仮登記が残ったままの不動産は売却できる?抹消と出口

山を背にした荒れた敷地に積み上げられた古材

仮登記が残ったままの不動産でも、所有権を移すこと自体はできます。ただし買主が現れにくく、売却の話が途中で止まりやすいのも事実です。

この記事では、仮登記が何を意味するのか、消すには誰の承諾が要るのか、そして消せないまま手放す道はあるのかを順に整理します。

登記簿を取り寄せて初めて気づいた、という方に向けて書いています。

目次

仮登記とは、まだ「本番」になっていない登記

仮登記とは、将来の本登記のために、登記簿の順位だけを先に押さえておく記録です。不動産登記法105条が2つの場合を定めています。

本登記=権利の変動を正式に記録する、通常の登記のこと。仮登記に対してこう呼びます。
順位=同じ不動産に複数の権利が登記されたとき、どちらが先かという優先関係のこと。

仮登記の2つの種類
1号仮登記と2号仮登記の違い

登記簿では、甲区(所有権に関する欄)に「所有権移転請求権仮登記」「条件付所有権移転仮登記」といった記載で現れます。乙区(所有権以外の欄)に抵当権の仮登記が入っていることもあります。

大事なのは、仮登記のままでは所有権はまだ移っていないという点です。名義はご自身のままですし、固定資産税もご自身に課されます。

仮登記が残っていると、なぜ売却が止まるのか

理由は「順位がさかのぼる」という一点に尽きます。仮登記に基づいて本登記がされた場合、その順位は仮登記をしたときの順位によります(同法106条)。

つまり、あとから買った人より、先に仮登記を入れていた人のほうが強い立場になります。

買主から見た心配中身
所有権を失う可能性仮登記に基づく本登記がされると、登記官の職権で、あとから入った権利の登記が抹消される(同法109条2項)
住宅ローンが通りにくい金融機関は、抵当権の順位が守られない状態を避ける傾向がある
仲介での取り扱いが重い買主への説明事項が増え、話がまとまるまでに時間がかかりやすい

「仮登記だから弱いのだろう」と受け取られがちですが、実務は逆です。順位がさかのぼる分、後から入った権利より強く働きます。仲介の現場で敬遠されるのは、この性質があるためです。

なお、所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がいる場合、その第三者の承諾があるときに限って申請できます(同法109条1項)。買主にとっては「承諾しなければよい」という話ではなく、承諾しない限り相手が裁判で判決を取りに来る、という展開もあり得ます。

ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。

残ったままになりやすい3つのパターン

ご相談の中では、次の3つが目立ちます。

よくある仮登記どうして残ったのか
農地の売買予約農地は農業委員会等の許可がなければ所有権が移らない(農地法3条)。許可を待つ間に仮登記を入れ、その後に話が流れたまま放置された
借金の担保(仮登記担保)返済できなかったときに土地で代わりに返す、という約束にもとづく仮登記。完済したのに抹消の手続きだけがされていない
親族間の約束「将来この土地を渡す」という取り決めで入れた仮登記が、当事者が亡くなって宙に浮いた
農道沿いに並ぶビニールハウスと剪定された木
農地は許可が要るため、仮登記が残りやすい

2番目の仮登記担保については、仮登記担保契約に関する法律という専用の法律があります。債権者が本登記に進むには、清算金の見積額を通知し、その通知が届いた日から2か月(清算期間)を経過しなければ所有権移転の効力は生じません(同法2条1項)。

債務者側には受戻し(土地を取り戻すこと)の権利もありますが、清算期間の経過から5年が過ぎたとき、または第三者が所有権を取得したときは行使できなくなります(同法11条ただし書)。古い仮登記担保では、この期間の計算が争点になることがあります。

いずれの場合も、登記の記載だけでは事情が読み取れません。登記の原因と日付を手がかりに、当時の経緯を家族に確認するところから始めることになります。

消すには、誰の承諾が要るのか

原則は、登記権利者と登記義務者が共同で申請する形です。ただし仮登記には例外があります。

仮登記の抹消は仮登記名義人が単独で申請でき、その承諾がある場合には登記上の利害関係人も単独で申請できます(同法110条)。所有者は利害関係人にあたるため、名義人から承諾書(実印・印鑑証明書付き)をもらえれば、所有者側だけで消せます

