市街化調整区域の土地を相続したがいらない|手放す4つの方法

木立に囲まれた草の空き地と奥に残る石造りの構造物

市街化調整区域の土地や実家を相続したものの、住む予定も使う予定もない。それでも固定資産税の納税通知書だけは毎年届く。よくあるご相談です。

手放したいと考えたときの方法は、大きく4つあります。ただしどれも「いつでも誰でも使える」わけではありません。使える条件と使えない条件を、先に整理しておきます。

目次

4つの方法と、使える条件

雨上がりの田んぼにかかる虹
使う予定がなくても、税は毎年かかり続ける
方法使える場面注意点期限・費用の目安
相続放棄相続手続きがまだ終わっていない不動産だけを選べない知った時から3か月以内
相続土地国庫帰属制度更地で、権利関係が単純建物があると申請できない手数料1筆14,000円+負担金
自治体への寄付自治体に利用予定がある受け取られないことが多い費用はかからない
売却・買取上記が使えないとき価格の折り合いが必要期限はない

上の3つが使えないケースが多く、結果として4番目に行き着くことが少なくありません。順に見ていきます。

1. 相続放棄

相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人でなかったことになります。

不動産だけを放棄することはできません。預貯金や他の財産もあわせて放棄することになります。「いらない土地だけ手放す」という使い方はできない、という点が最大の注意点です。

また、期限があります。民法915条1項は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認するか放棄するかを決めなければならないと定めています。この期間は、利害関係人などの請求により家庭裁判所で伸長できる場合がありますが、放っておいて延びるものではありません。

すでに遺産の一部を処分している場合は、放棄が認められないこともあります。判断は早いほど選択肢が残ります。

一度した放棄は、撤回できません。民法919条1項は、相続の承認・放棄は3か月の期間内であっても撤回することができないと定めています。放棄したあとに区域の見直しなどで土地の状況が変わっても、所有権が戻ることはありません。

放棄した土地は、その先どうなるか

見落とされやすいのがここです。ご自身が放棄すると、相続権は次の順位の方へ移ります。ご兄弟や甥姪に話が回り、そこで初めて「聞いていない」となることがあります。

さらに、放棄したからといって、その場で管理の手が完全に離れるとは限りません。民法940条1項により、放棄の時点でその不動産を現に占有していた方には、次の相続人か相続財産清算人へ引き渡すまでの間、保存の義務が残ります。「放棄すれば終わり」と考えて手続きだけ進めると、想定と違う結果になることがあります。

この点は相続放棄しても家の管理義務は残る?で整理しています。可否の判断は司法書士・弁護士にもご確認ください。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

2. 相続土地国庫帰属制度

相続した土地の所有権を、国に移す制度です。2023年から始まりました。

ただし、この記事をお読みの多くの方には、そのままでは使えない可能性があります。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律2条3項は、次の土地についてそもそも申請を受け付けない(却下事由)と定めています。

建物の存する土地(1号)
– 担保権や、使用収益を目的とする権利が設定されている土地(2号)
– 通路など、他人による使用が予定される土地を含むもの(3号)
– 土壌汚染されている土地(4号)
境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地(5号)

実家を相続した場合、まず1号に当たります。申請するには建物を解体して更地にする必要があります。

見落とされやすいのが5号です。境界の杭が見当たらない、隣地との位置がはっきりしない、といった土地は、更地にしても受け付けてもらえません。先代から代替わりした土地では、ここで止まることが少なくありません。

さらに、申請が受け付けられても、同法5条1項の不承認事由にあたると承認されません。一定の勾配・高さの崖がある土地、管理や処分を阻害する有体物が地上にある土地、除去しなければならない有体物が地下にある土地、隣接地の所有者と争訟をしなければ使えない土地などが挙げられています。

費用と期間

無償で引き渡せる制度ではありません。承認されるまでの目安は次のとおりです。

項目内容
審査手数料土地1筆あたり14,000円(承認されなくても返還されません)
負担金国有地の種目ごとに、管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定。土地の区分によって20万円だったり地積に応じた額だったりします(次項で整理します)
標準処理期間法務省の案内では8か月。事案により延びることもあります

共有の土地は、共有者全員でそろって申請する必要があります。相続で兄弟姉妹の共有名義になっている場合、一人でも同意が得られなければ申請できません。また、相続で取得した土地であることが登記から確認できないと申請できないため、相続登記が済んでいることが前提になります。

負担金は「20万円」で決まりではない

負担金の額は、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令5条1項が、土地の区分ごとに定めています。よく見かける20万円は、次の①〜③のどれにも当たらない土地(4号)の額です。

