熊本市では、空き家の解体費用に関する制度が2つ同時に動いています。平時からある老朽空き家除却促進事業補助金(上限40万円)と、令和8年熊本地震で被害を受けた家屋等の公費解体・自費解体です。対象も、窓口も、締切も別の制度です。
この2つは名前が似ていないので取り違えにくそうに見えますが、「うちの空き家は被害を受けたのか、ただ古いだけなのか」がはっきりしないときに迷います。この記事では、市が公表している内容をもとにどちらに当たるかの見分け方と、どちらも使えなかったときに何が残るかを整理します。
熊本市の解体費用の制度は、いま2つあるのですか?
2つあります。被害の判定を受けているかどうかで入口が分かれます。
| 老朽空き家除却促進事業補助金 | 公費解体・自費解体 | |
|---|---|---|
| 対象になる建物 | 昭和56年5月31日以前に着工など。1年以上使用の実態がない戸建て | り災証明書等で半壊以上と判定された家屋等 |
| 費用 | 上限40万円の補助 | 公費解体は市が実施/自費解体は費用を償還 |
| 受付 | 令和8年4月13日〜12月28日(予算がなくなり次第終了) | 令和8年9月10日〜12月10日(事前予約制) |
| 窓口 | 市役所9階 空家対策課(096-328-2514) | 廃棄物計画課 公費解体プロジェクトチーム(096-328-2430) |
課も電話番号も違います。最初にかける先を間違えると、そこで一往復増えます。
自費解体には、もっと早い期限があります。すでに自分で解体した被災家屋等の費用償還は、令和8年10月10日までに解体業者と契約した方が対象とされています。申請の受付期間(12月10日まで)とは別の日付です。当てはまりそうな方は、この日付を先に確認してください。

抵当権が残っていると、補助は受けられませんか?
一律に対象外になるわけではありません。熊本市の要件は、ただし書きまで読む必要があります。
抵当権等が設定されていない空き家。ただし、抵当権等が設定されている場合であっても、当該権利の全ての権利者が当該老朽空き家の除却について同意している場合は、この限りでない。
前半だけを読むと「ローンが残っている家は無理」と受け取ってしまいますが、後半で道が残されています。
申請できる方の欄にも、同じ趣旨が書かれています。
申請者以外の所有者、抵当権者その他の権利者がいる場合には、当該老朽空き家の除却について、原則として全ての関係権利者の同意を得ていること。
被災した家屋の公費解体のほうにも、様式第5号として抵当権者の同意書が用意されています。どちらの制度も、抵当権を「同意で越える」形で組み立てられています。
ここは自治体によって本当に分かれるところです。「所有権以外の権利が設定されていない空家等」と言い切り、同意による例外を置いていない市もあります。
同じ「空き家の解体補助金」という名前でも、ローンの残った実家が入口に立てるかどうかは市によって違います。他市の解説を読んで諦める前に、自分の市の要綱のただし書きまで読んでください。
現実の壁は、抵当権者の同意が取れるかどうかです。金融機関が合併・廃止されていて現在の権利者が分からない、支払いは終わっているのに抹消登記をしていない、といった場合は、そこから調べることになります。抹消の手続きについては司法書士へご相談ください。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
昭和56年より新しい家でも、相続した空き家なら対象になります
除却補助の対象になる空き家は、次のどちらかです。
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に着工した空き家
- 昭和56年6月1日以降に着工した空き家のうち、相続・遺贈を受けたもので、下の経過年数を満たすもの
2つ目の枠にある経過年数は、構造ごとに決められています。
| 構造 | 経過年数 |
|---|---|
| 木造 | 築22年以上 |
| 鉄骨造 | 築34年以上 |
| レンガ造・石造・ブロック造 | 築38年以上 |
| 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 | 築47年以上 |
