根抵当権が付いた不動産でも、売却はできます。ただし抵当権と違って、借入を完済しただけでは権利が消えません。「元本確定」という段階を踏んでから抹消するのが基本の流れです。
この記事では、根抵当権がどういう担保なのか、なぜ返し終わっても登記簿に残るのか、相続で引き継いだときに気をつける期限、そして抹消の手順と費用を順に整理します。訳あり不動産の買取再販を専門とするごえん株式会社が、実務でどう扱っているかを含めてお伝えします。
根抵当権が付いたままでも、売却の道は閉じない
登記簿の権利部(乙区)に「根抵当権設定」と書かれていても、その不動産が売れないわけではありません。実務で行うのは、引き渡しの日に借入を精算し、同じ日に根抵当権を消すという段取りです。
根抵当権とは、一定の範囲に属する不特定の借入を、極度額という上限額の限度でまとめて担保する権利のことです(民法398条の2)。極度額は「ここまでなら担保します」という枠の大きさであって、今いくら借りているかとは別の数字です。
自営業の運転資金、農業の借入、賃貸アパートの建築資金など、繰り返し借り入れる場面で使われます。住宅ローンで設定されるのは通常の抵当権が中心なので、根抵当権が出てくるのは事業に関わる不動産、あるいはそれを相続した不動産が多くなります。
最初に確かめるのは、極度額の大きさではなく 今いくら残っているか です。極度額3,000万円と登記されていても、残高がゼロということは珍しくありません。金融機関に残高を照会すると、「返して終わるのか、足りないのか」が最初の段階で分かります。
完済しても根抵当権が消えない理由
「もう返し終わったのに、登記簿から消えていない」というご相談は少なくありません。これは手続き漏れというより、根抵当権のしくみからくるものです。
抵当権は特定の借入1本に付いています。その借入を返し終われば、担保する中身が無くなります。一方で根抵当権は、個々の借入ではなく「枠」そのものに付いている担保です。枠が開いている限り、残高がゼロになっても権利は残ります。

枠を閉じることを元本確定といいます。ここで担保する借入が固まり、以降は通常の抵当権に近い扱いになります。残っている借入を返し終われば、根抵当権も消せる状態になります。
返済しても権利が残るのは、金融機関の落ち度ではなく制度の設計です。元本が確定する前は、借入を肩代わりした人がその根抵当権を使うこともできません(民法398条の7)。「返した=消えた」とは扱われないという前提で、登記簿を取り寄せて現状を確認してください。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
抵当権と根抵当権はどこが違うか
売却の場面で効いてくる違いを表にまとめます。
| 抵当権 | 根抵当権 | |
|---|---|---|
| 担保する対象 | 特定の借入1本 | 一定の範囲の借入をまとめて |
| 登記される金額 | 借入額(債権額) | 極度額(枠の上限) |
| 借入を返し終わったら | 担保する中身が無くなる | 枠は残る。元本確定が必要 |
| 追加で借りられるか | 借りるたびに設定し直す | 枠の中なら繰り返し使える |
| 主に使われる場面 | 住宅ローンなど | 事業資金、賃貸経営、農業の借入など |
| 抹消までの段取り | 完済 → 抹消登記 | 完済 → 解約・元本確定 → 抹消登記 |
同じ「担保が付いている」でも、抹消までの段取りが一段多いのが根抵当権です。売却の予定があるなら、査定を取るのと並行して金融機関に連絡しておくと、決済日の設定がしやすくなります。
なお、住宅ローンの抵当権が付いた状態での売却は段取りが異なります。そちらは住宅ローンが残っている家の売却で整理しています。
借りた人と不動産の所有者が違うとき
根抵当権では、担保に出した不動産の所有者と、実際に借りている債務者が別人であることが珍しくありません。親名義の土地に子の会社の運転資金の枠が付いている、亡くなった配偶者が経営していた会社の借入が自宅に付いたままになっている、といった形です。民法も、他人の債務を担保するために根抵当権を設定した人がいることを前提に条文を置いています(民法398条の22第1項)。
