別荘地の管理費が払えない|滞納したまま手放せるか

窓辺に枯れた蔓が垂れ下がる室内

別荘地の管理費が払えないときに効くのは、支払いを止めることではなく、所有者でなくなることです。管理費は使っていなくても、解約を申し入れても請求が続く性質のもので、放置すれば遅延損害金が積み上がります。この記事では、請求がどこまで続くのか、滞納するとどうなるのか、滞納が残ったままでも手放せるのか、そして費用を先に負担せずに終える進め方を順に整理します。

「もう何十年も行っていない」「親が買った別荘を相続したが、使う予定がない」。それでも毎年の請求書だけは届く、というご相談は少なくありません。金額そのものは大きくなくても、終わりが見えない支出であることが負担の正体です。

別荘地の管理費の請求が止まるのはどの時点かを示した図
使っていない・解約した・相続した、では止まらない
目次

管理費の請求は、どこまで続くのか

まず押さえておきたいのは、管理費は「使った分の代金」ではないということです。別荘地の管理費は、多くの場合、そこに土地を持つ人全体のための支出に充てられています。

具体的には、別荘地内の道路の補修、排水設備の維持、水道施設の管理、ゲートの管理や見回りといった内容です。自分の区画を使っているかどうかとは関係なく続いている業務、という位置づけになります。

そのため「今年は一度も行っていないから」「もう使う予定がないから」という理由では、請求は止まりません。

解約を申し入れても、負担を免れないとされた

もう一歩踏み込んだ判断が、近年示されました。2025年(令和7年)6月30日、最高裁判所第一小法廷は、管理契約を結んでいない別荘地の土地所有者についても、管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うと判断しています(令和6年(受)1067号)。

理由として挙げられたのは、その管理業務が別荘地として存続する限り基本的な機能や質を確保するために必要なもので、すべての土地所有者に利益が及び、特定の人だけを除くことが難しい、という点です。

「管理契約を解約したので、もう払いません」は通りにくくなっています。

契約書にサインしていない、あるいは解約したという事情があっても、その別荘地の道路や排水設備の恩恵は受け続けている、という整理になるためです。

ただし、どんな請求でも通るという意味ではありません。管理業務の内容と金額が「相当と認められる額」といえるかは、その別荘地ごとの事情で判断されます。請求の当否を争うかどうかは弁護士へご相談ください。

出典:裁判所 令和6年(受)1067号 不当利得返還等請求事件

相続で名義が変われば、負担も移る

所有者が亡くなった場合、その土地は相続人へ引き継がれます。使う予定のない別荘地であっても、名義が移れば管理費の請求先もそちらに移ります。

「その土地だけ受け取らない」という選び方はできません。相続放棄はすべての遺産を受け取らないという手続きで、預貯金や他の不動産も含めて放棄することになります。この点は山林や原野の相談でも同じ壁になります。

相続放棄をすれば、それだけで別荘から手が離れるとは限りません。

民法940条1項は、放棄した人が放棄の時にその財産を現に占有していた場合、相続人または相続財産の清算人へ引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないと定めています。

鍵を預かっていた、実際に出入りしていたといった事情があると、この規定が問題になることがあります。放棄を検討される場合は、期限の三か月とあわせて弁護士・司法書士へご確認ください。

もうひとつ、名義の側にも変更がありました。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務になっています。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ったときは10万円以下の過料の対象とされています。

施行より前に開始した相続も対象で、その場合の期限は2027年(令和9年)3月31日までです。使う予定のない別荘地であっても、名義をそのままにしておく選択はしにくくなった、ということです。

出典:法務省 相続登記の申請義務化について

滞納するとどうなるか

払わずに放っておいた場合に何が起きるかを、順に見ておきます。ここは不安を煽るためではなく、放置しても金額は減らないことを確かめるための整理です。

段階起きること
請求書の未払い管理規約や契約で定められた遅延損害金が加算されていく
督促書面や電話での催告。滞納が続くと内容証明郵便になることが多い
法的手続き支払督促の申立て、または訴訟。金額が小さくても提起されることがある
判決・確定後預金や給与などの差押えに進む可能性がある
施設の利用制限水道の供給停止やゲートの利用制限を定めている別荘地もある
相続の発生滞納分を含めた負担が、そのまま相続人へ移る

