親のマンションがいらないとき:相続放棄・売却・寄付の可否と、決める順番

郊外に建つ中層マンションの外観

親のマンションを相続したくないとき、選べる道は「相続放棄」「売却」「賃貸に出す」の3つです。どれを選ぶにしても、最初にやるのは、財産と債務の全体の把握と、管理費・修繕積立金の滞納の確認です。所有している間は、住んでいなくても管理費と修繕積立金が止まらないため、順番を決めて動くほど負担を抑えられます。

この記事は、親が住んでいた居住用のマンションを相続する場面に絞っています。スキー場や温泉地のリゾートマンションは、値の付き方や手放し方が違うので、リゾートマンションを手放したいをご覧ください。

目次

住んでいなくても、費用は毎月かかる

区分所有法19条は、共用部分の負担について、各共有者が規約に別段の定めがない限り持分に応じて負うと定めています。実際のマンションでは、規約に基づいて管理費・修繕積立金が毎月請求され、固定資産税もかかります。

費用誰に払う空室でも発生するか
管理費管理組合(管理会社)発生する
修繕積立金管理組合発生する
固定資産税・都市計画税自治体発生する
駐車場・駐輪場の使用料管理組合契約していれば発生する

月額が小さく見えても、売れない状態が数年続くと合計は大きくなります。さらに、修繕積立金は築年数が進むと値上げされることがあり、大規模修繕の前後は一時金を求められる場合もあります。

マンションの費用は「いらない」と思った日から止まるのではなく、名義が変わるまで続きます。相続から手放すまでの期間を短くすることが、負担を抑えるいちばんの近道です。

相続放棄の期限と、マンションだけを選べない点

相続放棄は、費用の負担から抜ける手段のひとつです。ただし条件があります。

民法915条は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のどれかをしなければならないと定めています。期間は、家庭裁判所に請求して伸ばせます。財産の調査は、承認や放棄をする前にできます(同条2項)。

相続放棄は相続全体を対象にします。マンションだけを放棄して、預貯金だけを受け取ることはできません。親に預貯金や他の不動産がある場合は、放棄すると、それらも受け取れなくなります。

放棄したあとの管理についても注意が必要です。民法940条は、放棄の時に相続財産を現に占有している人は、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産と同じ注意をもって保存しなければならないと定めています。マンションの鍵を持って管理している、荷物を置いている、といった状態が占有にあたる可能性があります。また、放棄の前に家財を処分すると、相続を承認したとみなされて放棄できなくなることがあります(民法921条)。占有の範囲と、放棄前の片付けの注意点は相続放棄しても管理義務は残る?に詳しく書いています。

放棄すると、次の順位の人に移る

民法939条により、放棄した人は初めから相続人とならなかったものとみなされます。子が全員放棄すると、相続の権利は次の順位に移ります。民法889条の順位では、まず親の直系尊属(祖父母など)、その人たちもいなければ親の兄弟姉妹(あなたから見ておじ・おば)が相続人になります。亡くなった親に配偶者がいる場合は、その人も相続人です。

つまり、自分が放棄しても、マンションと管理費の問題は消えずに、次の相続人へ移ります。放棄する前に、次に相続人となる人へ事情を伝えておくと、行き違いを防げます。

全員が放棄したとき

相続人が全員放棄すると、相続人のあることが明らかでない状態になり、相続財産は法人となります(民法951条)。民法952条は、この場合、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求によって相続財産の清算人を選任すると定めています。マンションでは、管理費を回収したい管理組合などが利害関係人として請求する立場になります。清算人に引き渡すまでの間も、放棄の時に占有していた人には上の保存義務が残る点に注意してください。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

滞納があるとき、売ると何が起きるか

親が管理費や修繕積立金を滞納したまま亡くなった場合、滞納分は債務として相続人に引き継がれます。しかも、滞納は売却にも影響します。

区分所有法7条は、区分所有者が、共用部分などについて、または規約や集会の決議に基づいて他の区分所有者に対して持つ債権について、先取特権(他の債権者より先に弁済を受けられる権利)を認めています。管理者や管理組合法人が区分所有者に対して持つ債権も同じです。そして8条は、これらの債権を特定承継人(買主)に対しても行使できると定めています。

前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

——区分所有法第8条(e-Gov法令検索)

