農地付きの実家が売れないとき、最初に確かめてほしいのは「その土地は本当に農地なのか」です。登記の地目が畑や田のままでも、現況はもう農地ではない、という土地が実際に多くあります。それは固定資産税の課税明細を見れば、ご自分で確かめられます。
当社が扱った案件にも、登記の地目は農地なのに、現況は完全に宅地だった土地がありました。この記事では、その見分け方と、本当に農地だった場合に売買が止まる理由、そして費用を先に負担せずに手放す方法まで順に説明します。
まず疑うのは「本当に農地なのか」
農地かどうかは、登記簿の地目ではなく、その土地が現にどう使われているかで判断されます。ところが登記の地目は、耕作をやめても自動では変わりません。
祖父の代で耕作をやめ、以来ずっと庭や物置置き場になっている。それでも登記簿は「畑」のまま。こういう土地は珍しくありません。
そして不動産会社や司法書士が最初に見るのは登記簿です。そこに「畑」とあれば、農地法の手続きが必要な土地として扱われ、話が止まります。

手がかりは、毎年春に届く固定資産税の課税明細書です。固定資産税の地目は、登記簿上の地目にかかわらず、その年の1月1日の現況で判定されています(総務大臣が定める固定資産評価基準による取り扱い)。
課税明細に「現況地目」の欄があり、そこが宅地や雑種地になっているなら、市町村はその土地を農地として扱っていないことになります。登記だけが取り残されている可能性があります。
明細が見当たらないときは、市町村の税務課で名寄帳(所有している不動産の一覧)を取れば確認できます。所有者本人か相続人であれば請求できます。
現況が農地でないなら、地目を直せることがある
現況が農地でないと農業委員会が確認できれば、非農地証明(自治体によっては非農地通知、現況証明などと呼ばれます)を出してもらえることがあります。これを添えて法務局に地目変更登記を申請すると、登記簿の地目が実態に合わせて直ります。
地目が農地でなくなれば、農地法の許可は不要になります。買い手を農業をする人に限る必要がなくなり、ふつうの土地として話を進められます。

何年耕作していなければ認められるか、どんな資料が要るかは、農業委員会ごとに運用が違います。10年、20年といった年数の目安を示している委員会もあれば、現地調査で個別に判断する委員会もあります。全国どこでも同じ、とは考えないでください。
地目変更登記は、変更があった日から1か月以内に申請する義務があります(不動産登記法第37条)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(同法第164条)。表示に関する登記なので登録免許税はかからず、ご自身で申請することもできます。
案内が届いていたのに、気づいていなかった例
鹿児島県で当社が引き受けた土地は、まさにこの形でした。登記の地目は農地、現況は宅地。ご本人は「農地だから売れない」と長く思っていました。
調べていくと、過去に農業委員会から本人あてに非農地証明と地目変更の案内が送られていたことが分かりました。ただ、その書類は手元に残っていませんでした。
当社で証明を取り直し、地目変更を済ませて決済まで終えています。動かなかった理由が、法律ではなく書類の行方だったというケースです。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
本当に農地だったときに、売買が止まる理由
現況も農地だった場合は、農地法の手続きが必要になります。売り方によって、誰の許可が要るかが変わります。
| 売り方 | 根拠 | 許可を出す人 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 農地のまま売る | 農地法3条 | 農業委員会 | 買い手が農業をする人に限られる |
| 自分で転用する | 農地法4条 | 都道府県知事等 | 転用の計画と資力を示す必要がある |
| 転用する人に売る | 農地法5条 | 都道府県知事等 | 買い手が決まらないと申請できない |
市街化区域(すでに市街地になっている、または優先的に市街化する区域)の中にある農地は例外で、あらかじめ農業委員会に届け出れば転用できます。手続きの重さがかなり違うため、市街化区域かどうかは早めに確認する価値があります。
農用地区域=市町村の農業振興地域整備計画で「農業のために使う土地」と位置づけられた区域。ここにある農地の転用は原則として許可されません。まず区域から外す手続き(農振除外)が必要になり、時間も手間もかかります。
つまり、農地のまま売ろうとすれば買い手が農家に限られ、転用して売ろうとすれば許可が壁になります。市街化調整区域の売却と似た構図で、買い手の母数がそもそも小さいのです。
宅地は売れても、農地だけ残る
実家の相談で多いのが、母屋の敷地には話がついたのに、隣接する畑だけが残るという形です。理由はいくつか重なっています。
- 農地は住宅ローンの担保になりにくく、買い手が現金を用意できる人に限られる
- 進入路が農道しかなく、車を入れられない
- 隣の耕作者に声をかけても、これ以上面積を増やしたくないと断られる
- 境界の杭が失われていて、測量から始めることになる
そのうえ、相続で農地を取得したときは農業委員会への届出が要ります(農地法第3条の3)。条文は「遅滞なく」ですが、相続を知ってからおおむね10か月以内と案内する農業委員会が多いです。怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法第69条)。
これは法務局への相続登記とは別の手続きです。相続登記は2024年4月から申請が義務化されているので、二つとも必要になります。判断に迷う部分は司法書士へご確認ください。
持ち続けるあいだにかかるもの
売れないまま置いておくと、何がどれくらいかかるのか。金額は場所と面積で大きく変わるため、幅のある目安として見てください。
| 項目 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 農地は宅地より低いことが多い | ただし転用の見込みがある農地は評価が上がる場合がある |
