共有名義の山林(共有林)を手放したい?持分放棄と、親族と共有のまま残った山の出口

木に覆われた敷地

祖父の代の登記が動かないまま、いとこ同士で共有になっている山を、そろそろ手放したい。共有名義の山林を手放したいとき、道は4つあります。

自分の持分だけを手放す、持分を放棄して他の共有者に渡す、共有者全員で山ごと手放す、そして連絡が取れない共有者の持分を裁判所の手続きで取得してから手放す、です。

当社に寄せられる相談でも、山林・原野・別荘地にかかわるものは多く、農地が付いた土地の相談も少なくありません。

結論を言うと、共有の山林は「全員で手放す」がいちばん早く、「自分の持分だけ」はいちばん遠い道です。その理由から説明します。

目次

山林が共有になる典型——祖父の代から登記が動いていない

共有の山林は、誰かが意図して共有にしたものより、相続登記をしないまま何代か経った結果として生まれるものが大半です。

祖父名義のまま父の代で相続登記をしなければ、父の兄弟姉妹全員が法定相続分で共有している状態になります。父も亡くなってさらに登記をしなければ、自分と兄弟、いとこ、叔父叔母が共有者になり、人数が2桁になることもあります。

共有者の一人が亡くなって相続人が分からなければ、戸籍をたどらないと誰が持分を持っているか特定できません。転居した共有者がいれば、登記簿の住所が古く、手紙も届きません。

令和6年4月からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。詳しくは相続登記の義務化と期限を参照してください。

山林は固定資産税が免税点の下で通知が来ないことも多く、誰も自分が共有者だと知らないまま年月が過ぎる構造があります。

古い山では、集落の共有として登記された入会林野が、いまも記名共有地の形で残っていることがあります。名義人が何人も並び、持分が均等なら、入会権が付いた山かどうかを最初に見てください。

最初にすることは「山林の登記事項証明書を取り、名義人が誰か・生きているかを見る」ことです。名義人が亡くなっていれば、その相続人全員が共有者です。ここを飛ばして「兄弟で話がついた」と進めても、登記の段階で止まります。

自分の持分だけ手放せるか

各共有者は、自分の持分を単独で譲渡できます。他の共有者の同意は要りません。ただし、山林の持分にはほとんど買い手が付きません。理由は民法にあります。

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

——民法 第251条第1項(e-Gov法令検索)

伐採・造成のような「変更」には共有者全員の同意が要り、管理に関する事項も持分の価格の過半数で決めます(252条1項)。山全体を売ることは変更ではなく処分にあたり、各共有者が手放せるのは自分の持分だけなので、これも共有者全員がそろわないとできません。

持分だけを買っても、山を伐ることも造成することもできないので、持分の買い手は「残りの共有者と交渉して全部を集める」つもりの相手に限られます。宅地の共有持分と違って、山林では成立しにくい道です。

民法252条4項は、共有者が持分の過半数で設定できる賃借権の期間を定めており、樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃借権は10年までとされています。全員の合意がなくても、過半数で林業事業体に貸す道はあります。とはいえ「手放す」ことにはなりません。

共有持分そのものの考え方は共有持分の売却、持分の値付けは共有持分の買取価格にまとめています。山林の場合は、これらより一段厳しいと考えてください。

共有の山林で、自分の持分の行き先に困っているときは、所在地と登記の状況をお知らせください。持分や山林を現況のまま引き受けられるかは、個別にお答えします。

他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

共有林の持分放棄|他の共有者への帰属と、登記・税の壁

「売れないなら放棄したい」という共有林の相談も多くあります。条文は明快です。

第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

——民法 第255条(e-Gov法令検索)

放棄は一方的な意思表示でできますが、実務では2つの壁があります。

1つ目は登記です。登記は他の共有者と共同で申請するため(不動産登記法60条)、相手が協力しなければ名義は自分のまま残ります。放棄された側は、望まない持分を押し付けられる形になり、親族関係が壊れやすくなります。

2つ目は税金で、扱いは国税庁の通達に明記されています。

9-12 共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものとして取り扱うものとする。

——相続税法基本通達 9-12《共有持分の放棄》(国税庁)

無償で手放したつもりでも、受け取った共有者は贈与を受けた扱いになります。山林の持分は評価額が小さいことが多く、贈与税の基礎控除の範囲に収まる場合もありますが、評価額や同じ年の他の贈与によって変わります。

つまり、持分放棄は「相手が受け取ってくれる」ときにだけ働く道です。

相手が受け取るなら、放棄ではなく贈与や売買として整理したほうが、登記も税務も見通しが立ちます。土地全体の所有権放棄については土地の所有権は放棄できるかの考え方と同じで、単独所有の土地を放棄する手続きはありません。

共有名義の山林、4つの道と「誰の協力が要るか」
協力が要る相手が少ない道ほど、実際には遠い

入会権の山と、農地が混ざった共有地のとき

共有の山のなかには、民法の共有の考え方だけでは進まないものがあります。

一つは、集落や親族の入会権が付いた山です。入会権は、地域の人々が山や原野を共同で使ってきた慣習上の権利です。

共有の性質を有する入会権について、民法263条は「各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する」と定めています(共有の性質を有しない入会権は294条)。

