空き家を解体すると固定資産税は上がる?減免する条例

高台の空き地から見下ろす市街地

空き家を解体すると固定資産税が上がるのは事実ですが、その増えた分を減免する条例を新しく作る市町村が令和8年に入って出てきました。ただし減免も解体費の補助金も、壊す前に役所へ行かないと受けられない仕組みになっています。順番を間違えると、使えたはずの制度が消えます。

「更地にすると税金が跳ね上がると聞いて、壊すに壊せない」というご相談は珍しくありません。この記事では、税が上がる理由を仕組みから説明したうえで、千葉市と小松市が公表している減免制度の中身を一次情報から整理し、最後に解体費そのものをどうするかまで書きます。

目次

「壊すと上がる」は、住宅用地特例が外れるという意味

住宅が建っている土地には、住宅用地特例という軽減があります。地方税法349条の3の2にもとづくもので、200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1、200㎡を超える部分は3分の1になります。

この軽減は「住宅が建っていること」が条件です。建物を取り壊すと、翌年1月1日(賦課期日)の時点で住宅が無いことになり、軽減が外れて土地の固定資産税が上がります。土地の評価額そのものが上がるのではなく、軽減の対象から外れる、という仕組みです。

「更地にすると固定資産税が6倍になる」という言い方をよく見かけますが、この記事では使いません。後で紹介する千葉市・小松市のどちらのページにも、そうした倍率は書かれていないためです。両市が書いているのは「住宅用地特例の解除等による増加相当額」という表現までです。

実際の増え方は、土地の面積・評価額・負担調整の状況によって変わります。ご自身の土地がいくらになるかは、納税通知書に付いてくる課税明細書か、市町村の税務担当課で確認するのが確実です。

「役所に言われて外れる」場合との違い

当社のこれまでの記事では、管理不全空家等・特定空家等として勧告を受けると住宅用地特例が外れる話を書いてきました(市街化調整区域の空き家に固定資産税だけ払っている方へ)。2023年12月13日施行の改正空家法で、倒壊のおそれがある特定空家等の手前でも指導・勧告の対象になった、という話です。

ただこれは「放置していると、役所の判断で外れる」ケースです。所有者の方が実際に気にしているのは、むしろ逆の「自分の意思で壊したら、翌年の税金が上がるのではないか」のほうではないでしょうか。ここから先はその話です。

増えた分を減免する条例が、令和8年に新しくできている

この負担を自治体の側で減免する制度が、令和8年に入って現れました。ここでは一次情報が確認できる2つの市を例に挙げます。地域の話としてではなく、こういう形の制度が出てきているという実例として読んでください。

千葉市小松市
制度の形条例(令和8年8月1日施行)減免制度(令和8年4月1日開始・期間限定)
減免される期間1年度分最大3か年度
減免額住宅用地特例の解除又は適用に変更が生じた土地の固定資産税等の増加相当額除却後の土地の固定資産税と、住宅用地特例の適用があるものとみなして算出した固定資産税との差額に相当する額
対象の空き家1年以上空家となっている住宅住宅で、老朽危険度の合計75点以上かつ構造の腐朽又は破損の程度が25点以上
対象となる除却の期間令和8年8月1日〜令和13年1月1日令和8年4月1日〜令和12年12月31日
申請の時期受付開始は令和8年8月3日。除却前の申請も可減免を受けようとする年度の前年度の1月31日まで

千葉市「空家を除却した土地に係る固定資産税等の減免制度」(千葉市)/小松市「老朽危険空家解体後における固定資産税の減免制度」(小松市)。いずれも2026年9月時点の掲載内容です。

千葉市は申請先が都市局都市部都市安全課で、窓口持参・郵送・電子メールのいずれでも受け付けています。小松市は老朽危険度を建築住宅課の職員が現地確認により判定する仕組みです。どちらも税務課だけで完結する話ではない、という点は覚えておいてください。

解体後の固定資産税の減免は1年度分から最大3か年度まで
減免されるのは増えた分を数年だけ。恒久的な措置ではありません

減免は恒久ではありません。千葉市は1年度分、小松市は最大3か年度です。「壊しても税が上がらなくなる」のではなく、「上がる分を数年ぶん先送りできる市がある」と理解しておくのが実態に近い読み方です。

