山林を相続したら届出が要るのか、出してないまま何年も経っていたらどうなるのか。結論から言うと、地域森林計画の対象の民有林なら、相続でも90日以内に市町村へ「森林の土地の所有者届出」が必要で、出していなくても今から出せます。届出をしていないことで売買が止まることはありませんが、手放すつもりなら登記と届出を先に整えたほうが早く進みます。
この記事では、届出の対象と期限、出してないまま経過した場合の扱い、相続登記との違い、売るときに障害になるか、届出を機に山林を手放す出口を整理します。山林の処分そのものは山林・原野の処分と山林・原野の売却方法に書いています。
届出の対象と期限
森林法10条の7の2は、地域森林計画の対象となっている民有林について、新たにその土地の所有者となった者は市町村長に届け出なければならない、と定めています(森林法10条の7の2)。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 対象の土地 | 地域森林計画の対象となっている民有林 | 森林法10条の7の2第1項 |
| 対象の人 | 売買・相続・贈与などで新たに所有者となった人。面積の大小は問わない | 同上 |
| 期限 | 所有者となった日から90日以内 | 森林法施行規則7条1項 |
| 提出先 | 土地のある市町村の長 | 森林法10条の7の2第1項 |
| 添付書類 | 土地の位置を示す地図、登記事項証明書その他届出の原因を証明する書面 | 森林法施行規則7条2項 |
| 不要な場合 | 国土利用計画法23条の届出をしたとき | 森林法10条の7の2第1項ただし書 |
地域森林計画の対象の民有林=都道府県が立てる地域森林計画で対象にしている森林。国有林以外の森林の大半が入ります。自分の山林が対象かどうかは、市町村の林務の窓口に地番を伝えれば分かります。
相続の場合、「所有者となった日」は原則として相続開始の日です。遺産分割で取得者が決まった場合も、90日はすぐに過ぎます。亡くなったことを知った時点で、山林があるなら市町村に一報を入れておくのが、期限に間に合わせるいちばん確実な方法です。
出してないまま何年も経った場合
届出をせず、または虚偽の届出をした者は、10万円以下の過料の対象です(森林法213条)。ただし、過料の手続きに進むかどうかは個別の判断で、気付いた時点で届け出れば受け付けてもらえるのが通常です。期限を過ぎていることを理由に、届出を拒まれることはありません。

過料より現実に困るのは、次の点です。
| 経過 | 起きること | なぜ困るか |
|---|---|---|
| 届出なし | 市町村の林地台帳の所有者が亡くなった方のまま | 境界確認の照会や意向調査が、亡くなった方あてに届く |
| 数年 | 森林経営管理の意向調査に答えられない | 市町村に管理を委ねる機会を逃す |
| 次の相続 | 相続人が枝分かれし、誰が届け出るかも決まらない | 登記も届出も動かなくなる |
市町村は、地域森林計画の対象の民有林について、所有者の氏名・住所、所在・地番・面積、境界の測量の実施状況を記載した林地台帳を作っています(森林法191条の4)。届出はこの台帳の情報源のひとつで、出していないと台帳の所有者が古いまま止まり、市町村からの連絡が届かなくなります。
「何年も何も言われなかったから、届出は要らない」ではありません。市町村は台帳の所有者あてに連絡しているだけで、届いていないのは宛先が古いからです。次の相続が起きる前に出しておくと、相続人が増えて手続きが止まる事態を避けられます。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
届出と相続登記は別物
相続で山林を取得したときの手続きは、法務局と市町村の2本立てです。片方をしても、もう片方には伝わりません。
| 手続き | 提出先 | 期限 | 怠ったとき | 目的 |
|---|---|---|---|---|
| 相続登記 | 法務局 | 取得を知った日から3年以内 | 10万円以下の過料(不動産登記法164条) | 名義を公に示す。売るときの前提 |
| 森林の土地の所有者届出 | 市町村 | 所有者となった日から90日以内 | 10万円以下の過料(森林法213条) | 市町村が所有者を把握する。林地台帳に反映 |
相続登記の期限と費用の抑え方は相続登記の義務化と期限に書いています。価額100万円以下の土地は令和9年3月31日まで登録免許税が免税で、評価の低い山林の多くはこの範囲に入ります。
順番は、相続登記を先に、届出をあとに。届出書には登記事項証明書を添えるので、登記を済ませてから届け出ると書類が一度でそろいます。ただし登記が長引きそうなら、90日の期限を優先して、相続を証する戸籍などを添えて先に届け出る方法もあります。市町村に相談してください。
売る・手放すときに届出は障害になるか
届出をしていないことで、売買契約や所有権の移転が無効になることはありません。森林法の届出は所有者を把握するための制度で、農地法の許可のように移転の効力を左右するものではないからです。
ただし、手放す場面では次の点で効いてきます。
- 買主側も届出をする。 買主が90日以内に届け出るとき、前の所有者の届出が出ていないと台帳の記載がつながらず、市町村から確認が入ることがある
- 境界の確認。 林地台帳には境界の測量の実施状況が載る。届出のときに市町村が持つ地図と照らすと、境界が分からない山林かどうかの見当が付く