持分の譲渡や放棄、分割を考える前に、その山の慣習や集落の取り決めを知っておく必要があります。登記の名義人が何人もいて持分が均等な「記名共有地」は、こうした山で見られる形です。

自分の判断だけで持分を動かすと集落の側ともめるおそれがあるため、まず地元の区長や管理者に、山の使い方と取り決めの有無を尋ねてください。

もう一つは、登記の地目が田や畑の土地が含まれているときです。山林と一緒に相続した土地に農地が混ざっていることがあります。農地について所有権を移転するときは、原則として農業委員会の許可が要ります(農地法3条1項)。

持分の売却や贈与も、この対象に当たり得るため、手放す方法を決める前に市町村の農業委員会に問い合わせてください。また、相続で農地の権利を取得した人は、遅滞なく農業委員会へ届け出る義務があります(同法3条の3)。

農地の手放し方と手続きは、農地の売却方法と農地の相続の届出にまとめています。

持分の放棄が農地法の許可の対象になるかどうかは、この記事では断定できません。農地が含まれる場合は、放棄や譲渡の前に農業委員会と司法書士に相談してください。

出典:民法 第263条・第294条(e-Gov法令検索)、農地法 第3条・第3条の3(e-Gov法令検索)

まだ相続していない持分なら、相続放棄という道もある

親が共有者の一人で、その親が亡くなって間もない場合は、持分を引き継ぐ前に相続放棄をする道があります。共有者になってから手放すより、手間は大きく減ります。

期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内です。申述先は亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、裁判所ごとに定められた郵便切手です(相続の放棄の申述(裁判所))。

相続放棄は、権利も義務も一切受け継がない手続きです。山林の持分だけを放棄し、自宅や預貯金は相続する、という選び方はできません。放棄すると次の順位の親族に相続が回ることがあるため、誰に回るかを親族と共有しておくほうがもめません。

令和5年4月施行の民法改正で、放棄した人が保存の義務を負うのは、放棄の時に現に占有している相続財産に限ることが明記されました(民法940条1項。法務省の改正解説資料)。遠方の山林を管理していなかった場合の負担は、改正前より明確になっています。

すでに相続を承認した、あるいは3か月を過ぎた場合は、ここから先の道で考えることになります。

共有者と連絡が取れないとき——所在等不明共有者の制度

共有の山林でいちばん多い詰まり方が、「一人だけ連絡が取れない」です。令和5年4月施行の民法改正で、この状態に使える制度が2つできました。

制度条文できること主な条件
所在等不明共有者の持分の取得民法262条の2裁判所の裁判で、連絡が取れない共有者の持分を自分が取得する持分の時価相当額を供託。遺産分割前の相続財産に属する持分は、相続開始から10年を経過していること
所在等不明共有者の持分の譲渡民法262条の3他の共有者全員が第三者に持分を譲渡することを条件に、不明者の持分も一緒に譲渡する権限を得る同上。譲渡後、不明者は時価相当額の按分額を請求できる

不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(中略)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。

——民法 第262条の2 第1項(e-Gov法令検索)

山林で注意が要るのは「相続開始から10年」の条件です。祖父名義のまま何代も経った山なら10年は過ぎていることが多い一方、最近亡くなった共有者の持分が遺産分割前のまま相続人が不明という場合は、遺産分割の余地を残すため使えません。

制度の手続きと限界は所在が分からない共有者の持分取得に詳しく書いています。共有者の管理の決定だけなら、所在不明の共有者を除いた過半数で決められる裁判(252条2項)や、変更を認める裁判(251条2項)もあり、山を貸す・間伐するといった当面の管理には使えます。

「連絡が取れない」と「返事をしない」は別です。

住所は分かっていて返事が来ないだけなら所在等不明には当たらず、催告の手続き(252条2項2号)で管理事項を決めることはできますが、持分を取得する裁判の対象にはなりません。この場合は共有物分割の請求(258条)が道になります。共有物分割請求を参照してください。

共有物分割の方法は3つあります。山を分筆して各自の単独名義にする現物分割、一人が山を取得して他の共有者に代償金を払う賠償分割、競売で売って代金を分ける競売分割です。

令和5年4月施行の改正で、裁判による分割でも賠償分割ができることが明文化され、競売分割は現物分割・賠償分割のいずれもできない場合などに限ることが整理されました(民法258条2項・3項。法務省の改正解説資料)。