木造なら築22年から入ります。旧耐震かどうかで線を引く自治体が多いなかで、相続した空き家に限って線を下げているのが熊本市の形です。
ただし、この枠は狭く作られています。令和8年度の募集戸数は80戸程度で、その内訳は昭和56年5月31日以前が75件程度、相続・遺贈の枠が5件程度と公表されています。
「予算がなくなり次第、受付終了します」と書かれています。12月28日という日付より先に締め切られる可能性があります。動く前に空家対策課(096-328-2514)へ、いま受け付けているかを確認してください。
そのほか、次の要件があります。
- 1年以上使用の実態がない空き家であること
- 熊本市内に位置していること
- 戸建の住宅で、法人の所有でないこと
- 国又は地方公共団体等による他の補助金等の交付を受けていないこと
- 公共事業等による補償を受けていないこと
申請できるのは、老朽空き家の所有者、管理者(後見人含む)又は相続等により所有者となる方です。「相続等により所有者となる方」が入っているので、相続登記が終わっていることを必ずしも前提にしていません。あわせて市税を滞納していないことが求められます。
「1年以上使っていない」をどう証明するか
実務でつまずきやすいのがここです。市が求めている書類は次のとおりです。
1年以上使用の実態がない事を証する書類(水道、ガス又は電気の使用中止日(閉栓日、契約廃止日等)が確認できる書類など)
何十年も前に止めた家では、この書類が残っていないことがあります。引き落としの明細も、契約時の書面も、もう手元にない、という状態です。
このとき、市は代わりの道を用意しています。
誓約書(様式第2号)(建物の全部事項証明書により単独の所有者等である事が確認できない場合又は上記7.の書類がない場合)
閉栓の記録が出てこなくても、そこで終わりにはなりません。同じ誓約書は、登記簿だけでは単独の所有者と確認できない場合にも使えるとされています。
手続きが止まるのは、たいてい「書類が無い」ときです。そういうときに代替の様式が用意されていることは、市のページの申請書類一覧まで読まないと分かりません。無理だろうと自分で判断する前に、窓口へ「この書類が無いのですが」と聞いてみてください。
そのほかの主な提出書類は、位置図・配置図・現況写真・建物の全部事項証明書(発行から3か月以内)・建築時期が分かる書類・除却工事の見積書の写し・解体事業者であることを証する書類の写し・市税の滞納がないことの証明書(発行から3か月以内)です。
見積書について、市は「提出は1社ですが、2社以上の見積を比較されることを推奨します」と添えています。
先に壊してしまうと、どちらも使えません
2つの制度に共通する、いちばん大きな落とし穴です。
- 除却補助:「補助対象となる空き家は現に存在するものが対象です。除却工事を開始した後では、申請できません」と明記されています
- 公費解体:申請の前に事前予約が必要です。自費解体(費用償還)も、事前予約をしたうえでの申請になります
壊してから「補助金はありませんか」と聞いても、もう入口が閉じています。工事は、令和9年2月28日までに完了する予定であることも要件に入っています。
災害のあとには、解体や修理を持ちかける訪問営業が増えます。その場で契約せず、書面を持ち帰って複数の見積もりと比べてください。対象かどうかを決めるのは市であって、業者ではありません。契約を急がせる相手ほど、いったん止まる理由があります。
どちらも使えないとき、壊さずに手放す道があります
ここまでの要件を読んで、当てはまらないと感じた方もいると思います。外れる型は、だいたい次のどれかです。
- 被害の判定を受けていない(または半壊に届かない)
- 昭和56年6月以降の建築で、相続・遺贈でもない
- 抵当権者の同意が取れない
- 予算枠が埋まった、または期限に間に合わなかった
- 市税の滞納がある

このとき、選択肢は「全額自費で壊す」だけではありません。
当社は、建物の状態と築年数を確認したうえで、現況のままお引き受けできるかを判断しています。片付け・解体・測量をしていただく必要はありません。再建築不可や市街化調整区域であることだけを理由に、査定や取扱いの対象外とすることはしていません。調査は当社で行いますので、売主に調べていただくことはありません。
