地役権の登記が残っている土地は、売れないわけではありません。地役権は土地に付いた権利なので、売っても消えず、そのまま買主に引き継がれます。問題は、その地役権が土地の使い方をどこまで制限しているか、消せる型か消せない型か、です。
目安は、要役地の所有者の協力が得られて目的も終わっていれば消してから売る、送電線のように現に使われていれば付けたまま売る、です。この記事では、承役地か要役地かで変わる売却への影響、通行・送電線・用水の型ごとの消し方、消せないまま現況で手放す道を整理します。
私道の通行や掘削の承諾のように、登記のない形で隣地との関係が問題になる場合は私道の通行・掘削承諾をご覧ください。ここでは、登記簿の乙区に「地役権」として記録されているものに絞ります。
地役権とは、誰の土地を誰のために使う権利か
地役権は、他人の土地を自分の土地の便益のために使う権利です。
第二百八十条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
使われる側の土地を承役地、便益を受ける側の土地を要役地と呼びます。登記は承役地の登記簿に記録され、要役地・目的・範囲が登記事項になります(不動産登記法80条)。
承役地=他人のために使われる側の土地。制限を受ける側。
要役地=便益を受ける側の土地。地役権は要役地の所有権に従って移転します(民法281条)。
| 地役権の型 | 目的 | よくある場面 | 消せるか |
|---|---|---|---|
| 通行地役権 | 承役地の一部を通路として使う | 奥の土地が公道に出るための通路 | 要役地の所有者の協力があれば合意で消せる |
| 送電線(電線路)の地役権 | 上空に送電線を通し、建物の高さや工作物を制限する | 鉄塔と鉄塔の間を送電線が通る、その下の土地 | 送電線がある限り、通常は消せない |
| 用水地役権 | 承役地を通して水を引く | 農地の水路 | 農地でなくなり水路も廃止されていれば合意で消せることがある |
| 眺望・日照の地役権 | 承役地に高い建物を建てない | 別荘地や住宅地の一部 | 要役地の所有者の協力しだい |
地役権の登記には地役権者の名前は書かれず、要役地が記録されます(不動産登記法80条)。送電線の地役権が電力会社のものかどうかは、登記に書かれた要役地の登記事項証明書を取り、その所有者を見て確かめます。
同じ「地役権」でも、消せる見込みがあるのは、要役地の所有者が個人や近隣で、目的がすでに終わっている型です。送電線のように事業者が現に使っている型は、消す前提で動くと止まります。
地役権が付いた土地を売ると、どう影響しますか?
地役権が付いたままでも売れます。自分の土地が承役地なのか要役地なのかで、売るときに伝えることと影響が変わります。
| 承役地を売る | 要役地を売る | |
|---|---|---|
| 権利の行方 | 地役権が付いたまま買主に移る | 地役権が所有権と一緒に買主に移る |
| 買主への影響 | 目的と範囲の分だけ土地の使い方が制限される | 隣地の通行や引込みに依存している事実を引き継ぐ |
| 価格への影響 | 制限の内容で下がることがある | 通行や水利が確保されている点で下がりにくい |
| 伝えるべきこと | 登記の目的・範囲、現地での使われ方、補償契約の有無 | 承役地の所有者との関係、通路の維持の負担 |

承役地の所有者が、地役権の行使のために工作物を設けたり修繕したりする義務を負う定めがあると、その義務は買主(特定承継人)にも引き継がれます(民法286条)。登記事項証明書に「別段の定め」の記載があれば、内容を確かめてから売ってください。
送電線の地役権が付いた土地では、建物の高さ制限や、樹木・工作物の設置制限が登記の「範囲」に書かれています。住宅を建てる予定の買主にとっては大きな制約なので、消せない前提で、制限の内容を最初から開示して買主を探すほうが結果として早く進みます。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
消せる場合の登記
地役権がもう使われていない、目的が終わっている、という場合に消す方法は3つです。
| 消し方 | 要件 | 登記の申請 |
|---|---|---|
| 合意による抹消 | 要役地の所有者が地役権を放棄する、または解除に同意する | 承役地の所有者と要役地の所有者の共同申請(不動産登記法60条) |
| 混同 | 承役地と要役地が同じ人の所有になる(民法179条) | 所有者が単独で抹消を申請できる |
| 消滅時効 | 20年間行使されていない(民法166条2項。起算点は291条) | 要役地の所有者の協力がなければ、判決を得て申請 |
第二百九十一条 第百六十六条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。
実務でいちばん多いのは合意による抹消です。要役地の所有者に事情を話し、放棄の書面と印鑑証明書をもらって共同で申請します。要役地が分筆されて所有者が何人にも分かれていると、その全員の協力が要ります。分譲地の通路の地役権でこの形になり、止まることがあります。
合意で抹消するときに揃えるものは、次のとおりです。
| 揃えるもの | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登記原因証明情報 | 要役地の所有者が地役権を放棄した書面(放棄証書)など | 不動産登記法61条 |
| 要役地の所有権の登記識別情報(古い登記なら要役地の権利証=登記済証) | 地役権者は地役権の登記名義人にならないため、地役権を登記したときに登記識別情報は通知されていません。代わりに、要役地を取得したときの所有権の登記識別情報を使います | 不動産登記法22条・80条2項 |