全員の協議で分筆する場合も、境界の確定と測量が前提になるため、境界が分からない山では費用と期間がかさみます。

全員で手放す場合の段取り

4つの道のうち、いちばん現実的なのは共有者全員で山ごと手放すことです。共有者が多くても、段取りを固定すれば進みます。

順番することつまずきやすい点
1登記事項証明書で名義人を見る亡くなった名義人がいれば、その相続人が共有者になる
2戸籍をたどって共有者を全員確定する何代か経っていると2桁になることがある。司法書士に依頼するのが早い
3代表者を決め、全員に「手放す」方針を書面で確かめる一人でも反対すれば全員での譲渡は止まる
4出口を選ぶ(国庫帰属/譲渡/買取)国庫帰属は全員で共同申請。審査手数料は1筆14,000円で、却下・不承認でも返還されない
5本人確認書類・印鑑証明・(相続がある場合)遺産分割協議書を集める遠方・海外の共有者がいると日程が伸びる

共有者がそろっても、山林の場所がわからないままでは出口を選べません。林地台帳や名寄帳、航空写真で位置を特定する作業は、2と並行して進めてください。

相続土地国庫帰属制度を使うなら、条文どおり共有者全員での申請が要ります。

2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。

——相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第2条第2項(e-Gov法令検索)

全員がそろっても、山林は境界不明・倒木・森林整備の不足などで通りにくい土地です(相続土地国庫帰属制度の解説)。

承認されると負担金がかかります。負担金は10年分の標準的な管理費用を考慮して算定され、森林は面積に応じて変わります。納付期限は負担金の通知が届いた日の翌日から30日以内で、過ぎると承認が失効します。

共有の場合は、代表者1人が納入告知書を受け取って納付します。同じ種目の隣接する複数筆なら、1つの土地とみなして負担金を算定する特例を申し出られます(森林は面積を合算して算定)。

出典:相続土地国庫帰属制度の負担金(法務省)、相続土地国庫帰属制度の概要(法務省)

共有者の間で、手数料と負担金を持分割合で分けるのか、代表者が立て替えるのかを、申請前に書面で決めておいてください。

共有者全員で山林を手放すまでの段取り
止まるのは4と5。ここを先に見通してから動く

表の5まで進む前に、費用の分担だけは決めておくと止まりにくくなります。測量・手数料・負担金を、誰がどの割合で持つかです。

当社は共有名義の山林を現況のまま取り扱っています。共有者が多い、遠方や海外に共有者がいる、境界が分からない、倒木が残っているという山についても、調査は当社で行い、売主様に測量や片付けをお願いすることはありません。

相続人間の合意が成立していない場合や、場所・状態、権利関係によっては成立しないこともあり、個別の判断になります。

宅地と山林を一緒に相続している場合は、山林だけ残さないよう宅地と山林をまとめて手放すも参照してください。山林の売り方全体は山林・原野の売却方法にまとめています。

振り分けの順番

自分の山がどの道に当てはまるかは、次の順で当たると迷いません。

  1. 登記事項証明書を取り、名義人と持分を見る。亡くなった名義人がいれば相続人を特定する。
  2. 共有者全員と連絡が取れるか。取れない人がいれば、相続開始から10年を経過しているかを照らして、所在等不明共有者の制度を検討する。
  3. 全員が「手放す」に同意するか。同意すれば全員で出口を選び、反対者がいれば共有物分割の請求を検討する。
  4. 出口を比べる。国庫帰属は全員で申請し、山林は通りにくい。譲渡・買取は全員の署名が要る。持分だけでは買い手が付きにくい。
  5. 持分放棄は最後。相手が受け取る意思を持つときだけ働く。

相続人の確定と登記は司法書士へ、持分放棄や譲渡にともなう税金は税理士へ、所在等不明共有者の裁判は弁護士・司法書士へご確認ください。この記事の条文は執筆時点のe-Gov法令検索によるものです。

よくある質問

いとこと共有の山、自分の分だけ放棄して終わりにできませんか。

民法255条により、放棄した持分は他の共有者に帰属します。ただ、登記を移すには他の共有者と共同で申請する必要があり、相手が協力しなければ名義は自分のまま残ります。

受け取った側は贈与を受けた扱いになるため、話し合いなしに進めるともめやすく、税理士・司法書士に相談すると早いです。

ほかの共有者に黙って、自分の持分だけ売ってもいいんですか。

持分の譲渡は各共有者が単独でできます。ただ、持分だけ買っても伐採や造成には全員の同意が要る(民法251条)ため、山林の持分を買う相手はごく限られます。

共有者の一人がどこにいるか分かりません。それでも山を手放せますか。

令和5年4月施行の民法改正で、所在等不明共有者の持分を裁判所の裁判で取得する制度(民法262条の2)と、その持分を含めて第三者に譲渡する権限を得る制度(262条の3)ができました。

遺産分割前の相続財産に属する持分は、相続開始から10年を経過していないと使えません。時価相当額の供託も要るため、費用と期間を見込んで進めてください。

共有の山でも、相続土地国庫帰属制度は使えるんですか。

共有者全員が共同して申請すれば使えます(法2条2項)。相続以外の原因で持分を取得した共有者がいても、相続で取得した共有者と一緒なら申請できます。一人でも反対する、連絡が取れない共有者がいれば申請できません。

山林は境界不明・倒木・森林整備の不足などで通りにくい傾向もあります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

このような物件のご相談は、山林・別荘地の買取相談のページへ。

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