長屋・連棟式は売れない?切り離さずに売る道と、隣家の同意が要る場合

連棟式の長屋は、切り離さなくても売却できます。ただし、切り離すかどうかで、買主の層も、費用も、隣家との関係も変わります。この記事では、切り離しに隣家の同意が要る理由、切り離したときに起きる問題、切り離さずに手放す道を整理します。

連棟式とは、隣の家と壁や屋根でつながって建っている建物のことです。長屋や、テラスハウスと呼ばれる形もこれに含まれます。

売れるか:切り離さなくても売れます。ただし住宅ローンが付きにくく、買主は限られやすくなります。
最初にやること:登記事項証明書で、土地と建物の名義・範囲と、隣家とのつながりを確かめる。
費用:切り離し・解体・片付けを先に済ませず、現況のまま相談する道があります(引き受けは物件ごとの判断です)。

目次

連棟式の家は、なぜ売りにくいのか

連棟式の家が売りにくいのは、自分の家のつもりでも、一部が隣家と一体になっているからです。壁、屋根、梁、基礎、雨どい、配管が隣家とつながっていると、買主はこんな点を気にします。

  • 隣家が建て替えや解体をしたとき、自分の側にどう影響するか
  • 住宅ローンを組める金融機関が限られないか(隣家とつながっていることが担保の評価に響き、融資が付きにくい場合があります。扱いは金融機関ごとに違うため、買主が事前に確かめます)
  • 隣家と、どうやって工事や修繕の話をまとめるか
  • 敷地の範囲が、はっきり分かれているか

とくに敷地の問題は見落とされがちです。土地が一筆のまま2軒で共有になっているのか、それぞれ別の筆なのかで、売り方は変わります。登記事項証明書で、土地と建物の名義と範囲を先に確かめてください。

ローンが付きにくいと、買主は現金で買える人や、不動産会社に偏りやすくなります。切り離して独立した建物にすると、買主の層は広がります。

連棟式の家で、隣家とつながっている部分の図解
つながり方によって、切り離しの工事の重さが変わる

切り離すとき、隣家の同意が要る理由

切り離しは、つながっている壁や屋根を分けて、それぞれを独立した建物にする工事です。次の理由で、隣家の協力が欠かせません。

まず、権利の面です。境界線の上に設けた障壁は、隣り合う所有者の共有に属するものと推定されます(民法229条、e-Gov法令検索)。境界の上にある界壁は、自分だけの持ち物とは限らず、隣家の持ち分がある前提で考える必要があります。

建物が区分建物として登記されている場合は、区分所有法が関わります。専有部分以外の建物の部分は「共用部分」とされ(区分所有法2条4項)、共用部分は区分所有者の共有に属します(同法11条1項)。共用部分の変更は、形状や効用の著しい変更を伴わないものを除き、集会で出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数による決議が要り、専有部分の使用に特別の影響が出るときは、その所有者の承諾も要ります(同法17条1項・2項、e-Gov法令検索)。どの部分が共用部分にあたるかは建物ごとに違うため、登記事項証明書と図面で確かめます。

そのうえで、工事の面でも次のとおり隣家に影響が出ます。

つながっている部分切り離しで起きること隣家との関係
壁(共有している界壁)切った断面を、双方で仕上げ直す隣家の側の外壁にも手が入る
屋根・梁切り離したところの雨仕舞を、それぞれ作り直す隣家の屋根にも工事が及ぶ
基礎・土台構造が一体なら、切り離しで強度が変わる隣家の建物の安全にも影響する
電気・水道・ガスの配管引き込みを分ける隣家の暮らしに一時的に影響する

長屋の各戸の間にある界壁は、建築基準法施行令114条により、準耐火構造とし、小屋裏や天井裏まで達するように求められています(e-Gov法令検索)。同じ条文には、自動スプリンクラー設備等を設けた部分など、防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く例外もあります。今の界壁がどういう仕様で建てられているかは、図面で確かめておきます。

切り離したあとの切断面は、もう界壁ではなく、残る側の建物の外壁になります。雨仕舞や防火の面で外壁として成り立つように補修する必要があり、求められる仕様は地域の規制と建物の状況で変わります。この補修や切り離しの工事に建築確認が要るかどうかも含めて、次の点は建築指導課で確かめてください。

切り離しの工事に、許可や届出が必要かどうかは、建物の状況と自治体の運用によって変わります。工事を決める前に、市区町村の建築指導課へ、図面を持って相談してください。

隣家にとっても、工事は自分の家に手が入る話です。費用の分担、工事中の暮らしへの影響、工事後の仕上がりについて、双方が納得しないと進みません。口約束で始めると、工事後に「ここまでやる約束だった」という食い違いが起きやすいため、話がまとまったら合意書に残します。

