管理不全空家の通知が来たらどうする|勧告前にできる3つの動き

落ち葉と雑草が残る空き家の玄関先

管理不全空家の通知が届いたら、勧告が出る前に、指摘された内容と選べる3つの動きを確かめてください。指摘された箇所を直して担当課に報告し、改善を確認してもらえば、勧告の理由がなくなります。この記事では、通知の読み方、勧告で何が変わるか、直す・売る・手放すの順に判断する方法を、空家法13条と国土交通省のガイドラインにもとづいて整理します。

売れるか:管理不全空家等の段階でも、売却を禁じる規定は空家法13条にありません。
最初にやること:通知の根拠、指摘された箇所、期限の3つを確かめ、担当課に連絡する。
費用:修繕や解体を先に済ませず、現況のまま相談する道があります(引き受けは物件ごとの判断です)。

目次

管理不全空家の通知が来た、まず確かめる3つのこと

結論から言うと、管理不全空家等の段階に、命令も代執行もありません。まず次の3点を確かめます。

  1. 何の根拠で届いた通知か(空家法13条の指導か、市の条例による注意文書か、実態調査のお尋ねか)
  2. どの建物の、どの部分が指摘されているか
  3. いつまでに、何をするよう求められているか

通知の根拠は、文面に「法第13条第1項」「管理不全空家等」とあるかで見分けられます。ガイドラインでは、法にもとづく指導には、指導の内容とその事由、指導の責任者を示すことになっていて、指導のあとの対応(措置を実施したら遅滞なく責任者に報告すること、改善されなければ勧告の可能性があること、勧告をした場合は住宅用地特例の対象から除外されること)もあらかじめ示すよう努めるとされています(第3章3(1))。こうした記載がなく、現状を尋ねたり連絡を求めたりするだけの文書は、所有者の事情を聞き取るための連絡である可能性があります(ガイドラインは、事情の把握は法13条にもとづく行為として行う必要はなく、任意の聞き取りとしてもよいとしています。第3章1)。どちらか分からないときは、担当課に「法13条の指導にあたるか」を直接確かめてください。

管理不全空家等とは
そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態の空き家です。2023年(令和5年)12月13日に施行された改正空家法で加わりました。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法13条(e-Gov法令検索)、施行日は国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」。住宅用地の特例の仕組みは総務省「宅地等の負担調整措置」、除外の根拠は地方税法(e-Gov法令検索)

国土交通省のガイドラインでは、指導は口頭でも許されるとされています。ただし、改善しなかった場合の措置を明確に示す必要があるときは、書面で行うことが望ましいとされています。電話で言われただけの場合は、指摘箇所と期限を書面かメールで残してもらうよう、担当課に頼んでください。

そのうえで、通知を受けたら担当課に連絡し、対応する意思があることを伝えます。遠方に住んでいる、相続したばかりで状況が分からない、という事情もそのまま伝えて構いません。

電話では、たとえば次のように切り出せます。「通知を受け取りました。遠方に住んでおり、相続したばかりで状況を把握できていません。指摘された箇所と期限を書面かメールでいただけますか」。伝えたい内容は、対応する意思があること、事情、書面の依頼の3つです。

遠方に住んでいて自分では手を入れられない場合は、電話のときに次の2点も聞いてください。

  • 空家等管理活用支援法人など、空き家の管理や修繕、除却の相談を受けられる法人を紹介してもらえるか
  • 草木の伐採や修繕、除却に使える助成制度があるか

ガイドラインは、遠隔地に住んでいて自ら対策を講じられない所有者などには、状況に応じてこうした法人や助成制度を紹介して解決を図ることが考えられる、としています(第3章1)。支援法人を指定しているか、助成制度があるかは市区町村ごとに違うため、担当課で確かめてください。

管理不全空家と特定空家は何が違うのか

通知の重さは、特定空家との違いで測れます。特定空家まで進んだ場合の流れは空き家を放置するとどうなるに任せ、ここでは違いだけを表にします。

項目管理不全空家等特定空家等
措置指導、勧告助言・指導、勧告、命令、代執行
命令違反の過料命令がないので該当しない命令に違反すると50万円以下の過料(30条1項)
勧告で税の特例が外れるか外れる外れる

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)、管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(国土交通省)

ガイドラインは、影響の程度が特定空家等ほど大きくないため、管理不全空家等には命令や代執行が定められていない、と説明しています。なお、ガイドラインは、管理不全空家等への勧告のあとで状態が悪化し特定空家等に該当することになっても、勧告が撤回されていない限り、特定空家等に該当することになったことでその勧告の効力が失われるものではなく、敷地が住宅用地特例の対象から除外された状態が続く、としています(第1章2(2))。

通知の重さは、自治体によっても違うことがあります。ガイドラインは、措置を講じるかどうかを、周辺の建物や通行人に被害が及びうるかといった周辺への悪影響の程度を踏まえ、地域の実情も勘案して市区町村が判断するものとし、判断基準を一律にする必要はないとしています(第2章(2))。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

