければ、登記簿の面積と実測がずれている可能性を見込む
– 境界標が現地に残っているか。 杭やプレートが残っていれば、隣の署名が無くても位置の手がかりになる
– 越境物があるか。 隣の塀や屋根がこちらに入り込んでいると、買主が付きにくくなる要素として見る

図面と現地が大きくずれている地域は、地図混乱地域として別の扱いになります。登記簿の面積と実測がずれている場合の考え方は縄伸び・縄縮みのある土地の売却で、越境がある場合は越境している土地の売却で扱っています。

これらの調査は当社で行います。売主に測量図を探してもらったり、隣の登記を取ってもらったりはしません。手元にあるものだけお送りいただければ、足りない分はこちらで取ります。

この記事の要点

  • 境界確定測量は「相手に確認してもらう」手続きなので、隣の所有者がいないと閉じない
  • 隣地の所有者は、登記事項証明書→住所→相続人の順で追う。古い除票は廃棄されて取れないことがある
  • 改正民法209条で、境界の測量のための隣地の立入りはできるようになった。ただし署名の問題は残る
  • 筆界特定制度は隣の同意なしで進む。所在不明なら公告で通知したものとみなされる。測量費と9か月程度の期間はかかる
  • 相手の署名や合意そのものが要るなら、所有者不明土地管理制度。予納金が要る
  • 相続土地国庫帰属制度は、境界が明らかでない土地は申請できない
  • 境界を確定させずに現況で手放す道がある。仲介では買主が限られ、買取なら相談できる場合がある

登記や税務の取り扱いについては、司法書士・税理士へご確認ください。

隣の所有者が分からないまま何年も動かせずにいるということでしたら、公図と登記事項証明書の写しだけでもお送りください。確定させる道と、確定させずに手放す道のどちらが現実的かをお伝えします。境界・未登記の物件の取り扱いについては、未登記・私道・境界の買取・売却相談にまとめています。

よくある質問

隣の土地の所有者が分からないと、境界は確定できないのですか。

隣地所有者の立会いと署名を前提にする境界確定測量は、相手がいなければ成立しません。ただし法務局の筆界特定制度は、相手の立会いや同意が無くても手続きが進みます。関係人の所在が分からないときは公告と掲示で通知したものとみなす定めがあります(不動産登記法133条2項)。また、境界を確定させないまま現況で引き受ける買主に売る道もあります。

筆界特定にはいくらかかりますか。

法務局に納める申請手数料は対象となる2筆の土地の価格から算定され、千葉地方法務局の案内では2筆で合計4,000万円の場合に8,000円です。ほかに現地の測量を要する場合の測量費用が申請人の負担になり、東京法務局はおおむね50万円から80万円くらいの間のものが多いとしています。標準的な処理期間は9か月です。

隣地の所有者が亡くなっていて、相続人も分かりません。

戸籍をさかのぼって相続人を特定する作業になり、人数が多いと数か月かかることもあります。そこまでしても連絡が付かないときは、裁判所に所有者不明土地管理人の選任を申し立てる方法(民法264条の2)があります。ただし予納金がかかるため、境界を確定させる目的だけで使うかどうかは費用と見合うかの判断になります。

境界が確定していない土地は、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらえますか。

できません。相続土地国庫帰属法2条3項5号は、境界が明らかでない土地その他の所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地を、申請できない土地として挙げています。隣地の所有者が不明で境界を確かめられない土地は、この要件で止まることが多く、別の出口を考える必要があります。

測量も立会いもしないまま、売ることはできますか。

できます。境界の確定は法律上の義務ではなく、契約で境界を明示するかどうかを定める問題です。境界非明示のまま引き受ける買主であれば、測量も立会いも要りません。当社は現況のまま取り扱うことを基本にしており、隣地の所有者の調査も当社で行います。ただし物件の状況によってはお引き受けできない場合があり、個別の判断になります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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