地目が墓地の土地は、登記の地目を変えずに売ろうとすると、買主の住宅ローンと用途の制限で止まりやすい土地です。実家の敷地の一角に先祖の墓があり、登記の地目が「墓地」になっている土地は、墓が残っているか、廃止の記録があるかで進め方が変わります。
固定資産税の課税明細や登記事項証明書を見て、実家の敷地の中に「墓地」という地目の筆があると気づく。あるいは、裏山の一角にある先祖代々の墓が、登記上は独立した一筆の「墓地」になっている。地方の実家では珍しくありません。
実家の敷地に地目が墓地の筆があって売れない場合、改葬が済んでいるかどうかで進め方が変わります。済んでいなくても、いまの状態を教えてもらえれば、手放す方法を答えます。
登記の地目が「墓地」、という土地がある
不動産登記の地目は23種類あり、その一つが墓地です。人の遺骨や遺体を葬るための土地に付けられます。宅地の中に区画された数坪の墓地もあれば、山林や畑の一角にある屋敷墓もあります。
このような墓は、一般に個人墓地と呼ばれます。墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)は、墓地を経営するには都道府県知事(市または特別区では市長・区長。墓埋法2条5項)の許可が要ると定めています。
そのうえで同法26条は、施行の際に従前の命令により許可を受けて経営していた墓地を、許可を受けたものとみなしています。いわゆるみなし墓地です。
古い屋敷墓は、このみなし墓地にあたるのか、施行後に許可を得て設けたものか、許可の無いまま設けられたものかで、廃止の進め方が変わります。登記の地目も墓地になっているとは限らず、宅地や山林のまま墓が建っている土地もあります。
改葬=埋葬した遺体や埋蔵した遺骨を、別の墓地や納骨堂に移すこと。墓埋法2条3項に定義があります。
墓地の廃止=その土地を墓地として使うのをやめること。墓埋法10条の許可が要ります。
法律の条文は墓地、埋葬等に関する法律(e-Gov法令検索)で読めます。手続きの様式や必要書類は、自治体ごとに運用が異なります。
個人墓地を相続したら、最初に見る三つ
個人墓地のある土地を相続して売れないと感じたとき、最初に見るのは次の三つです。
一つ目は、墓を継ぐ人(祭祀承継者)が誰かです。民法897条は、系譜、祭具、墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰する者が承継すると定めています。
通常の相続財産とは別の扱いになるので、実家を相続した人と墓を継ぐ人が別の人になる、という例もあります。墓の敷地の扱いは事案によって読み方が分かれるため、売る前に司法書士に聞いてください。二つ目は、登記上の名義です。
墓地の筆が先代のままになっていると、相続登記から始めることになります。三つ目は、みなし墓地かどうかです。前の節で触れたとおり、墓の成り立ちによって廃止の進め方が変わります。
この三つが分からないうちは、買主に話しても売り方が決まりません。どれも、市町村の生活衛生の担当課と登記事項証明書で、売主の側でも調べられます。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
地目が墓地のままだと売れない理由
地目が墓地であること自体は違法でも欠陥でもありません。困るのは、売ろうとしたときです。
| 場面 | 何が起きるか | 理由 |
|---|---|---|
| 買主の住宅ローン | 金融機関が担保として評価しにくい | 墓地は取引の実例が少なく、宅地として使える保証が無い |
| 心理的な抵抗 | 一般の買主が敬遠する | 墓があった土地であることが登記に残る |
| 分筆や合筆 | 宅地の筆と一つにまとめられない | 地目が違う筆どうしは合筆できない(不動産登記法41条2号) |
宅地と墓地が別々の筆になっている実家では、宅地の部分だけを売って墓地の部分が残るという形になりがちです。これは農地付きの実家で農地だけが残る構図と同じで、小さな筆だけが手元に残り、次の相続まで持ち越されます。
地目が墓地の土地は、墓地として使われている限り固定資産税が非課税です(地方税法348条2項4号)。
そのため税金の通知に載らず、相続した本人がその筆を知らないままになりがちです。
実家を売る前に、登記事項証明書を筆ごとに取って見てください。
