火事で焼けた空き家の焼け跡を処分する順番|放置の責任と出口

火災で焼けた跡が残る古い平屋住宅

火事で空き家が焼けたあとの焼け跡の処分は、「放置の責任」「片付け・解体」「保険と手続き」「出口」の4つを順に確かめていくと、進めやすくなります。相続した実家や遠方の家が焼けた場合、所有者は焼け跡を前に、何から手を付ければよいか分からないことがほとんどです。この記事では、一次情報(法令・自治体・損害保険協会の案内)で確認できたことだけを整理します。

結論から書くと、焼け跡は放置しても、所有者の責任はなくなりません。一方で、先に解体費を出さなければ手放せない、というわけでもありません。順番を間違えないことが、いちばん大事です。

火事で焼けた家は、解体する前に、焼け跡のまま手放す方法を相談できます。所在地と、分かる範囲の状況を教えてください。

焼け跡のまま相談する

目次

焼け跡を放置すると、所有者に何が回ってくるか

焼け跡を片付けないままにしたときの責任は、大きく2つに分かれます。行政から指導を受ける責任と、近隣に被害を出したときの賠償責任です。

行政からの指導(空家法)

空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)は、建築物が「居住その他の使用がなされていないことが常態」である状態を「空家等」と定めています(2条1項)。焼け残った建物が使われないまま続けば、これに当たり得ます。

市町村長は、空家等が適切に管理されないまま放置されると「特定空家等」になるおそれがある状態のとき、所有者に指導できます。この状態の空家等を「管理不全空家等」と呼びます(13条)。さらに倒壊のおそれなどがある「特定空家等」になると、助言・指導、勧告、命令へと進み、最終的には行政代執行で自治体が解体できる、と定められています(22条)。

全焼して建物が何も残っていない場合は、空家法の「空家等」に当たらないことがあります。ただし、残った基礎・塀・ブロックなどの扱いや、草木の管理について、自治体が独自の条例や要綱を持っていることがあります。焼け跡の状態を伝えて、自治体の窓口(空き家対策の担当課)に確認するのが確実です。

近隣への賠償責任(民法717条)

民法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵(欠陥)があって他人に損害を生じたとき、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていた場合は所有者が賠償すると定めています。

焼け残った壁や塀、傾いた柱が、強風や余震で倒れて通行人や隣家を傷つければ、この条文が問題になり得ます。空き家で誰も占有していなければ、所有者が責任を負う立場になり得ます。

空き家の放置が、行政の手続きでどのように進むかは空き家を放置するとどうなるにも書きました。

最初にやること:罹災証明と保険会社への連絡

片付けや解体に入る前に、先に済ませておきたいことがあります。

焼け跡に手を付ける前の流れ
壊す・片付けるのは、確認が済んでから

罹災証明は、火災なら消防署

多くの自治体では、火災の罹災証明(罹災届出証明)は消防署が発行し、地震や水害などの自然災害の罹災証明は市町村が発行すると案内しています。火災の被害を受けた方向けの窓口案内で、「保険請求などで罹災証明書が必要になった場合」と説明している自治体もあります。

罹災証明が必要になる場面は、おもに次のとおりです。

場面罹災証明の役割
火災保険の請求保険請求の際に求められることがある
火災ごみの搬入自治体によっては、罹災証明をもとに手数料が無料になる
税の減免の相談自治体によっては、被害の程度に応じた減免の相談で使う

どの場面で必要になるか、何通必要かは、自治体と手続き先で異なります。窓口で確認してください。

保険会社には、片付ける前に連絡する

火災保険は、契約によって補償の範囲が異なります。日本損害保険協会は、住宅総合保険と住宅火災保険で補償される範囲が異なることを案内しています。焼け跡を片付けてしまってから連絡すると、被害の状況を示せなくなります。片付ける前に、焼け跡の様子を写真に残し、保険会社に連絡してください。

なお、空き家になったあと、条件や保険料が変わっていることがあります。契約が今どうなっているかは、保険証券で確認してください。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

隣の家に燃え移ったとき、賠償は必要か

火元が自分の空き家で、隣家に延焼してしまった場合でも、失火責任法により、失火者に重大な過失がなければ、民法709条の損害賠償責任は負わないとされています。条文は、民法709条は失火の場合には適用しない、ただし失火者に重大な過失があったときはこの限りでない、という内容です(失火ノ責任ニ関スル法律)。

「重大な過失」かどうかは、事情によって判断が分かれます。たとえば、火の元を放置していたかどうかなどが問われ得ますが、どの程度から重大な過失になるかは、この記事では断定できません。請求を受けたときは、弁護士にご相談ください。

