表題部所有者不明土地とは|氏名が無い登記の土地の売り方

木々に飲み込まれたトタン屋根の建物と散乱した廃材

表題部所有者不明土地という言葉は聞き慣れないと思います。登記簿の表題部にある「所有者」の欄に、氏名や住所が書かれていない土地のことです。「氏名なし」「共有者何名」「大字○○」——そんな記録のまま、明治期から百年以上そのままになっている土地が全国にあります。この記事では、なぜそうなるのか、どう確かめるのか、売るには何が要るのかを整理します。

目次

何が「不明」なのか

条文の定義はこうです。

第二条 この法律において「表題部所有者不明土地」とは、所有権(その共有持分を含む。次項において同じ。)の登記がない一筆の土地のうち、表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないもの(後略)

——表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律第2条第1項(e-Gov法令検索)

ポイントは2つあります。所有権の登記が一度もされていないこと。そして表題部の所有者欄が埋まっていないことです。

登記簿は「表題部」と「権利部」に分かれています。
表題部は土地の物理的な情報(所在・地番・地目・地積)と、最初の所有者。
権利部は所有権や抵当権といった権利の記録です。
表題部所有者不明土地は、権利部そのものが存在しない状態です。

表題部が埋まっていない土地について、探索から管理までの流れを示した図解
所有権の登記が一度もされていない、明治から続く状態

どう記録されているか

表題部の所有者欄意味するところ
空欄所有者の記載そのものが無い
氏名だけ(住所が無い)同姓同名の誰なのか特定できない
「共有者何名」人数だけが分かり、誰なのかは分からない
大字・集落の名前個人ではなく共同体の名義で記録された

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

なぜ、そんな土地が残っているのか

明治時代の地租改正で作られた土地台帳の記載が、そのまま登記簿に引き継がれたことが原因です。当時は集落や共同体の名義で記録されたものもあり、個人が特定できる形になっていません。

  • 「共有者何名」とだけ書かれ、名前が無い
  • 大字や集落の名前だけが書かれている
  • 氏名はあるが住所が無い

所有者に落ち度はありません。そして、代々受け継がれてきた土地なのに、書類の上では誰のものか確定していない、という状態が続いてきました。

そのままでは、売買も担保設定もできない

所有権の登記名義人がいないため、所有権移転の登記ができません。登記ができなければ売買は成立せず、金融機関の担保にもなりません。

固定資産税は現に使っている方や相続人が課税されていることが多いため、負担だけは発生しているのに、動かすことはできないという形になります。

2019年に、探すための制度ができました

長く放置されてきたこの問題に対して、2019年(令和元年)に特別措置法ができました。

第三条 登記官は、表題部所有者不明土地(中略)について、当該表題部所有者不明土地の利用の現況、(中略)その他の事情を考慮して、表題部所有者不明土地の登記の適正化を図る必要があると認めるときは、職権で、その所有者等の探索を行うものとする。

——同法第3条第1項

所有者からの申請で始まる制度ではありません。登記官が職権で始めます。
探索には所有者等探索委員が加わり、登記官には調査の権限が与えられています。
探索を始める前には公告されます(同条2項)。

探索の結果、登記官が所有者を特定できれば、表題部所有者として登記されます(同法14条)。そこまで進めば、通常の相続登記や売買へ進めます。

探しても分からなかったとき

それでも特定できない場合は「所有者等特定不能土地」として登記されます。ここで手が止まるわけではありません。

第十九条 裁判所は、所有者等特定不能土地について、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、(中略)特定不能土地等管理者による管理を命ずる処分(中略)をすることができる。

——同法第19条第1項

裁判所が管理者を選任し(同法20条)、その管理者を通じて管理や処分を進める道が用意されています。時間はかかりますが、永久に動かせない土地ではありません。

確かめる順番

  1. 登記事項証明書を取る(法務局の窓口かオンライン。地番が分かれば誰でも取れます)
  2. 表題部の「所有者」欄を見る。氏名と住所が両方あれば該当しません
  3. 欄が空、氏名だけ、地区名だけ——のときは、地番を持って法務局に相談する
  4. 探索が始まっているか、始められるかを聞く
  5. 特定不能と登記されている場合は、管理者の選任を検討する

2で終わることが大半です。「もしかして」と思ったら、まず登記を見てください。

当社は訳あり不動産を現況のまま扱っています。登記が整っていない土地についても、整えてから持ってきていただく必要はありません。ただし表題部所有者不明土地は、所有者の確定に時間がかかるため、すぐに売買へ進めないことがあります。まず所在地と登記の状況をお知らせいただければ、何が要るかを整理してお答えします。

同じように登記が現実に追いついていない物件については、未登記建物の売却地図混乱地域の土地の売却未登記・私道・境界の買取相談もご覧ください。

よくある質問

表題部所有者不明土地とは、どういう土地ですか。

所有権の登記が一度もされていない土地のうち、表題部の所有者欄に氏名や住所の全部または一部が書かれていないものです(表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律2条1項)。「氏名なし」「共有者何名」「大字○○」といった記録のされ方をしています。明治期の土地台帳の記載がそのまま引き継がれたものが大半です。

自分の土地がそれに当たるか、どうすれば分かりますか。

登記事項証明書を取り、表題部の「所有者」欄を見てください。氏名と住所が両方書かれていれば該当しません。空欄だったり、氏名だけ・地区名だけだったりする場合は該当する可能性があります。法務局の窓口で地番を伝えて聞くこともできます。

そのままでは売れないのですか。

所有権の登記名義人がいないため、そのままでは所有権移転の登記ができず、売買が成立しません。担保に入れることもできません。まず所有者を確定させて登記する必要があります。

所有者を探す手続きは、誰が申し込むのですか。

同法3条により、登記官が職権で探索を始めます。所有者からの申請で始まる仕組みではありません。ただし法務局に事情を伝えることはできますので、地番を持って相談してください。探索が始まる前に公告されます。

探しても所有者が分からなかった場合はどうなりますか。

「所有者等特定不能土地」として登記されます。その場合、同法19条により利害関係人の申立てで裁判所が管理者を選任でき、20条で選ばれた管理者を通じて管理や処分を進める道があります。時間はかかりますが、動かせない土地ではありません。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷再建築不可市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp

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