時効を待つ、という考え方

「何年か経てば時効になるのでは」というご質問もよくいただきます。制度としては存在しますが、待つための作戦として当てにできるものではありません。

債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法166条1項1号)。ただしこの5年は、途中で止まったり、振り出しに戻ったりします。

途中で起きたこと時効への影響
裁判上の請求・支払督促の申立てその事由が終了するまで時効は完成しない。判決などで権利が確定すれば、終了時から新たに進行を始める(民法147条)
滞納分の一部を支払う、支払う意思を伝える権利の承認にあたり、その時から新たに進行を始める(民法152条)
督促状が届く(催告)その時から6か月を経過するまで時効は完成しない。再度の催告に同じ効力はない(民法150条)

管理会社が毎年請求を出し続けている限り、5年が素通りする状況にはなりにくい、ということです。とくに「とりあえず一部だけ払っておく」は、時効の進行をその都度リセットします。

滞納は「待っていれば消えるもの」ではありません。時効を当てにして数年を過ごす間にも、遅延損害金は増えていきます。

支出を止める唯一の方法は、所有者でなくなることです。 支払いを止めることと、負担を終わらせることは別の話だと考えてください。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

管理費のほかに出ていくもの

管理費だけを見ていると、実際の負担を小さく見積もってしまうことがあります。別荘地の場合、税金の面でも住まいとは違う扱いを受けます。

出ていくもの内容
別荘地の管理費・組合費使っていなくても、所有している限り請求が続く
固定資産税・都市計画税別荘の敷地は住宅用地の特例が使えず、住まいの敷地より重くなる
水道・浄化槽の維持費使っていなくても基本料金がかかり続けることがある
建物の傷み雪や湿気で傷むと、いずれ解体費用の問題になる
相続のたびの手続き相続登記の費用と、相続人全員での話し合いが必要になる
自治体独自の税別荘の所有者に法定外普通税を課している自治体もある。延べ床面積1㎡あたり年650円という例がある

固定資産税について補足します。住宅の敷地は課税標準が軽くなる住宅用地の特例がありますが、専ら保養の用に供する家屋、つまり別荘の敷地はこの特例の対象から外されています(地方税法349条の3の2、同法施行令36条)。住まいとしての家ではない、という整理です。

同じ「二つ目の家」でも、日常生活の拠点として一定の頻度で使っている家屋は、別荘ではなくセカンドハウスとして扱われ、住宅用地の特例が適用されることがあります。

判断は市町村ごとの認定によります。該当しそうな場合は、資産税の担当課に使用実態を伝えて確認してください。税務の取り扱いは税理士へのご相談も併せてお願いします。

なお、こうした運用は自治体ごとに違いがあります。別荘の所有者に独自の税を設けているところもあれば、水道の休止扱いを認めるかどうかも地域によって異なります。同じ「別荘地」でも前提が揃わないのは、このためです。

独自の税の例を挙げると、静岡県熱海市の別荘等所有税は法定外普通税で、毎年1月1日現在で所有している別荘等の延べ床面積1㎡につき年650円が課されます。延べ床面積が100㎡なら年65,000円で、これが固定資産税や管理費とは別に出ていく計算です。

こうした税を設けている自治体はごく一部ですが、ご自身の別荘地が該当するかどうかは、市町村の税務担当課で確認できます。

出典:熱海市 別荘等所有税とは

出口を比べる

「払わずに済ませたい」という段階で検討されることの多い方法を並べます。それぞれ、進めやすさと費用の出どころが違います。

方法費用の負担実際のところ
管理会社に引き取ってもらう引取料を求められることがある応じている別荘地もあるが、条件は管理会社ごとに違う
個人に譲る(贈与・0円譲渡)名義変更の費用受け取る側に管理費の負担が移るため、相手が見つかりにくい
自治体に寄付する具体的な使い道がなければ受け取られないのが通例
相続土地国庫帰属制度審査手数料1筆14,000円+負担金(原則20万円)相続・遺贈で取得した土地に限られる。建物が残っていると申請できない。境界が不明でも申請できない
買取・引取り先に費用を出さずに済む場合がある状態と場所によっては引き受けられないこともある

相続土地国庫帰属制度は、相続などで取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。費用は、承認申請のときの審査手数料が土地1筆あたり14,000円、承認されたときに納める負担金が原則20万円とされています。市街化区域の宅地や農地、森林については、面積に応じて20万円以上になります。

