倒壊しそうな家は、現況のままでも売却できる可能性があります。ただし、誰に、どの形で売るかで、相手になる買主も価格の考え方も変わります。この記事では、倒壊しそうな家・危険家屋を持つ方が、売る前に何から押さえるかを、売り方の比べ方、持ち主の責任、市町村の通知の確かめ方の順に整理します。
売れるか:買主が見つかれば、現況のまま売却できます。ただし知っている傷みは告げる必要があります(民法572条)。
最初にやること:状態を写真と日付で残し、市町村から文書が届いていないか確かめる。
費用:解体や修繕を先に出さず、現況のまま相談する道があります(引き受けは物件ごとの判断です)。
傾き・雨漏り・シロアリそれぞれの売り方は、個別の記事で書いています(傾いた家の売却、雨漏りのある家の売却、シロアリ被害のある家の売却)。ここでは、家が倒れるかもしれない状況で、どう売るかに絞ります。
倒壊しそうな家の売り方は3つ
売り方は、大きく分けて「現況のまま売る」「更地にして売る」「修繕して売る」の3つです。傾きや雨漏りがあるだけの家と違い、倒れるおそれがある家では、どの売り方でも次の点が値段と段取りに効いてきます。
| 売り方 | 相手になりやすい買主 | 倒壊のおそれがあると何が変わるか |
|---|---|---|
| 現況のまま売る | 不動産業者、隣地の所有者、自分で壊す前提の個人 | 建物は使えるものとしてではなく、解体する前提で見られやすい。解体費に加え、引渡しまでの応急措置の費用も価格から差し引かれる |
| 更地にして売る | 家を建てたい個人、隣地の所有者、業者 | 建物がなくなれば倒壊の問題も市町村の措置の対象もなくなり、土地の条件(広さ・接道・立地)だけで見られる。代わりに解体費を売主が先に出す |
| 修繕して売る | 住むために探している個人 | 倒壊のおそれをなくすには、傾きや柱・基礎など構造部分の傷みに手を入れることになる。直す範囲と費用は、建築士や工務店の見積もりで確かめてから決める |
売れるまで持ち続ける間の負担も、倒壊のおそれがある家ならではです。特定空家等として勧告まで受けた家で、災害などの非常時に市町村が緊急に除却などを行った場合、その費用は所有者の負担になります(空家法22条11項。詳しくは後述)。
価格の考え方は、どの売り方でも同じです。土地として使えたときの値段から、建物を壊す・直す費用と手間を差し引いたものが、買主の考える価格の土台になります。倒壊のおそれがある家は解体を前提に見られることが多く、解体費が重いほど、また土地の買い手が少ない地域ほど、差し引いたあとの金額は小さくなります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。
隣地の所有者は、敷地を広げる目的で検討することがあります。一般の買主に売りにくい物件でも、まず隣地に声をかけてみる価値はあります。
解体して土地で売るか、現況のまま手放すか
迷いやすいのは、「解体してから土地として売る」か「家が建ったまま手放す」かです。次の項目を並べて比べます。
| 比べる項目 | 確かめ方 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 解体費と土地の売値の差 | 解体業者の見積もり(残置物の処分費を含む)と、土地の売値の見込みを並べる | 売値の見込みが解体費を大きく上回るなら、解体して売る道が検討できる。下回るなら、先に出した費用を回収しにくい |
| 再建築できるか | 建築基準法43条は、建物の敷地が道路に2m以上接することを求めている。接道の状況を役所の建築担当課で確かめる | 再建築できない土地は、更地にしても家を建てたい買主が付きにくい。現況のまま、または隣地への売却を考える |
| 固定資産税の住宅用地特例 | 住宅が建つ土地は、固定資産税の課税標準が価格の1/3(住宅1戸あたり200㎡までの部分は1/6)になる特例がある(地方税法349条の3の2第1項・第2項) | 更地にすると住宅の敷地ではなくなるので、特例から外れる。特定空家等・管理不全空家等として勧告を受けた場合も外れる。さらに国土交通省の指針は、構造上住宅と認められない状態の家や、住むために必要な管理を怠っていて今後人が住む見込みがないと認められる家は、勧告の有無にかかわらず本来住宅に当たらず、特例はそもそも適用されないとしている。倒れそうな家では「壊すと税が上がるから残す」が成り立たないこともあるので、いまの課税の扱いを先に確かめる |
| 売れるまでの期間 | 近くの土地の売り出し状況を見る | 売れるまで時間がかかる地域では、解体後の土地の税と管理の負担が続く |
| 先に出せる費用 | 手元の資金と、解体費の補助金(市町村による)を確かめる | 費用を出せないなら、現況のまま引き受ける買主に相談する |
固定資産税がどれだけ増えるかは、土地の評価や負担調整の仕組みで土地ごとに違います。解体を考えるときは、市町村の資産税担当課で、いまの土地に住宅用地特例が適用されているかと、更地にした場合の税額を聞いておくと比べやすくなります。壊す費用の決まり方は空き家の解体費用は何で決まる?で整理しています。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