賠償責任の有無とは別に、近隣へのお詫びの費用を補償する特約(類焼損害・見舞費用特約など)が付いている火災保険もあります。付いているかどうかは契約次第です。

焼け跡の片付け・解体で、確かめること

火災ごみは、自治体で扱いが違う

焼け跡から出るごみは、「一般廃棄物(家庭ごみ)か、産業廃棄物か」の区分が、自治体によって運用が異なります。ある市の案内では、次のように説明されています。

  • 火災ごみを自分で運ぶ場合は一般廃棄物として、事前の申請で手数料が無料になることがある
  • 建設業許可業者や解体工事登録業者が撤去・解体した場合は、元請業者を排出責任者とする産業廃棄物になり、市の施設では受け入れられない
  • アスベストを含む建材や、焼け焦げて分別できないものは、受け入れできない

これは一つの市の例で、どこまで受け入れるか、手数料がいくらか、罹災証明が要るかは、市町村ごとに違います。焼け跡に入る前に、ごみの担当課へ問い合わせてください。

解体の前に、アスベスト(石綿)の事前調査がある

大気汚染防止法18条の15は、建築物を解体・改造・補修する工事の元請業者に、石綿含有建材の事前調査と、結果の発注者への書面説明を義務づけています。環境省の案内では、令和4年4月1日から、一定規模以上の工事は調査結果を都道府県等へ報告する必要があり、解体は床面積の合計が80平方メートル以上の場合が対象です。

また、建築物の事前調査は、一定の資格を持つ調査者に依頼する必要がある(令和5年10月1日から)とされています。調査の費用は、発注者が適正に負担して協力することとされています(同条2項)。

焼けた建物でも、この調査は省けません。見積もりに調査費が含まれているかは、必ず確認してください。

解体費は、何で高くなるか

解体費用の相場は、地域・建物・立地で大きく変わるため、この記事では金額を書きません。見積もりの違いが出やすい点を、確認項目として挙げておきます。

  • 焼け残った廃材を、どう分別して処分する見積もりか(火災ごみの扱い)
  • 石綿の事前調査の費用が、見積もりに入っているか
  • 基礎や地中の残りを、どこまで撤去する前提か
  • 前面道路の幅など、重機や運搬車両が入れるか
  • 残った家財・庭木・ブロック塀が、見積もりの範囲に入っているか

見積もりは、1社だけで決めずに複数社から取り、条件をそろえて比べるのが基本です。一括見積もりのサービスを使う方法もあります。解体費が何で決まるかは空き家の解体費用は何で決まるで詳しく整理しています。

公費解体は、火事1件では使えるとは限らない

災害で被害を受けた家の解体を自治体が行う「公費解体」は、地震や豪雨などで災害救助法が適用されるような大きな災害を前提にした制度です。個別の火災が対象になるとは限らないため、自治体に確認してください。災害時の公費解体の仕組みは公費解体は相続が壁になるに書きました。

平時の空き家向けの解体補助金が、焼けた建物にも使えるかどうかは、自治体の制度ごとに異なります。補助金によっては、工事契約の前に申請が必要です(空き家の解体補助金は自治体で条件が違う)。契約してからでは間に合わないことがあります。

保険・登記・税金で、期限のあるもの

焼け跡の処分と並行して、次の3つを確認します。

項目内容根拠・確認先
火災保険契約によっては「残存物取片づけ費用」として、取りこわし・片づけ・搬出の費用が実費で出る。限度は契約による損害保険協会・約款・保険会社
建物滅失登記滅失の日から1か月以内に申請する義務がある不動産登記法57条・法務局
固定資産税賦課期日は1月1日。その日の現況で判断される地方税法359条・市町村の税務課

火災保険:出る費目は契約次第

損保会社の約款には、損害保険金のほか、残存物の取片づけ費用などの費用保険金を定めているものがあります。個人向け火災保険の約款でも、損害の額に含まれる費用として「残存物取片づけ費用」が挙げられています。

ただし、対象になる費用、支払いの限度、請求の条件は、保険会社や商品、特約で異なります。「出るはず」と決めつけず、解体を発注する前に、保険会社へ確認してください。

建物滅失登記:1か月以内

建物が焼けてなくなったときは、登記名義人は、滅失の日から1か月以内に、建物の滅失の登記を申請しなければならないと、不動産登記法57条に定められています。

建物が一部でも残っている場合は、滅失にあたるかどうかの判断が必要になることがあります。名義が亡くなった親のままの場合は、相続の手続きとの関係も出てきます。土地家屋調査士や法務局にご確認ください。

固定資産税:1月1日の現況で決まる

固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日です(地方税法359条)。年の途中で焼けても、その年の税額がすぐ変わるとは限りません。

また、住宅の敷地には、固定資産税の課税標準を下げる住宅用地の特例があります(同法349条の3の2)。建物が焼けてなくなると、翌年1月1日の時点で特例が使えなくなる可能性があります。一方、災害で被害を受けた場合に、固定資産税や都市計画税を、被害の程度に応じて減免する自治体もあります。特例が外れるのか、減免があるのかは、市町村の税務課で確認してください。