管理不全空家の通知は、勧告の前ならまだ間に合う

管理不全空家の指導から勧告、特定空家等までの流れを示した図解
指導の段階では税は変わらず、勧告が分かれ目になる

分かれ目は、指導のあとの勧告です。住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が軽くなる住宅用地特例があります。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は6分の1、一般住宅用地(200㎡を超える部分)は3分の1に減額される仕組みです。

ガイドラインによれば、管理不全空家等に勧告をしたときは、その敷地が地方税法349条の3の2などの規定により、住宅用地特例の対象から外れます。つまり、指導を受けた段階では税は変わらず、指導しても改善されずに勧告が出たときに、土地の税負担が重くなるという順番です。

勧告の前提は、指導してもなお改善されないことです。
市町村長が勧告できるのは、指導のあとで「なお状態が改善されず、特定空家等になるおそれが大きい」と認めたときです(法13条2項)。改善されたかどうかを判断するのは、所有者ではなく市区町村です。

ガイドラインは、改善の扱いを次のように定めています。

  • 指導の際、市区町村は「指導に係る措置を実施した場合は、遅滞なく指導の責任者に報告すること」を所有者に示す(第3章3(1))
  • 改善されたかは、指導時に記録した外観と勧告しようとする時点の状態を比べたり、所有者に聞き取ったりして判断する(第3章4(1))
  • 措置の実施が確認されれば、その建物は管理不全空家等ではなくなる。所有者から措置完了の届出書を受け取り、受領した写しを返すなどの方法で、そのことを示すことも考えられる(第3章5)

つまり、直しただけで終わりにせず、担当課に完了を報告し、確認してもらうところまでが勧告を避けるための手順です。報告の方法(届出書の様式があるか、写真の添付が要るか)は市区町村ごとに違うため、担当課に聞いてください。作業前後の写真、業者の領収書、報告した日付と相手の控えは手元に残しておくと、あとで確認を求められたときに示せます。

なお、取り壊す予定の家や、居住に必要な管理を怠っている家は、管理不全空家等かどうかにかかわらず、そもそも特例の対象にならないと、ガイドラインに注記があります。特例が今かかっているかは、税務課または税理士にご確認ください。

管理不全空家は売却できるのか

管理不全空家を売ること自体を禁じる規定は、空家法13条にはありません。ただし、指導された内容が直っていなければ、買主が新しい所有者として改めて指導を受ける可能性があります。この点を踏まえて、通知で指摘されやすい状態と、売る側から見た意味を整理します。

指摘されやすい状態(ガイドラインの例)売るときに見られる点
屋根の変形、外装材の剥落や脱落、構造部材の腐朽や蟻害、雨水浸入の痕跡建物の傷みの程度。解体前提で見られることもある
排水設備の破損、常態的な水たまり、多量の腐敗したごみ、動物の棲みつき片付けと清掃の費用。残置物の量
屋根ふき材や外装材、看板の色褪せ・破損、散乱したごみ見た目の問題。清掃で済むことが多い
開口部の破損(不法侵入のおそれ)窓や戸の補修。現地確認時の安全

出典:管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(国土交通省)別紙1〜4

ガイドラインが挙げる指導の例は、「定期的に雨水浸入の痕跡がないか点検し、必要に応じて防腐処理等を行う」といったものです(第3章)。通知に何を求められているかは、文面で確かめてください。

勧告の前に手放す場合は、まだ勧告が出ていないため、勧告の効力をどう引き継ぐかという問題はありません。売る側が確かめることは、指導された内容と、その時点で直っている部分・直っていない部分を買い手に示せるかです。ここで、前の章で残しておいた写真や担当課への報告の控えが役に立ちます。

なお、勧告が出たあとに売る場合は、建物と土地の両方の所有者が変わるかどうかで勧告の効力の扱いが分かれ、住宅用地特例の適用にも関わります(ガイドライン第3章4(2))。進め方は特定空家に勧告が出た家の売却で詳しく扱っています。ご自身の土地にどう影響するかは、担当課と税務課にご確認ください。

売却では、通知を受けた事実を買主に隠さないことが前提です。どこまで伝える必要があるかは、仲介や買取を頼む会社の宅地建物取引士に確かめてください。相続した家の管理義務は相続放棄しても管理義務は残る?、売れにくい理由は地方の空き家が売れない3つの理由が参考になります。

勧告の前に選べる3つの動き

通知のあとに選ぶ3つの動きと、それぞれが合う人を示した図解
建物の状態と、先に出せる費用で選ぶ

指導の段階で選べる動きは、大きく3つです。どれを選ぶかは、指摘の中身(草木やごみか、建物の傷みか)と、先に出せる費用で決めます。どれを選んでも、勧告の前に担当課へ方針を伝えておくことが共通の一歩です。