- 森林経営管理制度。 市町村が意向調査をして経営管理を引き受ける仕組みがある。台帳の所有者が古いままだと、この調査が届かない
売るために先に届出が要る、というわけではありませんが、届出と登記が整っている山林は、買う側の調査が短くて済みます。売主側で境界を測る必要はありません。境界が分からない山林の扱いは境界未確定の土地の売却で扱っています。
届出を機に、山林を手放す出口
届出のために市町村へ行くと、自分の山林の場所・面積・境界の状況・保安林かどうかが一度に分かります。ここで得た情報が、そのまま手放すときの材料になります。

| 出口 | 先に出す費用 | つまずく点 |
|---|---|---|
| 隣接する山林の所有者・森林組合に打診 | 原則なし | 相手も増やしたがらないことが多い |
| 森林経営管理制度で市町村に経営管理を委ねる | 原則なし | 所有は続く。市町村が引き受けるかは意向調査と判断次第 |
| 相続土地国庫帰属制度 | 手数料1筆14,000円+負担金(森林は面積で算定) | 境界が明らかでない土地は申請できない |
| 仲介で売る | 売れれば仲介手数料 | 買主が現れないと動かない |
| 現況のまま取り扱う会社 | 原則なし | 場所と状態によっては引き受けられない |
国庫帰属の森林の負担金は面積に応じて算定され、例えば1ヘクタール(10,000平方メートル)で367,000円、3,000平方メートルで299,000円が目安です(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令5条)。境界が明らかでない土地は申請の段階で却下されるため、山林ではここで止まることが多い点に注意してください。制度の全体は相続土地国庫帰属制度に整理しています。
- 届出を出していないから売れない、と諦める — 届出は移転の効力に関係ありません。今から出せます
- 相続放棄で山林だけ手放そうとする — 相続放棄は全財産の放棄で、山林だけを選べません(相続放棄と不動産の管理義務)
- 固定資産税が来ないから所有していないと思う — 免税点の下にあるだけで、所有も届出の義務も変わりません(山林の固定資産税を止める)
当社が山林のご相談で確かめているのは、現地までたどり着けるか、一筆の面積と形、登記の地目と現況、保安林や砂防指定地などの法令の指定、名義と共有の状況です。これらは当社で調べており、売主に測量や現地確認をお願いすることはありません。ただし、場所と状態によっては成立しないことがあり、希望額との開きが大きい場合や相続人の間で合意ができていない場合も同じです。
登記は司法書士へ、税務は税理士へご確認ください。所在地と地番、手元の書類の有無を教えていただければ、届出の要否の確認から当社で進めます。山林の取り扱い全体は山林・原野・別荘地の買取・売却相談にまとめています。分収林契約が付いた山林は分収林契約が付いた山林の売却、宅地とまとめて手放す場合は宅地と山林をまとめて手放すもご覧ください。
よくある質問
山林を相続しました。届出は本当に必要ですか。
地域森林計画の対象になっている民有林であれば必要です。森林法10条の7の2により、新たに森林の土地の所有者になった人は市町村長へ届け出なければならず、相続で取得した場合も除かれていません。期限は所有者となった日から90日以内(森林法施行規則7条)で、面積の大小や有償・無償は問われません。国土利用計画法23条の届出をした場合だけ不要です。
届出をしないまま何年も経っています。罰則はありますか。
届出をせず、または虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料の対象です(森林法213条)。ただし過料を科されるかどうかは個別の判断で、気付いた時点で届け出れば受け付けてもらえるのが通常です。期限を過ぎていることを理由に届出を拒まれることはありません。放置するより、今から出すほうが確実です。
届出をしていない山林は、売れないのですか。
届出の有無で売買そのものが無効になることはありません。ただし市町村の林地台帳の所有者情報が古いままだと、境界確認の照会や森林経営管理の意向調査が届かず、買主側の調査でも所有者をたどりにくくなります。手放す予定があるなら、相続登記と届出を先に整えておくほうが話が早く進みます。
相続登記をすれば、森林の届出は要らないのですか。
別の手続きです。相続登記は法務局への申請で、期限は取得を知った日から3年。森林の届出は市町村への提出で、期限は90日です。登記をしても市町村には自動で伝わらないため、両方が要ります。届出書には位置図と登記事項証明書などを添えるので、相続登記を済ませてから届け出ると添付書類がそろいます。
届出をしても、山林は要りません。手放せますか。
農林業をしない相続人が山林を持ち続ける義務はありません。相続した山林なら相続土地国庫帰属制度の対象で、森林の負担金は面積に応じて算定され、1ヘクタールで367,000円が目安です。境界が明らかでない土地は申請できません。当社は山林を現況のまま取り扱っており、所在地と地番が分かれば調べてお答えします。すべてをお引き受けできるとは限らず、個別の判断になります。
この記事の監修者
使っていない山林・原野・別荘地を、手放せるか
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