解体と固定資産税の関係は空き家を解体すると固定資産税は上がるで書いています。税額の判断は、税理士や自治体にご確認ください。

焼け跡の出口は3つ

焼け跡をどうするかは、おおむね次の3つから選ぶことになります。

焼け跡の3つの出口
費用を先に出せるかで、選び方が変わる
出口先に必要なこと向いている状況
解体して更地で売る解体費・石綿調査費の負担、滅失登記保険や補助で費用の見通しが立つ
焼け跡のまま手放す現況のまま相談できる先を探す解体費を先に出せない、遠方で動けない
相続前なら手を付けない放棄するかどうかの判断相続放棄を考えている

相続前なら、片付けが「承認」になることがある

親が亡くなって相続する前の家が焼けた場合、相続財産を処分すると単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります(民法921条1号)。焼け跡の片付けや解体が、これに当たるのかは事情によります。

放棄を少しでも考えているなら、焼け跡であっても、手を付ける前に弁護士や司法書士へ確認してください。放棄しても管理の責任が残るケースもあります(相続放棄しても家の管理義務は残る)。

焼け跡のまま相談するという選択

解体費を先に出せない場合や、遠方で何度も現地へ行けない場合は、焼け跡のまま相談する道があります。解体して更地にすると、費用を先に負担するうえに、固定資産税の扱いが変わる可能性もあります。壊す前に、現況のまま手放せるかを確かめる順番にしておくと、選べる道を残しやすくなります。解体費が何で決まるかは空き家の解体費用にまとめています。

当社は、火災で焼けた家も訳あり不動産として現況のまま取り扱っています。焼け跡のままの段階、解体前の段階でも、ご相談を受け付けています。片付け・解体・測量を先にしていただく必要はなく、調査は当社で行います。

引き受けられるかどうかは、物件ごとの判断になります。建物の焼けた状態、土地の条件、名義や相続の状況、希望額との開きなどを確認したうえでお答えします。条件によっては、ご希望に沿えないこともあります。

相続を受けると決めていて解体を先に進められないなら、壊す前に連絡してください。更地にすると固定資産税の扱いが変わる可能性があるため、その前に、現況のまま手放す方法を確かめられます。

解体する前に相談する

焼け跡のまま手放すか、判断の順番

  1. 焼け跡に手を付ける前に、写真を残す。罹災証明と保険会社への連絡を先に済ませる
  2. 相続前の家なら、放棄の可能性を確かめる。片付けの前に弁護士・司法書士へ
  3. 自治体に3つ聞く。火災ごみの扱い・解体の補助・固定資産税の減免
  4. 解体するなら、石綿調査費を含む見積もりを複数社から取る。条件をそろえて比べる
  5. 建物がなくなったら、1か月以内に滅失登記を申請する
  6. 解体して売るか、焼け跡のまま手放すかは、費用の見通しが立ってから決める

焼け跡は、放置しても所有者の責任は消えず、急いで壊しても費用が先に出ていきます。費用と期限の確認を先にすれば、あとから選べる道が残ります。

参考にした一次情報

よくある質問

火事で焼けた空き家の焼け跡を、そのまま放置するとどうなりますか。

焼け残った建物が使われていない状態が続くと、空家法の「管理不全空家等」や「特定空家等」として、市町村から指導・勧告を受けることがあります。また、崩れた壁や残った塀が通行人や隣地に被害を出せば、民法717条により所有者が損害賠償を求められるおそれがあります。実際の運用は市町村で異なるため、早めに自治体へ確認してください。

火事が隣の家に燃え移った場合、賠償しなければなりませんか。

失火責任法により、失火した人に重大な過失がなければ、民法709条の損害賠償責任は負わないとされています。重大な過失があった場合は別です。過失の程度は事情によって判断が分かれるため、請求を受けたら弁護士にご相談ください。

焼け跡の片付けや解体の費用は、火災保険で出ますか。

契約によっては、焼け跡の取りこわしや片づけ、搬出にかかる費用を「残存物取片づけ費用」として、実費を保険金の一定の範囲内で支払う場合があります。出るかどうか、いくらまで出るかは契約内容で異なります。片付ける前に、保険会社へ連絡して確認してください。

建物が焼けてなくなったら、登記はどうなりますか。

建物が滅失したときは、登記名義人が、滅失の日から1か月以内に建物の滅失の登記を申請しなければならないと、不動産登記法57条に定められています。登記名義人が亡くなった親のままの場合は、先に相続の手続きが必要になることがあります。土地家屋調査士や法務局にご確認ください。

相続放棄を考えている家が焼けました。片付けてもいいですか。

相続財産を処分すると、単純承認とみなされて放棄できなくなるおそれがあります。放棄を考えている間は、焼け跡であっても、片付けや解体に手を付ける前に、弁護士や司法書士に確認してください。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

このような物件のご相談は、空き家の買取相談のページへ。焼けた家のある市町村の窓口や制度は、全国の市町村ページから探せます。

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ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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