  • 工事の範囲(どの壁・屋根・梁・配管まで手を入れるか。図面に印を付けて添付する)
  • 費用の分担(工事費・設計費・登記や測量の費用を、誰がどの割合で持つか)
  • 工事の時期と、工事中の立ち入り・騒音・ライフラインの停止の扱い
  • 切断面の外壁補修を、どちらの側をどこまで、誰の負担でするか
  • 工事後に雨漏りやひび割れが出たときの補修の責任と、連絡の窓口
  • 境界と土地の分け方(測量・分筆をするか、費用を誰が持つか)
  • 建築指導課への相談結果と、必要な申請を誰が出すか

端の住戸と、真ん中の住戸の違い

連棟の端にある住戸は、隣家と接する壁が片側だけです。真ん中の住戸は両側に隣家があり、切り離すなら2軒それぞれとの調整と工事が要ります。どちらも、切り離したあとに敷地を分けて道路に接するかどうかは、建物の位置ではなく敷地の形で決まるため、図面と登記で確かめます。

切り離しの費用を確かめる手順

工事費の相場を一律には示せません。建物の構造や界壁の仕様、配管のつながり方で大きく変わるためです。次の手順で、自分の物件の数字を出してください。

  1. 施工会社2社以上から、同じ条件で見積もりを取る
  2. 見積もりに、界壁の補修、外壁の仕上げ、屋根の雨仕舞、配管の分離が含まれているかを見る
  3. 登記や測量(土地家屋調査士)の費用が別にかかるので、別途見積もりを取る
  4. 合計と、切り離したあとに見込める売却額を並べ、見合うかを判断する

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

切り離したあとに起きること

切り離しが終わると、それぞれの建物が独立します。そこで、売る側が新たに向き合うことがあります。

確かめること内容
敷地の分け方切り離した後の土地の範囲を決め、必要なら分筆する。建築基準法施行令1条1号は、「敷地」を「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地」と定めている
道路との接し方建物ごとに敷地が分かれると、それぞれが道路に接しているかが問われる
建物の登記登記の内容が実際の建物と合わなくなるため、表示に関する登記が要る(下で説明)
費用の負担工事費を誰がどう分けるか、書面で決める

建物の登記は、切り離しで建物の形が変わると、登記記録と合わなくなります。床面積などの登記事項が変わったときは、変わった日から1か月以内に表題部の変更の登記を申請することになっています(不動産登記法51条1項)。登記記録の上で建物の分け方を変える登記として、建物の分割・区分・合併の登記もあります(同法54条、e-Gov法令検索)。ただし、同条の「分割の登記」は、附属建物を元の建物の登記記録から分けて別の建物とする登記です。連棟の切り離しで検討するのは、多くの場合、表題部の変更の登記か、区分建物にかかわる区分・合併の登記のどれかになります。どの登記が要るかは、今の登記の状態(一棟の建物か、区分建物か)と工事の内容で変わります。こうした表示に関する登記の調査・測量と申請の代理は、土地家屋調査士の業務です(土地家屋調査士法3条1項)。工事の計画の段階で、土地家屋調査士に登記事項証明書と図面を見せて相談してください。

とくに道路との接し方には注意してください。敷地を分けたとき、一方が道路に接していなければ、その建物は建て替えが難しくなることがあります。接道の問題は再建築不可物件が売れない理由|現況のまま手放す5つの出口で整理しています。

切り離しは、売りやすくするための工事ではあっても、売れる保証ではありません。工事の費用が、買主が付く価格に見合うかを、先に確かめてください。

切り離さずに売る道

隣家が応じない、費用が出せない、といった場合は、切り離さずに売る道があります。

売り方中身向いているとき気をつける点
隣家に売る自分の側の建物と土地を隣家に譲る隣家に活用の意向がある隣家の事情次第。価格は話し合いで決まる
連棟の持ち主で一緒に売る複数の持ち主で合意して、まとめて売る隣家も手放したい全員の足並みがそろわないと進まない
現況のまま売る連棟の状態を告げて、そのまま売る先に費用を出したくない・出せない価格は、連棟であることを見込んだ水準になる

実際に詰まりやすい点

切り離さずに売る場合も、話が止まるのは隣家まわりの事情です。

詰まる点起きること先にできること
隣家の名義が故人のまま話をする相手が定まらない登記事項証明書で名義人を確かめ、相続人がいるか窓口や専門家に相談する
隣家が空き家で連絡がつかない同意も売却の相談も進まない登記上の住所への書面と、市区町村の空き家担当課への相談
土地が一筆で2軒の共有自分の側だけ売ると、土地は共有持分の売却になる共有の持分と建物の範囲を、登記と図面で整理する
建物の登記と実際の範囲が合わない買主が範囲を判断できない土地家屋調査士に、登記と現況の差を見てもらう

