シロアリ被害のある家は、売れます。被害があることを買主に告げたうえで、価格や条件を決めることになります。
迷いやすいのは、駆除してから売るか、壊して更地にするか、現況のまま売るかの3つです。この記事では、床下の調べ方と頼み先、駆除でできること・できないこと、告知書への書き方、食われた場所ごとの売り方の考え方を整理します。
先に結論を書くと、駆除をしても、食べられた木材は元に戻りません。駆除は売却の安心材料になりますが、被害の範囲を知ることのほうが先です。
「被害がある」の中身は3つに分かれる
シロアリ被害と言っても、状況は同じではありません。買主が気にするのは、いま活動しているかと、構造にどこまで及んでいるかです。
| 状態 | 見つかるもの | 買主の見方 |
|---|---|---|
| いま活動している | 羽アリの発生、蟻道、新しい木くず | 駆除が先に必要。被害の範囲を調べたい |
| 駆除済みで、跡が残る | 食われた木材、過去の駆除記録 | 傷みの補修が済んでいるか、再発しないか |
| 被害跡だけが見つかった(時期は不明) | 床のたわみ、木材の空洞 | 原因も時期も不明。調査してから判断したい |
蟻道とは、シロアリが地面から木材へ移動するために作る土のトンネルです。床下の基礎や束石まわりにあれば、活動の目印になります。
床がたわむ、柱をたたくと軽い音がする、といった症状は、被害が構造に及んでいるサインのことがあります。ただし、見た目だけでは判断できません。床下の調査で確かめてください。
床下の調査は誰に頼むか
床下を見てもらう先は、大きく2つあります。目的が違うので、何を知りたいかで選びます。
| 頼み先 | 主に分かること | 気をつける点 |
|---|---|---|
| シロアリ防除業者の点検 | いまシロアリが活動しているか、蟻道や被害の場所、駆除の方法と見積もり | 駆除工事の営業を兼ねることが多い。建物の構造全体の評価をする調査ではない |
| 建築士による建物状況調査(インスペクション) | 土台・柱・床などの劣化、蟻害、腐朽、雨漏りの跡などを、国の基準に沿って記録した報告書 | 原則として壊さずに見る調査。点検口がない、家具で隠れているなどで見られない部分は「調査できない」と記録される |
建物状況調査は、国土交通大臣の登録を受けた講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が行うものです。国土交通省の基準では、木造の家の場合、基礎・土台・床組・柱などの部位について、床下も含めて、著しい蟻害がないかを目視で調べることになっています。蟻害とは、シロアリの蟻道と被害のことです。床下は、点検口から顔や上半身を入れる程度で見ることが想定されており、床下に入って見るのは可能な場合とされています(国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」)。
売却の場面では、防除業者の点検で「いまいるか」、建物状況調査で「建物全体のどこが傷んでいるか」を押さえる、という使い分けになります。点検口がない家では、どちらの調査でも床下が見られないことがあるため、頼む前に点検口の有無を伝えておくと話が早くなります。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
駆除でできること、できないこと
駆除は、いまいるシロアリを退治したり、薬剤で被害の広がりを抑えたりする作業です。売却の場面では、ここを誤解して損をすることがあります。

駆除の記録や保証書があれば、買主には「対処した」という材料になります。ただし、保証の期間や範囲は業者ごとに違い、法律で決まった年数があるわけではありません。売る前に、保証書の次の点を確かめてください。
- 保証の期間:施工日から何年か、いま期限が切れていないか
- 保証の中身:再発したときに再施工だけをするのか、被害の補修まで含むのか
- 対象の範囲:家全体か、施工した部分(床下だけ、浴室まわりだけなど)に限るのか
- 名義:所有者が変わっても引き継げるか(引き継げない保証もあるため、業者に確かめる)
保証書が見つからないときは、施工した業者が分かれば、施工の記録が残っていないか問い合わせる方法があります。期限が切れている保証書も、「いつ、どこを駆除したか」の記録として買主に渡せます。
一方で、傷んだ柱や土台の交換が必要な場合、駆除の費用とは別に補修の費用がかかります。費用の見込みは調査をしてからでないと出ないため、駆除の見積もりだけで売値の損得を決めないでください。
告げずに売るとどうなるか
売った家に、契約の内容に合わない不具合があれば、売主は契約不適合責任を負います。買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと請求できなくなりますが、売主が引渡しの時に不適合を知っていたとき、または重大な過失によって知らなかったときは、この制限は働きません(民法566条)。
「現況のまま」「責任を負わない」という特約を付けても、民法572条は、知りながら告げなかった事実については責任を免れられないと定めています(e-Gov法令検索)。
シロアリ被害に気づいている、または過去に駆除した記録があるなら、契約の前に書面で伝える。
特約は、伝えたうえで付けてこそ意味を持ちます。
告知書(物件状況報告書)への書き方の例
売買では、売主が家の状態を書いて買主に渡す書面(物件状況報告書、告知書などと呼ばれます)を使うことが多くあります。シロアリについては、分かっていることと分からないことを分けて書きます。
| 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 被害の有無と場所 | 「浴室の入口の柱の下部に、シロアリによる食害あり」「被害は未確認」 |
| 見つけた時期ときっかけ | 「○年春、羽アリの発生をきっかけに確認」 |
| 駆除・予防の履歴 | 「○年○月、○○社が床下を駆除。保証書あり(○年○月まで)」「駆除歴なし」「駆除歴は不明」 |