墓地を廃止して地目が変わると、この非課税の扱いから外れて固定資産税がかかるようになることがあります。
なお、地目が墓地の土地でも、相続登記の義務は他の土地と同じです。墓そのものは祭祀財産として相続財産と別に扱われますが、土地の登記は所有権の移転として扱われます。
墓が残っている場合は、改葬と廃止許可が前提になる
墓が残っている土地を売るには、まず遺骨を移し、墓地としての使用をやめる手続きを踏みます。窓口が3つに分かれるのが分かりにくいところです。

横浜市の案内では、個人墓地の廃止は次の順番で進みます。
- 改葬の許可申請。区役所の戸籍の担当課に、移す先の受入証明などを添えて申請する
- 改葬の実施。遺骨を取り出し、新しい墓地や納骨堂へ移す
- 墓石の撤去と整地。いったん更地の状態にする
- 廃止の事前相談。生活衛生の担当課に、廃止手続きの詳細を相談する
- 廃止許可の申請。改葬許可証の写し、登記事項証明書、公図の写し、見取図、申請理由書を提出する
- 廃止許可の通知。許可通知書の交付を受ける
墓地内のすべてのご遺骨が改葬済みであることをご確認ください
改葬の申請には、墓地の管理者が作る埋蔵の事実の証明書(埋蔵証明書)を添えるのが原則です(墓埋法施行規則2条2項1号)。ただし同じ号は、これによりがたい特別の事情があるときは、市町村長が必要と認める準ずる書面でよいとしています。
寺院に発行を断られた場合の代わりの書面として、厚生労働省の令和8年1月23日付の事務連絡は、墳墓の写真や、提出できない経緯を書いた申述書などを例に挙げています(総務省東北管区行政評価局の資料)。
管理者がはっきりしない古い屋敷墓も、まず市町村の窓口に尋ねてみてください。申請者が墓地の使用者でない場合は、使用者の承諾書も要ります(同項2号)。
廃止許可が出たあとで、法務局に地目変更の登記を申請します。地目変更は表示に関する登記なので、登録免許税はかかりません。
順番は「改葬 → 撤去 → 廃止許可 → 地目変更」です。
墓地としての許可や記録が残っている土地は、地目変更の前に廃止許可を済ませておく、と考えてください。
逆に、遠い昔に改葬を済ませたまま廃止の手続きをしていない土地は、いまからでも廃止許可の申請から始められます。
費用と期間の目安
改葬から地目変更までにかかる費用は、墓の数と大きさ、移す先によって大きく変わります。自治体ごとに運用が異なるため、幅を持って見てください。
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 改葬の許可 | 自治体による | 窓口で確認する |
| 閉眼供養(お布施) | 宗派・寺院による | 依頼先に尋ねる |
| 改葬と墓石の撤去 | 公営墓地の例で40万〜200万円/区画 | 区画の面積、墓石の大きさ、埋蔵数で変わる |
| 墓石の撤去だけ | 公営墓地の例で数十万円/基 | 大きさで変わる。車両が入れるかでも見積もりは変わる |
| 移す先の費用 | 移す先による | 永代供養墓・納骨堂・新しい墓で大きく異なる |
| 廃止許可の申請 | 自治体による(横浜市は無料) | 書類の取得費は別 |
| 地目変更登記 | 登録免許税なし | 土地家屋調査士に頼めば報酬がかかる |
| 期間 | 墓ごとに異なる | 移す先の契約と石材店の手配で変わる |
改葬と撤去の金額は、総務省「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)に載っている、自治体が無縁墳墓を整理した際の資料の数字です。個人墓地の金額ではないので、見当をつける材料にとどめ、実際の金額は石材店の見積もりで確かめてください。
墓地の筆そのものは数坪であることが多く、その土地の売却額だけでは、改葬と撤去の費用を回収できないのが普通です。実家の宅地とまとめて売る前提で、費用を出す価値があるかを考えることになります。
整理して売るのに向くのは、移す先の墓地や納骨堂が決まっていて、親族の同意がある場合です。実家の宅地と墓地の筆が隣り合っていてまとめて売れば買主が付く立地で、石材店の車両も入れるなら、費用をかけて整理する意味が出てきます。
