半壊・準半壊の家は公費解体の対象?全壊が原則の理由と壊さない道

剥がれかけた天井板

半壊のり災証明が出た家が公費解体の対象外になるのは、国の補助が全壊を原則としていて、半壊は「特定非常災害」に指定された災害に限って対象になるためです。同じ災害でも市町村によって対象の範囲は違い、隣の市の運用は根拠になりません。この記事では、対象が分かれる仕組み、対象外だったときに使える別の支援、そして壊さずに現況のまま手放す道を整理します。

公費解体の申請で相続人の同意が壁になる話は公費解体と相続の壁に、り災証明の取り方は浸水したときのり災証明にまとめています。ここでは「半壊と判定された後」に絞ります。

半壊と判定されて公費解体の対象外と言われた家でも、壊さずに現況のまま手放す方法を相談できます。応急修理をしていない状態でも構いません。

半壊の家を相談する

目次

公費解体は全壊が原則

公費解体の財源は、環境省の災害等廃棄物処理事業費補助金です。市町村が実施する解体・撤去のうち、この補助金の対象になる範囲を、環境省の「公費解体・撤去マニュアル」が定めています。

生活環境保全上の観点から、明らかに廃棄物と観念できる全壊家屋の解体・撤去費を、災害等廃棄物処理事業費補助金の対象としている。半壊家屋の解体・撤去費については、大量の災害廃棄物の発生が見込まれ、当該災害が「特定非常災害」に指定された場合には、補助対象としている。

——環境省「公費解体・撤去マニュアル 第7版」(令和8年8月)

マニュアルの表では、解体・撤去は全壊が「〇(適用)」、半壊が「△(場合により適用)」です。半壊の家が対象外になるのは市町村の意地悪ではなく、国の補助の線がそこにあるからです。

全壊・半壊=市町村がり災証明で判定する住家の被害の程度。内閣府の基準では、住家の主要な構成要素の経済的被害が住家全体に占める損害割合で判定します。
特定非常災害=「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき、政令で指定される特に大きな災害。

被害の程度損害割合
全壊50%以上
大規模半壊40%以上50%未満
中規模半壊30%以上40%未満
半壊20%以上30%未満
準半壊10%以上20%未満
準半壊に至らない(一部損壊)10%未満

出典: 内閣府「災害救助法の概要 9 住宅の応急修理」(PDF)

半壊が対象になるのは、特定非常災害に指定されたとき

特定非常災害の指定は政令で行われ、内閣府のページに指定された災害が掲載されています(内閣府「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」)。近年の指定は次のとおりです。

  • 令和8年熊本地震(令和8年8月7日公布・施行)
  • 令和6年能登半島地震
  • 令和2年7月豪雨
  • 令和元年台風第19号
  • 平成30年7月豪雨
  • 平成28年熊本地震
  • 東日本大震災

この一覧に無い災害では、半壊家屋の解体費は国の補助対象になりません。局地的な豪雨や竜巻、台風で家が半壊した場合の多くがここに入ります。

自分の災害が指定されているかは、内閣府のページで政令名を探せば分かります。指定は災害が起きてから政令が出るまでに時間差があるので、発災直後の「対象外」が、指定後に「対象」へ変わることもあります。市町村の公表資料は日付ごとに見直してください。

り災証明の区分と災害の指定によって、公費解体の入口がどう分かれるかを示した図解
半壊の家は「特定非常災害か」と「市町村の実施範囲」の2つで分かれる

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

同じ災害でも、市町村で対象が違う

国の補助の範囲を決めるのはマニュアルですが、実際に何を対象にするかは市町村が決めて公表します。2026年に公表された2つの例を並べます。

市災害対象の区分公表の形
熊本市令和8年熊本地震(特定非常災害)全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊申請期限と必要書類を公表
市原市令和8年8月千葉豪雨全壊のみ(5件・令和8年9月11日時点)申請手続きは対象者へ個別に案内
千葉市令和8年8月千葉豪雨全壊のみ受付期間(令和8年9月9日〜12月28日)と必要書類を公表。相続人全員の同意が取れないときの宣誓書の様式あり

出典: 熊本市「被災した家屋等の解体・撤去制度のご案内」/市原市プレスリリース(2026年9月11日・PDF)/千葉市 公費解体のご案内

市原市の資料には、費用の償還について「所有者等が自らの費用で解体・撤去を行う場合、その費用を償還します」とあります。ただし対象は全壊と判定された家屋なので、半壊の家を自費で壊しても償還の対象にはなりません。