別荘地でとくに引っかかりやすいのが、入口の条件です。申請できるのは相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人とされていて、売買など自分で取得した土地は基本的に対象外です。ご自身が買った別荘地を国に引き取ってもらう、という使い方はできません。

一方、相続で共有持分を取得した場合は、共有者の全員が共同して申請することで利用できるとされています。制度が始まった2023年(令和5年)4月27日より前に相続で取得した土地も対象です。

ただし建物がある土地は、登記がされていなくても現に建物が存在する時点で申請できません。別荘が建ったままなら先に解体することになり、==結局そこで解体費用の問題に戻ってしまう==のがこの制度の壁です。審査手数料は却下・不承認になっても返還されません。詳しくは山林・原野の処分の記事にまとめています。

出典:法務省 相続土地国庫帰属制度の概要法務省 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A

  • 「引き取ります」と言って先に費用を求めてくる勧誘 — 測量費や広告費、引き取り手数料といった名目で費用だけを取られる二次被害が起きています
  • 請求書を開けずに保管し続ける — 遅延損害金が増えるうえ、いくら滞納しているのかが分からなくなり、いざ手放すときの交渉が難しくなります
  • 相続人の間で「誰が引き継ぐか」を決めないまま放置する — 世代が変わるほど関係者が増え、話がまとまらなくなります

「放棄」で別荘地を手放せるのか

滞納が続いた状態で次に検討されるのが「放棄」です。ただし、この言葉には性質の違う二つのものが混ざっていて、どちらも管理費の請求がその場で止まる手続きではありません

「放棄」と呼ばれているもの実際のところ
土地の所有権を放棄する所有者が一方的に手放すための手続きは用意されていない。相続などで取得した土地を国へ引き取ってもらう窓口が、前の節の相続土地国庫帰属制度にあたる
相続放棄をする別荘地だけを外すことはできず、預貯金や他の不動産も含めて放棄することになる。放棄の時に現に占有していれば、引き渡すまでの保存義務が残る(民法940条1項)

法務省は、相続土地国庫帰属制度を「所有者不明土地」の発生を予防するために設けた制度と説明しています。裏を返せば、それ以外に土地を手放す一般的な窓口は用意されていない、ということです。

相続人が全員放棄したあとに起きること

相続人が全員放棄すると、その別荘地を引き継ぐ人がいなくなります。この状態を整理するため、管理会社のような利害関係人が家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てることがあります。

相続財産清算人の選任には、申し立てる側の費用がかかります。

申立手数料は収入印紙800円分、官報公告料は5,582円とされています。加えて、相続財産の内容から清算人の報酬を含む管理費用に不足が出る可能性がある場合には、申立人が相当額を予納金として納めることがあるとされています。

予納金の額は事案ごとに家庭裁判所が判断するため、あらかじめ一律には決まっていません。放棄と清算人の選任を検討される場合は、三か月の期限とあわせて弁護士・司法書士へご確認ください。

出典:裁判所 相続財産清算人の選任

滞納があるまま手放せるのか

ご相談で最も多い質問がこれです。結論から言えば、滞納があること自体が売却を止めるわけではありません。決まっていないのは「滞納分を、いつ誰が精算するか」だけです。

滞納があるまま別荘地を手放すときの4つの手順を示した図
滞納を全額払ってからでなくても進められることがある

まず、滞納分が買った人へ自動的に移るかどうかを整理します。更地の別荘地は区分所有ではないため、前の所有者の滞納が法律上当然に買主の債務になるわけではありません。

一方、リゾートマンションのような区分所有建物であれば、建物の区分所有等に関する法律8条により、買った人にも滞納分を請求できるとされています。同じ「別荘の管理費」でも、土地と区分所有建物では前提が違います。

法律上引き継がれないとしても、管理会社が名義変更に承認や精算を条件としていることは珍しくありません。

そのため実務では、決済のときに滞納分を売買代金から差し引くなどして精算し、同時に名義を移す形が一般的です。手元から先に全額を用意しなくても進められる場合があるのは、このためです。