仮登記を消すまでの流れ
名義人が見つかるかどうかで道が分かれる
  • 仮登記名義人が存命・存続していて、連絡が取れる
  • すでに完済している、または予約が流れたことに双方の認識のずれがない
  • 名義人が承諾書に実印を押し、印鑑証明書を出してくれる
  • 名義人が亡くなり、相続人が多数に広がっている
  • 法人がすでに解散し、清算人の所在も分からない
  • 相手が承諾を渋り、条件を出してきている

上の3つに当てはまると、承諾書を取る道は現実的でなくなります。話し合いに何年もかかったまま、固定資産税だけを払い続けている状態は珍しくありません。

名義人が見つからないとき

共同して抹消を申請すべき相手の所在が分からない場合、登記権利者は公示催告を申し立てることができます(同法70条1項)。裁判所が官報などで呼びかけ、名乗り出る人がいなければ除権決定が出され、これを得たうえで単独で抹消を申請できます(同条3項)。

同法70条2項には、存続期間が満了している場合に所在不明とみなす特則がありますが、対象は地上権・永小作権・質権・賃借権・採石権・買戻しの特約に関する登記です。所有権の仮登記はここに含まれません。「期間が過ぎているから簡単に消せるはず」とは考えないほうが安全です。

また、被担保債権の弁済期から20年が経過し、その後に全額を供託した場合に単独で抹消できる規定(同条5項)は、先取特権・質権・抵当権が対象です。仮登記担保による所有権移転請求権仮登記には、そのまま当てはめられません。この点は休眠抵当権の抹消とは扱いが違うところです。

費用の内訳のうち、税金の部分だけは先に見当がつきます。登記の抹消にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(同じ申請書で20個を超える不動産をまとめて申請する場合は、申請件数1件につき2万円)。土地と建物があれば2個と数えます。

かかるもの目安
登録免許税(抹消)不動産1個につき1,000円。20個を超えるときは1件2万円
登記事項証明書・戸籍などの取得費相手方や相続人をたどる範囲に応じて増える
司法書士の報酬事案の難しさで変わる。着手前に見積もりをご確認ください
公示催告・除権決定の申立て裁判所の手続きが加わるため、承諾書で済む場合より重くなる

期間も相手方の調査にどれだけ手間がかかるかで大きく変わります。承諾書がすぐもらえる場合と、相続人を何人もたどる場合とでは、同じ手続きとは思えないほど差が出ます。

仮登記が残っている間、固定資産税は誰に払うのか

固定資産税は固定資産の所有者に課され、土地と家屋については登記簿に所有者として登記されている人が所有者とされます(地方税法343条1項・2項)。仮登記は所有権を移す登記ではないため、納税通知書はご自身のところに届き続けます。

気になる点扱い
誰に課されるか登記簿上の所有者。仮登記の名義人ではありません(同法343条1項・2項)
いつの時点で決まるかその年度の初日が属する年の1月1日(同法359条)
年の途中で本登記になったらその年度に納める人は1月1日時点の所有者のまま。当事者間で日割りの精算をしても、税を納める人が入れ替わるわけではありません

納税通知書に付いてくる課税明細書に載るのは、所在・地番・地目・地積とその年度の価格などです(同法364条3項)。仮登記が付いているかどうかは、課税明細書には出てきません。毎年の通知書を見ているだけでは気づけず、登記事項証明書を取り寄せて初めて分かるのは、このためです。

なお、同じ市町村内で持っている土地の課税標準額の合計が30万円(家屋は20万円)に満たない場合、市町村は固定資産税を課することができません(同法351条)。山林や原野では、これに当たって課税されていないこともあります。ただし合計で判定するため、同じ市町村に他の不動産があると超えることがあります。

課税されていない=負担がない、ではありません。所有者である以上、境界の立会いを求められたり、隣地や道路の話が回ってきたりする立場は続きます。仮登記が付いていると、その相談も持ちかけられた側で止まりやすくなります。

つまり、話がまとまらないまま何年が過ぎても、負担する側は変わりません。抹消の話し合いが長引くほど、消えない登記に対して税と手間だけを払い続ける形になります。

消せないまま手放せるか

ここが、士業のサイトではあまり触れられない部分だと思います。

結論から言えば、仮登記が残ったままでも、所有権移転そのものは登記できます。買主がその状態を承知したうえで引き受ける、という形です。

もっとも、仲介で一般の買主を探す場合は、この形は成立しにくくなります。住宅ローンが使えず、将来所有権を失う可能性を説明したうえで買ってもらう必要があるためです。

買取であれば、順番を入れ替えられる場合があります。

当社は、調査を当社で行い、売主に調べていただく形は取っていません。片付け・解体・測量も不要で、現況のままで検討します。ただし権利の内容によっては成立しないこともあり、個別の判断になります。