「半壊でも対象になった災害があった」という話は、その災害が特定非常災害に指定されていたか、自治体が独自の判断で範囲を広げていたか、どちらかです。自治体ごとに運用が異なるので、自分の市町村の公表資料に書かれた区分だけを根拠にしてください。

なお、り災証明書が出ない空き家や納屋でも、市が公費解体のために現地調査をして半壊以上と判定すれば対象になる運用があります。八代市の案内は八代市の空き家の解体で扱っています。

対象外だったときに使える別の支援

公費解体の対象外になっても、半壊の家に使える制度は別にあります。

制度対象内容期限の目安
住宅の応急修理(災害救助法)半壊以上(大規模半壊・中規模半壊・半壊)1世帯757,000円以内。市町村が業者に依頼し、費用を直接支払う災害発生の日から3か月以内に完了(国の対策本部設置時は6か月)
住宅の応急修理(準半壊)準半壊1世帯367,000円以内同上
被災者生活再建支援金全壊、半壊で解体した世帯、大規模半壊、中規模半壊基礎支援金100万円(全壊・解体世帯)、50万円(大規模半壊)。加算支援金は再建方法で200万〜50万円基礎支援金は発災から13か月以内、加算支援金は37か月以内

出典: 内閣府「災害救助法の概要 9 住宅の応急修理」(PDF・令和8年度の限度額)/内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」(PDF)

応急修理の限度額と基礎支援金の金額を横棒で比べた図解
半壊の家をやむを得ず解体した世帯は、支援金の上では全壊と同じ扱い

見落とされやすいのは、被災者生活再建支援制度の「解体世帯」です。制度の概要には、対象世帯として「住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯」が全壊と並んで書かれています。半壊の家を解体すると、支援金の上では全壊と同じ100万円の基礎支援金の対象になります。

ただし、これは解体費そのものを補う制度ではありません。公費解体の対象外の災害では、解体費は自分で出すことになります。

自費で壊す場合、一定規模以上の解体工事では石綿の事前調査と結果の報告が義務づけられていて、アスベストが見つかれば除去の費用が別に乗ります。見積りを取るときは、この調査費と除去費が含まれているかを確かめてください。

応急修理の申請には、修理前の被害状況が分かる写真が要ります。内閣府の資料は、被災者が写真を撮らずに清掃や修理をしてしまい、申請を諦めるケースがあると注意を促しています。片付ける前、直す前に、外観・室内・設備を撮っておいてください。

り災証明の判定に納得がいかないときは、市町村に再調査を依頼できる運用が一般的です。半壊と大規模半壊の境目で支援の内容が変わるので、判定の根拠を窓口で確かめる価値はあります。

自費で壊す前に、現況のまま手放す方法も並べて相談できます。相続人の間で話がまとまっていないときは、その状況のまま伝えてもらえれば、進め方を答えます。

壊す前に相談する

壊さずに、現況のまま手放す道

対象外と分かった後、多くの方が「自費で壊すか、直して住むか」の二択で考えます。実際にはもう一つ、壊さず直さず、いまの状態のまま手放す道があります。

道先に出る費用進むための条件
応急修理を受けて住み続ける限度額を超える修理費災害救助法の適用と期限内の申請
自費で解体して土地を売る・持つ解体費の全額相続登記が済んでいること
損傷が残ったまま現況で手放す相続登記の費用現況のまま引き受ける買主がいること

自費で解体して土地だけにする道を選ぶ場合、壊した後にも建物の滅失登記と、住宅用地の特例が外れることによる固定資産税の上がり方が残ります。公費解体の後に踏む手続きと同じものなので、壊す前に確かめておいてください。

損傷のある建物を現況で売るときは、被害の内容を買主に伝えたうえで契約します。隠して売ると契約不適合責任を問われることがあり、逆に伝えて免責を決めておけば、引き渡し後の請求を抑えられます。この仕組みは現況渡しと契約不適合責任に書いています。

当社は、建物の状態と築年数を確認したうえで、現況のまま取り扱うことを基本にしています。片付け・解体・測量を売主にお願いすることはなく、役所や登記の調査も当社で行います。半壊のまま、応急修理をしていない状態でも、査定の対象になります。