動き向く場合勧告の前にやっておくこと
① 直して持ち続ける近くに住んでいる、または定期的に見に行ける直したら担当課に報告し、確認してもらう。ガイドラインは、一時的に改善しても管理が続かなければ再び管理不全になりうるとして、市区町村が定期的に状態を確認することを求めている。点検や草刈りを続ける段取りまで決める
② 指摘箇所だけ直してから売る指摘が草木、ごみ、軽い補修など小さいもの直す範囲を担当課に確かめてから見積りを取る。直した分が売値に乗るとは限らないため、買い手側にも先に相談する
③ 現況のまま手放す遠方で通えない、傷みが大きい、直す費用を先に出せない手放す方向で動いていることを担当課に伝え、指摘内容の書面を買い手に渡せるようにしておく。引き受けるか、金額がどうなるかは物件ごとの判断で、成立しない条件もある

どの動きでも、担当課との連絡は止めないことが共通します。ガイドラインは、指導時の状態を写真などで記録しておくことが望ましいとしています。所有者側も、同じ時点の写真を撮っておくと、改善したことを示せます。草刈りや残置物の撤去、開口部の補修は、見積りを項目ごとに分けて2社以上から取ると、直す範囲を決めやすくなります。残置物の処分費は順番で総額が変わるため、残置物の処分費用も合わせて見てください。

  • 通知の根拠と宛先を確かめる(法13条の指導か、条例の文書か。自分宛てか)
  • 担当課に連絡し、対応する意思、遠方である事情、手放す方向であることを伝える
  • 登記簿で名義を確かめる(相続登記が済んでいないなら、売る・直すの前にここを片付ける)
  • 指摘箇所の写真を撮り、直す費用を見積りにかける
  • 直す・売る・手放すを、費用を先に出せるかどうかで選ぶ
  • 直したら担当課に完了を報告し、写真・領収書・報告の控えを残す

名義が祖父母のままなど、相続登記が済んでいない場合は、売る手続きに進めません。登記の義務化については相続登記の義務化を見たうえで、司法書士にご確認ください。

指導の段階で、そのまま手放すという選択

当社に寄せられる空き家のご相談では、「解体費が出せないから動けない」という状態で止まっている方が少なくありません。「費用をかけずに手放したい」「0円でもいいので手放したい」という声も繰り返し届きます。管理不全空家の通知は、そうして止まっていた方が動き出すきっかけにもなります。

指導の段階なら、まだ勧告は出ていません。直す費用を先に出せない、遠方で通えないという場合でも、片付け・修繕・解体をしないまま、指摘を受けた状態で相談できる道があります。

当社は、建物の状態と名義を確かめたうえで、引き受けられるかを判断します。相続した空き家であれば「相続した空き家の買取相談」として、現況のまま、調査も当社で行う形で進められます。相続登記や抵当権の抹消が必要な場合は、提携の司法書士と当社で手続きを進めます。遠方で現地に来られない方でも、契約から決済まで進められます。

お引き受けの形は2つあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。

ただし、引き受けられるかは物件ごとの判断です。お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。

通知に書かれた期限に間に合うかが心配なときは、通知の写しか、指摘内容と期限が分かるものを添えて相談してください。担当課とやり取りした内容があれば、それも判断の材料になります。ご返事は翌営業日までにお送りします。なお、税務や法律に関わる判断は、税理士・司法書士・弁護士にもご確認ください。

よくある質問

管理不全空家の通知が来たら、すぐ税金が上がりますか。

指導の段階では上がりません。住宅用地の特例が外れるのは、指導してもなお改善されず、市町村長が勧告をしたときです(空家等対策の推進に関する特別措置法13条2項、地方税法349条の3の2)。通知が届いた時点は、まだ手前にいます。

管理不全空家と特定空家は何が違いますか。

管理不全空家等は、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態です(法13条1項)。措置は指導と勧告までで、命令や代執行はありません。特定空家等は、すでに著しく危険・有害などの状態にあると認められる空家等で、助言・指導、勧告、命令、代執行へと進みます(法22条)。

通知が来た空き家を、そのまま売ることはできますか。

空家法13条には、売却を禁じる規定はありません。ただし、指導された内容が残ったままなら、買主が新しい所有者として改めて指導を受ける可能性があります。通知を受けた事実は隠さず伝え、どこまで直してから売るか、現況のまま売るかは、先に市区町村の担当課と、買い取る側に確かめてください。

指導は書面で来るのですか。口頭のこともありますか。

国土交通省のガイドラインでは、指導は口頭でも許されています。ただし、改善しなかった場合の措置を明確に示す必要があるときは、書面で行うことが望ましいとされています。電話だけで済ませず、指摘された箇所と期限を書面かメールで残してもらうと、あとで確認できます。

遠方に住んでいて、何も対応できません。どうすればよいですか。

まず担当課に電話し、遠方であることと、対応する意思があることを伝えてください。あわせて、空家等管理活用支援法人などの相談先や、使える助成制度があるかを聞いてください。国土交通省のガイドラインも、遠隔地で自ら対策できない所有者には、こうした法人や助成制度の紹介が考えられるとしています。そのうえで、草木の伐採など最低限の作業だけを地元の業者に頼むか、手放す方向で動くかを選ぶことになります。現況のまま相談できる引き受け先もあるため(値段が付かず費用負担が生じる場合もあります)、通知が来たことを理由に諦める必要はありません。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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