不要な農地を処分したい|耕作放棄地を相続していらないときの手放す順番

草に覆われた休耕田と用水路

耕作放棄地を相続したけれどいらない、農業をする予定もない。不要な農地を処分したいときは、手放す順番があります。結論から言うと、先に「本当に農地として扱われる土地か」を課税明細書で確かめ、農地なら貸す・譲る・国に帰属させる、の順に当たるのが、費用を先に出さずに済む進め方です。

この記事では、農家ではない相続人が困る点、放っておくと届く農業委員会の調査と固定資産税の課税強化、農地のまま渡せる相手が限られる理由、借り手が付かないときの出口を整理します。農地の売却の制度そのものは農地の売却に、実家とセットで相続した場合は農地付きの実家の売却に書いているので、ここでは「耕していない・荒れている・相続人は農家ではない」場合に絞ります。

耕作放棄地は、農地のままでは当社で取得できません。ただし、非農地証明が取れる土地や市街化区域内の農地は、手放す方法を相談できることがあります。どちらに当たるかは、所在地と課税明細の地目から確認します。

どちらに当たるか確認する

目次

農家ではない相続人が困ること

親や祖父母が耕していた田畑を相続した方の多くは、農業をしたことがなく、遠方に住んでいます。困るのは価格ではなく、農地は農地法の規制があるので、宅地のように「不動産屋に頼めば売れる」土地ではないという点です。

農地法3条の許可=農地を農地のまま売る・貸すときに要る農業委員会の許可。買う側が農業をきちんと続けられるかで判断されます。
農地法5条の許可=農地を宅地や駐車場などに変えて売るときに要る許可。市街化調整区域や農用地区域では通らないことが多い土地です。

さらに、相続の手続きが2本立てになります。法務局への相続登記と、農業委員会への届出です。

手続き提出先期限怠ったとき
相続登記法務局取得を知った日から3年以内10万円以下の過料(不動産登記法164条)
農地の相続の届出(農地法3条の3)農地のある市町村の農業委員会法律上は「遅滞なく」。運用はおおむね10か月以内10万円以下の過料(農地法69条)

農地の届出は、相続なら許可は要らない代わりに、農業委員会に「誰が持っているか」を知らせる仕組みです(農林水産省 農地相続ポータル、千葉市 相続等で農地の権利を取得したときの届出)。相続登記の期限と費用は相続登記の義務化と期限に整理しています。

届出の用紙には「農業委員会によるあっせん等の希望の有無」という欄があります。手放したいなら、ここに「希望する」と書くのが最初の一歩です。地元で借り手や買い手を探す手伝いを農業委員会に頼める入口で、費用はかかりません。

放っておくと何が来るか

耕作放棄地を放置しても、すぐに罰則が来るわけではありません。ただ、農業委員会は毎年1回、区域内の農地の利用状況を調べる義務があり(農地法30条)、耕作されておらず今後も耕作される見込みがない農地には、所有者へ利用意向調査を行います(同法32条)。

耕作放棄地を放置したときに農業委員会から届くものの順序を示した図解
止めどころは意向調査への回答。ここで貸す意思を示せば勧告は来ない

意向調査に答えず、6か月たっても意思表明がない、あるいは耕作する意思がないと答えた場合、農業委員会は農地中間管理機構(農地バンク)と協議するよう勧告します(同法36条)。この勧告を受けた農用地区域内の農地には、固定資産税の課税強化があります。

段階根拠何が起きるか
利用状況調査農地法30条農業委員会が毎年1回、現地を見て回る
利用意向調査農地法32条遊休農地の所有者に「どうするか」を尋ねる文書が届く
協議の勧告農地法36条6か月たっても意思表明がない等の場合、農地バンクと協議するよう勧告
課税強化地方税法の評価の特例勧告を受けた農振地域内の農地は、評価額に0.55を乗じない扱いになり約1.8倍に

課税強化は平成29年度から行われており、対象は「勧告を受けた農業振興地域内の遊休農地」に限られます。意向調査の段階で農地バンクへ貸す意思を表明すれば勧告は行われず、勧告のあとでも機構が借り入れれば撤回されて翌年度から解除されます(農林水産省 遊休農地の課税の強化、遊休農地対策について)。

「耕作放棄地は税金が1.8倍になる」という言い方は正確ではありません。上がるのは勧告まで進んだ農振地域内の農地だけで、意向調査に答えて貸す意思を示せば止まります。届いた文書を放置することが、いちばん避けたい対応です。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

農地を放棄したい:管理はどこまで要るのか

「農地を放棄したい」と考えても、所有権は、誰かに譲るか、国に帰属させるかしないと手元から離れません。手放すまでの間、持ち主には農地法2条の2の責務があります。農地について所有権を有する者は、その農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならないとされています(e-Gov 農地法)。