つまり、滞納を残したまま売ると、買主が管理組合から請求される可能性があります。そのため、売買の前に滞納額を確かめて清算するのが通常の進め方です。清算の方法や金額の取り決めは、売買の条件に影響するので、決済の前に整理しておきましょう。

管理費の滞納があるときの3つの選択肢を比べた図解
滞納の請求は、売っても買主に引き継がれる

まず取り寄せるのは、管理会社の開示書面

滞納額や今後の負担は、管理会社に問い合わせて書面で出してもらうのが確かな確認方法です。売買の現場では「重要事項調査報告書」などの名前で呼ばれる書類です。

国土交通省のマンション標準管理委託契約書は、第15条で、売却の依頼を受けた宅地建物取引業者から求められたとき、管理会社が管理組合に代わって別表第5の事項を書面などで開示すると定めています。組合員本人が売却のための情報収集として求めた場合も同様です。別表第5には、次のような項目が並んでいます。

  • その住戸の管理費・修繕積立金・修繕一時金の額と、滞納がある場合の滞納額
  • 管理組合全体の修繕積立金の残高(修繕積立金会計の繰越額・資産総額)と、滞納額・借入金残高
  • 管理費・修繕積立金・修繕一時金の変更予定の有無
  • 長期修繕計画の有無と、大規模修繕工事の実施予定

標準管理委託契約書はひな形なので、実際の書式や手数料は管理会社ごとに違います(同条2項は、開示の費用を相手方から受け取れると定めています)。管理会社の連絡先は、親の部屋に届いている管理費の請求書や総会の案内などで分かることがあります。

相続したマンションで、費用が発生する時期と手放す手段が変わる分かれ目を示した図解
相続放棄の期限と、売却の準備を同時に進める

出口を比べる。軸は費用が止まる時期

相続したくないマンションの出口は、大きく「相続放棄」「売却」「賃貸に出す」の3つです。このうち売却は、仲介で買主を探す方法と、業者に現況のまま買取などを相談する方法に分かれるため、下の表では分けて並べています。

道費用が止まる時期向いている場合注意点
相続放棄放棄が認められた後親に債務が多い、他にも相続したくない財産がある期限は原則3か月。相続全体を手放す。次の順位の人に権利が移る。占有していると保存義務が残る
売却(仲介)引渡しと名義変更の時相続して手放したい。売って現金化したい滞納は清算が必要。買主への名義変更の前に相続登記が要る
買取・引き受けの相談(現況のまま)引渡しと名義変更の時売れ残りそう、片付けや滞納の整理を先にできないお引き受けできるかは物件ごとに違う。成立しないこともある
賃貸に出す止まらない(収入で補う)立地がよく、借り手が見込める空室リスクと修繕費は所有者の負担。相続登記の義務は別にある

寄付や、国に引き渡す方法は使える?

「いらないなら寄付できないか」と考える方は多いのですが、マンションの一室では選びにくいのが実情です。

– 国(相続土地国庫帰属制度):建物がある土地は申請できない決まりです(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律2条3項1号)。マンションの住戸は建物そのものなので、この制度で手放す方法には当てはまりにくいと考えられます。個別の可否は法務局へご確認ください。
– 自治体への寄付:自治体は具体的な使いみちがない不動産を原則として受け付けず、建物付きの土地を受け入れないと明記している自治体もあります。くわしくはいらない土地は寄付できる?に書いています。
– 個人や法人への無償譲渡:受け取った側に管理費・修繕積立金の負担が移るため、受け手が見つかりにくく、渡す側にも税金の扱いが変わる場合があります。

寄付を探して時間を使うより、相続放棄の期限(原則3か月)と、売却や買取の相談を同時に進めるほうが、費用が積み上がる期間を短くできます。

売る場合は、買主に名義を移す前に相続登記を済ませる必要があります。一方、貸すこと自体は、法律上、相続登記を前提にしていません。ただし、貸すかどうかにかかわらず、不動産登記法76条の2により、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。この義務は共有で相続した場合も各相続人にあります。期限と数え方は相続登記の義務化、相続人が複数いる場合の同意は共同相続した不動産の売却をご覧ください。

値が付きにくいマンションの見分け方

相続したマンションが売れるかどうかは、毎月の管理費+修繕積立金の負担を、売値が吸収できるかでおおよその見当がつきます。

買う側から見ると、管理費と修繕積立金は、買った後もずっと払い続ける費用です。仮に管理費と修繕積立金の合計が月2万5千円なら、年30万円、10年で300万円になります。売値がこの負担に比べて小さい地域や築年数では、買い手が付きにくく、仲介で売りに出しても値が付きにくくなります。