向かないのは、親族の間で改葬そのものに反対がある場合です。山の斜面など重機も車両も入れない場所に墓がある、墓地の筆が実家から離れていて単独では買い手が付かない、遠方に住んでいて供養・撤去・役所の対応に何度も通えない、という場合も同じです。
墓地の地目変更は、誰が何を出すか
廃止許可のあとの地目変更登記は、土地の所在地を管轄する法務局に申請書を出す手続きです。
| 確認すること | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 申請する人 | 登記の所有者。亡くなった親の名義のままなら相続人が申請でき、相続を証する戸籍などを添える | 不動産登記法30条、不動産登記令7条1項4号 |
| 期限 | 地目が変わった日から1か月以内。変わったあとで名義人になった人は、その登記の日から1か月以内 | 不動産登記法37条 |
| 怠った場合 | 正当な理由がないと10万円以下の過料 | 不動産登記法164条 |
| 申請書 | 法務局の様式と記載例がある | 法務局「不動産登記の申請書様式について」 |
添付書類は、墓地の場合の全国共通の案内を法務局の様式ページでは確認できませんでした。不動産登記令の別表は、地目変更の添付情報を定めていません。
一方で、法務局の記載例(畑から宅地)は農地法の許可書を添付する形で、登記官は申請の内容を調べるときに資料の提示を求めることができます(不動産登記法29条)。
廃止許可通知書と改葬許可証の写しを用意して、申請の前に管轄の法務局へ尋ねるのが確実です。
変更後の地目が宅地になるとは限らない
墓を撤去して更地にしても、それだけで宅地になるとは限りません。不動産登記事務取扱手続準則(法務省)の68条は、地目は土地の現況と利用目的に重点を置いて定めるとしています。
| 地目 | 準則68条の定め |
|---|---|
| 墓地 | 人の遺体又は遺骨を埋葬する土地 |
| 宅地 | 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地 |
| 雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 |
隣の実家と一体で使われている土地と、裏山に離れてある土地では、判断が分かれることがあります。何の地目で申請できそうかは、管轄の法務局か土地家屋調査士に確かめてください。
地目がそろえば、宅地の筆と合筆できるようになる場合があります。合筆には、土地が接していること、地目と名義が同じことなどの条件があります(不動産登記法41条)。
地目変更ができる場合、できない場合
墓を移して更地にしても、地目を変えられないケースがあります。
遺骨がまだ埋まっている。改葬の記録が無い古い墓では、掘ってみて初めて土葬の遺骨が出ることがあります。この場合はあらためて改葬許可を取る必要があり、廃止許可はその後になります。
廃止の手続きをした記録が自治体に無い。みなし墓地は自治体の台帳に載っていないことがあり、「墓地として許可した記録が無いので廃止もできない」という扱いになる例もあります。この場合の進め方は自治体ごとに運用が異なるため、事前相談の場で尋ねることになります。
他人の墓が混ざっている。分家や縁者の墓が入っている屋敷墓もあり、その持ち主の同意なしに改葬はできません。所在が分からない場合は、隣地の所有者が不明なときと同じく、時間のかかる調べものになります。
地目は墓地なのに、現地は畑や山林になっている。登記だけが古いまま残っている型です。廃止の記録があれば地目変更できますが、無い場合は上と同じ問題になります。非農地証明や地図混乱地域と同じく、書類と現地が食い違っている土地です。
なお、相続土地国庫帰属制度も、墓地内の土地を申請できない土地の一つとしています(同法施行令2条2号)。地目が墓地のままの筆は、この制度でも出口になりません。
地目変更までを自分でやり切る前に、実家ごと現況で手放せるかを確かめておけば、手続きの順番で迷わずに済むことがあります。
実家ごと現況で手放す道
ここまでが手続きの話です。当社に届く相談でも、「解体費が出せない」「他で断られた」という声が多くあります。墓地の筆がある実家なら、改葬まではしたが廃止許可と地目変更が残っている、あるいは墓は残っていて整理まで手が回らない、という形で止まります。

進め方は3つに分かれます。
