遠方の実家を管理できないとき、空き家のまま持ち続けるか手放すかを決めるのは、家の価値よりも「この先何年、誰が通えるか」です。この記事では、管理が止まった空き家に法律上何が起きるのか、管理委託・貸す・売る・現況のまま手放すの違い、そして先に費用を負担せずに手放せるかを順に整理します。
実際に寄せられるご相談でも、「売れるならいくらか」より先に「もう通えない」「片付ける余力がない」という話が出てきます。価格の前に、持ち続けるコストと手間を並べて見るところから始めます。
遠方の実家は、管理できなくなってから気づくまでが長い
近くに住んでいれば、雨漏りや庭木の伸びすぎは、通りがかりに気づけます。遠方だと、最初に気づくのは近所の方か役所ということが珍しくありません。連絡が来た時点で、もう傷みが進んでいるわけです。

もう一つの理由は、通う人が一人に偏ることです。兄弟のうち実家に近い人、あるいは定年して時間のある人が通い役になり、その人の体力や仕事が変わった時点で管理が止まります。止まった後に「どうするか」を兄弟で話し始めると、名義や費用の分担の話が一度に出てきて、さらに時間がかかります。
管理が止まる日は、通い役の事情で突然来ます。
まだ通えるうちに、持ち続けるか手放すかの方針だけは決めておくのが、いちばん費用のかからない順番です。
管理しないまま置くと、法律上はどう進むか
空き家の所有者には、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)5条で、周辺に悪影響を及ぼさないよう適切に管理する努力義務があります。努力義務なので、管理していないこと自体で罰せられるわけではありません。ただ、状態が悪くなると市町村が段階を踏んで動きます。
2023年の改正(国土交通省:令和5年12月13日施行)で、倒壊寸前の「特定空家等」になる手前の段階にも、管理不全空家等として指導・勧告ができるようになりました。
| 段階 | 根拠 | 所有者に起きること |
|---|---|---|
| 管理不全空家等への指導 | 空家法13条1項 | 特定空家等にならないための措置を求められる |
| 管理不全空家等への勧告 | 空家法13条2項 | 修繕・立木竹の伐採などを勧告される。住宅用地特例が外れる |
| 特定空家等への助言・指導 | 空家法22条1項 | 除却・修繕などを求められる |
| 特定空家等への勧告 | 空家法22条2項 | 猶予期限付きで措置を勧告される。住宅用地特例が外れる |
| 命令・代執行 | 空家法22条3項以下 | 命令に従わないと、市町村が代わりに行い費用を請求される |
外れる特例は地方税法349条の3の2の住宅用地特例(200㎡以下の部分=住戸1戸につき200㎡までは課税標準が6分の1、それを超える部分は3分の1)です。管理不全空家等の勧告の段階で、すでに税の扱いが変わることだけ押さえてください。実際の税額の変わり方は評価額などで異なるため、市町村の資産税の窓口で確かめてください。税の扱いの詳しい説明は遠方の実家の売却、段階の流れは空き家を放置したときのリスクにまとめています。
雑草や庭木について、市町村から草刈りを求める通知が届くこともあります。そのときの対応は空き地の草刈りの通知が届いたときで説明しています。
ご自身の物件が当てはまるか判断が難しい場合は、個別にお答えします。
物件の所在地さえ分かれば、現況のまま買い取れるかをお伝えできます。
遠くに住んでいても、所有者の責任は残る
税とは別に、空き家が他人に損害を与えたときの責任があります。民法717条は、建物などの設置や保存に問題があって他人に損害が出たとき、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償すると定めています。所有者の側には「注意していた」ことで責任を免れる定めがありません。
空き家では、所有者が占有者を兼ねていることが多いはずです。屋根材や外壁が台風で飛んで隣家や通行人に当たった、塀が倒れた、といった場面で問われるのがこの責任です。遠方に住んでいて気づけなかった、という事情は、責任を軽くする理由にはなりにくいと考えておいたほうがよいでしょう。
| 誰が関わっているか | 717条の責任の向き先 |
|---|---|
| 所有者が自分で持っている(誰も住んでいない) | 所有者が占有者を兼ねるため、所有者 |
| 借主が住んでいる | まず占有者である借主。借主が必要な注意をしていたときは所有者 |
| 管理会社に見回りを委託している | 委託しても所有者であることは変わらず、所有者の責任は残る |