対象外の条件は、思ったより細かい

千葉市の条例は、次に当たる場合を対象外としています。ページに列挙されているとおりに挙げます。

  • 土地所有者が法人、または法人を含む共有である場合
  • 除却後の土地を営利目的で使用している場合
  • 除却時と翌年の賦課期日で納税義務者が異なる場合(相続による場合を除く)
  • 除却した空家が勧告を受けた空家だった場合
  • 長期優良住宅だった場合
  • 条例の施行日より前に除却した場合
  • その他、市長が適当でないと認めた場合

法人所有が外れている点と、施行日前の除却が外れている点は、見落とされやすいところです。なお千葉市は、減免を申請したあとに翌年の賦課期日より前に土地を売却するなどして対象外になった場合、「取下届」の提出を求めています。申請して終わりではありません。

小松市側も、市税の滞納がある場合や営利目的で土地を使用している場合などは対象外とされています。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

いちばん大事なのは「壊す前に役所に行く」の一点

ここがこの記事の芯です。減免も補助金も、手続きの順番を間違えると受けられません。

小松市のページには、こう書かれています。

認定申請により老朽危険空家の確認を受けずに除却した場合は、減免を受けることができません

つまり、先に壊してしまった時点で終わりです。千葉市も同じ構図で、条例の施行日より前に除却したものは対象になりません。

そして同じことが、解体費の補助金でも起きています。松本市は令和8年度の老朽危険空家等除却費補助について「交付決定の前に解体工事に着手してしまうと補助の対象になりません」としており、同趣旨の注意は札幌市・北九州市・熊本市・丹波市の案内でも確認できます。解体業者に先に頼んだ時点で、補助金が消えるということです。

なお解体補助金は、着手の順番だけでなく「出る条件」そのものが自治体ごとに大きく違います。建物の危険度の点数、所有者全員の所得、抵当権の有無、市場で売れるかどうかの判定まで、市によって見ている点が別物です。9つの市の要綱を読み比べた結果は空き家の解体補助金の条件にまとめました。

解体を決める前に市町村に確認する4つの順番
補助金も減免も、契約より先に役所。順番を逆にすると制度が使えなくなります

補助金と減免という別々の制度で、まったく同じ注意が書かれている。これは偶然ではなく、どちらも「行政が事前に現地や要件を確認してから支出・減免を決める」建て付けだからです。事後の申請では確認のしようがありません。

「解体の見積もりを取る」「業者と契約する」は、役所に行ったあとにしてください。見積もりを取るだけなら問題ない自治体が多い一方、契約の締結までを「着手」に含める要綱もあります。どこからが着手にあたるかは、その市町村の担当課に直接聞くのがいちばん確実です。

自分の市町村に制度があるかは、聞くしかない

ここまで2つの市を挙げましたが、制度の有無も名称も条件も、市町村ごとにばらばらです。「空家を除却した土地に係る固定資産税等の減免」「老朽危険空家解体後における固定資産税の減免」と、呼び方からして揃っていません。検索しても出てこないことがあります。

そこで、電話で確認できる形にしておきます。

  • 空き家を解体したあとの固定資産税を減免する制度はありますか(担当は都市計画・建築・空き家対策の部署であることが多い)
  • 解体費の補助金はありますか。今年度の受付は残っていますか
  • 申請は解体の前ですか、あとですか。交付決定の前に契約すると対象外になりますか
  • 建物の状態を見てもらう調査は、いつまでに申し込む必要がありますか
  • 相続の名義が前の所有者のままでも申請できますか

最後の項目は実務上よく詰まります。名義が亡くなった方のままだと、申請者が所有者本人かどうかの確認で止まることがあるためです(関連して公費解体と相続の壁もご覧ください。災害時の公費解体と平時の除却補助金は別の制度ですが、相続が壁になる点は共通しています)。

受付時期の問題も無視できません。予算の上限に達して年度の途中で受付を終える自治体があり、松本市の令和8年度分は6月の時点で「申請額が予算額に達したため、受付を終了しました」と告知されていました。年度が始まって3か月です。地域によって運用が大きく違う実情は、秋田の空き家が解体できない理由と、費用をかけない出口でも同じ市内・同じ県内の差として書いています。

減免があっても、解体費は先に出ていく

ここで現実的な話をします。当社にいただくご相談で最も多い止まり方は、税額ではなく解体費が用意できないことです。「0円でもいいので手放したい」「解体費が出せないので動けない」というお声を、地域を問わずいただきます。