参考までに、登記に古い権利が残ったままの案件として、抵当権が残ったままの不動産をその状態で買い取り、取得後に当社の負担で抹消まで進めた案件があります。仮登記も同じように進むとは限りませんが、売主が先に費用を負担する順番でなければ動けない、というわけではないことは申し添えておきます。

なお、価格の話より先に確かめていただきたいのは、持ち続けたときの負担です。仮登記が付いていても固定資産税は毎年かかりますし、建物があれば管理の手間も続きます。売れない土地の処分を検討されている方は、そちらもあわせてご覧ください。

動く前に、手元で確かめられること

法務局に行かなくても、オンラインで登記事項証明書を請求できます。まず次の4点を読み取ってみてください。

  1. 仮登記の種類 — 「所有権移転請求権仮登記」か「条件付所有権移転仮登記」か、抵当権の仮登記か
  2. 登記の原因と日付 — 「売買予約」「代物弁済予約」など。日付が古いほど相手を追うのが難しくなります
  3. 仮登記名義人 — 個人名か法人名か。法人なら商業登記で存続を確認できます
  4. 地目 — 農地(田・畑)であれば、農地法の許可という別の関門が加わります

このうち2と3が分かれば、承諾書を取りに行く道が現実的かどうかの見当はつきます。

相続で引き継いだ不動産であれば、相続した空き家の売却の準備と同時に進めるのが効率的です。2024年4月から相続登記が義務化されており、名義を整える作業はいずれ必要になるためです。未登記建物が付いている、境界が不明といった事情が重なっている場合も、切り分けて考えるより一度まとめてご相談いただくほうが早いことが多いです。

税務・法務の具体的な判断については、税理士・司法書士へご確認ください。この記事は、動き出す前に何を見ればよいかを整理するためのものです。

よくある質問

仮登記が付いたままでも、不動産を売ることはできますか。

所有権の移転そのものは可能です。仮登記は所有権を移す登記ではなく、将来の登記のために順位を押さえておく記録だからです。ただし、その仮登記に基づいて本登記がされると買主が所有権を失う可能性があるため、仲介では買い手が付きにくいのが実情です。

何十年も前の仮登記は、時効で自然に消えませんか。

登記は誰かが手続きをしない限り自動では消えません。仮登記の元になった請求権が消滅していたとしても、記録だけが残り続けます。抹消するには、仮登記名義人の承諾を得るか、裁判所の手続きを経る必要があります。

仮登記を消すのに、相手の同意は必ず要りますか。

仮登記の抹消は仮登記名義人が単独で申請でき、その承諾がある場合には登記上の利害関係人も単独で申請できます(不動産登記法110条)。所有者は利害関係人にあたるため、承諾書と印鑑証明書がそろえば所有者側だけで手続きできます。相手が見つからない場合は別の方法を検討することになります。

仮登記が付いている間、固定資産税は誰が払うのですか。

登記簿上の所有者、つまりご自身に課されます。固定資産税は固定資産の所有者に課され、土地・家屋については登記簿に所有者として登記されている人が所有者とされるためです(地方税法343条1項・2項)。仮登記の名義人に課されることはありません。判定はその年度の初日が属する年の1月1日時点です(同法359条)。

仮登記名義人がすでに亡くなっている、または会社が無くなっている場合は。

個人であれば相続人をたどり、法人であれば清算人を探すことになります。それでも所在が分からないときは、裁判所に公示催告を申し立て、除権決定を得たうえで単独で抹消を申請する方法があります(同法70条1項・3項)。手続きは司法書士へご相談ください。

農地に売買予約の仮登記が入っています。どうすればよいですか。

農地は農業委員会等の許可がなければ所有権が移らないため、許可待ちの間に仮登記を入れる実務があります。話が流れたまま残っているケースが多く、まず登記事項証明書で原因と日付、名義人をご確認ください。相手が特定できれば承諾書で消せる可能性があります。

消してから売らないと、買い取ってもらえませんか。

必ずしもそうではありません。当社は調査を自社で行い、売主に調べていただく形は取っていません。片付け・解体・測量も不要で、現況のままで検討します。ただし権利の内容によっては成立しないこともあり、個別の判断になります。

この記事の監修者

小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)

不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷再建築不可市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。

ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号

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ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

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