さらに民法には、管理不全建物管理命令(民法264条の14)があります。所有者による建物の管理が不適当で、他人の権利や利益が侵害される、またはそのおそれがある場合に、利害関係人の請求で裁判所が管理人を選び、その管理人が建物を管理する仕組みです。空家法14条3項により、管理不全空家等・特定空家等については市町村長も地方裁判所にこの命令を請求できます。
押さえておきたいのは費用の行き先です。民法264条の14第4項が準用する264条の13第2項により、管理人による管理の費用と報酬は所有者の負担とされています。所有者が動かないと、所有者の手を離れたところで管理が進み、その費用は所有者に戻ってくる、という順番になります。
なお、相続放棄をしても管理の問題は残る場面があります。「放棄すれば関係なくなる」と考えて動く前に、そちらも確認してください。
管理を続けるか、手放すか。5つの道の違い
遠方の実家を管理できないときの選択肢を並べます。比べる軸は価格ではなく、先に誰が費用を出すかと、所有者の手間がどこまで残るかです。
| 道 | 先に出ていく費用 | 所有者に残る手間 | 向いている場合 |
|---|---|---|---|
| 自分で通い続ける | 交通費・税・保険・修繕 | すべて | 数年内に住む・使う予定がはっきりしている |
| 管理を委託する | 委託料に加え、税・保険・修繕 | 判断と支払い。責任は残る | 方針を決めるまでのつなぎ |
| 貸す・空き家バンクに出す | 貸せる状態にする修繕 | 借主対応・修繕の判断 | 建物が傷んでおらず、借り手がいる地域 |
| 仲介で売りに出す | 片付け・測量などを求められることがある | 買主が見つかるまで管理が続く | 需要のある地域で、時間をかけられる |
| 現況のまま手放す | 片付け・解体の先出しは不要。建物の状態によっては、成立しない場合もある | 名義と合意の準備 | もう通えない、片付ける余力がない |
管理委託は、責任を移す手段ではありません。委託しても空家法5条の努力義務も、民法717条の責任も所有者に残ります。市町村が指定する空家等管理活用支援法人(空家法23条・24条)のように、委託を受けて定期的な状態確認をする法人もありますが、指定の有無は市町村によります。委託は、決めるまでの時間を買うものと考えるのが現実的です。
持ち続ける道を選ぶなら、年間でいくら出ていくかを一度書き出しておくと、手放す道と比べやすくなります。金額は家ごとに違うので、項目と調べる先だけ並べます。
| 年間で出ていくお金 | どこで調べるか |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年届く納税通知書と課税明細書(届かない場合は市町村の資産税の窓口) |
| 火災保険などの保険料 | 加入中の保険証券。空き家になったことを保険会社に伝えたかも確認 |
| 通う交通費 | 往復の交通費×年に通う回数 |
| 管理委託料 | 委託先の見積もり(巡回の回数と内容で変わる) |
| 電気・水道の基本料金 | 契約を残している場合の各社の請求書 |
| 草刈り・庭木の手入れ・小さな修繕 | 地元の業者や、シルバー人材センターがある市町村ではその窓口 |
貸す道は、地方の古い家だと修繕費が先に出ていき、借り手がつかないまま費用だけが残ることがあります。仲介で売る道は、地方の空き家が売れない理由で書いたように、値下げしても買主が現れない地域があり、その間ずっと管理が続きます。売り方そのものの手順は遠方の実家の売却にまとめています。

手放すとき、遠方だと詰まりやすいところ
手放すと決めても、遠方の実家ならではの詰まり方があります。
| 詰まりやすい点 | なぜ遠方で詰まるか | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 名義が親のまま | 相続人が各地に散っていて、話がまとまりにくい | 相続人が誰か、合意が取れるか |
| 家の中の荷物 | 片付けのために何度も通えない | 現況のまま引き受けてもらえるか |
| 土地の範囲 | 境界の立ち会いに行けない、隣地の方を知らない | 測量を売主側で求められるか |
| 解体の判断 | 解体業者の見積もりを現地で取れない | 建物を残したまま手放せるか |
名義は避けて通れません。不動産登記法76条の2により、2024年4月から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。詳しくは相続登記の義務化と期限を見てください。登記の手続きそのものは司法書士へご確認ください。
荷物と解体は、先に片付けや解体をしてから売る、という順番にしなくてよい場合があります。片付けを遠方から手配すると費用も手間も先に出ます(残置物の処分費用)。解体は固定資産税の扱いが変わり(空き家を解体したあとの固定資産税)、空き家の解体費用という相談につながりやすいところです。