ただし、すべてが成立するわけではありません。ご希望の金額との開きがある場合、費用のご負担にご同意いただけない場合、相続人の間の合意ができていない場合には、成立しないこともあります。個別の判断になります。
順番を間違えないでください。先に壊すと、補助金も、建物ごと手放す道も、両方なくなります。壊すかどうかを決める前に、現況のままで話が進むかを確かめるほうが、残る選択肢が多くなります。
被災した家屋の公費解体と相続の関係は公費解体は相続が壁になる|マニュアル第7版の要点に、自治体ごとの補助要件の違いは空き家の解体補助金は自治体で条件が違う|対象外になる5つの型に書いています。
確かめる順番
- どちらの制度かを決める。被害の判定を受けているなら公費解体(096-328-2430)、古いだけなら除却補助(096-328-2514)
- 自費解体に当たりそうなら、契約日を確認する。令和8年10月10日までの契約が対象とされています
- 登記事項証明書を取る。抵当権者がいるなら、同意が取れるかを先に確かめる
- 建築時期が分かる書類を探す。全部事項証明書か固定資産評価証明書(経過年数の記載があるもの)
- 閉栓の記録が無くても諦めない。誓約書(様式第2号)で代えられる場合があります
- 壊す前に、建物ごと手放す道があるかを確かめる
出典(いずれも熊本市の公式ページ):老朽空き家除却促進事業補助金について(老朽空き家除却補助) /被災した家屋等の解体・撤去(公費解体)について
本稿は2026年9月24日時点の公表内容にもとづきます。金額・期限・要件は変わります。申請の前に、必ず市の最新の案内をご確認ください。相続登記・抵当権の抹消など登記に関わる手続きは司法書士へ、税金の取り扱いは税理士へご確認ください。
よくある質問
熊本市の老朽空き家除却補助は、いくら出ますか。
除却費(消費税除く)×8/10×2/3、または延べ床面積×36,000円(木造)もしくは51,000円(非木造)×8/10×2/3のうち少ない額で、上限は40万円です。令和8年度の受付期間は4月13日から12月28日までですが、予算がなくなり次第終了とされています。募集戸数は80戸程度と公表されています。
住宅ローンの抵当権が残っている空き家は、除却補助の対象外ですか。
対象外とは限りません。熊本市の要件は「抵当権等が設定されていない空き家。ただし、抵当権等が設定されている場合であっても、当該権利の全ての権利者が当該老朽空き家の除却について同意している場合は、この限りでない」と書かれています。つまり抵当権者の同意が取れれば進められる建て付けです。同意が取れるかどうかが分かれ目になります。
昭和56年より新しい家は、除却補助の対象になりませんか。
条件付きで対象になります。昭和56年6月1日以降に着工した空き家でも、相続または遺贈を受けたもので、構造ごとの経過年数(木造22年以上、鉄骨造34年以上、レンガ造・石造・ブロック造38年以上、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造47年以上)を満たすものは対象とされています。令和8年度の募集戸数のうち5件程度がこの枠です。
1年以上使っていないことは、どう証明するのですか。
水道・ガス・電気の使用中止日(閉栓日、契約廃止日等)が確認できる書類などが求められます。こうした書類が用意できない場合は、誓約書(様式第2号)で代えることができるとされています。何十年も前に止めた家で明細が残っていない、という場合はこちらを窓口でご相談ください。
先に自分で解体してしまった被災家屋の費用は、返してもらえますか。
熊本市の自費解体(費用償還)は、令和8年10月10日までに解体業者と契約した方が対象とされています。建物の一部解体は対象になりません。また、支援の対象となった場合でも市の基準を超える部分は自己負担です。申請には事前予約が必要ですので、廃棄物計画課公費解体プロジェクトチーム(096-328-2430)へご相談ください。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