登記簿の乙区には、根抵当権者・極度額とあわせて債務者が記録されます(不動産登記法83条1項2号・88条2項)。最初に見るのは、この債務者が甲区の所有者と同じ名前かどうかです。
所有者と債務者が違うと、残高の照会にその場で応じてもらえないことがあります。金融機関にとっての取引相手は債務者だからです。債務者本人か、その相続人から金融機関に確認してもらう形になることが多く、その分の日数を見ておいたほうが安全です。会社が休眠している、代表者が亡くなっているといった事情が重なると、ここで止まりやすくなります。
自分が借りたわけではない担保が残っていると、売却の話が進みません。この場合でも、元本が確定したあとであれば、所有者(根抵当権設定者)の側から極度額を「現に存する債務の額に、以後2年分の利息などを加えた額」まで減らすよう請求できます(民法398条の21第1項)。枠の大きさを実際の債務に近づけておくと、そのあとの精算の話が具体的になります。ただし請求できる要件と進め方は事情で変わるため、司法書士にご確認ください。
相続で引き継いだときは「6か月」に注意
親が事業や農業をしていた実家を相続すると、根抵当権が付いたままということがあります。ここには期限があります。

事業を引き継いで同じ枠を使い続けるなら、「今後どの相続人の借入を担保するか」を金融機関と決めて登記します。この相続人を指定債務者といいます。相続開始から6か月以内に合意の登記をしないと、担保する借入は相続開始のときに確定したものとみなされます(民法398条の8第4項)。
見落としがちですが、手放す方針の場合はこの期限が不利に働くとは限りません。枠が閉じてくれたほうが、残りを精算して抹消へ進む話がまとまりやすいためです。
相続で借入そのものを引き継ぐかどうかは、根抵当権の話とは別の問題です。相続放棄の期限、団体信用生命保険の有無、債務の分け方によって結論が変わります。判断の前に司法書士・弁護士・税理士にご確認ください。抹消の前提として、相続した空き家の相続登記を先に済ませておく必要もあります。
抹消の手順と費用
最も多いのは、借入が残っていない状態で金融機関から解約と抹消の書類を受け取り、法務局へ登記を申請する流れです。
- 登記事項証明書を取り、極度額・債務者・根抵当権者を確認する
- 金融機関に残高を照会し、完済と解約の意思を伝える
- 解除証書や登記識別情報など、抹消に必要な書類を受け取る
- 法務局へ抹消の登記を申請する(司法書士に依頼するのが一般的)
このうち3で受け取る書類は、法務局が必要書類とその入手先として一覧を公開しています。申請に添付するのは次の4点で、いずれも根抵当権者である金融機関から送られてくるものです。有効期限は設けられていません。
| 添付する情報 | 具体的には | 入手先 |
|---|---|---|
| 登記識別情報(登記済証) | 設定したときに交付されたもの | 金融機関 |
| 登記原因証明情報 | 解除証書、弁済証書など | 金融機関 |
| 会社法人等番号 | 送付書類か登記事項証明書で確認 | 金融機関・法務局 |
| 代理権限証明情報 | 金融機関が出す委任状 | 金融機関 |
所有者の側で作るのは登記申請書です(司法書士に頼む場合は、その委任状も)。
登記簿に載っている所有者の住所・氏名が現在のものと違うと、抹消の前に変更の登記が必要になります。法務局の根抵当権抹消登記申請書の記載例でも、申請書に書く権利者は登記記録と一致していることが前提とされています。転居をはさんでいる場合や、相続した実家では起こりやすいところです。
この変更の登記は、2026年(令和8年)4月1日から申請が義務になりました。所有権の登記名義人は、氏名・名称または住所に変更があった日から2年以内に申請することとされ、正当な理由がないのに怠ると5万円以下の過料の対象になります(法務省住所等変更登記の義務化について)。
施行日より前に住所が変わっていた場合も対象で、その分は2028年(令和10年)3月31日までに登記しておく必要があります。根抵当権の抹消で登記簿を確認するタイミングは、この期限に気づく機会にもなります。義務化の中身は住所変更登記の義務化で整理しています。
売却と同時に行う場合は、買主から代金を受け取る・借入を精算する・抹消書類を受け取るという流れを、決済日に司法書士が同席してまとめて処理します。