売る前に押さえる、持ち主の責任
売り方を決める前に、家が倒れて近隣や通行人に被害が出たときの責任を知っておきます。
民法717条は、土地の工作物の設置や保存に瑕疵(欠陥)があって他人に損害が出たとき、まずその工作物の占有者が賠償し、占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは、所有者が賠償しなければならないと定めています(出典は記事末尾)。誰も住んでいない空き家で、どちらが賠償を負うかは事情で分かれますが、所有者が責任を問われうる立場にあることは変わりません。個別の判断は、弁護士にご確認ください。
空家法5条は、空き家の所有者に、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理に努める責務を置いています。努力義務なので、これだけで罰則が付くわけではありませんが、管理されていない状態が続くと、市町村の措置につながります。
売るときにも責任は残ります。傾き・雨漏り・蟻害など知っている傷みは、免責の特約を付けても、告げずに売れば責任を免れません(民法572条)。国土交通省の指針には、管理不全空家等の例として雨水浸入の痕跡や構造部材の蟻害等が出てきます。雨漏りやシロアリの被害は柱や梁を傷め、放置すると傾きや倒壊の話に近づくため、売るときに伝える項目であると同時に、危険家屋の話につながる項目です。現況渡しの扱いは、現況渡しとは|免責しても消えない売主の責任も参考になります。
市町村の通知を確かめる
「危険家屋」は法律上の用語ではなく、空家法では特定空家等という言葉が使われます。そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態などにあると認められる空き家です(空家法2条2項)。その手前に、2023年12月13日施行の改正で加わった管理不全空家等があります(同法13条)。
国土交通省の指針では、倒壊のおそれがあるほどの著しい傾斜は1/20超が目安とされていますが、屋根の変形や構造部材の傷みなどと合わせて市町村が総合的に判断します(目安の読み方は傾いた家の売却に書きました)。
売る前に確かめるのは、市町村から文書が届いているか、届いていればいまが助言・指導か、勧告か、命令かです。段階によって、売るまでに使える時間と、買主に伝える内容が変わります。届いた文書の日付と期限を、まず確認してください。措置の流れは空き家を放置したときのリスクに、勧告を受けたあとの売り方は特定空家に勧告が出た家の売却にまとめています。運用は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の空き家担当課で確認してください。
売る前にやることの順番
費用を出せるかどうかに関わらず、先にできることがあります。
| 順 | やること | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | 状態を残す | 傾き・雨漏り・蟻害に気づいた時期と気になる場所を、写真と日付で残す。買主に伝える材料にも、責任を問われたときの記録にもなる |
| 2 | 市町村の通知を確かめる | 文書が届いていれば段階と期限を確認する。届いていなくても、空き家担当課に状況を相談できる |
| 3 | 名義を確かめる | 登記簿で建物と土地の名義人を見る。故人のままなら、相続人の誰が動くかを先に決める |
| 4 | 危険な部分の扱いを聞く | 人や隣地、通行人に危険が及びそうな部分は、売却より先に応急的な措置を考える。建築士や工務店に何ができるかを聞き、見積もりは2社以上で、含まれる範囲をそろえて取る。応急措置の費用は、売値の見込みから差し引いて考える |
| 5 | 売り方を決める | 上の2つの表を使い、現況のまま・更地・修繕のどれにするかを決める |

危険が切迫している場合の扱いも知っておいてください。空家法22条11項は、災害その他非常の場合に、特定空家等が保安上著しく危険な状態にあるなど緊急に措置が必要で、命令をするいとまがないときは、市町村長が命令の手続きによらずに、所有者などの負担で除却などの措置をとれる(緊急代執行)と定めています。国土交通省の指針によると、省けるのは命令とそれに付随する手続きで、助言・指導と勧告はすでに行われていることが前提です。つまり、通知を何も受けていない段階で、いきなり緊急代執行になるわけではありません。一方、勧告まで受けている家は、その猶予期限の途中でも、非常時には緊急代執行の対象になりえます。隣地や通行人への危険が迫っているほど、売却の段取りより先に、市町村への連絡と応急措置が優先されます。
倒壊しそうな家を、そのまま手放すという選択
直す費用も、壊す費用も出せないとき、現況のまま引き受けられる買主に相談する道があります。地方の空き家は、直しても買い手がつきにくいことがあります。理由は地方の空き家が売れない3つの理由で整理しています。
