再建築不可物件を相続したとき、最初に確かめるべきは売却価格ではありません。持ち続けたときに毎年出ていく費用と、手放すときに自分が先に負担する費用です。この記事では、再建築不可の家や土地を相続した方に向けて、固定資産税の実際の負担、相続登記の期限、解体が行き止まりになりやすい理由、そして費用を先に出さずに手放す道筋を整理します。
当社に寄せられるご相談で最も多いのは「高く売りたい」ではなく「費用をかけずに手放したい」というものです。再建築不可の物件はまさにその典型で、価格の交渉より前に、負担が止まるかどうかが判断の軸になります。
相続した再建築不可物件で、最初に確かめる4つのこと
「建て替えられない土地だから価値がない」と言われて、そのまま何年も固定資産税だけ払っている——このご相談は珍しくありません。ただ、動き出す前に確かめておくことが4つあります。

特に見落とされやすいのが2番目です。再建築不可とは、今建っている建物を取り壊すと、同じ場所に新しい建物を建てられない土地のことをいいます。
その根拠は建築基準法の接道義務です。接道義務とは、建物を建てる敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない、という決まりのことです。
ただし「再建築不可」と親から聞かされていただけで、実際には前面の道路が建築基準法42条2項の道路にあたり、セットバック(敷地を後退させて道路の幅を確保すること)をすれば建て替えられる、というケースもあります。役所の建築指導課で確認すれば、たいてい30分ほどで分かります。
「建て替えられない」の根拠を確かめないまま、出口を決めないこと。
本当に再建築不可なのか、条件を整えれば建てられるのかで、買い手の層も価格の付き方もまったく変わります。
固定資産税だけ払い続けるという選択の、実際のコスト
「年に数万円なら払い続けてもいい」と考える方は多いのですが、実際にかかっているのは税金だけではありません。
| 持ち続けたときにかかるもの | 内容 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年。課税明細書で確認できる |
| 草刈り・剪定 | 年1〜2回。遠方なら業者に頼むことになる |
| 見回り・郵便物の確認 | 交通費と時間。遠方ほど負担が重い |
| 火災保険 | 空き家は空き家用の契約になり、条件が変わることがある |
| 屋根や外壁が落ちたときの対応 | 通行人や隣家に被害が出れば所有者の責任を問われうる |
そして近年は、税額そのものが上がる可能性が出てきました。2023年12月13日に施行された改正空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)で、「管理不全空家等」という区分が新しく設けられたためです。
放置すれば特定空家等になるおそれがあると市区町村が判断すると、指導・勧告の対象になります。そして勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例から外れます。
住宅用地特例が外れると、土地の固定資産税の課税標準は最大で6倍になります。
住宅が建っている土地は、200平方メートルまでの部分で課税標準が6分の1、それを超える部分で3分の1に軽減されています(国土交通省の資料)。この軽減が外れるという意味です。
再建築不可の物件は、道が狭くて建て替えができないぶん取り壊しもされにくく、老朽化したまま残りやすい傾向があります。管理不全空家等として指導を受ける条件に近づきやすい、ということでもあります。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
相続登記は3年以内。名義が古いままだと出口に進めない
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。相続で不動産を取得した相続人は、相続の開始と自分がその不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(法務省)。
見落とされやすいのは、施行日より前に起きた相続も対象になるという点です。祖父母の代の名義のまま放置している不動産も含まれ、その場合の期限は2027年3月31日までとされています。
遺産分割の話し合いがまとまらず期限に間に合いそうにない場合は、「相続人申告登記」という簡易な手続きがあります。自分が登記簿上の所有者の相続人であることを法務局に申し出るもので、これで申請義務は果たしたことになります。ただし所有権の登記そのものではないため、売却するには別途の登記が必要です。
実務の話をすると、名義が古いままの物件はここでつまずきます。祖父名義のまま二代分の相続が起きていると、関わる相続人が十数人に増えることがあり、全員の署名を集めるだけで半年以上かかることもあります。相続した空き家の売却では、この人数の把握が最初の関門になります。
手続きの詳しい進め方については、司法書士へご確認ください。相続税や譲渡所得の扱いは税理士の領域です。
「解体して更地にする」が行き止まりになりやすい理由
「古い家が建っているから売れないのだろう、壊せば売れるはずだ」——この発想は自然ですが、再建築不可の物件では逆に働くことがあります。

理由は3つあります。まず、前の節で書いた住宅用地特例が外れて土地の固定資産税が上がります。次に、更地にしても新築の建築確認は下りないので、「今ある建物を使える」という唯一の使い道が消えます。
そして3つ目が、実際にいちばん重い問題です。==解体費は、売れるかどうかが決まる前に自分が支払うことになります。== 再建築不可の物件は前面道路が狭いことが多く、重機が入れずに手作業の割合が増えるため、同じ規模の家でも費用が上ぶれしやすい傾向があります。
解体費用が払えない空き家を抱えたまま身動きが取れなくなる、というご相談は当社にもよく寄せられます。その状態から動くには、解体を前提にしない出口を探すほうが早いことが多いです。