- 先に解体して更地にしてから売りに出す(費用が先に出て、売れなければそのまま残る)
- 片付けが終わるまで相談しない(その間も税と管理が続く)
- 国庫帰属制度を前提にする(建物があると申請できない)
相続した家を売るなら、空き家の3000万円特別控除が使えるかも確かめておくと、手放す時期を決める材料になります。適用の可否は税理士へご確認ください。
現況のまま、ごえんが引き受けられる場合
当社は訳あり不動産を現況のまま買い取っています。片付け・解体・測量を売主様に先にしていただく必要はなく、土地や建物の調査も当社で行い、売主様に調べていただくことはありません。相続した空き家については、相続した空き家の買取相談のページも参考にしてください。
見るのは建物の状態と築年数です。再建築不可や市街化調整区域であることだけを理由に、取り扱いの対象外とはしていません。荷物が多く残った家はごみ屋敷の売却、庭先に畑が付いている家は農地付きの実家の売却もあわせてご覧ください。
ただし、どの家でも引き受けられるとは限りません。建物の傷みが大きいなど状態によっては、買い取りではなく、お引き受けをご提案することがあります。ご希望の金額と開きがある場合や、相続人の間で合意が取れていない場合などは、話がまとまらないことがあります。まず所在地をお知らせいただければ、調べたうえで、できること・できないことを率直にお答えします。
決める順番
- 通える人と期間を書き出す(誰が、あと何年、年に何回か)
- 名義と相続人を確かめる(親の名義のままなら、相続登記の期限を確認)
- 市町村から通知が来ていないか確かめる(指導の段階なら、まだ税は変わっていない)
- 使う予定があれば → 委託や修繕をして持ち続ける
- 使う予定がなければ → 片付けや解体の前に、現況のまま手放せる先に相談する
実家を手放す前の全体の段取りは実家じまいの進め方、手放した後に何も残したくない土地については売れない土地の処分も参考になります。
よくある質問
遠方の実家を管理しないと、すぐに罰則がありますか。
管理していないことだけで、すぐに罰則が科されるわけではありません。空家法では、まず市町村から指導があり、改善されないと勧告、さらに特定空家等では命令へと段階を踏みます。ただし勧告を受けた時点で、敷地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。
空き家の管理を業者に頼めば、所有者の責任はなくなりますか。
なくなりません。管理を委託しても所有者であることは変わらず、空家法5条の管理の努力義務も、民法717条の工作物の責任も所有者に残ります。委託は「気づくのが遅れる」問題を小さくする手段で、責任を移すものではありません。
名義が亡くなった親のままでも、手放す相談はできますか。
相談はできます。ただし売るには相続登記が必要で、2024年4月からは相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が義務になっています。相続人が複数いれば合意も要ります。登記は司法書士へご確認ください。
家の中に荷物が残ったままでも手放せますか。
荷物が残ったまま、現況のまま引き受けられる場合があります。片付けを先に済ませてから売る形だと、遠方から手配する手間と費用が先に出ていきます。どちらが合うかは建物と荷物の状態によるので、個別の判断になります。
この記事の監修者
小笠原 りえ(ごえん株式会社 代表取締役)
不動産業界10年。2010年創業のごえん株式会社で、相続した空き家・ごみ屋敷・再建築不可・市街化調整区域など、他社で断られた不動産の買取を全国で行っています。
ごえん株式会社/茨城県知事免許(4)第0006708号
相続した家を、そのまま手放せるか
どこも引き受けない「訳あり不動産」を現況のまま買い取る、全国対応の買取再販会社です。
相続した空き家、ごみ屋敷、再建築不可、市街化調整区域、共有持分、未登記——他社で断られた物件こそご相談ください。全国対応です。
片付け・解体・測量を、先に済ませていただく必要はありません。建物が建ったまま、家財が残ったままの現況で査定します。役所調査も現地確認も当社が行いますので、遠方にお住まいでも、現地に行かずに手続きを終えられます。資料が手元になくても、物件の所在地さえ分かればお答えできます。
相続登記が終わっていなくても、名義が複数でもご相談いただけます。順番は当社でご案内します。
お電話はこちら → 029-879-5683 / メール info@goen-fudosan.co.jp
ごえん株式会社(茨城県知事免許(4)第0006708号)/300-0045 茨城県土浦市文京町4-8