費用の中心は登録免許税です。法務局の案内のとおり、抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円と定められています。
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 不動産1個につき1,000円 | 同一の申請書で20個以上のときは2万円 |
| 司法書士報酬 | 1万〜2万円程度が目安 | 事務所や案件により幅があります |
| 登記事項証明書 | 1通あたり数百円 | 現状を確認するために取得 |
| 元本確定の登記 | 必要な場合のみ別途 | 登録免許税と報酬がかかります |
申請してから登記が終わるまでの日数は、管轄の法務局ごとに違います。各法務局が「登記完了予定日」をホームページで公表しているので、決済日を決める前に確認しておくと逆算しやすくなります。
土地が複数筆に分かれていると、登録免許税は筆の数だけかかります。田畑や山林が一緒に付いている物件では、土地の数が10を超えることも珍しくありません。農地付きの実家のように地番が多いケースでは、登記簿で筆の数を数えてから見積もると差が出ません。
金融機関が解約に応じてくれない、あるいは連絡が取れないといった事情があるときは、設定者の側から元本確定を請求する方法もあります。根抵当権の設定から3年を経過していれば確定を請求でき、請求から2週間で確定します(民法398条の19第1項)。ただし例外もあるため、進め方は司法書士にご相談ください。
一方で、請求を待たなくても枠が閉じる場合があります。次のいずれかに当たると、担保する元本は確定します(民法398条の20第1項)。
– 根抵当権者が競売や担保不動産収益執行を申し立て、その手続が開始したとき
– 根抵当権者が滞納処分による差押えをしたとき
– 他から競売手続の開始や滞納処分の差押えがあったことを根抵当権者が知り、2週間が過ぎたとき
– 債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき
税金の滞納で差押えが入っている物件では、すでにこの段階を過ぎていることがあります。登記簿に差押えの記載があるかどうかも、あわせて確認してください。
借入が残っている、相手が分からない、というとき

実際にご相談が止まりやすいのは、次のような状態です。
- 借入が残っていて、売却代金だけでは精算しきれない
- 根抵当権者が信用金庫や信用組合で、合併を重ねて名称が変わっている
- 根抵当権者が個人や法人で、すでに連絡が取れない
- 建物が古く、現況では買い手が付かないまま担保だけ残っている
このうち「精算しきれない」ケースには、法律上の逃げ道が用意されています。元本の確定後に現に残っている債務が極度額を超えているとき、他人の債務を担保するために根抵当権を設定した人(いわゆる物上保証人)や、その不動産を取得した第三者は、極度額に相当する金額を払い渡すか供託して、根抵当権の消滅を請求できます(民法398条の22第1項)。前述のとおり、設定者の側から極度額そのものを減らすよう請求する道もあります(民法398条の21第1項)。
相手が分からないケースは、権利が古いまま残っている状態に近く、休眠抵当権と同じ調べ方をたどることになります。まず登記簿から法人の履歴を追い、承継先の金融機関にたどり着けるかを確かめます。
名称が変わっているだけで承継先が分かる場合は、申請書に会社法人等番号を書くことで、履歴事項証明書や閉鎖事項証明書を添付しなくてよいとされています(法務局の記載例の注記)。閉鎖された登記に現在と異なる番号が記録されているときは省略できないため、そこは司法書士にご確認ください。
当社がこうした物件を査定するときに見ているのは、価格の相場よりも「引き受けたあとに自社で処理しきれるか」です。残っている債務の額、根抵当権者にたどり着けるか、建物を残せるか解体するか。ここが読めれば、権利が付いたまま現況で引き受けられる場合があります。
売主側で先に費用をかけて整える必要はありません。片付け・解体・測量は、買い取る側が自社の負担で行うことを前提に見ています。担保が残る売却では、売主が先に出す費用をどれだけ減らせるかが手残りを左右します。