土地の区分(施行令5条1項)負担金
市街化区域内(区域区分が定められていない都市計画区域では用途地域内)の宅地地積に応じて算定
② 市街化区域内・農用地区域内・土地改良事業などが施行される区域内にある農地地積に応じて算定
③ 主に森林として利用されている土地(区域を問わない)地積に応じて算定
④ ①〜③以外の土地20万円

①と②は、区域が「市街化区域内」などに限られています。市街化調整区域にある宅地は①に当たらないため、④の20万円になるのが原則です。

一方、畑や田が農用地区域や土地改良事業の区域に入っている場合(②)と、山林(③)は地積に応じた算定になり、20万円を上回ることがあります。

地積に応じた算定は、区分ごとに単価と加算額が決められています。森林であれば、地積が3,000㎡を超え6,000㎡以下なら「地積×12円+26万3,000円」といった形です(算定額の1,000円未満は切り捨て)。

同じ区分の土地が隣り合っているときは、まとめて算定できます。同令6条により、隣接する2筆以上を1筆とみなして負担金を算定するよう申し出ることができます。ただし区分が同じ場合に限られ、調整区域の宅地と森林のように区分が違うものはまとめられません。

解体を先に決めないこと

市街化調整区域では、ここで順番の問題が出ます。解体すると、その後に建物を建て直せなくなる場合があります。更地にしたうえで承認されなければ、建物もなく建て替えもできない土地が手元に残ります。解体を先に決めてしまう前に、建て替えの可否を確認しておく必要があります。

3. 自治体への寄付

「市に寄付すれば済むのでは」と考える方は多いのですが、自治体が受け取るかどうかは自治体の判断です。道路用地にする、公園にするといった行政目的での利用予定がない土地は、受け取られないのが一般的です。

費用はかからないので、窓口に確認してみる価値はあります。ただし、これを前提に計画を立てないほうが安全です。

4. 売却・買取

上の3つが使えない場合、残るのは売却です。市街化調整区域では、次の点を先に確認しておくと話が早くなります。

  • 都市計画法34条の許可が下りる可能性があるか
  • 既存宅地にあたるか
  • 分家住宅などの属人性が付いていないか
  • 建物が残っている場合、その状態と築年数

これらは市区町村の都市計画課で確認できます。詳しくは市街化調整区域の家は売れない?売却できる条件を解説にまとめています。

売り先として当たれるところ

市街化調整区域では買える人が限られるため、当たる先を広く取っておくほうが進みやすくなります。

  • 隣地の所有者。接している土地を持っている方には、建物を建てなくても使い道があることがあります
  • 近隣で農業や事業を営んでいる方。資材置き場や作業スペースとしての需要が出ることがあります
  • 自治体の空き家バンク。国土交通省が全国版のサイトを整備しており、各自治体のバンクの情報を横断して見られます
  • 買取を行う事業者。現況のまま引き受けられるかどうかは、建築の可否の調査次第です

空き家バンクは情報を載せる仕組みであって、買い手が現れることを約束するものではありません。登録できる物件の条件や窓口は自治体ごとに異なります。また、市街化調整区域では、いずれの相手でも建築の可否が最初の関門になります。

農地や山林が含まれるとき

市街化調整区域では、相続した土地に畑や田、山林が混ざっていることがよくあります。この場合、手続きが1つ増えます。

農地は、農地法3条により、所有権を移すときに農業委員会の許可が必要です(一部の例外を除く)。買い手が見つかっても、許可が下りなければ名義を移せません。

この許可の要件は、2023年4月1日に一つ外れました。以前は農地法3条2項5号に、取得後に耕作する農地の面積が都府県で50アール(北海道は2ヘクタール、農業委員会が別段の面積を定めたときはその面積)に達しない場合は許可できない、という定めがありました。農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)により、この号は削除されています。

小さな農地でも、面積だけを理由に買い手が外れることはなくなりました。古い解説には50アールの記述が残っていることがあるため、注意してください。

ただし、買える人が限られる状況そのものは変わっていません。取得後に農地の全てを効率的に利用して耕作すると認められること(同項1号)、必要な農作業に常時従事すると認められること(同項4号)といった要件は残っています。「面積要件が無くなったから誰でも買える」ということではありません。

国庫帰属制度のほうは、農地や森林でも申請そのものは可能です。法務省のQ&Aでは、農地について事前に農業委員会に相談することもできる、とされています。ただし前述の却下事由・不承認事由は同じようにかかります。