費用をかけずに手放す4つの道
再建築不可の物件を手放す方法は、大きく4つに整理できます。判断の軸は「先に自分が費用を出す必要があるか」と「建物が建ったままでも進められるか」です。
| 出口 | 費用の先出し | 建物があっても可 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 隣地の所有者に売る | 測量費などが必要になることが多い | 解体を求められる場合あり | 隣地と一体にすれば接道条件を満たす |
| 再建築できる状態にしてから売る | セットバック工事や許可申請の費用 | 可 | 42条2項道路に接している、43条の許可が見込める |
| 相続土地国庫帰属制度を使う | 審査手数料と負担金 | 不可 | 建物のない土地のみ |
| 現況のまま買い取ってもらう | 原則として不要 | 可 | 費用をかけずに終わらせたい |
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらう制度で、2023年4月27日に始まりました。ただし建物がある土地は申請そのものができません(却下事由)。審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、承認されなかった場合も返ってきません。承認されると、種目や区域に応じて算定される負担金を納めることになります(法務省)。
- 建物が建ったままでは、国に引き取ってもらう制度は使えない
- 解体してから制度を使おうとすると、解体費と負担金の両方を自分が出すことになる
- 引き取りの要件は土地の状態ごとに細かく決まっており、審査を通らないこともある
- 建物が建ったまま、家財が残ったままでも査定できる
- 片付け・解体・測量の費用を、売主側で先に負担する必要はない
- 権利関係が整理されていなくても、内容によっては引き受けられる場合がある
- 遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられる
当社は仲介ではなく、自社で買い取って引き受ける会社です。休眠抵当権が付いたままの物件を買い取り、取得後に自社の負担で抹消したこともあります。売主側で先に条件を整えてもらうのではなく、買った後に自社で片付けるという前提で査定しています。
ただし、すべての物件を引き受けられるわけではありません。「必ず買い取ります」とはお約束できず、個別の判断になります。
相続した家を売る場合、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(被相続人の居住用財産を売ったときの特例)があります。1981年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたこと、売却代金が1億円以下であることなどが条件で、2027年12月31日までの譲渡が対象です(国税庁)。適用の可否は個別事情で変わるため、税理士へご確認ください。
査定で実際に見ているところ
再建築不可の物件を査定するとき、当社が現地と役所で確かめているのは次のような点です。「価値がない」と一括りにされがちな物件ほど、ここで差が出ます。
前面道路の種類と幅 — 建築基準法上の道路か、そうでない通路か。42条2項道路ならセットバックで建て替えの道が残ります。
通路の所有者と承諾の状況 — 他人の私道を通っている場合、通行と掘削の承諾が取れるかで水道やガスの引き直しができるかが決まります。私道の持分がない土地は、ここが最大の争点になります。
隣地との関係 — 隣地と一体にすれば接道条件を満たせるか。越境物があるか。
建物が使える状態か — 雨漏り、傾き、シロアリ。使えるなら賃貸や倉庫としての出口が残ります。
登記と権利の状態 — 未登記建物、共有持分、古い抵当権が残っていないか。
現場までの搬入経路 — 資材や重機がどこまで入るか。ここが将来の工事費を左右します。
未接道の土地でも、隣地の状況や通路の権利関係によっては使い道が残っていることがあります。逆に、道路には接していても敷地の形状や擁壁の状態で費用がかさむこともあります。現地を見ないと分からない部分が大きいというのが正直なところです。
遠方の実家で現地に行けない、資料が手元にないという場合でも、物件の所在地さえ分かれば役所調査は当社で行います。売れない土地の処分に困っている、山林や原野も一緒に残されている、といったご相談も含めて、まずは今の状態のままお聞かせください。
再建築不可物件の取り扱いについては、再建築不可物件の買取・売却相談にまとめています。
よくある質問
再建築不可物件を相続しました。相続放棄したほうがいいですか?
他に相続する財産があるかどうかで判断が変わります。相続放棄は原則として相続を知ってから3か月以内で、預貯金など他の財産もまとめて放棄することになります。また相続人全員が放棄しても、次の管理者が決まるまで管理の負担が残る場合があります。放棄を検討する場合は早めに弁護士や司法書士へご相談ください。
固定資産税は建物を壊すと安くなりますか?
土地の税は逆に上がることが多いです。住宅が建っている土地は固定資産税の課税標準が200平方メートルまでの部分で6分の1に軽減されており、建物を取り壊すとこの住宅用地特例の対象から外れます。建物分の税はなくなりますが、土地分の増額でそれを上回るケースがあります。
相続登記をしていない古い名義のままでも相談できますか?
ご相談いただけます。ただし実際に引き渡すまでには名義を整える必要があるため、どの範囲まで相続人を確認する必要があるかを先に把握しておくと話が早く進みます。相続登記は2024年4月1日から申請が義務化されており、放置していると過料の対象になる可能性があります。
隣の家の人に買ってもらうよう頼むべきでしょうか?
隣地の所有者は有力な買い手のひとつです。その土地と一体にすれば接道の条件を満たせる場合、隣地にとっては価値が上がるためです。ただし交渉が長引いたり関係がこじれたりすることもあるので、他の出口と並行して検討することをおすすめします。
建物が残っていて家財もそのままですが、買い取ってもらえますか?
現況のままでご相談いただけます。当社は片付けや解体を売主側で済ませてから、という前提を置いていません。ただし物件の状態や権利関係によっては引き受けられない場合もあるため、まずは所在地をお知らせいただければ判断をお伝えします。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
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片付け・解体・測量の費用を、先にご負担いただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