当社に届く相談では、「解体費が出せないので動けない」「解体費がかかるので、費用をかけずに手放したい」という声が繰り返し出てきます。高く売ることより、費用と管理の負担を止めたいという相談が中心です。
他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。考え方は、上で書いた価格の土台と同じです。立地や接道の条件がよく、土地としての使い道が見込めて、解体費や残置物の処分費を差し引いても価値が残る物件は、買取になりやすくなります。反対に、再建築できない、買い手の少ない地域にある、建物が大きく解体費が重い、家財が多く残っているといった条件が重なると、お引き受けになりやすくなります。
当社の訳あり不動産の買取相談では、倒壊のおそれがある家でも、片付け・解体・修理を先にしていただく前提では見ていません。建物の状態と築年数を確認し、土地の条件とあわせて、扱えるかを物件ごとに判断します。調査は当社で行います。遠方にお住まいでも、現地に来ていただかずに契約から決済まで進められます。
所有者でなくなれば、その後の管理は新しい所有者の役目になります。ただし、引渡しの前に家が原因で生じた損害の責任や、知りながら告げなかった傷みについての責任(民法572条)は、売ったあとも残ることがあります。手放す前に、知っている傷みと市町村からの通知は、買主に書面で伝えておきます。
すべての相談をお引き受けできるわけではなく、お断りする物件もあります。お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。
ご相談のとき、次の情報があると話が進みやすくなります。ご連絡いただければ、お返事は翌営業日までにいたします。
- 傾き・雨漏り・蟻害に気づいた時期と、気になる場所を写真に撮る
- 市町村からの通知があれば、文書と日付を手元にそろえる
- 築年数と、所在地・名義人を登記簿で確かめる(相続前の名義のままでも相談できます)
- 家財がどのくらい残っているかを見ておく
法律や責任の判断は弁護士・司法書士に、税額は市町村の資産税担当課にもご確認ください。
出典
- 民法(572条・717条)|e-Gov法令検索
- 建築基準法(43条)|e-Gov法令検索
- 地方税法(349条の3の2第1項・第2項)|e-Gov法令検索
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(2条・5条・13条・22条)|e-Gov法令検索
- 国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」(第1章2(1)ハ※1、第4章8、別紙1)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」改正の施行(令和5年12月13日施行)
よくある質問
倒壊しそうな家は、そのままでも売れますか。
買主が見つかれば、現況のまま売ることはできます。ただし、傾きや雨漏りなど知っている傷みを買主へ伝えずに売ると、免責の特約を付けていても責任を免れません(民法572条)。気づいた時期、傷んだ場所、市町村からの通知の有無は、書面で伝えられるようにしておきます。直してから売るか現況で売るかは、先に出せる費用と売値の見込みを並べて決めます。
倒壊しそうな家が隣の家や道に被害を出したら、誰の責任ですか。
民法717条は、土地の工作物の設置や保存に瑕疵があって他人に損害が出たとき、まず占有者が賠償し、占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは所有者が賠償しなければならないと定めています。誰が負うかは事情で分かれ、所有者が責任を問われうる立場にあります。個別の判断は弁護士にご確認ください。
どのくらい傾くと危険な家とみなされますか。
国土交通省の指針では、倒壊のおそれがあるほどの著しい建築物の傾斜は、1/20超が目安とされています。ただし目安であり、屋根の変形や構造部材の傷みと合わせて、市町村が総合的に判断します。詳しくは傾いた家の売却の記事と、市町村の窓口で確かめてください。
特定空家等と言われると、何が起きますか。
市町村長は、助言・指導、勧告、命令の順に措置を進められます。勧告を受けると、住宅用地の固定資産税等の特例の対象から外れます。命令に違反すると50万円以下の過料の対象になり、行政代執行で除却された場合は、費用を所有者が負担する流れになります。お住まいの市区町村の窓口で、いまどの段階かを確認してください。
倒壊しそうで雨漏りもする家を、そのまま引き受けてもらえますか。
現況のまま相談できます。片付け・解体・修理を先にしていただく必要はありません。建物の状態、築年数、土地の条件を見て、扱えるかを物件ごとに判断します。お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
このような物件のご相談は、訳あり不動産の買取相談のページへ。
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ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