1つ目は、すべて整理してから仲介で売る形です。改葬・撤去・廃止許可・地目変更を済ませ、宅地として売り出します。買主の幅は広がりますが、費用と時間をまず負担します。
2つ目は、墓地の筆だけ分筆して手元に残し、宅地の部分を売る方法です。墓を守り続けたい親族がいる場合に選ばれます。ただし墓地の筆に通路が確保できるか、次の代が管理を続けられるかを考えておく必要があります。
3つ目は、地目が墓地のまま、実家ごと現況で買主に引き継ぐやり方です。改葬を済ませていれば、廃止許可と地目変更を買主側で進められる場合があります。
当社は、他で断られた物件も、現況のまま引き受けられる場合があります。地目が墓地の筆が含まれる実家についても、それだけを理由に対象外とはしていません。
遺骨が残っているかどうかで進め方が分かれるので、改葬許可証の写しがあれば一緒に見せてください。建物の状態と築年数、境界の状況とあわせて、物件ごとに確認します。条件が合わず、お引き受けできない場合もあります。
所在地と登記事項証明書があれば、当社で調べます。売主様が自治体や法務局へ問い合わせる必要はありません。
判断の順番
登記事項証明書を筆ごとに取り、地目が墓地の筆があるかを見る(課税明細には載らないことがある)。現地に墓が残っているか、遺骨があるかを調べる(親族への聞き取りを含む)。
市町村の生活衛生の担当課に、墓地としての記録の有無と廃止の進め方を問い合わせる。墓が残っていて親族の同意があるなら → 改葬 → 撤去 → 廃止許可 → 地目変更。
費用が見合わない、遠方で動けないなら → 現況のまま取り扱える買主に相談する。
実家の整理全体の進め方は実家じまいの進め方を、遠方の実家を相続した方はそちらもあわせて読んでください。墓じまいそのものの宗教上の作法や、祭祀承継者の決め方に関わる部分は、寺院や司法書士へご確認ください。
よくある質問
親から相続した土地に先祖の墓があって、地目も墓地になっています。売れますか。
地目が墓地のままだと、一般の買主は住宅ローンを組みにくく、買い手が限られます。墓を移して廃止許可を受け、地目を変えてから売るか、地目が墓地のまま実家ごと現況で手放すかのどちらかになります。
どちらが現実的かは、墓が残っているか、墓を継ぐ人と登記の名義が誰かで変わります。
先祖の墓がまだ残ったままです。売る前に何をすればいいですか。
遺骨を別の墓地や納骨堂へ移す「改葬」が先です。墓地、埋葬等に関する法律5条により市町村長の改葬許可が要り、改葬を終えて墓石を撤去したうえで、同法10条の墓地廃止許可を申請します。様式や必要書類は市町村ごとに異なるので、生活衛生の担当課に事前相談してください。
墓はもう無いのに、登記の地目だけ墓地のままになっています。
法務局に地目変更を申請する前に、墓地の廃止許可が済んでいるかを自治体に問い合わせてください。昔に改葬したまま廃止の手続きをしていない土地は少なくありません。廃止許可が取れれば、地目変更の登記に登録免許税はかかりません。
墓を撤去して更地にすれば、地目を宅地に変えられますか。
更地にしただけで宅地になるとは限りません。法務局の準則では、地目は土地の現況と利用目的で定めるとされ、宅地は建物の敷地とその維持・効用に必要な土地、どの地目にも当たらない土地は雑種地です。
変更後の地目は土地の使われ方で変わるので、管轄の法務局か土地家屋調査士に確かめてください。
墓地の地目変更は誰が、いつまでに申請するのですか。
登記の所有者が、地目が変わった日から1か月以内に申請します(不動産登記法37条1項)。名義が亡くなった親のままなら、相続人が申請できます(同法30条)。正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法164条)。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
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資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
測量や登記を先にしていただく必要はありません。現況のまま確認します。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