とはいえ、遠方に住む相続人が自分で耕し続けるのは現実的ではありません。管理を続けるか、手放す準備に入るかは、次のように分けて考えると判断しやすくなります。

状況考え方先にすること
まだ耕せる状態で、近くに耕す人がいそう管理を続けながら、貸す・譲る相手を探す農業委員会へ届出(あっせん希望)、農地バンクへ相談
草や雑木が伸び、遠方で通えない放置が長引くと、意向調査や近隣からの指摘につながることがあります。管理の手当てと出口探しを同時に現況の確認、農業委員会への相談(草刈りなどの手当てが必要かも聞く)
現況がすでに山林のよう農地として扱われていない可能性がある課税明細書の現況地目、非農地証明(次の節)
誰も引き受けず、管理だけが続く国庫帰属の要件を満たすか確認法務局の事前相談

相続放棄は、農地だけを選んで放棄する手続きではありません(相続人としての立場そのものを手放す手続きです)。また、管理を何もせずに「放棄したつもり」になると、意向調査の文書が届き続けるだけでなく、近隣から指摘を受けることもあります。管理の手当てが難しいときほど、早めに農業委員会へ連絡してください。

草刈りなどの管理を誰に頼めるかは、地域によって窓口や担い手が違います。農業委員会や市町村の農政窓口で、地元で対応している方や団体を聞くのが近道です。

本当に農地か、課税明細で確かめる

手放す順番を決める前に、その土地が「農地」として扱われているかを確かめます。登記の地目が田や畑でも、何十年も耕されず雑木が生えていれば、農業委員会が農地として見ていないことがあります。

固定資産税の課税明細書には、登記地目と現況地目、評価額が載っています。ここが手がかりです。

課税明細の見え方意味次にすること
登記地目「畑」・現況「畑」・評価が低い農地として課税されている農地法の手続きが要る。3条か5条か、区域を確認
登記地目「畑」・現況「雑種地」や「山林」市町村は農地と見ていない非農地証明を取り、地目を変えてから売れる可能性
評価額が急に上がった課税強化か、現況地目の変更市町村の資産税の窓口で理由を確認

現況が農地でないと市町村が見ている土地は、農業委員会で非農地証明を受けて登記の地目を変えると、農地法の外に出ます。出る条件と手順は非農地証明の取り方に書きました。

  • 課税明細書で登記地目と現況地目を見比べる
  • 農業委員会に地番を伝え、農用地区域(青地)か区域外(白地)かを聞く
  • 市街化区域・市街化調整区域のどちらかを都市計画の窓口で聞く

農用地区域内の農地は転用がほぼ通らず、市街化調整区域の農地は買い手がさらに限られます。調整区域の農地については市街化調整区域の農地を相続したときで扱っています。

農用地区域から外す農振除外は、市町村の整備計画の見直しに合わせて審査され、要件も厳しいため、申請しても通らないことがあります。青地の農地のまま引き継ぐ相手を、農業委員会や農地バンクを通じて探したほうが早い場合もあります。

課税明細の地目が田・畑のままか、現況が山林や原野になっているか。そこが分かれば相談できます。農地かどうかは、農業委員会への確認と並行して進めてください。

地目と現況を伝えて相談する

農地のまま渡せる相手は限られる

農地として扱われる土地を農地のまま譲るには、農業委員会の3条許可が要ります。令和5年4月1日に下限面積の要件が廃止され、小さな農地でも許可の対象になりましたが、買う側が農地の全部を効率的に利用すること、農作業に常時従事すること、地域との調和を乱さないことという要件は残っています(前橋市 農地法の下限面積廃止について)。

つまり、農地のまま渡せる相手は、実際に農業をする人か農業法人にほぼ限られます。相続人がタダで譲りたいと思っても、隣の家が家庭菜園に使うだけでは許可が下りないことがあります。

渡す相手使う手続き現実的に成立しやすいか
近隣の農家・農業法人農地法3条の許可(売買・贈与・貸借)耕作している人が隣にいれば最も早い
農地バンク(農地中間管理機構)機構への貸付け借り手が付く農地なら。荒れた小さな畑は付きにくい
農業をしない親族・知人3条許可は下りにくい農地のままでは難しい
国(相続土地国庫帰属制度)法務局へ申請、負担金を納付区域によって負担金が大きく違う
農業委員会のあっせん届出のときにあっせんを希望近隣の農家などに借り手・買い手がいれば。内容は自治体によって異なる

農地バンクは、都道府県ごとに置かれた農地中間管理機構が農地を借り受けて担い手に貸す仕組みです。相談は市町村の農政の窓口か農業委員会が入口になります。

農地バンクで借り手が付かないとき

農地バンクに申し出ても、荒れて水路も道も使えない小さな畑には借り手が付かないことがあります。そのときに考えられる出口が、国庫帰属です。当社は、農地(田・畑)を農地のまま取得することはできません。ただし、非農地証明が取れる土地や市街化区域内の農地(転用の届出で済むもの)は、対応できる場合があります。

相続土地国庫帰属制度で農地を手放すときの費用

  • 審査手数料:1筆14,000円(不承認でも戻らない)
  • 負担金:農用地区域内・市街化区域内・土地改良事業の区域内の農地は面積に応じて算定。例えば1,000平方メートルで1,128,000円、500平方メートルで723,000円
  • 上記以外の農地:原則20万円
  • 境界が明らかでない土地は申請できない。管理に過分の費用がかかる土地は承認されない