ただし、条件によっては成立しないことがあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。現地と資料を確認したうえでの個別の判断になります。

被災地では、災害に便乗した事業者による強引な勧誘や高額な請求が問題になっています。内閣府も、修理の契約をする前にまず自治体へ相談するよう呼びかけています。解体や売却も同じで、「今日決めれば」と急がせる相手とは契約しないでください。り災証明と支援の申請を先に済ませ、期限に余裕を持ってから判断して問題ありません。

査定で見ているのは「半壊」の中身

同じ半壊でも、建物の状態は一つひとつ違います。当社が確かめているのは、り災証明の区分そのものではありません。

– どこが壊れたか……屋根と外壁の損傷か、基礎と柱の損傷か。損害割合が同じでも、構造に及んでいるかで判断が変わります
– 築年数と構造……被災前からの老朽化がどの程度あったか
– 応急処置の有無……雨漏りを止めているかどうかで、時間とともに傷みが進む速さが違います
– 登記の名義……亡くなった方のままなら、売る前に相続登記が要ります(相続登記の義務化と期限)
– 土地の条件……接道、区域指定、境界。建物より土地の条件で決まることが多い

被災前から空き家だった実家の場合、遠方で現地に行けないことも多いと思います。見に行けないときの順番は遠方の実家が被災したときの進め方にまとめています。

この記事の要点

  • 公費解体の国の補助は全壊が原則。半壊は特定非常災害に指定された災害だけが対象
  • 指定の有無は内閣府のページで確認できる。指定は発災後に出るので、日付ごとに見直す
  • 同じ災害でも、市町村によって全壊のみ・半壊以上と範囲が違う。隣の市の運用は根拠にならない
  • 対象外でも、応急修理(半壊以上757,000円以内・準半壊367,000円以内)と被災者生活再建支援金は別に使える
  • 半壊の家をやむを得ず解体した世帯は、支援金では全壊と同じ扱い。ただし解体費そのものは自己負担
  • 壊さず直さず、損傷が残ったまま現況で手放す道もある

支援制度の適用と申請期限は災害ごとに異なります。必ず市町村の窓口で確認し、税務の扱いは税理士へご確認ください。

対象外と言われた家をどうするか決めかねている場合は、所在地とり災証明の区分をお知らせください。使える制度の確認と、現況のまま手放す道が現実的かどうかをお伝えします。

よくある質問

半壊のり災証明が出ました。公費解体は使えませんか。

災害によります。環境省の公費解体・撤去マニュアルは、国の補助対象を全壊家屋の解体・撤去としたうえで、半壊家屋はその災害が特定非常災害に指定された場合に補助対象としています。指定されていない災害では、市町村が全壊のみを対象にすることが多く、半壊は対象外になります。自分の災害が指定されているかは内閣府のページで確認できます。

隣の市では半壊でも壊してもらえるのに、うちの市では全壊だけと言われました。

公費解体の実施範囲は、国の補助の枠内で市町村が決めます。同じ災害でも、半壊以上を対象にする市と、全壊のみを対象にする市が並ぶことは実際にあります。市町村の公表資料に書かれた対象区分が答えになるので、隣の市の運用を根拠に交渉しても通りません。

半壊で対象外だった場合、他に使える支援はありますか。

災害救助法が適用された災害なら、住宅の応急修理制度があります。令和8年度の限度額は半壊以上で1世帯757,000円以内、準半壊で367,000円以内です。また被災者生活再建支援法の対象災害では、半壊の家をやむを得ず解体した世帯は全壊と同じ基礎支援金100万円の対象になります。どちらも申請期限と要件があるので、市町村の窓口で確認してください。

半壊の家を自分の費用で解体すると、後から費用は戻りますか。

自費解体の費用償還は、公費解体の対象になる家屋についての制度です。半壊が公費解体の対象外の災害では、自費で解体しても償還の対象になりません。解体してからでは判定も変えられないので、壊す前に市町村へ対象かどうかを確認してください。

半壊のまま、直さず壊さずに手放すことはできますか。

建物の状態と土地の条件によりますが、損傷が残ったままの現況で引き受けられる場合があります。当社は建物の状態と築年数を確認したうえで、片付けや解体を売主にお願いせずに取り扱うことを基本にしています。ただし希望条件や権利関係によっては成立しないこともあり、個別の判断になります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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