| 土地改良区の賦課金 | 数千円〜数万円/年 | 耕作していなくても地区内なら請求される |
| 草刈り・管理 | 1回あたり数万円 | 遠方だと交通費が上乗せになる |
| 近隣との調整 | — | 雑草・害虫・不法投棄で苦情が来ることがある |
金額そのものより効いてくるのは、終わりが見えないことです。年に数万円でも、10年20年と続き、次の世代に引き継がれます。売れない土地の処分や山林・原野の処分でも、相談の入口はほとんどここです。
手残りで比べる
「いくらで売れるか」より「いくらかかって、最後にいくら残るか」で並べたほうが判断しやすくなります。
| 出口 | 先に出ていく費用 | 期間の目安 | 向いている場合 |
|---|---|---|---|
| 転用して宅地として売る | 転用申請・造成・測量 | 半年〜 | 市街化区域内など、許可の見込みが立つ |
| 相続土地国庫帰属制度 | 審査手数料+負担金(田畑は原則20万円) | 半年〜1年程度 | 更地の土地だけ。建物があると申請できない |
| 現況のまま買い取り・引き取り | 原則なし | 数週間〜 | 費用を先に負担できない、早く手を離したい |
相続土地国庫帰属制度は、農地だからという理由だけで除外されるわけではありません。ただし建物がある土地は申請できないため、母屋が建ったままの実家はそのままでは使えません。先に解体が必要になり、そこで解体費用の問題に戻ってしまいます。
負担金は田畑で原則20万円ですが、市街化区域内や農用地区域内などにある農地は面積に応じて算定されます。ほかにも却下・不承認の要件が細かく決まっているため、使えるかどうかは法務局の相談窓口で確認してください。
査定で実際に見ているところ
当社が農地付きの実家を見るとき、価格の前に確認しているのは次の点です。ご自身で状況を整理するときの手がかりにもなると思います。
- 課税明細の現況地目。ここが宅地・雑種地なら、地目変更で外せる可能性を先に探る
- 農用地区域に入っているか。入っていれば転用は原則できないので、別の出口を考える
- 前面の道が公道か農道か。車が入るか。将来使う人がいるかを左右する
- 土地改良区の区域内かどうか。決済のときに精算が必要になることがある
- 周囲がまだ耕作されているか。水路や畦を共有していると、勝手に荒らせない
とくに一つめが大きく、ここで結論が変わることがあります。登記と現況が食い違っている土地は、私たちが思っていたよりずっと多いというのが実感です。だから相談を受けたら、まず課税明細を見せてもらうようにしています。
費用を先に出せなくても、進められることがあります
当社は、片付け・解体・測量を売主側で済ませていない現況のまま引き受けることを前提にした買取会社です。家財が残っていても、相続した空き家のままでも、農地が付いていても、まず状況を伺います。
非農地証明や地目変更のように、本来は売主側で整える書類も、買い取ったあとに当社の負担で進める形を取ることがあります。休眠抵当権が付いたまま買い取り、取得後にこちらで抹消した案件と同じ考え方です。
対応は全国で、遠方の実家でも書類のやり取りと電話で進められるようにしています。
ただし、すべてをお引き受けできるわけではありません。農用地区域の中にあって転用の見込みが立たない、進入路がまったくない、といった場合はお断りすることもあります。まずは課税明細と登記簿を手元に置いて、ご相談ください。税務・登記の最終的な判断は、税理士・司法書士へご確認ください。
よくある質問
登記の地目が「畑」なら、それは農地ということですか。
登記の地目だけでは決まりません。農地かどうかは現況で判断されます。何十年も耕作しておらず、庭や物置として使われてきた土地は、登記が畑のままでも農地ではないと扱われることがあります。まず固定資産税の課税明細で現況地目を確認し、農業委員会に問い合わせてみてください。
農地を相続したとき、何か届出が必要ですか。
農地法第3条の3により、相続などで農地の権利を取得した人は、その農地がある市町村の農業委員会に届け出る必要があります。条文上は「遅滞なく」ですが、相続を知ってからおおむね10か月以内と案内する農業委員会が多いです。届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、同法第69条により10万円以下の過料の対象になります。法務局への相続登記とは別の手続きです。
宅地は買い手がついたのに、農地だけ残ってしまいました。
農地のまま売る場合、買い手は農業委員会の許可を受けられる人に限られるため、対象が一気に狭まります。転用目的で売るなら都道府県知事等の許可が必要で、農用地区域内の農地は原則として許可されません。まず現況地目を確認し、農地ではない可能性がないかを先に潰すと、選択肢が変わることがあります。
農地は相続土地国庫帰属制度で引き取ってもらえますか。
農地であることだけを理由に除外はされませんが、建物がある土地は申請できないため、母屋が建ったままの実家は対象外です。承認された場合の負担金は原則20万円で、市街化区域内や農用地区域内などにある農地は面積に応じて算定されます。要件は細かいので、法務局の相談窓口で確認してください。
農地付きのまま、費用をかけずに手放すことはできますか。
物件によりますが、家財が残ったまま、建物を壊さないまま、農地が付いたままの状態でお引き受けできる場合があります。当社は現況のままお引き受けすることを基本にしており、片付け・解体・測量の費用を売主様に先にご負担いただくことはありません。ただし場所や状態によってはお引き受けできないこともあるため、個別の判断になります。
この記事の監修者
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片付け・解体・測量の費用を、先にご負担いただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
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