隣家と連絡がつかない場合でも、自分の側の状態を整理しておけば、現況のままの相談は進められます。隣家の同意が必要な切り離しと違い、売る側の建物と土地の範囲が分かれば話ができるためです。

どの場合も、連棟の状態や、隣家との取り決め、分かっている不具合は、契約の前に伝えることが大切です。売主が知りながら告げなかった事実については、契約不適合の責任を負わない旨の特約をしていても、その責任を免れることができません(民法572条、e-Gov法令検索)。

区分の登記が絡む二世帯住宅の場合は、似た問題があります。考え方は区分登記の二世帯住宅は売れる?合併登記の要件と、しないで売る道にまとめています。

連棟式の長屋を、そのまま手放すという選択

切り離しにも調査にも費用がかかります。それを先に出せないときは、現況のまま相談する道があります。

当社の訳あり不動産の買取相談では、連棟式の家でも、切り離し・解体・片付けを先にしていただく前提では見ていません。建物の状態と築年数を確認し、隣家との関係、土地の条件から、扱えるかを物件ごとに判断します。調査は当社で行い、売主さまに調べていただく必要はありません。

ご相談のとき、次の情報があると話が進みやすくなります。

  • 連棟の戸数と、自分の家がどの位置にあるか(端か、真ん中か)
  • 隣家の持ち主と、連絡が取れるか
  • 土地が一筆か、別々か(登記事項証明書で確認)
  • 築年数と、所在地・名義人(相続前の名義のままでも構いません)

建物の状態や隣家との関係によっては、買取として値が付かないこともあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

条件によっては成立しないこともあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

遠方にお住まいでも、現地にお越しいただかずに契約から決済まで進められます。お返事は翌営業日までにいたします。

連棟式の家を手放す3つの道を、隣家の協力の要否で比べた図解
隣家の協力がどこまで要るかで、道が分かれる

連棟式の家を売る順番

  1. 登記事項証明書で、土地と建物の名義・範囲を確かめる
  2. 隣家とのつながり(壁・屋根・配管)を整理する
  3. 切り離す・隣家に売る・現況のまま、の3つを並べる
  4. 隣家の協力や費用が難しければ、現況のまま相談する

法律や税金の判断は、弁護士・司法書士・税理士・土地家屋調査士にご確認ください。

よくある質問

連棟式の長屋は、切り離さないと売れませんか。

切り離さなくても売れます。ただし、買主は住宅ローンが付きにくいことや、隣家との関係を気にします。切り離すと買主の層は広がりますが、工事の費用と隣家の協力が要ります。切り離すかどうかは、費用と手間、隣家の意向を並べて決めます。

切り離しには、隣家の同意が必要ですか。

境界線上の壁(障壁)は、隣り合う所有者の共有と推定されます(民法229条)。区分建物として登記されている場合は、区分所有法の共用部分の決まり(集会の決議や、影響を受ける所有者の承諾)が関わります。加えて、壁や屋根、梁、配管は隣家と一体になっていることが多く、工事で隣家の暮らしに影響が出ます。権利の面でも工事の面でも、隣家の了解を得て進めることになります。工事の許可や届出が必要かどうかは、市区町村の建築指導課で確認してください。

隣家が切り離しに応じてくれない場合はどうしますか。

切り離さずに売る道があります。隣家に自分の側の建物を売る、同じ連棟の持ち主とまとめて売る、現況のまま引き受けてもらう、といった選択肢です。隣家とのやり取りが難しい場合は、先に自分の側の状態を整理しておくと、相談が進みやすくなります。

長屋とは、建築基準法ではどういう建物ですか。

建築基準法に長屋そのものの定義の条文はなく、自治体の取扱いで示されています。たとえば山梨県は、住戸の間で内部の行き来ができない建物のうち、廊下・階段等を各住戸で共有しない形式を長屋、共有する形式を共同住宅と整理しています(山梨県 建築住宅課「長屋、共同住宅」)。細かな判断は自治体ごとに違うため、所在地の建築指導課で確認します。建築基準法施行令114条は、長屋の各戸の間にある界壁を準耐火構造とし、小屋裏や天井裏まで達するように求めています。この界壁があるかどうかが、切り離しの工事の内容に影響します。

連棟式の長屋を、そのまま引き受けてもらえますか。

現況のまま相談できます。切り離し・解体・片付けを先にしていただく必要はありません。隣家との関係、建物の状態、築年数、土地の条件を見て、扱えるかを物件ごとに判断します。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。希望額との開きなどで成立しないこともあります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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