負担金の算定は相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令5条で決まっています。農用地区域内の農地は「国が管理する農地」として扱われるため、宅地より高くなる仕組みです。制度の全体は相続土地国庫帰属制度に、申請できない要件は法務省の概要にあります。

  • 相続放棄で耕作放棄地だけを手放そうとする — 相続放棄は預貯金や自宅も含めた全部の放棄です。農地だけを選べません。詳しくは相続放棄と不動産の管理義務
  • 自治体に寄付を申し出れば受け取ってもらえると考える — 使い道のない農地は受け取られないのが通例です(自治体への土地の寄付)
  • 勝手に埋め立てて駐車場や資材置場にする — 転用の許可なしに農地を変えると原状回復を命じられることがあります

不要な農地を処分する順番

ここまでを、先に費用を出さずに済む順に並べます。上から順に当たり、止まったら次へ進む形です。

耕作放棄地を手放す順番を、先に出す費用の少ない順に並べた図解
課税明細の確認と農業委員会への一本の電話で、道の多くは決まる
  1. 課税明細書と農業委員会で、農地かどうか・青地か白地かを確かめる。 電話と書類だけで済み、費用はかかりません
  1. 農地でなければ非農地証明を取り、宅地や雑種地として売る道を探す。 証明が出れば農地法の外に出ます
  1. 農地なら、3条の3の届出のときに農業委員会へあっせんを希望する。 近隣の農家か農地バンクに借り手・買い手がいないかを探してもらいます
  1. 借り手が付かなければ、国庫帰属を検討する。 負担金は原則20万円で、農用地区域内などの農地は面積に応じて算定されます。当社は農地のまま取得することはできません(非農地証明が取れる土地や市街化区域内の農地は対応できる場合があります)

相談先へ行く前に、手元で確かめておくとよいのは、次の点です。

  • 区域。 農用地区域か、市街化調整区域か、市街化区域か。ここで使える手続きが決まります
  • 現況。 耕作をやめて何年か、雑木の太さ、水路と農道が生きているか
  • 接道と形。 車で入れるか、細長く分筆されていないか
  • 権利関係。 相続登記が済んでいるか、共有か、農地の届出が出ているか

区域や現況は、市町村の農政窓口や農業委員会で確認できます。農地は農地法の許可や届出が絡むため、区域と状態によっては成立しないこともあります。

耕作放棄地で先に確かめるべきは、価格ではなく「農地法の外に出せるか、出せないなら誰に渡せるか」です。この2つが分かると、手放すまでの費用と期間の見当が付きます。

農地の税務は税理士へ、登記は司法書士へご確認ください。課税明細書と所在地・地番が分かれば、農業委員会への確認が進めやすくなります。山林・原野は山林・原野・別荘地の買取・売却相談にまとめています。農地のまま取得することはできませんが、非農地証明が取れる土地や市街化区域内の農地は対応できる場合があります。

よくある質問

農家ではないのですが、相続した耕作放棄地を持ち続けないといけませんか。

持ち続ける義務はありませんが、農地は農地法の規制があるため、宅地のように誰にでも売れるわけではありません。農地のまま渡すなら農業委員会の許可を受けられる相手に限られ、宅地などにして売るなら転用の許可が要ります。長く耕作されていない土地なら、非農地証明で農地の扱いから外せる場合もあります。どの道が使えるかは土地の場所と状態で決まります。

相続した農地の届出をしていません。何か問題になりますか。

相続で農地を取得した人は、農地法3条の3により農業委員会へ届け出る義務があり、怠ると10万円以下の過料の対象です(同法69条)。運用上は取得を知ってからおおむね10か月以内とされています。過料に至る例は多くありませんが、届出の用紙には農業委員会にあっせんを希望するかを書く欄があり、手放したい人にとっては相談の入口になります。

耕作放棄地の固定資産税は上がると聞きました。本当ですか。

すべての耕作放棄地が上がるわけではありません。農業委員会の利用意向調査に答えず、農地中間管理機構と協議するよう勧告を受けた農用地区域内の農地について、評価額を通常の約1.8倍にする課税強化が平成29年度から行われています。勧告の前に貸す意思を示せば勧告は行われず、機構が借り入れれば勧告は撤回されます。

相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらえますか。

相続した農地は申請の対象です。ただし負担金が土地の区分で大きく違い、農用地区域内や市街化区域内、土地改良事業の区域内の農地は面積に応じて算定されます。それ以外の農地は原則20万円です。境界が明らかでない土地は申請できず、管理に過分の費用がかかる土地は承認されません。審査手数料は1筆14,000円で、不承認でも戻りません。

荒れたままの状態で引き受けてもらえますか。

農地のままでは取得できません。ただし、農業委員会の非農地証明が取れる土地や、市街化区域内の農地(転用の届出で済むもの)は、対応できる場合があります。扱えるかは物件ごとに確認します。草刈りや整地を先にしておく必要があるかどうかは、貸す・譲る・国に帰属させるといった道ごとに異なるため、農業委員会や農地バンクの窓口で確認してください。詳しくは「農地の手放し方・相談先」のページをご覧ください。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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