農地が残って困っている場合は農地付きの実家は売れない?、山林や原野の場合は山林・原野・別荘地を手放したいもあわせてご覧ください。

どれを選ぶかの順番

迷ったときは、次の順で確認すると整理しやすくなります。

① 相続手続きはまだ終わっていないか終わっていなければ、相続放棄が選択肢に入ります。ただし他の財産もあわせて放棄することになるため、全体を見て判断します。

② 建物は建っているか建っていれば、国庫帰属制度はそのままでは使えません。解体を検討する前に、市街化調整区域では建て替えの可否を先に確認します。

③ 自治体に利用予定はあるか窓口で確認します。費用はかかりません。ただし受け取られないことが多い前提で聞きます。

④ ①〜③が当てはまらない売却・買取を検討します。市街化調整区域では、建築の可否の調査が結論を左右します。

判断を先延ばしにすると起きること

夕日の沈む田園とガードレール沿いの道
先延ばしにした年数だけ、選べる方法は減っていく

固定資産税は、使っていなくても毎年かかります。加えて、建物が残っている場合は年数とともに傷みが進みます。

建物の状態は、売却の可否と価格に直結します。傷みが進むほど選択肢は狭くなります。「そのうち考える」が数年続くと、選べる方法自体が減っていきます。

更地にすると、土地の税額は上がる方向に動く

住宅が建っている土地には、地方税法349条の3の2により、固定資産税の課税標準を軽くする住宅用地の特例があります。200㎡以下の部分は価格の6分の1、それを超える部分は3分の1が課税標準になる、という内容です。

建物を解体すると、この特例の対象から外れ、税額は上がる方向に動きます。国庫帰属制度のために更地にする場合も同じですので、承認の見通しを立てないまま解体するのは避けたほうが無難です。

なお、同条は特定空家等・管理不全空家等として勧告を受けた土地も特例から除いています。建物を残していれば安心、というわけでもありません。詳しくは市街化調整区域の空き家に固定資産税だけ払っている方へをご覧ください。

相続登記は3年以内

相続登記も義務化されています。不動産登記法76条の2第1項は、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならないと定めており、同法164条1項では、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料に処するとされています。

名義が故人のままでは売却も国庫帰属の申請もできません。どの方法を選ぶにしても、いずれ必要になる手続きです。具体的な進め方は司法書士へご確認ください。

ごえん株式会社の取り扱い

当社では、市街化調整区域であることだけを理由に、査定や取扱いの対象外とすることはありません。

ご相談いただいた物件については、上に挙げた4点を確認します。この調査は当社で行いますので、売主様に調べていただく必要はありません。遠方にお住まいで現地に行けていない場合でも、所在地と分かる範囲のご事情をお知らせいただければ結構です。

確認したうえで、当社でお取り扱いできるかどうかと、その条件をご提示します。なお、すべてのご相談が成立するわけではありません。ご希望額との開きや、相続人の方々の間で合意ができていない場合など、条件がまとまらないこともあります。

荷物が残っていても、測量ができていなくても、現況のままご相談いただけます。

市街化調整区域の取り扱いについては、市街化調整区域の不動産買取・売却相談にまとめています。

よくある質問

相続放棄すれば、市街化調整区域の土地から完全に手が離れますか?

相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人でなかったことになります。ただし放棄は不動産だけを選んでできるものではなく、預貯金など他の財産もあわせて放棄することになります。民法915条1項により、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期限があり、一度した放棄は撤回できません。判断は早めに行う必要があります。

建物が建っていても国庫帰属制度は使えますか?

使えません。相続土地国庫帰属法2条3項1号で、建物の存する土地は承認申請ができないと定められています。建物を解体してからの申請になりますが、市街化調整区域では解体すると建て替えができなくなる場合があり、住宅用地の特例が外れて固定資産税も上がる方向に動くため、順番の検討が必要です。審査手数料は土地1筆あたり14,000円で、承認されても別に負担金がかかります。

国庫帰属の負担金は、いくらになりますか?

相続土地国庫帰属法施行令5条1項が土地の区分ごとに定めています。市街化区域内の宅地、農用地区域内などにある農地、森林は地積に応じた算定になり、それ以外の土地は20万円です。市街化調整区域にある宅地は市街化区域内ではないため、20万円になるのが原則です。ただし山林は区域を問わず地積に応じた算定になり、畑や田も農用地区域や土地改良事業の区域に入っていると同様です。実際の額は法務局へご確認ください。

自治体に寄付すれば引き取ってもらえますか?

自治体が受け取るかどうかは自治体の判断で、行政目的での利用予定がない土地は受け取られないことが一般的です。まず窓口に確認してください。

遠方に住んでいて現地に行けません。売却の相談はできますか?

できます。物件の所在地と、分かる範囲のご事情をお知らせいただければ、調査は当社で行います。

相続登記をしていません。そのままでも相談できますか?

ご相談自体は可能です。ただし売却には登記が必要になります。相続登記は義務化されており、期限があるため、あわせて進めることをおすすめします。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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