当てはまりやすいのは、次のようなマンションです。

  • 築年数が古く、修繕積立金が値上げされてきた、または大規模修繕や一時金の予定がある
  • 地方や郊外で、周辺の中古マンションの売値が低い
  • リゾート地に近く、定住する人の需要が少ない
  • 管理組合の運営が止まっている、修繕積立金が足りない
  • エレベーターがない、駐車場が使えないなど、設備が合わない
  • 相続人が複数で、売却の合意がまとまらない
  • 管理費の滞納がある

手元で見当をつけるには、前の章の管理会社の開示書面が使えます。修繕積立金会計の繰越額が少ない、借入金残高がある、管理費・修繕積立金の変更予定や大規模修繕の実施予定が書かれている、といった項目は、買った後の負担が増える見込みとして買う側が慎重に見るところです。

こうしたマンションでは、業者に手放す形が買取ではなくお引き受けになることがあります。

形お金の向きどんなとき
買取業者が代金を払う買取が成り立つ場合

他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。業者から話を聞くときは、どちらの話なのかを最初に確かめてください。

1件ずつ原因が違うため、売値を下げるだけでは動かないことがあります。制約のどこが重いかを見るのが先です。持分を共有している場合は共有持分だけ売れる?も参考になります。人が亡くなった部屋で売りにくいときは、事故物件の買取相談のページで扱っています。

現況のまま引き受けられるか

当社は訳あり不動産を現況のままお引き受けしており、親のマンションを相続したものの片付けや滞納の整理を先にできない、遠方で動けない、という方のご相談を受けています。管理規約、管理費・修繕積立金の額、滞納の有無、修繕の予定、築年数などを見て、買取になるか、お引き受けになるか、お引き受けできないかを物件ごとに判断し、調査は当社で行います。管理会社の開示書面があれば、これらがまとめて分かります。遠方にお住まいでも、現地にお越しいただかずに契約から決済まで進められます。お引き受けできるかは物件ごとの個別の判断で、条件によっては成立しないこともあります。相続放棄をするか売るかには期限(原則3か月)があるため、まず所在地と、管理費・修繕積立金の月額、滞納の有無をお知らせください。ご相談への返事は翌営業日までにお送りします。相続した戸建ての空き家は、空き家の買取相談のページもご覧ください。

相続放棄の可否や期限の判断は弁護士・司法書士に、税金は税理士にご確認ください。実家じまいの全体の順番は実家じまいは何から始める?にまとめています。

よくある質問

親のマンションを相続したくないとき、どうすればいいですか。

選べる道は、相続放棄、売却、賃貸に出す、の大きく3つです。最初にやるのは、預貯金や借入れも含めた財産と債務の全体の把握と、管理費・修繕積立金の滞納の確認です。相続放棄は自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内(民法915条)が原則で、マンションだけを放棄することはできず、相続全体を放棄する形になります。

相続放棄すれば、管理費や修繕積立金の支払いは終わりますか。

放棄をすれば、その人は初めから相続人とならなかったものとみなされ(民法939条)、支払いの義務を引き継ぎません。ただし、放棄の時にそのマンションを現に占有している場合は、次の相続人などに引き渡すまで保存する義務が残ります(民法940条)。また、放棄すると相続の権利は次の順位の人(親の親、親の兄弟姉妹など)に移ります。

相続人が全員放棄したら、マンションはどうなりますか。

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人となり(民法951条)、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求によって相続財産の清算人を選任します(民法952条)。管理費を回収したい管理組合などが、利害関係人として請求する立場になります。

亡くなった親が管理費を滞納していた場合、売ったらどうなりますか。

滞納分は債権として残ります。区分所有法では、管理組合などの債権は、売買などで所有者が変わった買主(特定承継人)に対しても請求できると定められています(区分所有法8条)。そのため、売る前に滞納額を確認し、清算しておくのが一般的な進め方です。

誰も住まないマンションの管理費は、いつまで払うのですか。

所有している間は、住んでいるかどうかにかかわらず払い続けます。区分所有法19条により、共用部分の負担は規約に別段の定めがなければ持分に応じて負います。手放して名義が変わるまで続くため、売却や賃貸の判断が遅れるほど負担が積み上がります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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