| 補修の履歴 | 「被害を受けた柱は未補修」「○年に土台の一部を交換」 |
| 調査の有無 | 「○年○月、建築士による建物状況調査あり(報告書あり)」「床下は未調査。点検口なし」 |
相続した家などで、過去のことが分からない場合は「不明」と書きます。分からないことを「なし」と書かないことが大切です。
現況渡しの免責の考え方は、現況渡しとは|免責しても消えない売主の責任に書きました。個別の契約の判断は、弁護士や宅地建物取引士にご確認ください。
食われた場所で、売り方の考え方が変わる
駆除して売るか、壊すか、現況のまま売るかは、どこが食われているかで考え方が変わります。土台や柱は、建物の重さや地震の力を支える「構造耐力上主要な部分」に当たります(国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」)。
| 食われた場所 | どんな部材か | 売り方を考える目安 |
|---|---|---|
| 床束(ゆかづか)・床板 | 床を下から支える短い柱と、その上の床 | 被害がそこで止まっていれば、部分的な交換で済むことがある。駆除と補修をして売る道も比べやすい |
| 浴室・台所など水まわりの周辺 | 湿気がこもりやすく、腐朽と重なっていることもある | 浴室の壁や床をはがさないと範囲が分からないことが多い。補修費が読みにくく、現況のまま告げて売る道も並べて考える |
| 土台 | 基礎の上に載り、柱を受ける横の木材 | 建物を支える部分。範囲が広いと補修が大がかりになり、建物を残すか、壊すかの判断になる |
| 柱・梁(はり) | 建物を支える縦と横の木材 | 床下だけでなく壁の中まで被害が上がっている状態。補修できるかは建築士の判断が要る。費用を先に出せない場合は現況のまま相談する道もある |
どの場合も、調査をして範囲が分かるまでは、補修費の見込みは出ません。範囲が分からないまま駆除と補修に費用をかけても、その分が売値に上乗せされるとは限りません。
壊して更地で売る場合は解体費が先にかかり、現況のまま売る場合は、価格が補修費や解体費を見込んだ水準になります。
壊す前に、その土地で再建築ができるかを確かめてください。接道の条件などで再建築できない土地では、建物を壊すと新しい家を建てられなくなります。この場合の出口は再建築不可物件が売れない理由|現況のまま手放す5つの出口を参考にしてください。解体費の考え方は空き家の解体費用は何で決まる?追加費用と、壊さず手放す道にまとめています。
費用を先に出さずに手放す道
調査費も駆除費も解体費も、売主が先に出せないことは珍しくありません。その場合は、現況のまま引き受けられる買主に相談する道があります。
当社は、シロアリ被害のある家でも、駆除・解体・片付けを先にしていただく前提では見ていません。建物の状態と築年数を確認し、被害の場所や範囲、土地の条件から、扱えるかを物件ごとに判断します。物件の種類を問わない全体のご案内は、訳あり物件の買取相談のページにまとめています。
ご相談のとき、次の情報があると話が早く進みます。
- 被害に気づいた時期と、見つけた場所(羽アリ・蟻道・床のたわみなど)
- 過去の駆除や予防工事の時期と業者、保証書の有無
- 床下の点検口の有無と、床下の写真(撮れれば)
- 築年数と、所在地・名義人(相続前の名義のままでも構いません)
条件によっては成立しないこともあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

シロアリ被害のある家を売る順番
- 被害の場所と、過去の駆除の記録を集める
- 床下の調査で、いま活動しているか・構造にどこまで及ぶかを確かめる
- 分かった内容を、買主に契約の前に書面で伝える
- 駆除して売る・壊す・現況のまま、の費用を並べて選ぶ
被害が見つかってからの時間は、そのまま傷みが進む時間になります。迷っている間も費用は止まりません。まず被害の範囲を調べて、告げる内容を整えてから、売り方を選んでください。
よくある質問
シロアリ被害のある家は売れますか。
売れます。被害があることを告げたうえで、価格や条件を決めることになります。被害が表面にとどまるのか、柱や土台など構造に及ぶのかで、買主の見方が大きく変わります。まず被害の範囲を調べておくと、話が進みやすくなります。
駆除すれば、被害は元に戻りますか。
戻りません。駆除は、いま活動しているシロアリを退治する作業です。すでに食べられて弱った木材は、駆除をしても強度が戻らないため、補修や交換が別に必要になります。駆除したことは売却のときの安心材料になりますが、傷んだ部分の補修とは分けて考えます。
シロアリ被害を黙って売ったらどうなりますか。
民法572条により、知りながら告げなかった事実は、責任を負わない旨の特約があっても免責されません。買主は補修の請求、代金の減額、損害賠償、契約の解除を求められる可能性があります。気づいている被害や過去の駆除歴は、契約の前に伝えてください。
過去に駆除した記録がない場合はどうしますか。
記録がなければ、ないことをそのまま伝えます。床下の点検口から、蟻道(シロアリが作る土のトンネル)や木材の傷みを確認してもらうと、現状の説明材料になります。保証書がある場合は、保証の期間と範囲を確かめ、買主に渡します。
シロアリ被害のある家を、そのまま引き受けてもらえますか。
現況のまま相談できます。駆除・解体・片付けを先にしていただく必要はありません。被害の場所や範囲、建物の状態、築年数、土地の条件を見て、扱えるかを物件ごとに判断します。希望額との開きなどで成立しないこともあります。
この記事の監修者
「売れない」と言われた不動産を、どうするか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
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どこで断られたかを伺うことはしません。断られた理由の方が、判断に必要です。
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