査定で実際に見ているところ

当社が別荘地のご相談を受けたとき、引き受けられるかどうかを判断するために確かめている点を挙げます。ご自身で見当をつけるときの参考になるはずです。

  • 管理会社が今も存在し、機能しているか。 管理が事実上止まっている別荘地もあり、その場合は請求の根拠から確認します
  • 管理費の年額と、滞納額・遅延損害金の合計。 引き受けたあとに続く支出として見ます
  • 名義変更に管理会社の承認が要るか。 承認の条件と、そこに滞納精算が含まれるか
  • 現地まで車で入れるか。 私道の状態と、冬季に通行できるかどうか
  • 上下水道が生きているか。 休止中か、再開に費用がかかるか
  • 建物の状態と、解体の要否。 傷んだ建物が残っていると、次に使う人の負担が変わります
  • 権利関係。 相続登記が済んでいるか、共有になっていないか、古い抵当権が残っていないか

このうち、売主側で先に費用をかけて直していただく必要のあるものはありません。調べるのは買う側の仕事だと考えています。手元に資料がなくても、所在地と地番が分かれば調査は進みます。

逆に言えば、調べた結果として引き受けられないと判断することもあります。管理費の負担が重く、次の使い道が見込めない土地は実際にあります。その場合は理由をそのままお伝えします。

費用を先に負担せずに終えるには

ご相談を受けていて多いのは、「高く売りたい」ではなく「これ以上お金と手間をかけずに終わらせたい」という声です。管理費が払えない状況では、この傾向がとくにはっきりしています。

当社が現況のまま引き受けている状態の例

管理費に滞納がある別荘地/建物が傷んだまま残っている別荘/管理会社との連絡が途絶えている区画/相続したが一度も行ったことのない土地/共有名義になっている別荘地

いずれも、解体・測量・草刈りの費用を先にご負担いただく必要はありません。

遠方の実家のご相談と同じで、先に片付けや解体、測量を済ませていただく必要はありません。所在地と地番が分かれば、そこから調査を始められます。

ただし、すべてを買い取れるわけではありません。状態によっては、当社が費用をいただいて引き取る形をご提案することもあります。その場合も金額をお伝えしてから判断していただくので、話を聞いた時点で費用が発生することはありません。

ご相談は東北・九州・北陸・北海道といった地方からのものが多く、対応は全国どこでも同じです。管理会社の運営形態も、水道や税の扱いも自治体ごとに違いますが、そこは調べる側で引き受けます。所在地と地番、直近の請求書の有無だけ教えていただければ、そこから先は当社で進められます。

よくある質問

別荘地の管理契約を解約すれば、管理費の請求は止まりますか?

止まらない可能性が高いです。2025年(令和7年)6月30日の最高裁判決は、管理契約を結んでいない土地所有者についても、管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うと判断しました。道路や排水設備の維持のように、別荘地全体に及ぶ管理は個別に利用を断れないという理由です。個別の事情によって結論は変わるため、実際の対応は弁護士へご確認ください。

管理費を滞納したままでも、別荘地を手放せますか?

手放せる場合があります。滞納があること自体が売却を止めるわけではなく、滞納分をいつ誰が精算するかを管理会社との間で決められるかどうかが分かれ目です。名義変更に管理会社の承認や滞納分の精算を求める取り決めが置かれていることが多いため、まず管理規約と直近の請求書をご用意ください。

滞納している管理費は、買主に引き継がれますか?

更地の別荘地は区分所有ではないため、滞納分が法律上当然に買主へ移るわけではありません。一方リゾートマンションのような区分所有建物では、建物の区分所有等に関する法律8条により、買主にも請求できるとされています。どちらの場合も、実務では決済のときに精算して名義を移す形が一般的です。

使っていない別荘の固定資産税は安くなりませんか?

住宅の敷地に適用される固定資産税の住宅用地の特例は、専ら保養の用に供する家屋、つまり別荘の敷地には適用されません(地方税法349条の3の2、同法施行令36条)。日常生活の拠点として使っている場合は扱いが変わることがあるため、判断は市町村の資産税担当課や税理士へご確認ください。

管理費が払えないまま放置すると、どうなりますか?

遅延損害金が積み上がり、督促のあとに支払督促や訴訟へ進むことがあります。判決が出れば預金や給与の差押えに至る可能性もあります。また所有者が亡くなれば、負担はそのまま相続人へ移ります。放置しても金額が減ることはないため、早い段階で出口を決めたほうが負担は小さくなります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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