| 印鑑証明書 | 書面で申請する場合の要役地の所有者のもの。作成後3か月以内 | 不動産登記令16条 |
| 登録免許税 | 不動産1個につき1,000円 | 登録免許税法 別表第一 第一号(十五) |
登記識別情報や登記済証が見つからない場合は別の手続きになるので、司法書士に相談してください。
要役地の所有者が分からない、連絡が取れないという場合は、隣地の所有者が不明で境界確定できない土地の売却で書いた所有者の探し方が、そのまま使えます。
同じ乙区に古い個人の抵当権も残っている場合は、抵当権者が亡くなっている個人の抵当権をご覧ください。

消せないなら、付けたまま現況で手放す
送電線の地役権、要役地の所有者が多数で協力が集まらない通行地役権、事情が分からない古い地役権。こうした型は、消してから売るという順番に縛られると、いつまでも動きません。
仲介で売る場合、買主が住宅ローンを組むなら、金融機関が地役権の内容を見て融資の可否を判断します。高さ制限のある送電線下の土地は、この段階で買主の範囲が狭まります。
当社は、地役権や仮登記などの権利が残った土地についても、現況のまま取り扱うことを基本にしています。登記や役所の調査は当社で行い、要役地の所有者の調査を売主にお願いすることはありません。地役権を消してからでないと査定できない、ということはありません。未登記や私道、境界に関わるご相談は、未登記・私道・境界の相談のページにまとめています。
ただし、条件によっては成立しないことがあります。他で断られた物件も、お引き受けできる場合があります。地役権の内容によって土地の使い道が大きく制限される場合は、現地と登記の資料を確認したうえでの個別の判断になります。
査定で見ているのは「目的と範囲」と「現地で使われているか」
地役権の登記が残った土地のご相談で、当社が先に確かめるのは、地役権があること自体ではありません。
– 登記の目的と範囲……「通行」「電線路の設置」「用水」のどれか。範囲が土地の一部か全部か。高さ制限や工作物の制限の有無
– 要役地の登記……要役地の所有者が誰で、何人いるか。分筆や相続で増えていないか
– 現地で使われているか……通路として実際に通っているか、送電線が現に通っているか、水路が残っているか
– 補償契約や覚書の有無……線下補償、通路の維持費の負担など、登記に出てこない約束
– 土地そのものの条件……接道、区域指定、境界。地役権より先に、ここで取り扱えるかが決まります
隣地との関係で登記に出てこない問題は、越境している土地の売却と境界未確定の土地の売却でも扱っています。地役権と一緒に確かめることが多い論点です。
この記事の要点
- 地役権の登記が残っていても土地は売れる。権利は土地に付いて買主に移る
- 承役地は制限を受ける側、要役地は便益を受ける側。どちらを売るかで伝えることが変わる
- 消せる型は、要役地の所有者が個人や近隣で、目的が終わっているもの。合意・混同・消滅時効の3つの道
- 送電線の地役権は現に使われている限り消せない。制限の内容を開示して売る
- 要役地の所有者が多数だと合意が集まらない。消せないまま現況で手放す道がある
地役権の消滅の可否と登記の申請については、司法書士・弁護士へご確認ください。
乙区に地役権が残った土地をどうするか決めかねている場合は、登記事項証明書の乙区の内容と、現地でどう使われているかをお知らせください。消せる型かどうかと、現況のまま取り扱えるかどうかをお伝えします。
よくある質問
登記簿の乙区に「地役権設定」とあります。この土地は売れますか。
売れます。地役権は土地に付いた権利なので、売っても消えず、そのまま買主に引き継がれます。問題になるのは、その地役権が土地の使い方をどこまで制限しているかです。送電線のための地役権で建物の高さに制限がある、隣地の通路として使われている、といった内容によって、買主の範囲と価格が変わります。
承役地と要役地は、どちらが不利ですか。
承役地は、他人の土地のために自分の土地を使わせる側なので、制限を受ける側です。要役地は便益を受ける側で、地役権は要役地の所有権と一緒に移転します。自分の土地が承役地なら制限の内容を、要役地なら隣地の通行や引込みに依存している事実を、それぞれ買主に伝える必要があります。
地役権はもう使われていません。登記を消せますか。
地役権の抹消登記は、承役地の所有者と要役地の所有者の共同申請が原則です。要役地の所有者の協力が得られれば合意で消せます。承役地と要役地が同じ人の所有になれば混同で消え、単独で抹消できます。長く使われていない場合は消滅時効の主張も考えられますが、起算点と期間の判断が要るので司法書士に確認してください。
電力会社の送電線の地役権は消せますか。
送電線が現に通っている限り、電力会社が地役権を手放すことは通常ありません。この場合は消す前提ではなく、付いたまま売ることになります。地役権の目的と範囲(建物の高さ制限、工作物の設置制限など)を登記事項証明書で確かめ、買主に説明したうえで契約します。線下補償の契約があれば、その承継も確認します。
地役権を消せないまま、現況で手放せますか。
地役権が付いたままの現況で引き受けられる場合があります。当社は、権利関係や境界に問題がある土地も現況のまま取り扱うことを基本にしていて、登記や役所の調査は当社で行います。ただし地役権の内容によって土地の使い道が大きく制限される場合など、条件によっては成立しないこともあり、個別の判断になります。
この記事の監修者
登記や境界が整っていなくても、売れるか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
測量や登記を先にしていただく必要はありません。現況のまま確認します。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