そのうえで、制度の限界を正直に書いておきます。

  • 減免されるのは「税の増えた分」であって、解体費そのものではありません。千葉市は1年度分、小松市は最大3か年度です
  • 補助金の多くは工事が終わってからの精算です。上限50万円の補助が使えても、200万円の工事なら差額は先に自分で用意することになります
  • 補助率も自治体差が大きいです。姫路市のように、自治会がまとめて取り組む型は2分の1・上限100万円、個人での申請は3分の1・上限50万円と、同じ市の中で倍近く違う例もあります

「補助金があるから解体できる」とは限らない、というのが実際のところです。解体を前提に考え続けると、費用の壁の前で何年も止まってしまいます。

壊さずに手放す、という選択肢

建物を残したまま手放せるなら、そもそも解体費も、翌年の税額の心配も発生しません。

当社は訳あり不動産の買取を行っている会社です。再建築不可であることや市街化調整区域であることだけを理由に、査定や取扱いの対象外とはしていません。建物の状態と築年数を確認したうえで、建築基準法43条2項2号の可否や、都市計画法34条の許可・既存宅地・分家住宅の属人性といった点を当社で調べます。売主の方に役所へ行って調べていただく必要はありません。

現況のままで結構です。片付け・解体・測量をしてから、というお話にはなりません。残置物が入ったまま、草が伸びたままの状態でご相談いただけます。

ただし、どんな場合でも成立するわけではありません。ご希望額との開きが大きいとき、費用のご負担にご同意いただけないとき、相続人の間で合意が整っていないときなどは、お引き受けできない場合があります。この点は正直にお伝えしています。

迷ったときの順番

最後に、この記事で書いたことを順番に並べ直します。

  1. 壊すかどうかを決める前に、市町村の空き家担当課に電話し、解体費の補助金と除却後の固定資産税の減免の両方について有無を聞く
  2. 制度があるなら、申請のタイミング(除却前の認定申請が要るか、交付決定前の契約が対象外か)を必ず確認する
  3. そのうえで解体費の見積もりを取り、自分で負担できる金額かどうかを判断する
  4. 負担が難しい、あるいは壊す意味が見いだせないなら、建物を残したまま手放す道も並行して検討する

税額の見込みや相続税・譲渡所得の扱いについては税理士へ、名義や相続登記については司法書士へご確認ください。制度の適用可否を最終的に判断するのは、あくまでその市町村です。

「うちの場合はどうなのか」が分からない段階でも構いません。建物の状態と所在の市町村が分かれば、調べられるところから当社で確認します。

よくある質問

空き家を自分で解体すると、固定資産税は上がりますか。

上がる可能性が高いです。住宅が建っている土地は住宅用地特例で固定資産税の課税標準が軽減されますが(200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1)、建物を取り壊すと翌年の賦課期日からこの軽減が外れます。ただし何倍になるかは土地ごとに違うので、実際の額は納税通知書に付いてくる課税明細書か、市町村の税務担当課でご確認ください。

解体しても固定資産税が上がらない市町村はありますか。

増えた分を一定期間だけ減免する制度を設けた市町村が出てきています。千葉市は令和8年8月1日施行の条例で1年度分、小松市は令和8年4月1日から最大3か年度の減免を始めました。いずれも恒久的に税が上がらなくなるわけではなく、増えた分を数年ぶん先送りできるという内容です。制度の有無も条件も市町村ごとに違います。

減免を受けるには、いつ申請すればよいですか。

壊す前に確認してください。小松市は除却の前に老朽危険空家の認定を受けている必要があり、ページには「認定申請により老朽危険空家の確認を受けずに除却した場合は、減免を受けることができません」と明記されています。千葉市は条例の施行日(令和8年8月1日)より前に除却したものが対象外です。解体してから相談しても間に合わないことがあります。

解体費の補助金も、先に工事を頼むと使えなくなりますか。

対象外になる自治体があります。松本市は「交付決定の前に解体工事に着手してしまうと補助の対象になりません」としており、同じ扱いは札幌市・北九州市・熊本市・丹波市の案内でも確認できます。解体業者と契約する前に、市町村の担当課へ補助金の有無と申請の順番を確認してください。

解体費が用意できません。壊さずに手放す方法はありますか。

建物が建ったままの状態で買い取る会社に相談する方法があります。当社は再建築不可や市街化調整区域であることだけを理由に取扱いの対象外とはせず、建物の状態と築年数を確認したうえで判断しています。片付け・解体・測量をしていただく必要はありません。ただし希望額との開きや相続人間の合意が整っていない場合など、条件によっては成立しないことがあります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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