親が管理費を滞納したままのリゾートマンションを相続すると、滞納分の支払い義務は相続人が引き継ぎます。この記事では、引き継ぐ範囲、5年の消滅時効に頼れない理由、相続放棄との関係、滞納を精算して手放す順番を、条文と判例で整理します。
払う義務:相続を承認すれば、滞納分は相続人が引き継ぎます。相続放棄をすれば引き継ぎません。
最初にやること:管理組合か管理会社に、滞納額の内訳を書面で出してもらう。払う前に、時効や放棄を弁護士に相談する。
費用:滞納の精算や片付けを済ませなくても、現況のまま相談できる道があります(引き受けは物件ごとの判断です)。
リゾートマンションをどう手放すかの全体像はリゾートマンションを手放したいにまとめました。ここでは、すでに滞納がある場合に絞って書きます。
滞納は、相続した人に移る
民法896条は、相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています(ただし被相続人の一身に専属したものを除く)。管理費の滞納は「払う義務」なので、預貯金や不動産と同じように、プラスの財産とあわせて相続人に移ります。
相続人が複数いる場合は、民法899条により、各相続人が相続分に応じて権利義務を承継します。また民法898条1項は、相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属すると定めています。区分所有法19条は、各共有者が規約に別段の定めがない限り持分に応じて共用部分の負担に任じると定めているため、遺産分割が終わるまでは、相続人どうしで部屋を共有している状態として管理費を考えることになります。誰が何を負うかを整理すると、次のとおりです。
| 場面 | 誰が払う義務を負うか | 根拠 |
|---|---|---|
| 亡くなる前の滞納分 | 相続を承認した相続人(相続分に応じる) | 民法896条・899条 |
| 相続した後、遺産分割が終わるまでに出る管理費 | 共同相続人(相続財産は相続人の共有になるため) | 民法898条1項・区分所有法19条。誰にいくら請求できるかは個別に弁護士へ |
| 遺産分割が終わった後に出る管理費 | 分割でその部屋を取得した人 | 区分所有法19条・管理規約 |
| 滞納を残したまま売った場合 | 買った人にも請求される | 区分所有法8条 |
| 相続放棄をした場合 | 放棄した人は負わない | 民法939条 |
滞納は相続人の側でも、買い手の側でも、消えません。止まるのは、精算するか、相続放棄で初めから相続人でなくなるかのどちらかです。
区分所有法7条は、規約や集会の決議に基づく管理費などの債権(管理者や管理組合法人の債権も同様)に先取特権(ほかの債権者より先に、その区分所有権から回収できる権利)を認めています。この先取特権と8条の関係は、公開済みの記事で条文を引いて説明しているため、ここでは繰り返しません。

時効の5年に、期待しすぎない
「何年も請求が来ていないから、時効で消えているはず」と考える方がいます。管理費には時効があります。ただし、放っておけば消える、とは言えません。
最高裁平成16年4月23日判決は、マンションの管理費などの債権について、民法旧169条の定期給付債権にあたるとして、消滅時効を5年としました(最高裁判所第二小法廷 平成16年4月23日判決 平成14年(受)第248号。全日本不動産協会の管理費の消滅時効の解説でも確認できます)。現在の民法166条1項は、債権者が権利を行使できると知った時から5年、または行使できる時から10年で消滅時効が完成すると定めています。毎月払いの管理費が現在の条文でどう扱われるかは、個別の判断になるため、弁護士にご確認ください。
時効が使えない、または使いにくい理由を4つに分けて整理します。
| 理由 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自動では消えない | 払う側が「時効だ」と主張(援用)しなければ、裁判所は時効で判断できない | 民法145条 |
| 請求されると進行が止まる | 管理組合が訴え・支払督促・調停を起こすと、その間は時効が完成しない | 民法147条 |
| 時効が完成する前に払う・認める | 一部を払ったり、払うと認めたり(承認)すると、その時から時効が新たに進み始める | 民法152条1項 |
| 時効が完成した後に払う・認める | 時効が完成したことを知らずに一部を払ったり、払うと認めたりしても、その後に時効を主張できなくなることがある | 最高裁昭和41年4月20日大法廷判決 |
3つ目と4つ目が見落とされがちです。「少しでも払って誠意を見せよう」と一部を払うと、時効の数え直しになったり、時効を主張できなくなったりすることがあります。完成前と完成後では理由が違い、完成後の扱いは条文ではなく判例によるものです。最高裁昭和41年4月20日大法廷判決は、債務者が消滅時効の完成後に債務を承認した場合には、時効完成の事実を知らなかったときでも、その後その時効を援用することは許されないとしています(最高裁判所大法廷 昭和41年4月20日判決 昭和37年(オ)第1316号)。時効を主張するつもりがあるなら、支払いや「払います」という返事の前に、弁護士に相談してください。
