親が持っていた別荘地を相続したが、行ったこともなく、管理費の請求書だけが届く。その区画を相続放棄で手放せないかと考えている方に向けて書きます。
別荘地だけを選んで放棄することはできません。放棄が認められれば、管理費も会員権の年会費も相続人としては負いませんが、預託金の返還の定めがあっても、それを受け取ることはなくなります。
別荘地だけを放棄することはできない
放棄が認められると、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条、条文:e-Gov法令検索)。預貯金は相続して別荘地だけを外す、という分け方はできません。
管理費がなぜ相続人に請求されるのか、放棄で止まるもの・止まらないものは、別荘地の管理費は相続人が払う?に書いています。
会員権・預託金・年会費は、放棄でどうなるか
別荘地には、区画のほかに、施設を使う権利(会員権)が付いている場合があります。中身は分譲会社や管理会社ごとの規約で違い、年会費の定めや、入会時に預けた預託金の返還の定めがあるものもあります。
放棄が認められれば、会員権の年会費も、管理費と同じく相続人としては負いません。民法939条で、初めから相続人にならなかったものとみなされるからです。
放棄しないときの話です。民法896条は、被相続人の一身に専属したものを除いて、権利義務を承継すると定めています。会員権がその一身専属のものにあたるかは、規約のうち、会員が亡くなったときの扱いと、譲渡・名義変更の条項を読まないと分かりません。
相続されるものなら、年会費の支払い義務も相続人に移ります。
預託金は、放棄すれば相続人として受け取るものではなくなります。
迷っている間に返還を請求して受け取ると、相続財産の処分にあたると見られる余地があります(民法921条1号)。預託金が戻る見込みと、管理費の滞納や年会費の負担とを並べて比べ、どちらが重いかが放棄の見極めになります。
預託金の額が大きいときは、規約の返還の時期と請求先を写しで手元に置き、司法書士か弁護士に聞いてください。
分譲会社がもう無い別荘地では、規約の「誰に」を読む
古い別荘地では、分譲した会社が倒産したり、施設の運営が別の会社に移ったりしていることがあります。この場合、会員証に書かれた会社と、いま年会費を請求してくる会社が違います。
比べる前に、規約と、運営が移ったときの通知の書面で、次の2つを確かめます。いまの会員権の運営主体はどこか。預託金の返還を誰に求める定めになっているか。
返還を求める先が今もあるかどうかで、預託金を比べる材料としてどこまで当てにできるかが変わります。書面が見つからないときは、管理会社に「運営が移ったときの通知の写し」をもらえるか聞いてください。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
3か月の間に、別荘地について調べる5点
放棄の期限は、相続を知ったときから3か月です(民法915条1項)。その間に、財産の調査をすることもできます(同条2項)。
調査で足りないときは、同条1項ただし書きで、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が期間を延ばせます。裁判所の案内では、申述先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。
別荘地では、次の5つを手元の書類から探します。
| 調べること | どこを見るか | 放棄の判断にどう効くか |
|---|---|---|
| 管理契約と管理費の年額 | 契約書、請求書 | 放棄すれば以後の負担は外れる。払い続けるなら年額が基準になる |
| 滞納額 | 督促状、通知 | 放棄しなければ、滞納分も引き継ぐ |
| 会員権などの付属契約 | 会員証、分譲時の書類、規約 | 年会費の額と、預託金の返還の定めを書類で見る |
| 建物の有無と登記名義 | 登記事項証明書 | 建物があると、放棄後の保存義務や国庫帰属の可否が変わる |
| 区画の場所と境 | 公図、現地の写真 | 放棄しない場合に、手放せるかを左右する |
会員証は、権利証と一緒にしまわれているとは限りません。分譲時の契約書の綴りや、年会費の領収書の束も見てください。見つかったら写しを取り、原本は元の場所に戻しておきます。
管理会社に聞いてよいこと、まだ出さない書面
書類で分からないところは、管理会社に問い合わせて(照会して)構いません。聞いてよいのは、管理費の年額と滞納の合計、会員権の規約の写しをもらえるか、預託金の返還の定めがあるか、名義変更の承認に条件があるか、といった中身です。
電話で聞いたときは、日付と担当者名、答えをメモに残します。放棄するかどうかを決めるときの材料になります。
出さないでおくのは、解約届、名義変更の申請、預託金の返還請求の書面です。相続財産について相続人として手続を進めたと受け取られる余地があり、次の節で書く民法921条に関わります。
管理会社から名義変更の書類を求められても、「相続するかどうか考えているところです」と答えておけば足ります。

放棄の前に、手を付けないほうがいいこと