ただし、すべてを引き受けられるわけではありません。債務の額と物件の状況の兼ね合いで、当社ではお受けできないという結論になることもあります。その場合も、どの方法なら可能性があるかはお伝えしています。
費用をかけずに手放したいとき、どこから手を付けるか
ご相談で多いのは「高く売りたい」ではなく、「これ以上お金と手間をかけずに区切りをつけたい」という声です。根抵当権が付いた不動産は、登記簿を見ただけでは残高が分からないため、動き出す前から重く見えてしまいます。
順番としては、次の3つを先に押さえると全体像がはっきりします。
- 登記事項証明書を取り、極度額・債務者・根抵当権者を確認する
- 金融機関に残高を照会し、返して終わるのか足りないのかを分ける
- 相続が絡む場合は、相続開始からの経過月数を確認する
そのうえで、物件そのものに買い手が付くかを見ます。担保の問題が本当に重くなるのは、売れない土地のように出口が見えないときで、その間も固定資産税と管理の手間は続きます。
現地が遠く動きづらい場合も、書類のやり取りと郵送で進められることが多く、遠方の実家と同じ形で手続きを終えられます。当社は全国対応で、地方の物件のご相談を多くいただいています。抹消の可否や税金の取り扱いについては、司法書士・税理士にもあわせてご確認ください。
よくある質問
根抵当権が付いたままの不動産を売ることはできますか?
登記としては付いたまま所有権を移すこともできますが、実務ではほとんど行われません。買主も買主側の金融機関も、担保が残ったままの引き渡しを受け入れないためです。通常は引き渡しの日に借入を精算し、同じ日に根抵当権を抹消する形で進めます。
借入を全部返し終わったのに、登記簿から根抵当権が消えません。なぜですか?
根抵当権は個々の借入ではなく、極度額という「枠」に付いている担保だからです。残高がゼロになっても枠は開いたままで、返済だけでは自動的に消えません。金融機関に完済と解約を伝えて書類を受け取り、法務局へ抹消の登記を申請してはじめて登記簿から消えます。
根抵当権と抵当権はどう違いますか?
抵当権は特定の借入1本に対して設定するもので、その借入を返し終われば担保する中身が無くなります。根抵当権は一定の範囲の借入をまとめて、極度額の限度で担保するものです。枠の中で借りたり返したりを繰り返せるため、事業の運転資金や賃貸経営の借入で使われることが多くなっています。
根抵当権が付いた不動産を相続しました。何から手を付ければよいですか?
まず登記簿で極度額と債務者を確認し、金融機関に残高を照会してください。事業を引き継いで枠を使い続ける場合は、相続開始から6か月以内に指定債務者の合意の登記が必要です(民法398条の8第4項)。手放す方針であれば、この登記をしない選択もあります。相続債務の扱いは事情で結論が変わるため、司法書士・弁護士にもご確認ください。
借りたのは親(または家族の会社)で、不動産の名義は自分です。売れますか?
所有者と債務者が違うケースは珍しくありません。登記簿の乙区には債務者が記録されているので(不動産登記法83条1項2号・88条2項)、まず甲区の所有者と同じ名前かを確認してください。ただし金融機関の取引相手は債務者なので、残高の照会は債務者本人かその相続人から行う必要があることが多く、その分の日数を見ておいてください。元本の確定後であれば、所有者の側から極度額の減額を請求できる場合もあります(民法398条の21第1項)。
抹消にはいくらかかりますか?
登録免許税は不動産1個につき1,000円です。土地と建物の2個なら2,000円で、田畑や山林が一緒に付いていると土地の数だけ増えます。これに司法書士へ依頼する場合の報酬が加わり、1万〜2万円程度が目安です。元本確定の登記が別に必要になるケースでは、その分の費用も加わります。
この記事の監修者
訳あり不動産の売却でお困りなら
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量の費用を、先にご負担いただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
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