また、時効は各月の管理費ごとに、支払期限から別々に数えます。古い月の分が時効にかかっても、新しい月の分はまだ時効にかかっていないことがあり、持ち続ける限り、新しい滞納は毎月積み上がります。
時効の主張は、管理組合との交渉や訴訟になることがあります。滞納が長期にわたる場合は、自分で判断せず、先に弁護士か司法書士へ相談してください。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
滞納額を確かめるとき、何を見るか
相続した直後は、滞納がいくらあるのか分からないことがほとんどです。管理組合か管理会社に内訳を書面で出してもらい、次の項目に分けて確かめます。
| 見る項目 | 確かめること |
|---|---|
| 管理費・修繕積立金 | 滞納の月数と、それぞれの金額 |
| 遅延損害金 | 管理規約に利率や定めがあるか。ある場合は元本とは別に積み上がる |
| 使用料などの請求 | 駐車場や付帯設備の使用料が管理費と一緒に請求されているか。物件ごとに異なる |
| 請求の経過 | 督促状、支払督促、訴訟の有無。時効の判断に関わる |
| 特別な徴収 | 大規模修繕などで一時金の決議が出ていないか |
請求書が亡くなった方の住所に届いたままだと、いつから滞納が始まったのかを把握しにくくなります。内訳が出れば、払う・放棄する・精算して手放す、のどれを選ぶにも数字で比べられます。
持ち続ける間は、管理費と修繕積立金が毎月、固定資産税が毎年かかります。使わないリゾートマンションでは、この費用の負担を止めたいというご相談が多くあります。滞納の精算と、手放した後に止まる費用を並べて考えると、判断しやすくなります。
滞納額が分かったら、ほかの財産と並べて比べる
滞納の内訳が出たら、相続放棄と、相続して精算してから手放す道のどちらを考えるかを、滞納額とほかの財産を並べて比べます。相続放棄は、リゾートマンションだけを選べません。民法939条により、放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされ、預貯金などのほかの財産も受け取れなくなります。
比べるときは、次の3つを書き出します。
| 書き出すもの | 中身 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 受け取れる財産 | 預貯金、ほかの不動産など、リゾートマンション以外のプラスの財産 | 通帳、固定資産税の納税通知書など |
| リゾートマンションで出ていくお金 | 滞納額(管理費・修繕積立金・遅延損害金)、手放すまでに毎月かかる管理費・修繕積立金、毎年の固定資産税、手放すときの精算 | 管理会社の内訳書面、管理規約 |
| ほかの債務 | 借入金や未払いの税金など、リゾートマンション以外のマイナスの財産 | 郵便物、金融機関への照会 |
受け取れる財産のほうが、出ていくお金とほかの債務を合わせた額より大きいなら、相続して精算してから手放す道を比べる意味があります。反対に、滞納額とほかの債務のほうが大きく、受け取りたい財産も少ないなら、相続放棄を含めて弁護士に相談する場面です。
相続放棄の期限は、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月です(民法915条1項)。数字をそろえるのに時間がかかる場合は、家庭裁判所に請求して伸ばせる場合があります(同項ただし書)。
放棄を考えているなら、滞納分を相続財産から払う前に弁護士へ確認してください。相続財産を処分すると単純承認したものとみなされることがあります(民法921条1号)。放棄で管理費がどこまで止まるか、放棄できなくなる行為、放棄した後に残る責任は、リゾートマンションの相続放棄で条文ごとに整理しています。放棄した後の管理の責任は相続放棄しても管理義務は残る?にもまとめました。
精算して手放すときの順番
ほかの財産を受け取りたい場合や、放棄ではなく手放したい場合は、次の順で進めます。
- 管理組合か管理会社に、滞納額の内訳を書面で出してもらう
- 相続登記をして、名義を相続人に移す
- 管理会社から重要事項調査報告書(管理費・修繕積立金・滞納・修繕の予定をまとめた開示書面)を取る
- 滞納額と、手放した後に止まる年間の費用を並べ、手放す道を選ぶ
内訳では、管理費・修繕積立金・その他の請求の区分と、規約に遅延損害金などの定めがあるかを確かめます。請求額が妥当かどうかの判断は、弁護士にご相談ください。相続登記には期限があります。数え方は相続登記の義務化をご覧ください。

滞納のあるリゾートマンションを、そのまま手放すという選択
滞納があるリゾートマンションは、仲介では買い手が負担を引き継ぐことになるため、付きにくくなります。そこで、滞納の精算や片付けを先に済ませなくても相談できる道があります。
当社の訳あり不動産の買取相談では、リゾートマンションについても、管理費の滞納額と管理規約を確認したうえで、引き受けられるかを個別に判断します。建物の状態と築年数も確認し、調査は当社で行います。