民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています。単純承認は、財産も借金も全部引き継ぐ選び方です。
放棄するかもしれないうちは、次のことは進めないでください。
– 亡くなった方の口座から、管理費の滞納分を払う
– 別荘の家財を処分する、建物を壊す
– 管理会社と、区画の名義変更や会員権の解約の書面を交わす
– 預託金の返還を請求して受け取る
放棄と売却は両立しない場合があります。放棄するのか手放すのかを決めるまでは、止めておきます。
放棄しても、建物の鍵や荷物が残っていると
放棄した時点で建物を現に占有していると、相続人や相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産と同じ注意で保存する義務が残ります(民法940条)。何が占有にあたるかは条文に書かれておらず、事情によって判断が分かれます。
鍵を持っている、管理事務所に鍵を預けている、家財が残っているといったときは、弁護士に聞いてください。
放棄すると、相続人の立場は次の順位の人に移ります。子が全員放棄すれば、親、それもいなければ兄弟姉妹の順です(民法889条)。親族に連絡が回ることを、あらかじめ伝えておくと混乱が減ります。
放棄したあと、管理会社から連絡が来たら
放棄が認められたあとも、管理会社から「放棄するなら書類を出してほしい」「区画は誰が管理するのか」と聞かれることがあります。
そのときは、家庭裁判所から出る相続放棄申述受理通知書の写しを送り、相続人の立場が次の順位の人や、相続財産の清算人に移ることを伝える形になります。区画をどうするかを決めるのは、通常はその側で、放棄した人ではありません。
放棄しないなら、別荘地を手放す道
放棄をしない、あるいはできない場合は、区画を手放す方法を考えます。
| 道 | 使える条件 | つまずく点 |
|---|---|---|
| 相続土地国庫帰属制度 | 相続で取得した土地。建物のある土地は申請できない(相続土地国庫帰属法2条3項1号) | 建物があると、先に解体が要る |
| 売る | 買い手がつくこと。管理会社の承認が条件になる区画もある | 建物のない区画は動きにくい |
| 現況のまま取り扱う会社に相談する | 区画の状態や管理会社の条件を見たうえで、個別に判断 | 承認が下りない区画は成立しないこともある |
国庫帰属の対象は、相続等で取得した土地で、建物のある土地は申請できないと法律に書かれています。山の区画の国庫帰属は山林の国庫帰属で整理しています。

別荘の建物の扱いは建物つきの別荘を手放したい、土地だけの区画は別荘地の土地だけを手放したいに分けて書いています。
管理契約を解約しても管理費が残る理由は、別荘地の管理契約の解約で説明しています。管理費が払えない状態の整理は、別荘地の管理費が払えないにあります。
管理費の請求書を、そのまま見せてください
ご相談の中には、建物のない別荘地や山林の区画もあります。建物がある場合は、解体費や家財の処分費を出せず止まっている方が多い傾向があります。
当社は、別荘地を山林・別荘地の買取相談として扱っています。管理費の請求書、会員証、登記の書類があれば、それをそのまま見せてください。
当社が見るのは、次のような点です。
- 管理会社が今も機能しているか、名義変更の承認の条件
- 管理費の年額と、滞納の合計額
- 建物の有無と登記名義、車で区画の前まで入れるか
別荘を片付けたり、建物を壊したり、滞納を払ったりする前の状態で構いません。調査は当社で行いますので、現地に行っていただく必要はありません。
管理会社の承認が下りない場合や、区画の条件が合わない場合、相続人の間で合意ができていない場合は、成立しないこともあります。
遠方でも、契約から決済まで現地にお越しいただかずに進められます。ご相談への返事は翌営業日までにお返しします。
放棄の可否と期限は司法書士・弁護士へ、税務は税理士へご確認ください。ご連絡の際は、請求書の写しと所在地を手元に置いてください。
よくある質問
別荘地だけいらないんです。親の預金は相続できますか。
できません。相続放棄は財産も借金も全部を受け継がない手続で、別荘地だけを外すことはできません。
管理会社から管理費の請求が来ています。払ってしまっていいですか。
放棄を考えている間に相続財産から払うと、財産を処分したものとして放棄できなくなる場合があります(民法921条)。請求書は捨てずに取っておき、払う前に司法書士か弁護士に聞いてください。
会員権の年会費も、放棄すれば払わなくてよくなりますか。
放棄が認められれば、年会費も相続人としては負いません(民法939条)。その代わり預託金も受け取らない前提になるので、迷っている間は返還の請求をしないでください。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
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資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