現況のまま、片付けや解体は不要です。相続登記が済んでいない場合も、当社で手続きを進められます。遠方にお住まいの方でも、現地にお越しいただかずに契約から決済まで進められます。お返事は翌営業日までにいたします。
他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。
ただし、条件によっては成立しません。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。
まとめ:滞納を相続したときの確認
- 滞納は相続人に移る(民法896条)。相続放棄をすれば引き継がない(民法939条)
- 時効は5年だが、自動では消えない。完成前の一部の支払いで数え直しになり(民法152条)、完成後の支払いでも主張できなくなることがある(判例)
- 遺産分割までに出る管理費は相続人どうしの共有として考え、分割後は取得した人が負う
- 放棄は全財産が対象。滞納額とほかの財産を並べて比べる
- 売る場合、滞納は買主にも請求できるため、決済で精算するのが通常
- 先に、滞納額の内訳と開示書面を取る
本稿は2026年10月16日時点の法令にもとづきます。管理規約や請求額は物件ごとに違います。法律に関わる点は弁護士へ、登記は司法書士へ、税金は税理士へご確認ください。
出典:
- 民法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 建物の区分所有等に関する法律(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
- 最高裁判所第二小法廷 平成16年4月23日判決 平成14年(受)第248号(裁判所 裁判例検索)https://www.courts.go.jp/hanrei/52360/detail2/index.html
- 最高裁判所大法廷 昭和41年4月20日判決 昭和37年(オ)第1316号(裁判所 裁判例検索)https://www.courts.go.jp/hanrei/57740/detail2/index.html
- 全日本不動産協会「管理費の消滅時効」https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%B2%BB%E3%81%AE%E6%B6%88%E6%BB%85%E6%99%82%E5%8A%B9/
よくある質問
親が管理費を滞納したまま亡くなりました。相続人が払う必要がありますか。
相続を承認した場合は、払う義務を引き継ぎます。民法896条は、相続人が被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めており、滞納した管理費の支払い義務も含まれます。相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったものとみなされるため、この義務も引き継ぎません。
滞納した管理費は、時効で消えますか。
最高裁平成16年4月23日判決は、管理費などの債権の消滅時効を5年としました。ただし時効は自動では成立せず、払う側が主張(援用)する必要があります。管理組合が訴えなどで請求すると、その間は時効が完成しません(民法147条)。時効の完成前に払う側が一部でも支払う・支払うと認めると、その時から時効が新たに進み始めます(民法152条)。時効の完成後に支払ったり認めたりした場合も、判例上、その後に時効を主張できなくなることがあります。個別の判断は弁護士にご確認ください。
相続人が複数います。滞納は誰がいくら払うのですか。
民法899条は、各共同相続人が相続分に応じて被相続人の権利義務を承継すると定めています。金銭の債務は、原則として相続分に応じて各相続人に分かれて承継されると考えられています。亡くなった後に出る管理費は、遺産分割が終わるまでは相続人どうしの共有として考え(民法898条1項)、分割後はその部屋を取得した人が負います。遺産分割の話し合いで負担者を決めても、管理組合に対して効力があるかは別の問題です。弁護士か司法書士にご相談ください。
滞納があるリゾートマンションは、売れますか。
売ることはできますが、滞納は残ります。区分所有法8条は、管理費などの債権を、区分所有権を引き継いだ買主にも請求できると定めているため、決済のときに売主側で精算するのが通常です。滞納額が大きいと、仲介では買い手が付きにくくなります。
滞納額は、どこで確かめられますか。
管理組合か管理会社に、滞納額の内訳を書面で出してもらいます。管理費、修繕積立金、遅延損害金、請求の経過に分けてもらうと、あとで時効や精算を考えるときに使えます。請求書が亡くなった方の住所に届いていることもあるため、まず管理会社に連絡して、相続人であることを伝えてください。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
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ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

